新製品レビュー
パナソニックLUMIX GX8(実写編)
作品作りを楽しめる充実性能のミラーレス
Reported by 大浦タケシ(2015/10/7 08:00)
先般、外観・機能編をお伝えしたパナソニック「LUMIX GX8」。強力なセンサーシフト方式の手ブレ補正機構「Dual I.S.」をはじめ、高速化されたAFや新開発のイメージセンサーおよび映像エンジンなど、先代モデルを徹底的にブラッシュアップしたモデルである。本モデルのコンセプトは「ストリートフォト一眼」。実際その仕様は、ストリートスナップシューターを大いに満足させるものといえる。前回の外観機能編に続き、今回は実写編としてその描写を見ていくことにする。
遠景
使用したレンズは、キットとして付属する「G VARIO 14-140mm F3.5-5.6 ASPH./POWER O.I.S.」と、単焦点の「LEICA DG SUMMILUX 15mm F1.7 ASPH.」の2本。
撮影時の絞り値はそれぞれ固定(14-140mmはF8、15mmはF5.6)とし、フォトスタイルはデフォルトの「スタンダード」。なお、撮影時の天候は薄曇り、大気中の水蒸気はわずかに多めであった。
描写はいずれもエッジが立ちシャープ。レンズ自体の解像感の高さもあるが、たいへん締まった描写である。ただし、いたずらにシャープネスを上げたようなものではなく、どちらかといえばナチュラルなもの。オリンパスのマイクロフォーサーズ機の場合、時としてカリカリとした描写のことが多いが、こちらは大人の雰囲気と例えてよいものである。
階調再現性については、被写体によってやや白トビしやすいかなと思える部分もないわけではないが、通常の使用においてはさほど気になることはなく、おおむね良好。掲載した作例を見ていただきたいが、樹木の緑の微妙なトーンの違いなどを余すことなく再現する。35mm判フルサイズフォーマットの約1/4の面積しかないマイクロフォーサーズだが、決して階調再現性は見劣りするようなところがないことをあらためて知らしめる。
感度
LUMIX GX8の通常感度範囲はISO200からISO25600までとする。ノイズリダクションの設定はデフォルトでチェックした。ちなみにパナソニックのミラーレス機の場合、ノイズリダクションの設定は他のメーカーのように独立してあるものではなく、仕上がり設定であるフォトスタイルの中のパラメータのひとつとして存在する。
作例を見るかぎり、ISO800までならノイズや解像感の低下などがほとんど気にならず、常用できるレベルである。ISO1600となるとノイズの発生に加え解像感の低下がわずかながら見受けられるようになる。ISO3200ではノイズ、解像感の低下とも顕著になりはじめ、ISO6400になると解像感の低下によって色がにじんだような描写となる。最高感度であるISO25600はノイジーで、記録用としてもちょっと辛い。
なお、LUMIX GX8のベース感度はISO200だが、拡張機能によりISO100相当の設定も可能としている。通常、ベース感度よりも低い拡張感度では、ダイナミックレンジが狭くなる傾向があるが、本モデルでは作例を見るかぎりベース感度との違いを見いだすのは難しい。明るい屋外など少しでも絞りを開いて撮影したい場合は、躊躇うことなく拡張設定するとよいだろう。
フィルター効果を試す
フィルター効果機能としてクリエイティブコントロールを搭載する。選べる効果は22種類。「ソフトフォーカス」や「ジオラマ」などの“定番モノ”は、もちろん用意されている。
LUMIX GX8では新たに「クロスフィルター」を搭載。点光源を中心に広がる光芒が特徴的なフィルター機能で、フィルムカメラ時代のレンズフィルターのひとつとして人気を博した効果でもある。
