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ブロンドとハリウッド
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F16 / 1/125秒 / シグマ 24-70mm F2.8 EX DG MACRO(52mm)
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ハリウッドは、言うまでもなく映画を中心にとした、ショービジネスの都だ。ショービジネスの世界で夢を実現するために、全米からだけでなく、全世界から多くの人達がハリウッドに集まる。この街で少しでも格好がいい若者を見かけたら、その世界を目指していると思って間違いない。もしかしたらもう活躍している人かもしれない。
表に出る人ばかりでなく、シナリオライターや映画監督志望もゴロゴロしている。撮影に関わる仕事関係の学校も、山ほどある。その競争率と言ったら、それはものすごいものがある。嫌な人間関係の噂も聞く。先日、日本ではそれなり活躍し、こちらでも頑張ろうとしている女優さんを撮影する機会があり、「ハリウッドの競争率は、想像以上でした」と、大きな目を丸くして言っていた彼女の言葉が印象的だった。
そんなハリウッドで、アメリカに来てまだ1年弱で、東ヨーロッパ出身の女優志望エレンと知り合い、写真を撮った。今まではサンデェゴにボーイフレンドと住んでいて、ハリウッドまで車で2時間半もドライブしてオーデションを受けていた。先月もモデルの仕事を1本したし、アクティングクラスを週2回、毎日スポーツジムで身体も鍛えている。これからはハリウッドに住んで、本格的に頑張るつもりだ。
写真を撮った日は、彼女はまだ安モーテル住まいだった。この街を知っている人間としては、若い女性が1人で泊るのには賛成できないロケーションであるが、まだ若いから自分を信じて、どんどん攻めたらいいと思った。そして、アメリカでは僕と同じ“英語が下手な外国人”だから、余計に頑張って欲しいと思った。
※画像をクリックすると等倍の画像を別ウィンドウで開きます。
※すべてカメラはキヤノン EOS 5D、ホワイトバランスは昼光色、感度はISO100です。
※RAWで撮影した画像を、露出、色補正なしでJPEGに変換しています。
※画像下のデータは絞り/シャッター速度/レンズ(実焦点距離)です
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写真1
F5.6 / 1/125秒 / シグマ 24-70mm F2.8 EX DG MACRO(24mm)
小型ストロボを斜め後から当てている
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さて、安モーテルはそれなりのおもしろさがあり、まず階段を利用して撮り始めた(写真1)。するとすぐに中国人らしきオーナーが現れて、「このモーテルではいかなる撮影も禁止です」と、言われてしまった。「私、このモーテルに泊っている客でしょ、少しぐらい撮らしてよー」とエレンが説得して、5分だけOKとなった。この街は撮影に関して異常なほどに敏感である。エレンは2週間このモーテルに宿泊した後、念願だったウエストハリウッドにあるスタジオアパートメントに、夢と共に移動した。
ハリウッドのある南カリフォルニアは、雨が少なく、晴天が多く、撮影が予定通り進みやすいから、ここまで発展したとよく言われている。しかし最近は人件費も保険料も上がり過ぎて、アメリカ国外での撮影も多いようだ。
ハリウッドは、この日も快晴だった。HOLLYWOODのサインをここまで近くで見られることを、地元の人も意外と知らない(写真2~4)。
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写真2
F16 / 1/125秒 / シグマ 24-70mm F2.8 EX DG MACRO(56mm)
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写真3
F16 / 1/125秒 / シグマ 24-70mm F2.8 EX DG MACRO(64mm)
小型ストロボ使用
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写真4
F16 / 1/125秒 / シグマ 24-70mm F2.8 EX DG MACRO(34mm)
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ハリウッドを象徴するHOLLYWOODのサインは、もともとHOLLYWOODLANDという不動産会社の広告のために製作されたことは知っていた。しかし、ネットで調べてみたら、女優のPeg Entwistleが、映画「Thirteen Women」の出演が取り消された事を悲観し、1932年9月18日HOLLYWOODLANDの「H」に立てかけてあった作業用の椅子を使って、「H」の文字に登り、そこから飛び降り自殺をした。その後、HOLLYWOODLANDの13文字が不吉の原因とされ、LANDの文字が撤去され、現在のHOLLYWOODになったことを、今回はじめて知った。成功話の陰に隠れた悲劇が、この街にはまだまだあるように思うが、傷つくことを恐れていては、ショービジネスの世界での成功はないのかもしれない。
HOLLYWOODのサインがよく見える公園から、クネクネ曲がる道を車で20分下ると、映画撮影スタジオWARNER BROTHERSに着く。スタジオの壁には、今上映中の映画やテレビシリーズの宣伝広告がずらりとペイントされていて、このスタジオの前を通るだけでも楽しくなる。このWARNER BROTHERSのスタジオ前の歩道で、写真を撮ることに。写真を撮っていると、ハンサムな青年が、撮影の邪魔にならない様に足早に歩道を通り抜けた。おそらくこの業界の人だろう(写真5~7)。
それから、ハリウッドブルバードに行って、沈み行く太陽をキャッチ(写真8)。我々に向けて、通り行く車の中から、「カワイー」、「こっち向いて」とか、いろいろな言葉が投げかけられるが、我々は気にしない。Blondes has more fun とよく言うけど、車の窓から見るとエレンのブロンドはさぞかし輝いて見えるのだろう。どこまでナチュラルかはわからないけれど、人の目を楽しませてくれるなら、それでいい。それがHOLLYWOODだから。
太陽が傾くと、昼間あれほど暖かかったのに、急に鳥肌が立つぐらいに冷え込んできた。LAの冬は、寒暖の差が激しいと改めて実感した日でもあった。
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写真5
F9 / 1/200秒 / EF70-200mm F4L USM(70mm)
小型ストロボ2つ使用。スレーブ内蔵の小型ストロボを横から使用
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写真6
F5.6 / 1/125秒 / EF70-200mm F4L USM(73mm)
小型ストロボ使用
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写真7
F6.3 / 1/100秒 / EF70-200mm F4L USM(70mm)
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写真8
F5.0 / 1/60秒 / シグマ 24-70mm F2.8 EX DG MACRO(64mm)
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■ URL
バックナンバー
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dialy_backnumber/
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押本 龍一 (おしもとりゅういち)東京品川生まれ。英語習得目的のため2年間の予定で1982年に渡米する。1984年、ニューヨークで広告写真に出会い、予定変更。大手クライアントを持つコマ―シャルスタジオで働き始める。1988年にPhotographerで永住権取得。1991年よりフリー、1995年LAに移動。現在はLAを拠点にショービジネス関係の撮影が主。日本からの仕事も開拓中。
http://oshimoto.net |
2007/01/31 02:08
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