連載バックナンバー
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モノ・レイク(後編)
[2008/07/30]
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モノ・レイク(前編)
[2008/07/09]
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雪が降った5月のセコイア
[2008/06/25]
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5月、霧のキングス・キャニオン
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サンタ・クルーズ島へ日帰りの旅
[2008/05/21]
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春のデスバレー(後半)
[2008/05/07]
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春のデスバレー(前半)
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パソ・ロブレスの冬
[2008/04/09]
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モハヴェ砂漠の冬(後半)
[2008/03/26]
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モハヴェ砂漠の冬(前半)
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砂漠のルート66
[2008/02/27]
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サークル・Xランチ、サンタモニカ・マウンテンズ
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冬のカーピンテリア
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12月のニューヨーク(後半)
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2007年
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2005年
カップルを撮る
焦点距離70mm
ごくごく普通のアメリカ人カップルに、彼らの写真撮影を頼まれた。アメリカでは、普通の人がプロカメラマンに撮影を頼むことがよくある。日本で言う“写真館”や、デパートに入っている写真スタジオで撮るようなお決まりポーズでなく、自然で楽しそうな、洒落た雑誌のようなスタイルを求める人が、最近は多いようだ。
そんな撮り方を「Life Style」とアメリカでは呼んでいる。広告や雑誌では写真慣れしているプロのモデルを使うから、カメラマンが指示しなくてもいいポーズをつけてくれるし、撮影をサポートしてくれるスタイリストなどのスタッフもいる。
しかし今回のような一般人はそうは行かない。いくらアメリカ人が笑顔をつくるのが得意でも、カメラを向けてそうそう絵になるポーズや表情はつくれないし、かなり太めな人も多いのだが、撮られる本人たちは、プロカメラマンなら雑誌のように写してくれると大きな期待をしている。一見楽な撮影に見えるけど、被写体がクライアントだし、カメラマンとしては結構気を使うものだ。
一般人相手の撮影では、なかなかアングルや場所を決められず、またポーズも指示できずに変な間ができてしまうと、不安感を与えてしまうし、カメラマンもリズムに乗れないから、常に笑顔で声をかけて、優しく誘導して、カメラマン本人も楽しんで撮ることが一番大事だと思う。そのためにも、カメラ機材で悩まないよう、機材はシンプルにしたい。今回もカメラはキヤノン EOS 20D、レンズはシグマ 28-70mm F2.8 EX DGだ。
僕が住んでいるカリフォルニア州Redondo Beachはその地名の通り、海岸がある。我が家から海まで2マイル(3.2km)だから、よく海岸を撮影に使う。今回もカップルの要望もあり、海岸のパーク、桟橋、ビーチで撮影した。
この日は、太陽がまぶしくて目を開けているのが大変なぐらい、典型的なカリフォルニアの快晴。ここに居るだけで、気分は爽快、最高の天気。しかし人物撮影には、強く出る影が厄介だ。アシスタントもいないし、レフは反射がまぶしすぎるから、小型ストロボを用意したが、あまり使わずに済ませた。
近所に住む彼らをピックアップし、10分ほどドライブして海が一望できるパークに着く。まず小さな花壇を手前に入れて撮る(写真1)。2、3枚撮ると、撮影しながらカップルとの気持ちの距離感もなくなった。海に向かい歩いてもらい、後ろから撮る(写真2、3)。2人とも太い方だから、あまり後ろからのカットは撮らなかった。
写真1(56mm)
写真2(24mm)
写真3(24mm)
埠頭に出て、パームツリーを入れて、引きの横位置(写真4)、街灯を入れ、縦位置で撮る(写真5)。ベンチに座りキスをしてもらい1枚(写真6)、引いてもう1枚(写真7)。2人のポジション変え、撮る(写真8、9)。
写真4(34mm)
写真5(70mm)
写真6(36mm)
写真7(24mm)
写真8(48mm)
写真9(48mm)
行楽地によくある双眼鏡と遊んで1枚(写真10)。遠くの半島を眺めて1枚(写真11)。アイスクリームをゲットして、食べる2人を撮る(写真12)。ストロボ光をもう少し強くて当ててもよかった。海をバックにする時は、手持ち撮影ではカメラが水平に保たれているか気を付けたいが、被写体に気をとられて、僕もよく右下がりになる。そんな時、後で直せるデジタル撮影はありがたい。
写真10(24mm)
写真11(24mm)
写真12(30mm)
正面から青空をいっぱい入れて撮る(写真13)。2人を小さくして風景の中に溶け込ませて撮る(写真14)。記念写真も入れておく(写真15)。抜けるような青空とのコントラストが美しい白い街灯があり、そこでキスシーン(写真16)。このころになると僕の指示もスムーズになったが、強い太陽で、カップルは疲れ気味。木陰を見つけて、直射日光を避けて、顔写真を撮る(冒頭の写真)。モノクロにしてこれが最後のカット。
写真13(24mm)
写真14(24mm)
写真15(30mm)
写真16(70mm)
撮影時間は、1時間と少し、200枚弱を撮影した。そのうちのベスト50枚をCDに落とし、4×6インチにプリントにしてBOOKに入れて、カップルに渡した。気に入ってくれたようだ。ラボでプリントされた写真は、思ったより影がきつくなく、服の質感も出ていた。
なお、掲載した写真は、カップルに渡した同じ写真を掲載した。撮影後、明るさ、コントラストを多少変えているので、撮影データは、レンズの焦点距離のみに留めている。
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URL
バックナンバー
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dialy_backnumber/
押本 龍一
(おしもとりゅういち)東京品川生まれ。英語習得目的のため2年間の予定で1982年に渡米する。1984年、ニューヨークで広告写真に出会い、予定変更。大手クライアントを持つコマ―シャルスタジオで働き始める。1988年にPhotographerで永住権取得。1991年よりフリー、1995年LAに移動。現在はLAを拠点にショービジネス関係の撮影が主。日本からの仕事も開拓中。
http://oshimoto.net
2006/04/12 09:05
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