新製品レビュー
OLYMPUS Air A01
マイクロフォーサーズレンズが装着できるスマホ連携カメラ
Reported by 小山安博(2015/2/16 14:00)
オリンパスから登場した「OLYMPUS Air A01」は、円筒形のボディだけのレンズ交換式デジタルカメラだ。昨年ドイツで開催された「フォトキナ2014」の会場でお披露目された「オープンプラットフォームカメラ」の製品版で、展示では立方体だったが、その後の仕様公開では円筒形になり、製品版もそのまま円筒形ボディになっている。新たなオリンパスの挑戦とも言うべきこの製品を試用してみた。
円筒形でモニターのないカメラ
OLYMPUS Airは円筒形のボディに撮像素子や画像処理エンジンなどのカメラの機能を内蔵しつつ、モニターは装備せず、スマートフォンなどと接続して撮影するカメラだ。こうした製品自体は、ソニーがすでに「レンズスタイルカメラ」として発売しており、基本的にはそれと同じような製品だ。
撮像素子は有効1,605万画素で、レンズ交換式となっておりマイクロフォーサーズ規格のレンズを装着して撮影する。同じレンズ交換式のレンズスタイルカメラ「DSC-QX1」と比べて、極端にコンパクトというわけではないが、もちろんレンズ交換式カメラとしては破格の小ささ。
本体を見ると、上部に大きなシャッターボタンがあり、その後部に電源ボタン。底面には三脚穴があり、あとは側面にレンズ取り外しレバー、アクセサリ取り外しレバーがあるというだけのシンプルな外観。レンズの反対側の背面には、無線用スライドスイッチとマイクロUSB端子がある。背面はカバーに覆われており、これを取り外すと、さらにmicroSDカードスロットが隠れている。
レンズを装着して電源を入れると、とりあえず撮影できる。モニターがないため、この状態だと画角を想像して感覚で撮影するしかないが、慣れてくると、そのままでもけっこう撮影できるようになる。まあ、取り急ぎ撮影したい場合には使えるだろう。
単体で撮影する限り、動作速度は十分で、AFも速く、サクサクと撮影できる。特別な撮影設定もできないので、スナップ撮影にはこのままでもいいぐらい。水平を取るのは難しいが、三脚穴とシャッターボタンを目印にすればいいし、多少の傾きはご愛嬌として、むしろ意外な写真が撮れるかもしれないので、気にせずに撮りまくると面白そう。確認するまでどんな写真が撮れているか分からないというのも、それはそれで楽しい。
細身のレンズほどの太さの円筒形のボディで、持ち運びは容易。机上などではコロコロと転がりやすく不安定なので、テーブル三脚などの小型三脚と組み合わせると良さそうだ。レンズ交換式なので、多彩なマイクロフォーサーズレンズを利用して、広角から望遠、単焦点と色々な撮影が楽しめるのもメリット。大口径望遠ズームの40-150mm F2.8 PROといったレンズも装着できるが、見た目はかなりインパクトがあるだろう。基本的にはコンパクトなレンズでスナップ撮影という使い方が良さそうだ。
センサーシフト式の手ブレ補正は非搭載で、サイズを優先したためだという。そのため、シーンによっては手ブレに注意が必要だが、小型三脚と組み合わせて、きちんと固定して後述するスマートフォンによる遠隔撮影を利用するといった方法が良さそうだ。
アプリと連携して撮影
OLYMPUS Airの最大の特徴は、スマートフォンをモニターにして撮影するスタイル。この辺りはソニーのレンズスタイルカメラQXシリーズと同じ。ただし、スマートフォンとの接続に無線LANとBluetoothを併用するのは違いだ。利用する際にはあらかじめ背面の無線スイッチをオンにしておく。基本的にはこのスイッチはオンのままでいいだろう。
特にNFCによる簡単接続設定のようなものはないので、接続する際は背面カバーを開けた部分にあるSSIDとパスワードをスマートフォンに直接設定する。最初の手間はあるが、一度接続設定をしておけば、次からはカメラの無線LANを起動すれば自動でスマートフォンへの接続ができる。
対応OSはiOSとAndroid。いったん接続設定をすれば、無線LAN未接続時にカメラの電源を入れてアプリを起動すると、自動的に接続する。別の無線LANに接続している場合、iOSの場合は無線LANの自動切り替えができないので、iOS端末の設定を開いて手動で接続を切り替えるという手間が必要。
今回はiOS向けアプリのみの試用のため、Android版での動作は分からないが、一般的なAndroid向けアプリだと、アプリ側で無線LANの設定を切り替えることはできるので、アプリを起動するだけで無線LANが切り替わる、という動作をするはずだ。
接続には工夫されており、低消費電力のBluetooth Smartを使うことで、常時OLYMPUS AIRとスマートフォンを接続しておく。常にBluetooth Smartで通信しているので、アプリを起動すると、自動的にOLYMPUS AIRの電源をオンにする、といった動作も可能になっている。離れていても、スマートフォン側からカメラの電源オン・オフができるので三脚に固定して撮影する場合などにも便利そうだ。
Bluetooth Smartは低消費電力なので、カメラやスマートフォンのバッテリへの影響は、もちろんゼロではないとはいえ、それほど気にするレベルではない。気になるようだったら、しばらく使わずに長時間持ち歩く場合には無線スイッチをオフにすればいい(Bluetoothや無線LANが利用できない航空機内の場合も同様に)。
