新製品レビュー
キヤノンEOS M2
小型軽量化とAF高速化を果たしたミラーレスEOS第2弾
Reported by 北村智史(2014/1/10 08:00)
キヤノン初のミラーレスカメラ「EOS M」に改良を加えたニューモデル。従来よりも位相差検出AFのエリアが広いハイブリッドCMOS AF IIを搭載。スピードアップもはかっている。無線LAN機能も内蔵したほか、わずかながら小型軽量化も達成している。
ボディカラーはブラックとホワイトの2色(先代のEOS Mにはレッド、シルバー、ベイブルーを含む5色があった)。大手量販店の店頭価格は、原稿執筆時点で、ボディ単体(ブラックのみ)が6万4,800円、EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STMとスピードライト90EX付きのレンズキットが8万4,800円、EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STMとEF-M 22mm F2 STM、スピードライト90EX、マウントアダプターEF-EOS Mが同梱のダブルレンズキットは9万6,900円、さらに広角ズームのEF-M 11-22mm F4-5.6 IS STMもセットされたトリプルレンズキットが13万4,800円となっている。
従来より小さく軽く
見た目は初代とほとんど変わらない。モードダイヤルのポジションがひとつ増えたのと、内蔵マイクが上面から前面に移動したほかは、リモコン受光部の形状が少し変わっているぐらいだ。
しかし、シャッターユニットやCMOSパッケージ、セルフクリーニングセンサーユニットなどの小型化をはかったことで、ボディサイズは、初代と比べて幅3.7mm、高さ1.3mm、奥行き0.7mm小さくなり、24g軽くなっている。数字としてはわずかだが、もとが小さいだけに削るのは容易ではなかったはずだ。当然、外装も新規に型を起こしているから、コストもかかっている。
撮像素子は有効1,800万画素のCMOSセンサーで、数字としては先代のEOS Mと同じ。画像処理を受け持つ映像エンジンもDIGIC 5のままだ。静止画撮影時のISO感度の設定範囲は常用でISO100からISO12,800まで。機能設定メニュー4の「カスタム機能(C.Fn)」の「ISO感度拡張」をオンにすると、H(ISO25,600相当)までとなる(動画撮影時は高感度側が1段低くなる)。感度の設定ステップは1段刻み。
気になるAF速度は?
AFまわりは、EOS Kiss X7のライブビュー時とほぼ同じ。残念ながらデュアルピクセルCMOS AFの採用は見送られた(コストがかなり高いらしい)。とはいえ、位相差検出AFが可能なエリアがぐっと広くなったのはうれしい点。先代は画面中央部の横38%×26%のエリアだけが位相差検出AFが可能で、周辺部ではピント合わせにもたつく印象があった。対して、本機はそれが縦80%×横80%に広がっている。画面の端のほうでもスムーズにピントが合ってくれるのは気持ちがいい。
また、AFスピードも改善された。同社のウェブサイトによれば、ファームウェアアップデート後の先代の約2.3倍(最大)とのことだが、体感的な差はそれよりは小さい。
先代で気になっていたブラックアウトが、大幅に短縮されたところも注目したい点。先代は、シャッターを切った直後、1秒以上も画面が真っ暗になって、少々落ち着かない気分になったものだが(ブラックアウト後にようやくポストビューが表示される)、本機はごく短いブラックアウトはあるものの、すぐにポストビューに切り替わってくれる。
撮影メニュー1の「撮影画像の確認時間」をオフにすると、ブラックアウトはなくなるものの、かわりに1秒ちょっと画面がフリーズする。それでも、なにも見えない状態になるよりは、精神的にはずっといいし、真っ暗な画面から急に明るくなるという視覚的ショックがないのがありがたい。
AFスピードの比較
先代のEOS Mと、ライブ多点AF、ライブ1点AF、タッチシャッターのそれぞれでスピードを比較してみた。先代もファームウェアアップデート前に比べてずいぶん速くなったが、見比べると本機のほうがワンテンポ速くなっているのがわかる。タッチシャッターのみ、実際に撮影を行なっているが、本機はシャッターが切れたあとのブラックアウトがない(かわりに画面がフリーズしているのだが、真っ暗になるよりはいい)。ライブ多点AF
