新製品レビュー

キヤノンPowerShot G7 X(実写編)

1インチセンサーらしい高画質。内蔵NDフィルターの出番も多い

 前回の「機能編」に続いて、キヤノンPowerShot G7 X(以下G7 X)の「実写編」をお届けする。

 G7 Xはいわゆる高級コンデジにカテゴライズされる機種で、撮像素子は有効2,020万画素の1型CMOSセンサーを搭載。画像処理エンジンは最新のDIGIC 6。設定可能なISO感度はISO125〜12800。動画は1,080pのフルHDで、60fpsも可能。35mm判換算で24〜100mm相当となる4.2倍ズームはF1.8〜2.8とズーム全域で一定以上の明るさを維持している。

解像力

 広角端と望遠端のそれぞれ絞りごとの解像力の変化を見てみた。

 まずは広角端だが、解像感は絞り開放から良好で周辺部の像流れなどもよく抑えられている。絞りF2.8〜F4で見た目の解像力は最良となり、F5.6ではほんのわずかだが回折による解像低下が感じられ、F8以降は絞れば絞るほど解像力は落ちる。

 コンデジとしては大きめの1型撮像素子を搭載しているとはいえ、広角端24mm時の実焦点距離は8.8mmと短いため、F4でも被写界深度は十分に深い。なるべく高画質を維持したいのであれば(なおかつ露出設定的に許されるのであれば)F5.6以上に絞り込まない方が良さそうだ。

 一方、望遠端は絞り開放のF2.8でも水準以上の解像力だが、一段絞ってF4にすると輪郭のコントラストがピシッと上がって、よりシャープネスの高い描写になる。こちらもF4〜F5.6あたりで解像力は最大となり(画面中央部だけ見るとF5.6よりF4の方が微妙に解像は上のようだが、周辺部はF5.6の方がいい)、F8以降は回折の影響で解像感は低下していく。

 なお、解像力の実写は絞り開放気味での露出オーバーを防ぐため、内蔵のNDフィルターを使用した。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
広角端
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
望遠端
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F2.8
F4
F5.6
F8
F11

感度別画質

 設定可能な感度はISO125〜12800。1/3ステップで設定できる。また、ISOオート時の最高感度はISO400〜12800で、こちらは1段ステップで設定可能。ISOオート時の感度の上がり方も「標準」「早め」「遅め」から選択可能。

 ノイズリダクションの効き具合は撮影メニューの「高感度時NR」で「標準」「弱」「強」の3段階から選択可能。今回はデフォルト設定である「標準」で撮影した。

 結果はご覧の通りで、当然ながら感度上昇に伴ってノイズ量は増えていくのだが、増えるノイズは輝度ノイズ主体でカラーノイズはかなりよく抑えられている印象だ。また、特定の感度から急激にノイズが増えてしまう感じではなく、感度上昇に伴ってノイズ量もリニアに増えていくタイプである。

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
ISO125
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
ISO125
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

 ノイズリダクションによるディテール損失はあるものの、どちらかというとノイズを許容しつつ解像感はキープするチューニングになっていると思う。屋外、屋内ともにホワイトバランスはオートで撮影したが、感度が変わっても色味変化があまり感じられない点も好印象だ。

最短撮影

 最短撮影距離はズーム位置によって異なり、広角端ではレンズ前から5cm、望遠端では40cm。

 同じ被写体を広角端、望遠端のそれぞれで撮影した結果はご覧の通りで、この点はさすがに1/1.7型等の小サイズ撮像素子機に比べると物足りなさを感じる。特に望遠側ではもうちょい寄れたらと正直思うレベル。ただ、1型という大きめな撮像素子を搭載し、それに伴うレンズの実焦点距離を考えると、スペック的には納得できる範囲内ではある。

 なお、こうしたズーム搭載コンパクト機の常で広角端でのマクロ撮影では周辺は像流れが生じるが、それはG7 Xでも確実に発生しボケも乱される。

広角端。1/1000秒 / F4 / ISO125 / プログラム / 8.8mm
望遠端。1/640秒 / F4 / ISO125 / プログラム / 36.8mm

 あと、「機能編」では「マクロに切り替えた場合、遠景には一切合焦しなくなる仕様はちょっと不便。多少時間がかかってもよいから、マクロモードのまま遠景にもピントが合うようにしてほしかった」と書いてしまったが、これは筆者の早とちりだった。

 仕様をよく確認してみると、G7 Xでは標準モードのままでも最短のマクロ域まで合焦する仕組みで、マクロモードはマクロ撮影時に遠景へのAFスキャンを無くすことで合焦を速めるためにある。つまりマクロモードのまま遠景まで合焦してしまってはマクロモードの意味がなくなってしまうわけだ。訂正させていただき、お詫びします。

マイカラー

 EOSシリーズのようなピクチャースタイルは搭載されていないが、その代わりに基本的な色味傾向を変える「マイカラー」機能が入っている。プリセットは固定で微調整などは行えないが、「C:カスタムカラー」のみコントラストやシャープネス、色の濃さ、RGB各色の強さ、肌色などを個別に調整できる。