このクロスフィルター機能がデジタルらしく感じられるのは、光芒の数や長さ、角度がイメージに合わせて調整できることだ。フィルム時代は対応するレンズフィルターをいくつか用意し、その都度交換しなければならなかったのだが、LUMIX GX8では手間も費用もかからない。点光源が画面のなかにあるようなシーンでは積極的に活用したいフィルターである。
4Kフォト
4K動画機能を活用した静止画撮影機能が4Kフォトモードだ。4K動画機能を使い撮影した秒間30コマ連写のなかから静止画を抜き出すもので、動体撮影などでは決定的瞬間を見逃さない。これまで同社のミラーレスでは、動画機能のひとつとして搭載されていたが、本モデルでは連写など静止画の撮影モードのひとつとして搭載されている。こちらにあるほうが選択する機会が多そうだし、合理的であるように思える。
4Kフォトモードには、シャッターボタンを押している状態のときだけ4Kフォトで記録する「4K連写」、シャッターボタンを押すと4Kフォトでの記録を開始し、再度押すと終了する「4K連写(S/S)」、写真を撮る感覚でシャッターを押して離すと押した瞬間の前後1秒ずつを記録する「4Kプリ連写」の3つのモードが搭載される。
掲載した作例は4K連写(S/S)で撮影を行っているが、水風船が割れた瞬間を見事に捉えている。
まとめ
作例など手持ち撮影で心強かったのが、手ブレ補正機構「Dual I.S.」の搭載だ。カメラ側に搭載した手ブレ補正機構と、レンズ側の手ブレ補正機構を組み合わせ6軸の補正を可能とする。今回使用した「G VARIO 14-140mm F3.5-5.6 ASPH./POWER O.I.S.」は手ブレ補正機構を内蔵するため、ボディ側との合わせ技でとても強力。一方、同じく今回使用した「LEICA DG SUMMILUX 15mm F1.7 ASPH.」は手ブレ補正機構を持たないレンズであるが、ボディ側の手ブレ補正がきっちりと仕事を行ってくれる。
フルサイズミラーレスのソニーのα7 IIシリーズもボディ側とレンズ側の手ブレ補正機構を組み合わせて補正を行う点をアピールしているが、同様に光学式の手ブレ補正機構を採用する他のメーカーも、今後このようにセンサーシフト方式の手ブレ補正機構を搭載し、光学式との組み合わせで補正を行うものが波及する可能性は高そうだ。
パナソニックLUMIX GX8は、充実した機能を満載し完成度の高いカメラだ。冒頭の繰り返しとなるが、手ブレ補正機構やより高速化されたAF、236万ドット0.5型有機ELを用いたEVFなどなど、ハード面にはまったく抜かりを感じさせない。さらに今回チェックした描写にしても、マイクロフォーサーズとしては文句のないもので、これまでフォーマットの小ささからなんとなく敬遠してきたユーザーにも強く訴求できるものといえる。カメラ内の機能も充実しており、ストリートスナップをはじめ作品づくりを徹底して楽しみたい人に最適な1台であるように思える。
作例
比較的明暗比のある被写体だが、白トビ・黒ツブレとも少なくよく粘っているように思える。焦点距離は14mm、絞りはF4だが、デフォーカスとなった部分は思いのほかボケる。
エッジが立ち立体感のある描写だ。階調再現性も良好で、パリっとした鮮明な描写である。色調も破綻しているようなところはなく、リアルに再現する。
ハイライト部の白トビが見受けられるが、これは他のカメラでも同様のものといってよく、ことさら気にする必要はないだろう。露出はカメラ任せだが、上々の結果。
1点AF時のフォーカスポイントの選択は背面液晶のタッチ操作で行うと直感的にできるが、EVFを覗いた状態で右手親指でもできると、より快適になるように思える。
AFは迷いもなく、素早いピント合わせを行う。ミラーレスの中でも1、2位を争うことのできるレベルで、ストレスを感じることは皆無。スナップ撮影では心強い味方だ。
EVFはコントラストが高く高精細。ピントの状態など把握しやすく感じられる。頃合いのよい大きさのボディはホールドしやすく、スナップ撮影に最適。