新製品レビュー
キヤノンPowerShot G7 X(機能編)
堅実な作り込みを感じるキヤノン初の1型コンパクト
河田一規(2014/10/8 13:12)
比較的低価格な普通のコンパクトデジカメの売り上げが壊滅的になってしまったのを受け、メーカー各社はより利益率の高い、付加価値を持ったコンパクトデジカメの開発にリソースを割いているのは皆様ご存じの通り。
高倍率ズーム系や水中使用もOKなタフネス系、そして大きめ撮像素子を搭載した高性能系など昔からあるカテゴリーだが、そういった付加価値を持つコンデジの競争が激化している。
キヤノンPowerShot G7 X(以下G7X)は同社がプレミアムシリーズと位置づけるPowerShotシリーズの一員で、ラインナップ的にはシリーズ最上位機種であるPowerShot G1 X Mark II(以下G1X MkII)の下位モデルとなる。
仕様についてはすでに何度か記事になっているが、一応おさらいしておこう。
搭載する撮像素子は有効2,020万画素の1型CMOSセンサーで、それに組み合わされる画像処理エンジンはDIGIC 6。G1X MkIIの1.5型には及ばないが、PowerShot G16などが搭載する1/1.7型に比べると、約2.7倍の面積を持つ。
搭載レンズは24-100mm相当(35mm判換算)の光学4.2倍ズームで、開放値がF1.8-2.8とズーム全域で明るいのが特長。光学式の手ブレ補正機構を備え、NDフィルターも内蔵している。
最短撮影距離はズーム域によって異なり、広角端では5cm、望遠端では40cmとなる。設定可能感度はISO125-12800。動画は1080/60PのフルHD。
精悍なデザイン
撮像素子の大きさなど、構成デバイス的にはソニーのサイバーショットDSC-RX100(初代、以下RX100)に近いが、G7Xの方が広角側のズーム倍率が高く(RX100は28-100mm相当)、F値も明るい(RX100は1.8-4.9)。この影響もあってか、大きさは3ディメンションともG7Xの方がやや大きく(RX100は101.6×58.1×35.9mm、G7Xは103×60.4×40.4mm)、重い(RX100は240g、G7Xは304g。共に電池とメディア込み時)が、1型撮像素子と明るい4.2倍ズームを搭載していることを考えれば十分に小型軽量といえる大きさ・重さだ。
外装の質感は好感を持てるもので、ボディ下部のレザートーンぽい仕上げはこのカメラの性格にマッチしていると思う。ボディ前側にグリップはないが、背面親指位置にある控えめなフィンガーグリップが功を奏してホールディングは決して悪くない。
オーソドックスで分かりやすい操作系
操作系はボタン配置を含めて比較的オーソドックス。特に独自のお作法などもなく、取説をそれほど熟読しなくても、ほとんどの操作を行なえるタイプだ。
最近の高性能コンパクトデジカメではもはや必須の装備となった感のあるレンズ基部のコントローラーリングだが、デフォルトの「STD」ではプログラムAE時にはISO感度、Av時には絞り値、Tv時にはシャッター速度といったように、モードごとにコントローラーリングの機能が変化する。
もちろん、コントローラーリングに他の機能を割り当てることも可能。たとえば「ZOOM」を割り当てた場合はステップズームとなり、1クリックごとに24mm・28mm・35mm・50mm・85mm・100mm相当に変化する。しかも、この場合は電源を切ったときのズーム位置を記憶しているため、たとえば100mm位置で撮影した後に電源を切った場合、次回使用時は電源ON後ただちに100mm位置に自動的にズームする。
これなら「基本的にはなるべく50mm相当で撮りたい」といった単焦点派の人も使いやすいし、撮影中にズーミングしなければずっとズーム位置固定の単焦点感覚で使うことも可能だ。
AFはCIPA準拠で0.14秒という高速性を誇り、実使用でもAF速度に不満を持つことはなかった。ただし、マクロに切り替えた場合、遠景には一切合焦しなくなる仕様はちょっと不便。多少時間がかかってもよいから、マクロモードのまま遠景にもピントが合うようにしてほしかった。
メニューの操作レスポンスは良好で、十字キーで素早く操作しても十分に追従してくれる。またメニュー操作はタッチでも可能だが、メニューのUIがタッチ操作には最適化されていない旧来と同様のもののためか、どちらかというと十字キー+セットキーの方がレスポンス、確実性共に上だ。
タッチ操作はAF位置の指定ももちろん可能。タッチシャッターも可能だが、こちらは単独でオフにすることもできる。このあたりの操作ロジックはこなれた感じで使いやすい。
液晶モニターは“セルフィー”対応
G7Xの液晶モニターは3型TFTの約104万ドット。アスペクト比は3:2だ。チルト式で、可動範囲は約180度あるため、グルりと立ち上げれば表示面がレンズ側になって自分撮りがやりやすくなる。他社のチルト式では2カ所のヒンジを持ったZ型に引き出す形式のものが多いけれど、G7Xの場合は上側ヒンジ1カ所だけのきわめてシンプルな形式。Z型だとちょっとチルトさせたいときにいったん手前方向へ引き出した後にチルトさせなければならないのに対し、G7Xなら何も考えずにチルトするだけ。機構も使い勝手もきわめてシンプルだ。
ただし、そのシンプルさと引き替えに、下方へのチルトは行えず、カメラを頭上にかかげてハイアングルで撮影したいときは液晶の視野角頼りになってしまう。アジア圏を含めた現在のセルフィー(自分撮り)ブームを考えると、ハイアングルの利便性は捨てても自撮りを優先したこの構造は十分「アリ」だと思う。
まとめ
1型撮像素子を搭載した高性能コンパクトはソニーRX100シリーズがすでにあるので、特別新鮮な印象はない。仕様的にも手堅くまとめられた感じで、特に飛び道具的な機能は付加されていない。ただし、それだけに真面目で実直なカメラに仕上がっているのではないかと思う。
次回は高感度性能を含め、実写でいろいろと検証してみたい。