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モノ・レイク(後編)
[2008/07/30]

モノ・レイク(前編)
[2008/07/09]

雪が降った5月のセコイア
[2008/06/25]

5月、霧のキングス・キャニオン
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サンタ・クルーズ島へ日帰りの旅
[2008/05/21]

春のデスバレー(後半)
[2008/05/07]

春のデスバレー(前半)
[2008/04/23]

パソ・ロブレスの冬
[2008/04/09]

モハヴェ砂漠の冬(後半)
[2008/03/26]

モハヴェ砂漠の冬(前半)
[2008/03/12]

砂漠のルート66
[2008/02/27]

サークル・Xランチ、サンタモニカ・マウンテンズ
[2008/02/14]

冬のカーピンテリア
[2008/01/30]

12月のニューヨーク(後半)
[2008/01/16]


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モノクロでダンスクラスを撮影


スタジオシティーの目抜き通り、ベンチュラ・ブルバード
 有名なUSC(南カリフォルニア大学)のダンスクラスの撮影を依頼され、その打ち合わせのため、そのクラスを担当する先生のダンス・スクールに行った。その時、テストも兼ねて、覗いたクラスを撮影してみた。そのダンス・スクールがあるロスエンジェルスのスタジオシティーという町は、その名の通り映画関係者の町だ。ユニバーサル・スタジオやワーナー・ブラザーズ、ディズニーなどの大手や、撮影関連のプロダクション、衣装屋、モデルクラブ、タレント・エージェンシー、ダンス・スクール、メイクアップ・スクール等が集まっていて、この町のコーヒーショップで友達と会っているだけで、ハリウッド関係者になった気分になるし、たまには有名人にも出会えるから楽しい町だ。

 映画業界の人は日本食が大好きで、スタジオシティーを通り抜けるベンチュラ・ブルバードには、多くの日本食レストランが建ち並ぶ。ある映画関係の人が、この通りを「寿司銀座」と呼んでいたのを聞いたことがある。アメリカでは純粋に寿司だけしかない寿司屋はほとんどないから、寿司は日本食のメインディシュと思っているアメリカ人がほとんどだ。

 さて、この町でダンスレッスン受ける人は、ダンサーだけでなくアクターやシンガー、さらにはコメディアンもたくさんいる。歌えて、踊れて、演技もできるエンターテナーを目指すのがアメリカのショービジネスに基本だ。だから、クラスにもよるが、かなりの年配の人や、ダンサーらしくない体型の人も見かける。


スタジオの玄関。掲示板には、個人の売り込みのためのプロモーションカードがいっぱい貼ってある

ストレッチ風景、カメラアングルを低くして、自分もストレッチしている気分で撮影。
ミドルファインで撮影。F2.8 / 1/100
 ダンススタジオだが、照明は蛍光灯のみでとても暗い。アメリカのダンススタジオは踊れればいいという感じで、細かいところは気にしないのだ。今回はモノクロで撮影を試みた。EOS 20Dで、記録画質はミドルファインとRAWで撮影した。今回の条件では、画質の差は僕にとってそれほどないように思えた。ISOは1600、ストロボを使用の時はISO400に設定した。レンズはシグマ 28-70mm F2.8 EX DG。

 ダンサーは、オートフォーカスが最も苦手とする黒や白の服を着てレッスンを受ける事が多く、オートフォーカスは苦戦するだろうと思った。

 レッスンは、まずストレッチから始まった。カメラアングルを低くして、自分もストレッチしている気分で撮ってみた。動きも少ないので、ONE SHOT AFで問題なくいけるはずと思っていたのだが、暗く完全な黒のタイツにフォーカスしようとしたら、ピンがなかなか合わず、近くの床にピンを合わせ、半押しでそのピンをキープしながらフレーミングし直し、撮影した。少しでも色がある服は問題なくフォーカスできたし、足の裏など人間の肌にはこの暗い状況でも問題なかった。


ストレッチ風景
RAWで撮影。F3.5 / 1/100
ストレッチ風景
ミドルファィンで撮影。F2.8 / 1/100

ストレッチ風景
RAWで撮影。F3.2 / 1/80
ストレッチ風景、カメラを少し低くして撮影
ミドルファインで撮影。F2.8 / 1/100

シグマ 28-70mm F2.8 EX DGのAF/MF切り替えスイッチ
 しかし暗いダンススタジオで、黒ずくめのダンサーに、さらに速い動きが加わると大変だった。AL SERVOで動いているダンサーを追ってみたが、やはり黒の服にはピンがうまく来ない事が多かった。オートフォーカスのピンボケは、救いようがないぐらい外れてしまうことがあるから、条件が悪く絶対に失敗できない瞬間では、正直言って僕はまだ手動でピントを合わせないと自信がない。

 もちろん手動でもピンボケは出てしまうが、どんな状況でも2、3枚撮れば(プロなのにそんなもんかと言われそうだが)、1枚は必ずものになるし、あらかじめ被写体が来る所にピントを合わせておいたり、ピントを3mぐらいに固定しておいて、その距離を保ちつつ被写体の人物と同時に動きながら表情のいい瞬間にシャッターを切る撮り方もよく使う。ようするに手動では、ある程度の失敗も計算しながら撮影しているのだ。

 撮影時はピントに限らず、不安材料をなるべく省いて被写体に集中したいから、自分の機材に対しては自分の手足のようになるまで使い込んでおかないと、「ここぞ」という瞬間を逃してしまうものだ。何でもいいから、自分が頼れるわざが多ければ多いほどいい。


スローシャッターにして、ダンサーに動きを出してみた
ミドルファインで撮影。F4 / 1/50

ダンススタジオにはつきもののバー
ミドルファインで撮影。F2.8 / 1/100
RAWで撮影。F4 / 1/50

 小型ストロボをスタンドに乗せ、リモートコントロールで発光させて撮影もしてみた。この方法なら、カメラボディーに付けた正面からのベタなストロボ光だけでなく、ストロボ光の当て方にも変化が出せる。


スタンドに乗せた小型ストロボと、リモートコントロール ストロボ使用
RAWで撮影。ISO400.F4 / 1/60

 最近はどこのダンススタジオに行っても、短期でダンスレッスンを受けに来ている日本人を見かける。LAは車社会だから、このスタジオシティーでも移動は全て車。だから短期で来る人には不便な所で、皆移動に苦労しているのではと思う。



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押本 龍一
(おしもとりゅういち)東京品川生まれ。英語習得目的のため2年間の予定で1982年に渡米する。1984年、ニューヨークで広告写真に出会い、予定変更。大手クライアントを持つコマ―シャルスタジオで働き始める。1988年にPhotographerで永住権取得。1991年よりフリー、1995年LAに移動。現在はLAを拠点にショービジネス関係の撮影が主。日本からの仕事も開拓中。 http://oshimoto.net

2006/03/08 13:58
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