ライブ1点AF
タッチシャッター
連写スピードは4.3コマ/秒から4.6コマ/秒にアップ(微妙にだが)。反面、RAWでの連写可能枚数は6枚から5枚に減っている(JPEGのラージ・ファインでUHS-I対応カードの場合は17枚で変化はない)。ただし、撮影メニュー2の「レンズ光学補正」で「色収差補正」をオンにすると、JPEGラージ・ファインで3枚、RAW+JPEGラージ・ファインにいたってはわずか2枚しか連写できない(なお、RAWのみの場合は、色収差補正オンでも5コマ撮れる)。
高速タイプのカードで1枚撮りなら書き込み待ちが発生するようなことはまずないが、連写ブラケットをやると3コマめでつっかえてしまう。エントリークラスのカメラには求めすぎかもしれないが、筆者個人としては、連写ブラケットを2セットやれるぐらいのバッファメモリーは積んで欲しいと思う(色収差補正の処理が重いからだという人もいるかもしれないが、ニコンは当たり前に全機種でやっているのだ)。
愚痴ついでに書いておくと、電源オフでAEB(自動段階露出)が強制的に解除させる仕様も止めて欲しい。ミラーレスカメラは節電と撮像素子の疲労を避けるためにこまめに電源をオフにしたいので、AEBの自動解除をキャンセルするカスタム機能があってしかるべきだと思う(上のクラスのカメラには搭載されている)。
記録メディアは、SD/SDHC/SDXCメモリーカード。実写での平均ファイルサイズは、JPEGラージ・ファインで約6.1MB、RAWが約23.8MBだった。電源は、容量875mAhのリチウムイオン電池「バッテリーパックLP-E12」(5,775円)で、充電器ともども先代から継承している。CIPA基準の撮影可能枚数は230枚。実写では、気温0度前後の条件で280枚ほど撮れた。大量撮影派には心もとない数字なので、予備のバッテリーは必須といえる。
気軽に使いたいエフェクト機能
新機能として「背景ぼかし設定」と「エフェクトショット」を搭載。どちらもクリエイティブオートモードで利用できる。
「背景ぼかし設定」は、モニター画面で背景などのボケ具合を確認しながら撮れるもので(カメラ慣れしている人ならおわかりと思うが、ようは初心者向けのプレビュー機能である)、ぼかし具合をレンズによって3から5段階に変えられる。
EF-M 22mm F2 STMならF2.8からF11までの5段階、EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STMやEF-M 11-22mm F4-5.6 IS STMの広角端ならF4からF11までの4段階、望遠端ならF5.6からF11までの3段階となる。十字キー外周のホイール状の電子ダイヤルを回すことで設定を変えられ、「ぼかしシミュレーション中」表示が出ているあいだは実絞りでのライブビューとなるため、好みに合ったボケ具合を選べるわけだ。
「エフェクトショット」は、1回のシャッターで指定したエフェクトを適用した画像と、標準的な設定の画像の2枚を生成するもの。ポストビューは2分割で表示され、エフェクトの有無による違いを見比べられるのがおもしろい。
対象となるエフェクトは、「ピクチャースタイル」が「ニュートラル」「ポートレート」「風景」「モノクロ」の4種類、「クリエイティブフィルター」は「ラフモノクロ」「ソフトフォーカス」「トイカメラ風」「ジオラマ風」「魚眼風」の5種類、「雰囲気を選んで撮影」は「くっきり鮮やかに」の1種類となる。ただし、「モノクロ」はパラメーター違いのバリエーションが6種類、「ポートレート」と「風景」は2種類ずつ、「トイカメラ風」は「色調」の異なる3種類があるなど(そのわりに「ソフトフォーカス」や「ラフモノクロ」は1種類ずつしかない)、全部で19種類からの選択となる。
エフェクトは、電子ダイヤルを回して選択するが、表示される順番がいまいちよくわからない。モノクロ(調色:ブルー)→トイカメラ風(色調:暖色)→風景→モノクロ(調色:パープル)→トイカメラ風(色調:標準)といったふうの、お行儀がよろしくないといいたくなるような並びになっているのだ。
