【新製品レビュー】オリンパスμTOUGH-6010

〜新機能「マジックフィルター」を搭載したタフネスデジカメ
Reported by 小山安博

 タフネス性能で定評のあるオリンパスのμTOUGHシリーズに、バリエーションモデル「μTOUGH-6010」が登場した。従来機種に比べて撮影の楽しさをプラスする機能を備え、タフネスだけではないデジカメに仕上がっている。

 発売は7月31日。価格はオープンプライス。実勢価格は3万5,000円前後。カラーバリエーションとして、ブルー、レッド、ダークグレーを用意する。


撮像素子が1,200万画素に

 基本スペックは、撮像素子が有効1,000万画素から1/2.33型有効1,200万画素に変わった以外は、姉妹機のμTOUGH-6000のスペックを踏襲している。

 レンズは35mm判換算28〜102mm相当の光学3.6倍ズームレンズを搭載。F値はF3.5〜F5.1といまどきのコンパクトデジタルカメラとしては一般的。手ブレ補正はCCDシフト方式で、画像処理エンジンはTruPic IIIを採用する。液晶は2.7型23万ドットのハイパークリスタルIII液晶である点も変わらない。

 最低ISO感度がμTOUGH-6000のISO50からISO64に変わっているが、最高ISO感度はISO1600で変わらない。ボディサイズも95.3×22.4×63.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量149gで変更はない。

 デザインに関しても変化はないが、カラーバリエーションはμTOUGH-6000にはなかったレッド、ブルー、ダークグレーの3色を用意。ブルーはμTOUGH-6000にもあるが、それとは異なりグリーンに近いブルーなので、μTOUGH-6000と6010を合わせて、合計7色の中から選択できるようになった、とも言えるかもしれない。

 鮮やかなカラーを中心としたμTOUGH-6010だが、ダークグレーはシックな印象もあって、「質実剛健」を求める人にはいいかもしれない。いずれも、表面に「スクラッチキュアコーティング」を施してあり、小さなすり傷が自然治癒するというのも特徴だ。

試用したのはレッド。ほか3色も含め、μTOUGH-6000より濃い目の色彩になった起動するとレンズバリアが開く従来通りの方式。安心感があり、むき出しよりもいい。レンズスペックはこれまで通り。デザインもほぼ同一
ボタンレイアウトなどもμTOUGH-6000から変わらない

 肝心のタフネス性能は従来通り。水中では水深3m・60分間まで対応し、1.5mまでの高さからの耐落下衝撃性能を備える。耐低温はマイナス10度まで。この時期なら海水浴に持ち込んでも安心して使えるし、冬ならゲレンデで使っても問題ない。

 水中撮影時に便利なシーンモードとして水中スナップ、水中ワイド、水中マクロ、水中ムービーの各モードが用意されている。水中ではホワイトバランスの設定などに注意が必要だが、自動でそれを設定してくれるので便利。上位モデルのμTOUGH-8000のように水中検知センサーはないので、水中用モードが優先的に表示されることはないが、大きな問題にはならないだろう。浜辺などではシーンモードのビーチ&スノーがおすすめだ。

水中用のシーンモードは4種類。ホワイトバランスなどが水中向けに設定されるメニューカラーは3種類から変更できる。水中っぽいカラーが涼しげ

 上位機種のμTOUGH-8000には及ばないものの、現行のタフネスデジカメとして十分な防塵防水・耐衝撃性能を備えているので、幅広いシーンで安心して利用できるのが強みだ。武骨なμTOUGH-8000と比べると豊富なカラバリも含め、女性にも持ちやすいデザインなので、より広範な人に勧められる。

楽しいマジックフィルター

 μTOUGH-6000とμTOUGH-6010のもっとも大きな違いは、新機能である「マジックフィルター」だ。これは、同社のレンズ交換式カメラ「E-30」、「E-620」、「E-P1」に搭載されている「アートフィルター」のコンパクトデジカメ版といえるものだ。

 マジックフィルターは、撮影時に画像処理を行ない、特殊効果を施した写真を生成してくれる機能。μTOUGH-6010独自のフィルターとして、輪郭を抽出して線画風にする「スケッチ」、対角魚眼レンズを使ったような歪曲を加える「フィッシュアイ」が用意されている。ほかに、カラーを強調する「ポップ」、周辺減光を加えてレトロな作風にする「ピンホール」は、それぞれアートフィルターにおける「ポップアート」、「トイフォト」に近い効果を実現してくれる。なお、スケッチだけは画像サイズが3M以下に設定される。

 利用する場合は、オート撮影モードにして、本体背面右下にある「OR(オリンパスレコメンド)」ボタンを押し、「マジックフィルター」を選択する。すると画面が4分割され、それぞれのフィルター効果が表示されるので、効果を確かめてフィルターを選択する。効果は液晶画面でリアルタイムに確認しながら撮影できる。

