特別企画

至れり尽くせりの撮影環境!星空を撮るにぴったりの場所を発見した

ツインリンクもてぎ「森と星空のキャンプヴィレッジ」撮影記

『ログキャビンサイト前から北天を撮る』
ツインリンクもてぎの「森と星空のキャンプヴィレッジ」で見る星空。森の中ながら星空もいい感じに開けていて、ゆったりした気分で星を眺めるにはとても適した環境だ。
OLYMPUS OM-D E-M10/M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO/ISO1600/F2.8開放/2.5秒設定でライブコンポジット撮影約30分

栃木県東端の茂木(もてぎ)町にある「ツインリンクもてぎ」といえば、国際格レーシングコースとしての存在が思い浮かぶ。その他、交通安全トレーニングの施設やホンダのF1マシンをはじめ国内外の名車を動態保存するホンダコレクションホールなど、おもに自動車関連の施設だと認識している人が多いのではないだろうか。

ツインリンクもてぎでは、併設された森「ハローウッズ」の自然豊かな環境の中で風景やポートレートの撮影ができます。その様子はこちら。
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/special/1030888.html

じつは最近まで私もそう思っていたのだった。ところが、緩やかに広がる八溝山系の丘陵に囲まれた自然豊かな周辺環境を活かして、さまざまな自然体験を楽しむことのできる森のミュージアム「ハローウッズ」、ゆったりと自然を満喫出来るキャンプ場「森と星空のキャンプヴィレッジ」など、アウトドア施設が併設されていて、自然とも深く触れ合える場所だったというではないか。

都心から直線で約100km、栃木県宇都宮市と茨城県水戸市からそれぞれ約30kmのほぼ中間地点にあり都会からも離れているので、星もよく見えるはず。「森と星空の……」というからには、ぜひそこで星空を眺めてみたいと、カメラと双眼鏡・望遠鏡を携えて訪問してきたので、そのようすを報告しよう。

「森と星空のキャンプヴィレッジ」で星景写真

森と星空のキャンプヴィレッジは、キャンプのスタイル別にグランピングエリア、ログキャビンエリア、人数や趣向に応じて選べる大小さまざまなテントサイトエリアの3つに分かれている。グランピングエリアではアメリカンBBQディナー付きの宿泊プランも用意され、贅沢な時間を過ごすことができそうだ。

この冬にはグランピングサイトとホテルツインリンクの宿泊者向けに「森と星空のナイトツアー宿泊プラン」が用意されている。ツインリンクもてぎ内を専用バスで移動して視界の開けたポイントに行き、キャンプヴィレッジのスタッフが天体望遠鏡で星空案内をしてくれるというプログラムだ。何も用意せずに出かけていっても、もてぎの星空体験を満喫することができるというわけ。

いずれのタイプのキャンプでも、入浴に隣接のホテルツインリンク「のぞみの湯」が無料で使用できる。星を眺めながらBBQ、星を楽しんだ後は温泉で温まれるという至れり尽くせりという環境である。

「森と星空のキャンプヴィレッジ」マップ

森と星空のキャンプヴィレッジ入り口の看板。こずえに輝く星がこの場所のコンセプトを表しているようだ。

今回、私と取材スタッフが利用したログキャビン。2段ベッド定員4名のトレーラーハウスで空調も完備された快適な施設である。ログキャビンは全部で11棟。冬の星見は寒くて苦手という人でも、すぐに暖を取ることができるので安心だ。

星空撮影を楽しむためには、まずカメラ。明るい広角レンズがあるといい。できるだけしっかりした頑丈な三脚を使おう。

星空を眺める双眼鏡は、対物レンズの口径が大きめで低倍率のものが視野が明るくて適している。星座早見盤や星図・ガイドブックを参考に、天の川や星空にたくさんある星雲や星団を探してみたい。空の良いところでは双眼鏡でもたくさんの天体を見つけることができて楽しく、時間を忘れてしまうことだろう。

キャンプサイトは木立に囲まれているが、グランピングエリア中央の広場、木もれ陽サイトのセンター広場など空の開けた場所もあって、天体観望にもじゅうぶんだ。取材当日は紅葉も盛りで、季節感のある星景写真を撮影することもできるだろう。

場内には、通路や調理場などの照明があるが、テントサイトで家族や仲間と星空を楽しむにはそれほど邪魔にならない。取材当日には23時頃に完全消灯されて真っ暗な環境になった。だいたいこの時間帯から市街地の照明も消されてくるので光害も少なくなるので、それからが本気で天体観察や撮影できる“星空タイム”である。

星好きの利用が増えてくれば、晴れた新月前後の星の見やすいタイミングや、流星群などの天文イベントがあるときなど、場内照明を早めに最小限にする「星空スペシャルナイト(?)」な対応をしてくれるかもしれない?

