新製品レビュー
OLYMPUS PEN Lite E-PL6
新EVF対応など機能強化した新型PEN Lite
(2013/6/5 00:00)
今回レビューする本機はオリンパスPENシリーズの中級モデルであるOLYMPUS PEN Lite E-PL5の後継で、6月下旬の発売が予定されている。E-PL5は2012年10月発売なので、モデルチェンジのタイミングとしてはかなり早め。外観上の違いはあまりないし、撮像素子や画像処理エンジンも据え置きだが、ISO100相当のISO LOW設定が可能になったほか、高速レリーズタイムラグモード、インターバル撮影、タイムラプス動画などの新機能が盛り込まれている。
ボディカラーは、ホワイト、シルバー、レッド、ブラックの4色(E-PL5はレッドがない)。大手量販店の店頭価格は、ボディ単体が6万9,800円前後、標準ズームのM.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R付きのレンズキットが7万9,800円前後、望遠ズームのM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 Rも同梱のダブルズームキットが9万9,800円前後となっている。
E-PL5をおおむね継承。ISO100相当が追加
デザイン自体はE-PL5と変わりはない代わりに、部分的に色が変えられている。お借りしたホワイトは、着脱式のグリップの色がベージュからホワイトに変更。シャッターボタン外周のパーツもホワイトになった。ブラックは、マウントの出っ張っている部分の側面とシャッターボタンの外周パーツに赤色が使われていて、アクセントになっている。シルバーもブラックと同様のパーツの色がE-PL5と変えられている。
上面や背面の操作部のレイアウトも変更はない。自分撮り対応のチルト液晶モニターもそのまま継承。上向き170度から下向き65度までの可動範囲も同じで、自分撮りモード時に画面の下側が少し隠れてしまうところも変わっていない。
撮像素子は有効1,605万画素のLive MOSセンサー。画像処理を受け持つTruePic VIとの組み合わせも同じ。おおざっぱには、前モデルのE-PL5、上位機のOLYMPUS OM-D E-M5、E-PL6と同時発表のPENフラッグシップ機OLYMPUS PEN E-P5と画質面では同等と考えていい。センサーシフト式の手ブレ補正機構も内蔵している。補正量については公表されていないが、従来どおりの2軸補正のようだ(5軸補正なら誇らしげに書いてるだろうからね)。このあたりはE-M5やE-P5との差別化ポイントと言える。
E-PL5との違いとしては、ISO100相当のISO LOWが新設されたことがあげられる。もっとも、オリンパスも以前はISO100ベースだったし、フォーサーズのE-620まではISO100の設定も可能だった(拡張感度扱いだったが)。2011年1月発売のE-PL2から最低感度がISO200になり、ISO100の設定はなくなったのだが、本機と上位のE-P5から復活となったわけだ。
実写では、ISO200よりも高輝度側のダイナミックレンジが若干狭めで、少し早めに白飛びする傾向となる。代わりに若干ながらディテール再現がよくなる印象。まあ、予想どおりと言えば予想どおりの結果ではあるが、明るいシーンで明るいレンズの開放絞りが使いやすくなるのはありがたい。ただし、シャッター最高速は1/4,000秒のままなので、徹底して絞りを開きたい人にはトータルで2段分稼げるE-P5(ISO LOWと1/8,000秒で)のほうが有利となる。
記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード。実写での平均ファイルサイズはJPEGのLサイズ、ファイン画質で約6.63MB。4GBのカードでも600コマぐらい撮れるので、JPEGオンリーの人なら十分だろう。RAWでは平均約14.87MBだった。RAW+JPEGでブラケットを多用するような撮り方なら16GB以上の容量を用意したい。
電源はE-PL5と同じくリチウムイオン充電池のBLS-5を使用する。容量は1,150mAhで、CIPA基準の撮影可能コマ数は約360コマ。例によって、向きを間違えても奥のほうまで入ってしまう仕様(最後の2mmぐらいが入りきらない)。一応、電池/カードカバーの裏に注意喚起のためのイラストのシールが貼られているのだが、個人的にはバッテリーの底面にシールなどで目印を付けておくほうがずっと効果的だと思う。
新EVF対応など、気になる新要素も多数
新しく2軸式の電子水準器を内蔵。PEN Liteシリーズでは初となる。表示方法はE-P3やE-M5などと同じく、画面下側に左右方向、右側に前後方向の傾きをバーグラフで示すタイプ。水平になると白色から緑色に変わるので、被写体を見ていても水平のチェックがやりやすい。
最近は電子水準器が付いているカメラが増えてきているので、筆者の場合、水準器がないと逆に不安になってしまう(水準器依存症と言えるかもしれない)。そういう意味では本機はちょっとうれしいカメラである。
それから「高速レリーズタイムラグモード」も新しい機能。カスタムメニュー「C. レリーズ/連写」内の「レリーズタイムラグ」を「ショート」に切り替えると有効になり、シャッターボタン半押しからのタイムラグが0.045秒になるという。標準状態のタイムラグが公表されていないので、どれぐらい速くなるのかははっきりしないが、同社一眼レフのE-5が0.060秒、ニコンのプロ機であるD4が0.042秒(いずれも公称値、以下同)であるのを考えれば、かなり頑張っている数字と言えそうだ。
ただし、ソニーのNEX-7などは0.020秒だったりするから、上には上があると言ったところだろうか。なお、「ショート」にしていると撮影可能コマ数が約60コマ少なくなるとのこと。筆者などはレスポンスがいいと無条件でうれしくなってしまうたちなので、多少電池の持ちが悪くなっても「ショート」で常用したいと思う。
最大99コマまでのインターバル(タイマー)撮影機能もE-PL5にはなかったもの。「撮影メニュー2」の「インターバル撮影設定」をオンにして、さらに「コマ数(最大99コマ)」「撮影開始待ち時間(0秒から24時間59分59秒まで)」「撮影間隔(0秒から24時間59分59秒まで)」を設定できる。