ORボタンを押すと4種類の機能を選択できる。マジックフィルターはデフォルトで選択されているので、そのままOKボタンを押せばいい4種類のフィルターを画面で見ながら選択できる。選択画面でもリアルタイムで効果が表示されるので分かりやすい

 撮影後は、画像に効果を適用するため少し待たされるが、結果はこれまでの画像にはない面白いものができあがる。マジックフィルター撮影中は、撮影設定の変更はできず、その直前まで設定していた設定が継承される。ISO感度や露出などを変更したい場合は、あらかじめ設定しておけばいい。一度フィルターを選択した場合、別のフィルターに変更する場合はMENUボタンで通常撮影モードに戻り、再びORボタンからマジックフィルターを選択しなければならない。モードダイヤルを回してもマジックフィルターは解除される。

標準の撮影時の画面マジックフィルターのフィッシュアイを選ぶと、リアルタイムで画面が変化する。戻るときはMENUボタンを押す。ほかのボタンは受け付けなくなるので、設定変更はできない

 このあたりの操作性については少々手間を感じる部分で、いちいちORボタンを使わずにモードダイヤルから設定できた方が使い勝手が良かった。また、処理速度などの問題があるのかもしれないが、アートフィルターにある「ラフモノクローム」は使い勝手がよいフィルターなので、これも欲しかったところではある。それでも、実際の撮影自体はなかなか面白い。

マジックフィルターはMENUボタンを押した撮影メニューからも選択できるが、ORボタンの方が手軽だ

 撮影後に待たされるのでどちらかというとじっくりと撮影するタイプの機能がマジックフィルターだ。じっくり効果を確かめながら撮影しても面白いし、もちろん何も考えずに思いつくままマジックフィルターで撮影しても十分楽しい。「撮影を楽しむ」ことができる機能だ。

使い勝手を高める便利機能

 それ以外の撮影機能についてはμTOUGH-6000から継続して搭載。例えばORボタンを押すことで、パノラマ、顔検出パーフェクトショット、比較ウィンドウの各機能が利用できる。パノラマでは、1枚目を撮影するとカメラが特徴を分析し、自動的に1枚目と2枚目の重なり合う部分にターゲットが現れるので、それを重ねると自動的に2枚目、3枚目の撮影ができる。うまくいけばかなり簡単にきれいなパノラマ写真が、カメラ内だけで撮影できる。手動で撮影したり、PCで合成したりすることも可能だ。

パノラマ撮影の設定画面。「カメラで合成1」はターゲットに合わせるだけで自動撮影される

 比較ウィンドウでは、ズーム、露出補正、ホワイトバランス、測光の4種類について、それぞれ画面を4分割して別設定の結果を1画面に表示してくれる。視覚的に設定変更の効果が分かるので、特に初心者には便利な機能だ。

比較ウィンドウ。4種類の効果を見ながら設定できるズームを選択したところ

 顔検出パーフェクトショットは、顔検出機能をオンにして、さらに背景の露出も調整することで人物撮影でよりきれいに撮影できるようになる。

 ORボタンは、オート撮影モードではすべての機能が利用できるが、シーンモードではマジックフィルターやパノラマは使えず、シーンモードによって使える機能が限られる。また、シーン認識機能の「おまかせ♪iAUTO」では使えない。

撮影時はOKボタンを押すことでよく使う撮影設定を選べるグローブをつけて操作するときに便利なタップコントロールも従来通り装備。ボタンを押さなくても、本体を軽く叩くことで機能が実行でき、小さなボタンを押す必要がない

 そのおまかせ♪iAUTOは、カメラを被写体に向けるだけで最適な撮影設定を適用するおまかせモード。人物を見つけたら顔検出パーフェクトショットになるポートレートモードや、風景モード、夜景&人物モード、スポーツモード、マクロモードが自動設定される。

 モードダイヤルにはさらに、検出した顔の肌を滑らかに補正する「ビューティーモード」が用意されている。こうした補正機能は賛否もあるところだが、カメラで撮影してそのまま女性に見せる場合や、PC上で補正はしないようなライトユーザーでは重宝する人もいるかもしれない。

ビューティーモードにダイヤルを合わせると、ちょっと派手なアニメーションが現れる

まとめ

 μTOUGH-6010は、撮像素子が1,200万画素になり、マジックフィルターを搭載したのが大きな特徴のカメラだ。それ以外のスペックはμTOUGH-6000と同じなので、マジックフィルターよりもタフネス性能を重視する人はμTOUGH-6000を選んでもいいだろう。

 しかし、実際に使ってみると、マジックフィルターは撮影を楽しくさせる一つの技術として有効だと感じる。似たような効果はPC上の補正でも可能だが、いちいちPCで処理する人ばかりではないし、むしろカメラ内だけで完結するからこそ、誰もが気軽に楽しめる機能に仕上がっている。