接続後の動作は速い。スマートフォンの画面上にはカメラに写る映像がそのままライブビューとして表示され、画面タッチでAF合わせをしたり、シャッターを切ったり、カメラの設定を変更するといった操作が可能。
用意されているアプリはいくつかある。基本となるのは「OLYMPUS AIR(OA.)Central」アプリで、他のオリンパス製アプリは、このOA.Centralアプリを経由してスマートフォンに接続する。ここからライブビュー撮影もできるが、シャッターを切るだけの簡単な撮影しかできない。再生ボタンを押すと、カメラ内のメモリーカードに保存した画像にアクセスできる「OA.Viewer」が起動する。
サムネイルの表示はそれほど不満のないレベルで速い。単画像を表示すると、2~3秒ほど待たされて画像が表示される。そこからアプリ共有も可能で、Twitterに投稿したり、メール送信したりといった動作が可能。
他のアプリとしては、OA.ArtFilter、OA.ColorCreator、OA.PhotoStory、OA.ModeDial、OA.Clips、OA.Geniusといったものが用意されている。それぞれ、これまでOM-Dシリーズなどに搭載されていた撮影機能をアプリとして切り出したもの、と考えると手っ取り早い。
例えばOA.ArtFilterは、オリンパスお得意のアートフィルターを設定して撮影するアプリ。アートフィルターなどの機能は、カメラ側で処理をして、その結果をアプリに返す、というものなので、通常のアプリのように撮影画像に画像処理をする、というものではない。そのため、画質や処理結果も通常のOM-Dシリーズなどと基本的には同等になるようだ。
OA.ModeDialは、カメラのモードダイヤルをアプリ側で実現する仕組み。P/A/S/Mといったモードに設定して、シャッタースピードや絞り値をスマートフォンのタッチパネルで変更して撮影ができる。
面白いのはOA.Genius。1回シャッターを切ると、カメラが被写体を自動で認識して6枚の構図やエフェクト、露出などを変えた写真を記録してくれる、というもの。色々設定を変えながら撮影するのが難しい場合や、気軽なスナップショットとして使いたいときに便利。
新しい展開に期待
接続が速いとはいえ、カメラを取り出し、スマートフォンを取りだし、アプリを起動してカメラの電源を入れ、接続を待って構図を決めて撮影をする、という一連の流れは、決して「シャッターチャンスに強い」カメラではない。ソニーのQXシリーズでも同様の課題はあるが、OLYMPUS AIRはソニーとはまた違うアプローチになっている。
OLYMPUS AIRは、カメラの仕様を公開することで、スマートフォンアプリベンダーが連携アプリを開発できるようにしている。それが「オープンプラットフォームカメラ」のゆえんで、これらのアプリ群は、ある意味サンプルアプリと言ってもいいだろう。
アプリベンダー側は、こうしたカメラの機能を利用してアプリを開発したり、既存アプリに組み込んだりできる訳で、こうした対応アプリが増えると、また新しい使い方が生まれて面白いだろう。
オリンパスでは特に、クリエーターに新しい使い方を実現するアプリやアクセサリの開発を促したい考えで、すでにプロトタイプを使ってもらって作品が生み出されている。「完成品」のカメラを提供するのではなく、ユーザーや第三者がカメラに機能を追加できる、というのは新しい試みだ。
気になるのは、無線LANが2.4GHz帯のみの対応という点と、撮影中の充電ができないこと。こうしたカメラは無線LANの接続が安定しているのが重要だが、2.4GHz帯のみだと、周囲に無線LANの電波が飛び回っているような環境だと通信が不安定になりがち。5GHz帯は、国内で屋外利用のできない周波数帯もあるため、こうした対応になっているようだが、スマートフォンは5GHz帯に対応しているのがほとんどなので、何らかの対応が欲しかったところ。
もう1つの撮影中の充電だが、OLYMPUS AIRは電池交換ができないタイプで、充電はmicroUSB経由で行う。スマートフォンでも使われている一般的なものなので、モバイルバッテリーやPCを始め、充電環境には困らない利点がある。しかし、OLYMPUS AIRでは「充電しながら撮影する」ことができない。これはUSB2.0では撮影時の電圧が足りないためのようで、USB充電対応のカメラはたいてい撮影中に充電することができない。
OLYMPUS AIRのようなカメラだと、据え置きで長時間撮影するという用途もありそうで、そうした場合に撮影しながら充電ができないのは残念。OLYMPUS AIRの発表会では、遠隔から操作して撮影するような提案があったが、充電が同時にできればさらに実用度が上がる。遠隔からカメラの電源操作ができるので、電源に接続しておいて使わないときは電源オフをすれば、その時点で充電が始まるのでフォローできなくはないが、やはり充電しながら撮影できれば良かった。
OLYMPUS AIRは、単にスマートフォンと接続して撮影するだけのカメラではなく、ハードウェアからソフトウェアまで仕様を公開することで、新たな拡張性をもったカメラだ。当面は国内向けに展開ということで、どれほどのアプリや関連製品が登場するかは未知数だが、取り組みとしては面白いだけに、今後の展開にも期待したいところだ。