おもしろいのは、撮った静止画からタイムラプス動画を生成できること。「インターバル撮影設定」の「タイムラプス動画」をオンにしておくと、インターバルタイマー撮影が終わると同時にタイムラプス動画を生成する処理がスタートする仕組み。1,280×720ピクセル・10fpsで最大10秒までという制約付きだが、その分気軽に楽しめるのではないかと思う。
それともうひとつ。本機やE-P5と同時に発表された電子ビューファインダーVF-4に対応したことも注目したいポイント。VF-4は従来のVF-2の後継と言えるモデルで、表示画素数は144万ドットから236万ドットに、ファインダー倍率も1.15倍から1.48倍にアップしている。新たにアイセンサーを内蔵していて、接眼部に顔を近づけると自動的にモニターからファインダーに切り替える機能を備えている(手動での切り替えも可能)。
サイズ的にはあまり変わってはいないのだが、アイカップ部分が大きいからか、とても大型化したような印象を受ける。重さは9.8g増えているものの、アイポイントも18mmから21mmに伸びているのだから、文句は言えない。
VF-4のファインダー像はとても高精細で、M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II Rの広角端でも、室内程度の近距離であればそこそこピントが見える。M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8などの明るい中望遠レンズなら、拡大表示なしでもマニュアルフォーカスでのピント合わせが楽しめる。派手さを抑えたナチュラルな見え方で(E-M5のEVFと同様のチューニングなのだろう)、コントラストは高すぎず、低すぎず。色の誇張もあまりなくて、長時間の使用でも目が疲れなさそうな印象を受けた。
ただ、アイセンサーが働くのは本機とE-P5だけで、E-P2やE-PL2、E-PL1s、E-PL1は解像度が落ちる(E-M5、E-PL5、E-PL3、E-PM2、E-PM1はばっちり解像度で見られるようだ)。また、カスタムメニュー「D. 表示/音/接続」の「フレームレート」を「高速」にしておくと、ファインダー像の解像度が低くなってしまう。ようは、レスポンスと高精細映像のどちらを重視するかを選ばないといけないと言うことらしい。ちょっと悩ましい選択である。
新機能が気になる人へ
正直なところ、前モデルから画質面の違いはないし、機能面の進化もそれほど大きくはない。言ってしまえばミもフタもないが、マイナーチェンジレベルじゃないか、との声も聞かれそうだ。が、筆者個人としては、ISO LOW設定や撮影タイムラグの短縮、新型のVF-4へのフル対応など見逃せないところもあり、こだわりを持ってカメラを選ぶ人には魅力的なカメラに仕上がっていると言える。
実写サンプル
- ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・ISO感度
感度の設定範囲は常用(拡張表示がない範囲)でISO200からISO5000。ISO6400からISO25600、新設のISO LOWは拡張扱いとなる。予想どおり、ISO LOWは高輝度側のダイナミックレンジが狭く、街灯の光が大きくなる。反面、ノイズはぐっと少なく、空の部分はすっきりと滑らかになるし、細かい部分の再現もよくなる。高感度側は、ピクセル等倍でも安心してみられるのはISO800までで、ISO1600もまずまず常用できそうな範囲。大きくプリントしないならISO6400でも使えなくはないかなぁ、と言うのが筆者個人の印象だ。
※共通データ:E-PL6 / M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 / 4,608×3,456 / 絞り優先AE / F5.6 / +0.7EV / WB:晴天 / 45mm(90mm相当)
・ピクチャーモード
画づくりモードは、以前からの仕上がり設定とアートフィルターをひとまとめにした「ピクチャーモード」を装備。仕上がり設定は6種類+カスタム、アートフィルターはバリエーションやエフェクトの組み合わせも含めると278種類(筆者が数え間違ってなければですが)。設定したピクチャーモードをひととおり(カスタム抜きで18コマ)撮れるアートフィルターブラケット機能も装備する。相変わらず「ジオラマ」は縦位置には対応してくれてない。
※共通データ:E-PL6 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 4,608×3,456 / 絞り優先AE / 1/400秒 / F3.5 / +1EV / ISO200 / WB:晴天 / 14mm(28mm相当)
・アスペクト比
設定できるアスペクト比は「4:3」「16:9」「3:2」「1:1」「3:4」の5種類。4:3比率の画面をトリミングするだけなので、ほかは画角が狭くなる。
※共通データ:E-PL6 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 絞り優先AE / 1/250秒 / F5.6 / +1EV / ISO200 / WB:晴天 / 14mm(28mm相当)
・作例
・動画
フルHD解像度の30p。最初だけ少しピントが外れているが、一度合わせてしまうとピントがふらつくことはなかった。E-PL6 / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 R / 1,920×1,080 / 30p / プログラムAE / ISOオート / 150mm(300mm相当)
・タイムラプス動画
こちらは再生時間が約10秒までという制約があるのが物足りないが、気軽に楽しむにはちょうどいいのかも。E-PL6 / M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R / 1,280×720 / 10fps / 絞り優先AE / F3.5 / 0.3EV / ISO800 / 14mm(28mm相当)