『グランピングサイトに降る星ぼし』
テントの灯りが美しく暖かいグランピングサイトの星景だ。全体に南向きで視界も広い。BBQ&星空観望には最高の環境だ。ときにはキャンプヴィレッジのスタッフが天体望遠鏡をセットして星空案内してくれることもあるとか。
OLYMPUS OM-D E-M10/KOWA PROMINAR 8.5mm F2.8/ISO1600/F4.0/6秒設定でライブコンポジット撮影約30分

『木もれ日サイトセンター広場の星空』
キャンプファイヤーのできる広場の星空を大口径フィッシュアイレンズで撮影した。カシオペア座からペルセウス座、おうし座にかけての星空が見えている。23時頃に照明は消灯されて、星がここから見えるいちばん明るいものになった。

レーシングコースで星景写真

ツインリンクもてぎでしか撮ることのできない星の風景といえば、やはりレーシングコースでの星景写真だろう。

レーシングコース周辺は視界をさえぎる物がまったく無く、空が360度開けて天体撮影&観望に最高だ。大きなイベントの開催や工事中でもないかぎり、照明もほとんど点いていない。敷地内各所の駐車場や、コース外周路に沿って点在する開けた場所が星空撮影&観望の好適地。ほとんどの場所は舗装されていてしっかりした地面なので、機材の設置にも適している。長時間の星空撮影でもあちこちにトイレがあるので、そっちの方面でも安心だ。

キャンプ場だと、深夜はどうしても隣人に気を使うことになってしまうが、このような場所だと仲間たちと思う存分星空を楽しむことができる。すこし本気で星空撮影や天体観望に取り組みたい人におすすめしたい。

『スーパースピードウェイ(オーバルコース)星景』
スーパースピードウェイのターン1と2の中間あたりからフィッシュアイレンズで撮影したコース全景と星の日周運動。ときどき何かの作業で短時間照明がついたが、ほとんどの時間は邪魔な光が無く撮影ができた。まぁ少々の灯りがあっても、かえってこういう場所らしい雰囲気になる。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO/ISO1600/F2/8秒設定でライブコンポジット撮影約2.5時間/LEEソフトフィルターNo.3使用
スーパースピードウェイの昼間のようす。上の星景撮影ポイントより少しターン1に近い所から。

『第2パドックの星空』
パドックは、レースに出場するクルマを整備する場所。そびえる照明灯やチューンナップされたクルマがレーシングコースならではの星景だ。北の空には、北極星をはさんで北斗七星とカシオペア座がちょうど向かい合っていた。画面中央の明るい建物がホテルツインリンク。上空に伸びる光は北ゲートあたりのライトアップだろうか。これもまたツインリンクもてぎらしい光景かもしれない。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO/ISO1600/F2.8開放/60秒/LEEソフトフィルターNo.3使用

『コントロールタワー&グランドスタンド星景』
第2パドックから見た星空。右上におうし座、中央にはおなじみオリオン座と冬の大三角。淡い冬の天の川もしっかり写っている。左の建物がコントロールタワー、その向こう側がグランドスタンドだ。OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO/ISO1600/7mm/F2.8開放/30秒/LEEソフトフィルターNo.3使用

コースサイドから星空撮影&天体観望

今回の取材日は条件の良い晴天が予想されたので、星空をしっかり堪能すべく天体望遠鏡や数台の双眼鏡、星の日周運動を追尾撮影するためのポータブル赤道儀など、いろいろな機材を持ち込んだ。

コースサイドには広くて平坦なスペースがたくさんあるので、機材を展開して星空を楽しむには最高の場所だ。それに外部とは仕切られたエリアなので、星とは関係ない一般車などが突然入ってくることもまったく無く、落ち着いて星空を眺めることができるのがじつにうれしい。

以下に、ツインリンクもてぎで撮影した星空写真をいくつか紹介しよう。

『冬の星空を撮る・眺める』
今回は視界の広いR1駐車場に赤道儀をセットして星雲や星団の撮影をした。画面中央の機材が望遠レンズでプレアデス星団を追尾撮影している赤道儀だ。右はイスに腰掛けてカメラ三脚に固定した口径70mm14倍の大型双眼鏡でオリオン大星雲を観望中の取材スタッフ。センターポールの傾けられる三脚だと双眼鏡が覗きやすくて楽チン。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO/ISO3200/7mm/F2.8開放/30秒/LEEソフトフィルターNo.3使用

