ギター・マガジンが本気で教える こだわりの愛器撮影テクニック

最終回:カッコよくムーディにギターの魅力を引き出す

曲線美を表現する半逆光のライティング

本連載は、インプレスグループのリットーミュージック新刊「ギター・マガジンが本気で教える こだわりの愛器撮影テクニック」の一部内容を紹介します。なお、Webページ化にあたり一部を編集・再構成しています。(デジカメ Watch編集部)

完成写真:Fender Custom Shop(2013年)1963 Jazzmaster NOS(3 color Sunburst)

Nikon D810 / AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR / 60mm / F13 / 1/60秒 / ISO100 / WB:マニュアル

今回は反射の少ない黒布が舞台です。そこへジャズマスターの定番=1963年型/サンバーストのリイシュー・モデルを置き、オフセット・ウエスト・ボディの曲線美を表現することがテーマ。色味やディテールを多少犠牲にしても、とにかく楽器としてのシルエットをカッコよく見せたい!……ということで、半逆光の2灯ライティングに挑戦してみました。

POINT

  • 1:ボディ両サイドのエッジを引き立てるハイライト。
  • 2:ローキー調によってディテールを排したボディ・トップの表現。
  • 3:真っ暗に落とし込んだ黒布による背景。

STEP1:ストレートな左斜め上のソフトボックス・ライト

まずはノーマルなギター・スタンドに立てたギターを、黒い布背景から約70~80cmの距離に配置。左斜め上からのソフトボックス・ライトで、ストレートに撮ってみましょう。

布製の背景は紙のような反射が少なく、この状態でも十分に暗く落ち込んでいます。それ自体は狙いどおりなのですが、ボディ・エッジのカラーリングも黒いために、ギターが背景に溶け込むような見え方になってしまったことが難点です。

STEP2:サイド光とレフ板でエッジにハイライトを加える

ボディが背景に溶けてしまうのを回避するためには、ボディ・エッジにハイライトを入れるのも一案でしょう。そこでライトを左サイドに回し、かつ高さもボディの位置に合わせて少し下げました。さらに1弦側にはレフ板を入れてシャドーを起こし、こちらもなるべく背景との境界をはっきりさせるよう試みます。

連載第1回で紹介した製品写真風と同じように、ソフトボックスとギターの間にディフューザーを入れれば6弦側のエッジ・ラインもキレイにつながってくるはず……ですが、ここはもっと別の方法で曲線美だけを強調したいところです。

STEP3:左側のライトを半逆光気味に配置

というわけで、右側のレフ板はそのままに、ライトを思い切ってギターよりも後方に回し、かつスタンドから外した床置き状態で、ギターに対して半逆光になるように配置しました(A)。

撮影の状況:A

ただし、それだと逆光がカメラに入り込んでハレーションを起こすため、ライトの手前にカポックを置いて光を遮ります(B)。そのうえで絞りを絞り込みつつ光量も落とし、ギターのシルエットだけを生かした表現を狙います。どうでしょう? ライトを低くしたことでエッジのハイライトがキレイにつながり、露出を切り詰めたことでボディ・ラインが浮き立ってきました。

撮影の状況:B

STEP4:右側にも半逆光のライトを追加

STEP3では1弦側ボディ・エッジをレフ板で起こしましたが、それでは明度が足りない印象だったので、左と同じようにソフトボックス・ライトを設置しました(A)。こちらも同じく、ハレーションを抑えるためのカポックをライトの手前に置きます(B)。

撮影の状況:A
撮影の状況:B

例では180×90cmのカポックを用いていますが、光を遮れればもっと小さいものでかまいません。さらに、STEP3では沈みすぎていた金属パーツ(おもにフローティング・トレモロ)を起こすべく、ギター手前にグレーのカポックを写し込んだのがこの例です。シルエット的な表現としては、これもOKテイクでしょう。

完成:露出コントロールでボディの見栄えを調整

完成写真(冒頭と同じ)

STEP4も良い具合ですが、もう少しだけボディの様子が見えるカットも欲しくて、完成写真は1段ほど絞りを開けて明るくしてみました。半逆光の2灯ライティングによるボディの曲線美はそのままに、特徴的なピックガードのエッジにもハイライトが表われて形状が明確になり、個性的なシングルコイル・ピックアップやフローティング・トレモロの雰囲気も伝わりやすくなりました。ちなみに、ギター手前のグレー・カポックはここでは用いていません。

STEP4もこのカットもどちらが正解というわけではありませんから、自分がカッコいいと思える露出のポイントを選んでください。

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著者:田坂圭 撮影/監修:菊地英二、星野俊

田坂圭(たさかけい)。1974年生まれ。ギター・マガジン編集部、ベース・マガジン編集部/編集長を経て、2014年に独立。企画プランニング/ディレクションを始め、写真撮影やコピーライティング、音楽&楽器関連の取材・執筆等もさまざま手がけている。愛用カメラはニコンD810/D7200/FM3A。好きなギターはフェンダー・テレ&ローズ指板のストラト。できればエレキも指だけで弾きたいと思いつつも最近サムピックを導入して苦戦中。