マイカラーOFF
くっきりカラ
すっきりカラー
セピア
白黒
ポジフィルムカラー
色白肌
褐色肌
あざやかブルー
あざやかグリーン
あざやかレッド
カスタムカラー

NDフィルター

 G7 XではF1.8の絞り開放でもレンズシャッターとしては高速な1/2,000秒が切れるのだが、明るいシーンではそれでも露出オーバーになってしまうことがままある。

 そこで便利なのが内蔵のNDフィルターだ。これを活用すれば約3段分の減光が可能になり、明るいシーンでも絞り開放で撮影できる可能性が広がる。

NDフィルターOFF。シャッター速度が上限に達し、露出オーバーになった。1/2,000秒 / F1.8 / ISO125 / 絞り優先AE / 8.8mm
NDフィルターON。適正露出で撮影できた。1/800秒 / F1.8 / ISO125 / 絞り優先AE / 8.8mm

動画

 動画はフルHD/60p、フルHD30p、HD/30p、VGA/30pから選択可能。音声はもちろんステレオで風切り音を低減する「ウインドカット」のON/OFFも可能だ。マイカラーやNDフィルターの使用も可能。絞りとシャッター速度をマニュアル設定することもできる。サンプルはいずれもフルHD/60p。



シャッター速度1/30秒で。



MFに切り替えて思い切りアウトフォーカスにし、電飾アクセサリーをアンビエントな雰囲気で。

まとめ

 機能編でも書いたとおり、目立った機能は何もないが、質実剛健というか、真面目で実直なカメラという印象は撮影してみても強く感じられた。解像感や高感度画質は良好だし、画質的な満足度は高い。

 電池の持ちもなかなか良好で、エコモードでない標準モードではストロボを全く使わない状態で305枚撮影した時点で電池マークが赤く点滅開始。翌日さらに100枚撮ったところで電池が切れてシャットダウン(レンズは自動的に格納される)した。あの小さい電池で1型撮像素子のカメラがこれだけ撮れればOKだろう。

 ただ、仕様的にちょっと不便だなと思ったのは、マイカラーや暗部補正、Dレンジ補正、高感度時NRといった各種機能がJPEG時だけにしか選択・適用できないこと。こうした機能がRAWに適用できないのはもちろんいいのだが、RAW+JPEG時のJPEGに適用されないのが残念なのだ。たとえばマイカラーで特殊な色味を選択していても、それとは別にRAWで「ノーマル」の描写がキープできれば、もっと積極的にマイカラーを活用できるはず。

 他社ではRAW+JPEG時に各種エフェクトフィルターなどが選択でき、JPEG画像のみに適用される仕様のカメラもあるので、G7 Xもぜひそうしてほしかった。このクラスのユーザーだと、RAW+JPEGの使用率が高いと思うのだ。

 といったように細かい部分での不満はあるものの、基本的にはとてもいいカメラに仕上がっている。筆者は今回のレビューで気に入り、思わず購入してしまった。

作品集

水準器を表示できるので、こうした撮影も難なく行える。ただ、水準器は表示が小さめなので画像にあまりカブらないのがいい感じだが、デザイン的にちょっと判断しにくい。1/1,250秒 / F6.3 / ISO125 / プログラム / 8.8mm
描写はズーム域を問わず安定している。AFも速くて基本的な使い勝手は良好。1/1,250秒 / F4 / ISO125 / プログラム / 36.8mm
マイカラーのポジフィルムカラーは空色の発色もよく、高彩度系のモードとしては秀逸な色再現。本文にも書いたが、RAW+JPEG時にマイカラーが適用できるようになれば使いやすいのだが。1/1,250秒 / F4.5 / ISO125 / プログラム / 8.8mm
Rを強めて撮影したが、あまり飽和していないのはさすが。1/200秒 / F4 / ISO125 / プログラム / 13.3mm
ピントはマクロでも遠景でも安定していて、外すことはほとんどなかった。1/60秒 / F4 / ISO125 / プログラム / 8.8mm
ホワイトバランスの微調整も可能で、これは青みを強めて撮影。1/3秒 / F4 / ISO200 / 絞り優先AE / 32.9mm
NDフィルターは明るいシーンだけでなく、夜景で露光時間を長くしたいときにも役立つ。25秒 / F8 / ISO200 / マニュアル / 33.6mm
こちらもNDフィルターを使用。過度に絞り込まずにすむのでシャープさを確保できる。25秒 / F8 / ISO200 / マニュアル / 14.5mm

河田一規

(かわだ かずのり)1961年、神奈川県横浜市生まれ。結婚式場のスタッフカメラマン、写真家助手を経て1997年よりフリー。雑誌等での人物撮影の他、写真雑誌にハウツー記事、カメラ・レンズのレビュー記事を執筆中。クラカメからデジタルまでカメラなら何でも好き。ライカは80年代後半から愛用し、現在も銀塩・デジタルを問わず撮影に持ち出している。