『R1駐車場で撮影した冬のダイヤモンド』
画面上部の輝星カペラから時計回りに、おうし座のアルデバラン、オリオン座のリゲル、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、ふたご座のポルックスとカストルを結んでできる大きな六角形が「冬のダイヤモンド」。
よく晴れたものの大気の透明度が少し悪く、地平線に近い空が市街地の灯りを受けて明るめになってしまっている。それでも上空の星はかなりクッキリと見えて、いろいろな星雲や星団を楽しむことができた。もちろん流れ星もいくつか目撃。360度の広い空で流星群を眺めたら最高だろう。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO/ISO1600/7mm/F2.8開放/60秒/LEEソフトフィルターNo.3使用/ビクセン・ポラリエで追尾撮影

『月面(月齢6.6)』
赤道儀に搭載した超望遠レンズで月をクローズアップ。気流の乱れの影響で月の輪郭やクレーターなどがぼやけてしまった。冬になると大気の透明度が良くなってキラキラと星がきれいに見えるが、キラキラする星の瞬きはこの気流の乱れが原因なのだ。取材当日は21時43分の月没。その後は満天の星空となり、さまざまな天体の観望を楽しんだ。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II/KOWA PROMINAR 500mm F5.6 FL マウントアダプター TX17 使用(850mm F9.6)/ISO800/F9.6/1/60秒

『アンドロメダ銀河M31』
天体写真ファンに大人気のアンドロメダ銀河。地球からの距離は230万光年。月を5〜6個ほど並べた大きさに見える。肉眼で見ることのできる最も遠い天体だ。もちろんツインリンクもてぎでも簡単に見つけられ、14倍双眼鏡では視野いっぱいに広がる楕円形の光を堪能した。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO/ISO2500/F2.8開放/60秒×16コマ加算平均/ユニテックSWAT-350で追尾撮影

『おうし座のプレアデス星団M45(すばる)』
目のいい人なら肉眼でも5〜6個ほどの星が数えられるプレアデス星団。写真に撮ると、星団を包む青い星雲が写ってとても美しい。私の眼は高校生の頃に11個の星を数えたが、今ではボ〜ッとした光の固まりにしか見えない……(涙)
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO 1.4×テレコンバーター MC-14 使用(210mm F4.0)/ISO3200/F4開放/90秒×10コマ加算平均/ユニテックSWAT-350で追尾撮影

『オリオン座三ツ星と大星雲M42、馬頭星雲、M78星雲』
オリオン座「三ツ星」の下に縦に並ぶ「小三ツ星」。真ん中のオリオン大星雲M42は肉眼でも双眼鏡でも望遠鏡でも、それぞれに楽しめる。三ツ星の左下のζ(ゼータ)星アルニタクの下に見える赤い星雲の中に天文台の写真で有名な馬頭星雲がある。画面左上の白っぽい星雲がM78星雲(ウルトラの星?)だ。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II/M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO/ISO3200/F3.2/60秒×18コマ加算平均/ユニテックSWAT-350で追尾撮影

冬の星空をツインリンクもてぎで

これからの季節、太平洋側の地域では透明度の良い晴天の日が続く。最高に星空の美しく見えるシーズンだ。冬の星空は華やかで、見どころもたくさんある。12月には「ふたご座流星群」、1月初頭には「しぶんぎ座流星群」もあり、撮影も観望もめいっぱい楽しみたい。

今回、初めてツインリンクもてぎで星空撮影をしてきたが、思った以上に星空を楽しむのに適した場所だということがわかった。それに東京からだとクルマで約2時間という距離で、意外とアクセスも良い。

レーシングコースで星を眺めるという非日常感覚も独特で面白かったが、そうでなくても、星空を撮影したり観望したりするのに適した条件を備えている。ツインリンクもてぎでは、人気のグランピングを核にして冬の星空を楽しむプランも展開していくとのこと。詳しくはホームページなどで確認して欲しいが、ファミリーで、あるいは星好きグループで星空を満喫したいという方々には特におすすめできる。「森と星空のキャンプヴィレッジ」を利用してワイワイと星空を撮ったり眺めたりするのは、とても楽しい時間になりそうだ。

制作協力:株式会社モビリティランド

飯島裕

1958年埼玉県生まれ。1969年のアポロ11号月面着陸の際、はじめて天体望遠鏡で月を見て天文の面白さにはまったアポロ世代。大学卒業後、広告制作会社のカメラマンに。1986年からフリーの写真家として独立。現在はおもに広告、雑誌、書籍などの写真を撮影。科学関係雑誌や天文情報誌などには執筆も行ない、国立天文台の広報関係の撮影も担当している。科学的な天体写真をベースに表現性も付加した、いわゆる星景写真に早くから取り組む。