安原製作所のミラーレス用全周魚眼レンズ「MADOKA」(まどか)を試す
レンズメーカーとなった安原製作所が、第2弾となる2万3,000円の全周魚眼レンズ「MADOKA 180」(まどか180)を発表した。
NEX-5に装着したMADOKA 180(まどか180)のプロトタイプ |
ソニーEマウント用とマイクロフォーサーズ用をラインナップする。まず、Eマウント用を先行して4月末に発売する。予約はすでに受け付けている。
※今回のレビューはMADOKAのプロトタイプ(Eマウント用)で行なっています。
安原製作所は、第一弾としてLED付き5倍マクロレンズ「NANOHA」(なのは)を2011年に発売。超高倍率撮影が可能な特殊レンズとあって、国内の一般ユーザーだけでなく学術機関や海外からの引き合いも多かったという。
第1弾のNANOHA(プロトタイプ) |
そのNANOHAに引き続いて投入するMADOKAは、小型・軽量・安価がコンセプトの全周魚眼レンズ。実焦点距離は7.3mm、開放F値はF4。ピントはマニュアルのみだ。
全周(円周)魚眼レンズとは対角180度の画角を全周にわたって写し込めるレンズで、水平に構えれば、自分より前にあるものがすべて写る。高い建物もてっぺんまで写すことができるなど特殊な能力を持つ。
今のところEマウント(ソニー)、マイクロフォーサーズ(オリンパス、パナソニック)とも全周魚眼レンズはまだラインナップに無いので、ミラーレス機で全周魚眼撮影を行ないたかった向きには朗報だ。
絞りは4~22までで、1段ごとにクリックストップがある | リアは擂り鉢状になっている。電気接点は無い |
前玉はやや突出しているので、手で触れたりぶつけたりしないように気をつけたい |
さて例によってネーミングの由来だが、“円く撮れる”ことから「円か」(まどか)→「MADOKA」になったという。NANOHA同様、MADOKAという名前も魔法少女のアニメキャラクターに存在するが、同製作所の安原伸氏によれば「たまたま一致しただけ」という。
■もうスカイツリーも怖くない!?
レンズの大きさは61×43mm(直径×長さ)、重量は200g。鏡胴はひんやりとした金属製で質感も高い。マウント側に絞りリング、その先にピントリングがある。ピントリングは十分なトルク感があり、精緻なピント合わせが可能。魚眼レンズらしく前玉がやや突出している。
今回はソニー「NEX-5」で試用した。電気接点の無いレンズなので、あらかじめレンズ無しでレリーズできる設定にしておく。撮影モードは絞り優先AEにしておけば問題なく撮影できる。
NEX-5に装着したところ。コンパクトに収まる |
焦点距離が7.3mmのため絞り開放でも被写界深度は深いが、近距離ではピントが合っていないとそれなりに甘い絵になってしまう。そのためNEX-5の場合は「MFアシスト」で画面を14倍に拡大すると正確に合せることができる。さらにこのとき、ピントの合った部分に色が付く「ピーキング機能」をONにするとピント合わせが楽になる。
撮影中の画面 |
今回は高い建物ということで、竣工直後の東京スカイツリーなどを撮影してみた。スカイツリーのたもとまで行くと、35mm判換算で28mm程度の広角では塔全体を写すことは全く不可能。撮影に行ってやきもきした向きも多いだろう。
その点全周魚眼レンズであれば、塔全体はおろか下を流れる川までを余裕で収めることができる。もちろん全周魚眼独特の歪みは発生するが、これもまたおもしろい。画面の中心をスカイツリーの頂上に向けると、自分の背後にあるビル群もたくさん写るので、一風変わった写真が撮れる。
■想像以上にシャープな写り
画質に関しては作例で判断頂きたいが、価格や全周魚眼という特殊性を考えると十分以上に良く写るとの印象を持った。さすがに等倍で見ると周辺では色収差も目立っているが、実用的な鑑賞サイズではさほど気にはならない。ピントが合った部分もシャープだ。
同製作所によれば、MADOKAは絞り開放でも絞り込んでも画質はさほど変わらないとのこと。絞りによる回折ボケが無いぶん、開放が最もシャープになるという。
レンズ構成は6群7枚 |
写る範囲が広いため、例えば屋外だと太陽から建物の影に至るまで様々な明るさが画面内に混在する。露出の決定はやや難しく感じたが、AEブラケットで撮影しておくとより確実だ。さらに、NEX-5の場合だと「Dレンジオプティマイザー」や「オートHDR」を使うと白トビや黒つぶれが軽減される。いろいろ試したところ、特に露出の異なる3枚を合成するオートHDRにすると印象的な魚眼レンズ写真になった。
なお画面内に太陽などの強い光源があった場合、画面外の黒い部分に丸い反射が出る場合がある。製品版では内面反射対策を強化するとのことだが、完全に取り除くのは難しいのだという。今回は、オートHDRを使用した作例でこれがやや目立っている。
ちなみに、最短撮影距離は10cmと一眼レフカメラ用の全周魚眼レンズより短い。手前に主被写体を置いて背景を広く写す、といった使い方もできる。
ところで、試用中にレンズを支える手の指などが写り込んでしまったことが何回かあった。円形の画面の周囲はプレビュー画面で拡大しても映り込みの有無が見にくいことがあるので撮影時には注意したい。
■まとめ
全周魚眼レンズはこれまで一眼レフカメラ用では10万円を超えるのが普通で、なかなかエントリーユーザーには手が届きにくいものだった。MADOKAは、MFとはいえ2万3,000円という価格で全周魚眼を実現した点を評価したい。ミラーレス機と合せて、軽量コンパクトなシステムで撮影に臨めるのがいい。
なお安原製作所では、MADOKAの画像を四角形に変換する歪み除去ソフト「WALP」(ヴァルプ)を開発中だ。これを利用すると、MADOKAを超広角レンズとして利用できる。Webサイトに変換例があるので参照頂きたいが、28mm相当(35mm判換算)の画角とは比べものにならないほどの画角になっている。リンク先のサンプルは横の画角が140度にもなるという。
WALPは5月頃にダウンロード販売する予定。WALPと聞いて件のアニメのファンは“Walpurgis”を思い浮かべるかもしれないが、「Wide Angle Linar Photo」の略なのであしからず。
気軽に魚眼レンズでの撮影を楽しんでみたい |
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
スイングパノラマを試したところ、300度位の範囲を写せた。微妙に繋がっていない部分もあるが……。同製作所によるとこのレンズは、スイングパノラマよりもむしろ「VRパノラマ」の作成に向くという。Webサイトでは久門易氏によるMADOKAで撮影したVRパノラマを見ることができる。NEX-5 / MADOKA / 約4.8MB / 8,192×1,856 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO250 / スイングパノラマ / WB:オート / 7.3mm |
2012/3/23 00:20