新製品レビュー
FUJIFILM X-M1
旬の機能をまとった小型ミラーレス
Reported by澤村徹(2013/7/17 08:00)
レンズ交換式の富士フイルムXシリーズに、3モデル目となるX-M1が登場した。既存のX-Pro1ならびにX-E1とくらべ、EVFを省略することでコンパクトにまとめたミラーレス機だ。
基本的な位置づけはエントリーモデルとなる。しかしながら、イメージセンサーは上位機種同等のローパスレス仕様で、画質に妥協はない。しかも旬の機能をふんだんに盛り込み、ワンクラス上のエントリーモデルに仕上がっている。カラーはブラック、シルバー、ブラウン。発売は7月27日(9月発売のボディ単体およびブラウンを除く)。店頭予想価格はXC 16-50mm付きのレンズキットが8万5,000円前後、XF 27mmも加えたダブルレンズキットが10万円前後。
X-M1最大の特徴は、コンパクトミラーレスという点だ。デザインならびにサイズ感は、同社のコンパクトデジタルカメラ「FUJIFILM X20」に近い。X-Pro1はEVFとOVFのハイブリッドである「ハイブリッドマルチビューファインダー」を、X-E1はEVFを搭載しているが、このX-M1はそうしたEVFなどを搭載せず、そのぶんボディを小型軽量化している。また、本機の発売に合わせ、キットレンズの標準ズーム「XC 16-50mm F3.5-5.6 OIS」、パンケーキレンズ「XF 27mm F2.8」が登場した。携行性重視のミラーレス機という位置づけが明確に感じられる展開だ。
一方、画質面は既存モデルと同等のクオリティだ。イメージセンサーはAPS-Cサイズ1,630万画素のX-Trans CMOSセンサーを採用しており、これはX-Pro1ならびにX-E1と同じものだ。ローパスレスのイメージセンサーが映し出す、解像感の高い画像はすでに実証済みである。画像エンジンはX20が採用しているEXR Processor IIを搭載し、起動時間0.5秒、シャッタータイムラグ0.05秒といったハイレスポンスな動作を実現する。カメラの心臓部に関しては、X-Pro1、X-E1、X-M1はほぼ横並びというわけだ。
むろん、いずれより高画質なX-Pro1の後継機などが登場するだろうが、現時点においては3モデルとも同等の画質が得られる。これはX-M1を選択する際、大きな安心感につながるだろう。
機能面ではWi-Fi搭載が注目ポイントだ。スマートフォン、タブレット、パソコンなどとワイヤレスで連携できる。ただし、事前に専用アプリのインストールが必要だ。カメラ内の画像をスマートフォンに転送するFUJIFILM Camera Application、転送した画像をSNSにアップロードするFUJIFILM Photo Receiver、そしてパソコンに画像転送するPC AutoSaveが用意されている。用途に応じて使い分けできるのが便利だ。
連携の流れを簡単に説明しよう。まずスマートフォンとの連携からだ。カメラ側で撮影画像を再生し、軍艦部のWi-Fiボタンを押す。ワイヤレス送信メニューがあらわれるので、ここで作業内容を選択しよう。これでカメラ側が接続待機状態になる。次はスマートフォン側の操作だ。iPhoneを例にとると、設定メニューのWi-Fiネットワークで接続先としてX-M1を選択する。その上でアプリを起動し、画像のダウンロードやカメラ内の画像閲覧を行なうという流れだ。
最近のスナップでは、カメラで撮ったあとにスマートフォンで撮り直し、SNSにアップロードするという場面が多々ある。X-M1なら取り直しの手間がなく、スマートフォンに画像転送してそのままSNSにアップロードできるわけだ。カメラとスマートフォンを交互に操作するのがちょっと手間だが、出先ですみやかにSNSにアップロードできるのは、やはりWi-Fi搭載の大きな恩恵といえるだろう。
パソコンとの連携はもう少しシンプルだ。専用ソフトをインストールしたあと、カメラとの通信、ダウンロードした画像の保存先を設定する。これは初回のみの作業だ。あとはカメラ上で画像を表示し、カメラのWi-Fiボタンを押してワイヤレス設定メニューの「PC保存」を選ぶだけでよい。これで選択した画像をパソコンのハードディスクに転送してくれる。ただし、1枚の画像転送にそれなりに時間を要するので、撮影画像をすべて転送するような使い方には不向きだ。ピンポイントで数枚を転送するのが基本的な使い方になるだろう。
操作面を見ていこう。コンパクトモデルは操作性を犠牲にしがちだが、X-M1はツインコマンドダイヤルで快適操作を実現している。軍艦部にひとつ、背面にもうひとつ、このふたつのコマンドダイヤルで、手際よく撮影パラメーターを変更できる。絞り優先AEを例にとると、軍艦部のコマンドダイヤルで露出補正、背面のコマンドダイヤルで絞り値が変更可能だ。また、モードダイヤルも近くにあり、親指だけでスピーディな操作が可能だろう。
本機はEVF未搭載だが、液晶モニターは約92万ドット3型と十分な大きさだ。この液晶モニターはチルトに対応しており、ハイアングル-85度、ローアングル+90度の範囲で可動する。チルト液晶モニターの採用は、レンズ交換式Xシリーズでは初めてだ。
モードダイヤルもX-Pro1とX-E1にはない、X-M1ならではの特徴だ。A/S/P/Mモードは当然として、アドバンストSRオート、アドバンストフィルター、SP(シーンポジション)モードなど、用途やスキルに合わせて多彩な撮影モードが選択できる。特にアドバンストSRオートは58の撮影シーンを認識し、自動的にカメラセッティングを最適化してくれる。このあたりから、X-M1がビギナー層を意識したカメラであることが伝わってくるだろう。
新型レンズにも触れておこう。今回登場したXC 16-50mm F3.5-5.6 OISとXF 27mm F2.8は、ともにXマウントレンズ初の絞りリングのないレンズだ。X-M1では背面のコマンドダイヤルで絞り操作を行なう。X-Pro1とX-E1については、本体をファームアップすることで本レンズの操作に対応する。この場合も背面のコマンドダイヤルで絞り操作が可能だ。
XC 16-50mm F3.5-5.6 OISは、典型的なキットレンズの標準ズームといったスペックだ。しかしながら、AFはスピーディーで、動作音がほとんどしない。実用性の高い標準ズームレンズだ。一方、XF 27mm F2.8はAF動作時の音が大きく、静粛性の求められるシーンでは気が引けそうだ。ただし、開放F2.8からシャープに写るので、開放近辺でボケを活かした絵づくりがしやすい。積極的に開放を使っていけるパンケーキレンズだ。
さて、富士フイルムのレンズ交換式カメラはX-M1の登場で3モデルとなった。X-Pro1はハイブリッドマルチビューファインダーを搭載したマニアックなモデル、X-E1はEVFを内蔵したハイエンドモデル、そしてX-M1は小型軽量な旬の機能を盛り込んだオールラウンドモデルといった位置づけだ。三者三様のスタンスで、用途や好みに応じて選択しやすいラインナップだ。
端的に言うとX-M1はエントリーモデルに相当するが、前述の通り、3モデルともAPS-Cサイズ1,630万画素のX-Trans CMOSセンサーを搭載し、画質的な相違はない。純粋に機能性でカメラを選べるというわけだ。Wi-Fiとチルト液晶が気になるなら、X-Pro1のサブ機としてX-M1を追加購入という選択も考えられるだろう。これからの1台を探している人にとっても、さらにもう1台という人にとっても、X-M1は魅力的なモデルといえそうだ。