また、一部のクリエイティブフィルターに対応してくれていないところも納得しづらい。どうせなら、クリエイティブフィルター使用時に、標準設定の画像も残す選択肢を用意して欲しかったと思う(あるいは、RAW同時記録を可能にするのでもいい)。が、それでも、エフェクトありとエフェクトなしの両方の画像が残せるので、失敗を気にせず、気軽にいろいろな表現にチャレンジできるのはいい。
リモート撮影はさらなる改善を
Wi-Fi機能の搭載も新しい。スマートフォンやタブレット端末と連携できるほか、カメラやプリンター(もちろん、対応している機種にかぎる)、Webサービスなどとも接続できる。ただし、パソコンとはつながってくれないらしい。スマートフォンやタブレット端末では、無料の「EOS Remote」アプリ(iOS、Android OS対応)を利用する。カメラ内の画像の表示や転送(画像は1,920×1,280ピクセルに縮小される)とリモート撮影が可能となっている。
リモート撮影の機能はあまり多くはない。撮影モードはカメラ側で設定したもので固定となり、アプリ側からの変更はできない。画面タップでAFフレーム(測距点)の位置変更、ダブルタップで拡大表示と全画面表示の切り替え、AFボタンでのAF作動(通常のAF動作に比べてかなりスピードは落ちる)が可能だ。露出まわりでは、ISO感度や露出補正(AE時のみ)、絞り(絞り優先AE、マニュアル露出時)、シャッター速度(シャッター優先AE、マニュアル露出時)の設定ができる。
撮影モードの変更をはじめ、例えば、AFとMFの切り替えや、セルフタイマーの設定などを変更するには、いったん接続を解除して、カメラ側で設定変更を行ない、再度接続しなおす必要がある。正直、かなり面倒くさい。もっと便利に改善されるべきだろう。が、全自動モード固定で露出補正もできないなんていうメーカー(どことはあえていわないが)もあるわけで、そういうのと比べれば圧倒的にマシだし、先に設定を終わらせてから接続するようにすればいいだけなので、十分に実用的だ。
順当な進化を評価したい
AFスピードの向上もあるが、位相差検出AFが可能なエリアが広くなったのは歓迎できる。中央部以外にAFエリアがあるときに、ピント合わせにもたつくのがなくなった分、撮影の快適度はアップしているといえる。中央でのライブ1点AFとフォーカスロックを組み合わせて使うのであれば、先代との差はあまり大きくはないが、先代のブラックアウトの長さが気になった人にはEOS M2のほうがおすすめできる。
新しい「背景ぼかし設定」や「エフェクトショット」に加えて、「Wi-Fi」機能が追加されたこともある。ミラーレスカメラ最後発(シグマも残ってるが)になってしまっただけに、もう少し強い一手が欲しかった感は否めないが、第2弾としてはまずまず順当な進化といえるだろう。
実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・感度
静止画撮影時の感度設定範囲は、常用でISO100からISO12800まで。感度拡張時はH(ISO25600相当)まで設定できる。ピクセル等倍で見ても画質劣化が気にならないのはISO800まで。ISO1600では若干ノイズ感が出てくるものの、十分に常用できる範囲だ。
ISO3200になると、ディテール再現の劣化が目に付くようになり、暗部の調子が悪くなる。ISO6400でもひどくざらつくようなことはなく、ディテールもよく残っている。とはいえ、大きなサイズのプリントには使いたくない画質だと感じる。
・背景ぼかし設定
「背景ぼかし設定」はクリエイティブオートモードで利用できる機能で、単純にいえば、絞りを変えて背景のボケ具合(被写界深度)を変えられる。「ぼかしシミュレーション中」は絞り込み状態となるので、背景や前景がどの程度ボケるのかを確認しながら撮ることができる。
クリエイティブオートモードでは、ISO感度、ホワイトバランスがオートで固定となるため、絞り込むほどに感度が上がっていくため、室内でのテーブルフォトなどは、なるべく明るい条件で撮影したい。また、ここでは「雰囲気を選んで撮影」を「暖かくやさしく」に設定している。
・エフェクトショット
「エフェクトショット」も、クリエイティブオートモードで利用できる機能で、1回のシャッターで標準設定の画像とエフェクトを適用した画像の2枚を残せるもの。やはり、ISO感度やホワイトバランスはオートで固定となる(「雰囲気」も適用できないので、「背景ぼかし」の作例とは色味が違っている)。
・クリエイティブフィルター
・作例