特別企画
旅×カメラ:Nikon 1 AW1
初の“レンズ交換式防水デジカメ”の魅力とは?
Reported by 本誌:折本幸治(2014/4/3 12:00)
レンズ交換式デジタルカメラにして世界初の防水機構を持つ「Nikon 1 AW1」を試す機会に恵まれた。グアムでのシュノーケリングに連れて行き、その実力を体験。同時に、同じくニコンの防水デジタルカメラ「COOLPIX AW120」を持っていったので、それぞれの性格について考察してみた。
Nikon 1 AW1は、1インチセンサーとNikon 1マウントを採用するニコンのミラーレスカメラ、Nikon 1シリーズのひとつ。他のNikon 1シリーズと同様にレンズ交換が可能な上に、水深15mの防水性能を有するのが特徴だ。つまり、ハウジングなしで水中での撮影が可能。いわゆる防水コンパクトデジカメと同様の使い方が、センサーの大きなミラーレスカメラで可能になるというわけ。
意外と持ちやすかった鏡面仕上げのボディ
初めて手にしたAW1(シルバー)は、鏡面仕上げのステンレス外装という見た目もあって、ものすごいインパクト。とにかく頑丈で、何があってもへっちゃらだという自己主張を感じる(傷はつきそうだが……)。かといってタフネス一辺倒ではなく、カメラらしさも感じる。こういう雰囲気を持つミラーレスは他になく、気に入る人はとても気に入ると思う。実際自分は、眺めているだけでうれしくなった方だ。
個人的には、見た目の割にずしりとくる重さもたまらなく感じた。防水コンパクトデジカメと異なり、「カメラで撮っている」という気になる大きさ・重さだと思う。
手に持つと滑りやすいかと思いきや、前面左手側にある指掛け状のパーツにより、意外にもホールド感は悪くない。さらに気になる人には、外付けグリップやシリコンジャケットも用意されているので、それらの利用を検討するのも良いだろう。
水中でのレスポンス、画質とも良し
さてここからは、メインとなる水中での使い勝手についてを紹介したい。
水中で使用できるレンズは、水中専用のズームレンズ「1 NIKKOR AW 11-27.5mm F3.5-5.6」、または単焦点レンズの「1 NIKKOR AW 10mm F2.8」。
もちろん水中でレンズ交換はできないので、陸上でどちらかをセットしておく。
ということは「結局、防水コンパクトデジカメと使い勝手に大差ないのでは…」という予感もあった。筆者は防水コンパクトデジカメのレビューを弊誌で何度も体験しており、その性能や操作性の進化について一応の心得があるつもりだ。それゆえにAW1についても、「センサーとボディが大きいだけ」とタカをくくっていたところがある。
ところがである。実際に水中で使ってみると衝撃を受けた。防水コンパクトデジカメとは桁違いの快適さなのだ。
例えばズームレンズのAW 11-27.5mmはマニュアルズーム機構を備えている。これが防水コンパクトデジカメの電動ズームに比べて使いやすい。何かと不自由な水中だけに、素早く画角を調整して撮影できることが、ここまで便利だとは思わなかった。
ボディが大きいだけに、シャッターボタンをはじめとした操作もやりやすい。特に動画ボタンは、シャッターボタンと同じくらいの大きさである。
それにAFがとにかく高速。動く魚を相手に、Nikon 1のアドバンスドハイブリッドAFの実力をしっかり堪能できた。スパっと合い、シャッタータイムラグも感じずサッと撮れる。これまでの旅行であきらめていたシャッターチャンスを、今回取り戻せた気分だ。撮影間隔をはじめ全体的にレスポンスが良く、ストレスなく思うがまま撮影できるのは快感だった。
背面モニターが明るく見やすいのもありがたい。ゴーグル越しとなる水中の場合、これが結構重要だ。液晶モニターの明るさを最大にして、さらに設定を「ハイコントラスト」に。すると、ほとんどのケースで困ることはないだろう。
バッテリーの持ちも良い。動画やパノラマも含め200コマ近く撮影しても、バッテリーゲージは1つ減っただけ。防水コンパクトデジカメの省電力化も進んでいるが、一度水中に入るとバッテリーは交換できないだけに、ミラーレス用の比較的大きなバッテリー(EN-EL20)を使う本機の安心感は高い。
そして1インチセンサーによる高画質。今回は防水コンパクトデジカメのCOOLPIX AW120も持参しており、実をいうと「それほど画質が違わないのでは」という懸念があった。
結果は大違い。センサーだけでなく、レンズの性能も違うのだろう。AW1のクリアでかつ階調の豊かな画質は、AW120をはっきりと上回っていた。いや、AW120もかつて使用したAW100よりずっと良くなっているのだが、その差はしっかり感じられる。AW120では難しい、ボケ表現すら可能だったことにも、軽く衝撃を受けた。