 1,200万画素まで必要だったのかとか、マジックフィルターの操作性には多少の疑問はあるが、いずれにしても、マジックフィルターで撮影に楽しさを追加したのがμTOUGH-6010だ。単にタフネスだけを求めるのではなく、撮影を楽しむという目的が加わったことで、より一層幅広い人に勧められるカメラに仕上がっている。

作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

・歪曲収差

μTOUGH-6010 / 約4.6MB / 3,968×2,976 / 1/80秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mmμTOUGH-6010 / 約4.6MB / 3,968×2,976 / 1/50秒 / F5.1 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 18.2mm

・ISO感度

μTOUGH-6010 / 約4.3MB / 3,968×2,976 / 1/40秒 / F4.7 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 11.8mmμTOUGH-6010 / 約4.5MB / 3,968×2,976 / 1/60秒 / F4.7 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 11.8mm
μTOUGH-6010 / 約4.6MB / 3,968×2,976 / 1/125秒 / F4.7 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 11.8mmμTOUGH-6010 / 約5.1MB / 3,968×2,976 / 1/200秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 11.8mm
μTOUGH-6010 / 約5.2MB / 3,968×2,976 / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 11.8mmμTOUGH-6010 / 約4.7MB / 3,968×2,976 / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO1600 / WB:オート / 11.8mm

・マジックフィルター

ポップ
μTOUGH-6010 / 約4.8MB / 3,968×2,976 / 1/40秒 / F4.7 / 0EV / ISO64 / WB:− / 11.8mm
ピンホール
μTOUGH-6010 / 約3.8MB / 3,968×2,976 / 1/40秒 / F4.7 / 0EV / ISO64 / WB:− / 11.8mm
フィッシュアイ
μTOUGH-6010 / 約3.8MB / 3,968×2,976 / 1/50秒 / F4.7 / 0EV / ISO64 / WB:− / 11.8mm
スケッチ
μTOUGH-6010 / 約987K / 2,048×1,536 / 1/400秒 / F4.7 / 0EV / ISO640 / WB:− / 11.8mm

 マジックフィルター「フィッシュアイ」で撮影しても、当然ながら画角が広くなるわけではない。

μTOUGH-6010 / 約4.2MB / 3,968×2,976 / 1/20秒 / F5.1 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 18.2mmフィッシュアイ
μTOUGH-6010 / 約3.9MB / 3,968×2,976 / 1/20秒 / F5.1 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 18.2mm

・自由作例

μTOUGH-6010 / 約4.6MB / 3,968×2,976 / 1/640秒 / F4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mmμTOUGH-6010 / 約5.2MB / 3,968×2,976 / 1/320秒 / F6.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 18.2mm
μTOUGH-6010 / 約4.4MB / 2,976×3,968 / 1/400秒 / F4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mmμTOUGH-6010 / 約3.8MB / 3,968×2,976 / 1/400秒 / F6.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 18.2mm
μTOUGH-6010 / 約4.4MB / 2,976×3,968 / 1/500秒 / F4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mmμTOUGH-6010 / 約5.1MB / 2,976×3,968 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 11.8mm
μTOUGH-6010 / 約5.0MB / 3,968×2,976 / 1/160秒 / F4 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mmμTOUGH-6010 / 約5.5MB / 2,976×3,968 / 1/30秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 5mm
μTOUGH-6010 / 約4.6MB / 2,976×3,968 / 1/50秒 / F3.5 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mmμTOUGH-6010 / 約5.0MB / 3,968×2,976 / 1/500秒 / F6.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 18.2mm
μTOUGH-6010 / 約4.2MB / 3,968×2,976 / 1/800秒 / F5 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mmμTOUGH-6010 / 約4.2MB / 3,968×2,976 / 1/1,000秒 / F5 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 5mm
μTOUGH-6010 / 約5.0MB / 3,968×2,976 / 1/640秒 / F5 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mmμTOUGH-6010 / 約4.7MB / 3,968×2,976 / 1/250秒 / F4 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 5mm
μTOUGH-6010 / 約4.3MB / 3,968×2,976 / 1/250秒 / F4.1 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 6.5mmμTOUGH-6010 / 約4.2MB / 3,968×2,976 / 1/80秒 / F5 / +0.7EV / ISO64 / WB:オート / 6.5mm
μTOUGH-6010 / 約5.5MB / 3,968×2,976 / 1/125秒 / F5 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 8.9mmμTOUGH-6010 / 約4.7MB / 3,968×2,976 / 1/100秒 / F4.4 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 8.9mm
ピンホール
μTOUGH-6010 / 約4.2MB / 3,968×2,976 / 1/13秒 / F4.1 / 0EV / ISO200 / WB:− / 6.5mm
スケッチ
μTOUGH-6010 / 約1.1MB / 2,048×1,536 / 1/640秒 / F5 / 0EV / ISO640 / WB:− / 6.5mm




小山安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2009/8/5 21:20