ちなみに、水中撮影用の撮影モードとして、クリエイティブモード「水中」が用意されている。「スタンダード」、「ダイビング」、「クローズアップ」の3種類から選択可能で、水深に応じたホワイトバランスを水中用に整えてくれるのだ。しかも撮影前に、ユーザーが青と緑のバランスをスライダーで調整できるという懲り具合だ。
陸上での撮影について触れると、こちらも防水コンパクトデジカメとは別格の高画質。レンスポンスも俊敏だし、液晶モニターも見やすい。
また今回、突然のスコールの中でも余裕で夕日を撮影できたのは、AW1らしいエピソードといえるだろう。
今回は積極的に試していないが、陸上では水中用以外のレンズを取り付けるのも面白い。移動中のスナップは軽快なパンケーキ単焦点レンズで、雄大な風景は広角ズームレンズで、家族のポートレートは大口径単焦点レンズで、といった具合だ。ある意味、これが防水コンパクトデジカメとの一番の違いだと思う。
ただしレンズ交換についてはいくつか注意が必要だ。レンズ交換式のAW1は、マウントという大きな開口部を持つことから、防水コンパクトデジカメより浸水について気を使わざるを得ない。
まずはレンズを装着する前に、ボディ、レンズ双方能のOリングが劣化していないかをチェック。Oリングに砂がかんでいないかも確かめる。Oリングは予備がひとつ本体に付属しているので、必要とあらば交換しよう。
そして「装着するときはカチっと音がするまで」「取り外すときは乾いてから」という約束を守ること。
あとは防水コンパクトデジカメ同様、水中に入る前は、バッテリー/メディア室のロックをしっかり確認していただければと思う。
COOLPIX AW120も大活躍
一緒に持って行ったCOOLPIX AW120についても触れておきたい。当初、AW1との比較用、正直いうとかませ犬的なポジションとして旅先に持参したカメラだったが、これがどうして、利用頻度はAW1と同じくらい高かったし、使っていて楽しかった。
というのも、AW1と異なりポケットに入るため、ちょっとしたホテル近辺の探索や買い物のときに持ち出しやすかったから。食事の際に使うとしたら、こうしたコンパクトデジカメの方が気安い(画質はAW1の方が上だが)。
またAW120は、焦点距離24-120mm相当(35mm判換算)の光学5倍ズームを搭載しているため、AW1に装着していた焦点距離30-74mm相当のAW 11-27.5mmではまかなえない広角域や望遠域で便利だった。
そして決定的なのは、AW1には搭載されていない内蔵Wi-Fi機能があったこと。スマートフォンへの画像送信が手軽に行なえるとあって、SNSへのアップロードが前提となる写真は、AW120で撮ることが多かった。
ただし、AW1にもワイヤレスモバイルアダプターWU-1bというアクセサリーが外付けで用意されている。必要なら別途用意すれば良いだろう。ステンレスで覆われているAW1だけに、Wi-Fi機能の内蔵は難しいのかもしれない。
ちなみに、両機種ともGPS機能は内蔵されている。A-GPS対応の最新版で、どちらもログデータの記録が可能。旅先での記録と位置情報の親和性はすこぶる高い。旅行用のカメラには、可能ならぜひGPS機能付きの製品を選んでいただきたい。
水中、陸上とも確かに画質はAW1に劣る。とはいえ、被写界深度が深くて画角も広いため、とっさに出くわした魚群を地形とともに撮るといったシチュエーションでは、AW1より頼りになることもあった。
用途にはまると強力な1台
さて、AW1をお勧めできるのはどんな人か。ずばり、
「ダイビング、シュノーケリング、ウィンタースポーツなどがメインとなる旅行を控え、そのイベントを写真に残したい。陸上での写真もきれいに撮りたい。そして、それらを1台でまかなえるカメラが欲しい」
という人になるだろう。
また、これまで水中と陸上とでカメラを分けていた人(筆者を含む)や、カメラを買い替えるたびに防水ハウジングを購入していた人にとっても、福音となる製品だと思う。
そして、
「旅先の撮影は一眼レフカメラでの陸上撮影がメイン。水中はあくまでもおまけ」
という人には、COOLPIX AW120のような防水コンパクトデジカメもお勧めだ。水中用にがんばってAW1を持参するのもいいが、その大きさ・重さが気になるところ。レンズ交換にまつわる慎重さも求められる。そのため、手軽な水中記録やプールでの家族の記念撮影なら、防水コンパクトデジカメでも存在意義は十分あると感じる。
というわけで、AW1はかなり面白い独自のポジションに位置する製品だ。ミラーレスの進化の途上に、こうしたカメラが存在するのはとても興味深いし、用途が合うなら、唯一無二の活躍が期待できる。Nikon 1用の交換レンズも充実してきているので、来るべきゴールデンウィークや夏休みに向けて、検討してみてはいかがだろうか。
(制作協力:株式会社ニコンイメージングジャパン)