新製品レビュー
ニコンD750(実写編)
新しくなったピクチャーコントロールをはじめ、FX新モデルの画質を検証
塙真一(2014/10/1 11:00)
先に掲載したD750(外観・機能編)に続き、今回は実写編をお届けする。
D750は有効2,432万画素のCMOSセンサーを搭載するFX機だ。最大の特徴はFX機として初のチルト式液晶モニターを採用した点。最近の一眼レフカメラはライブビュー撮影や動画撮影の操作性も重視しているものが多く、チルト液晶の搭載もその流れを汲んでのものだろう。
画像処理エンジンは最新の「EXPEED 4」となり、より高速な処理が可能となった。連写は最高6.5コマ/秒。視野率100%の光学ファインダーや15万回のシャッター耐久性を実現するなど、かなり上位モデルに近いスペックとなっている。ボディは新開発のモノコック構造を採用。小型軽量を実現しながらも、剛性感のあるボディに仕上がっている。
また、D810に搭載された新機能をそのまま踏襲したものも多い。ピクチャーコントロールには「フラット」が追加されたし、ピクチャーコントロールの各モードの調整項目に「明瞭度」も用意されている。
今回は通常の画質チェックに加え、ピクチャーコントロールについても比較してみた。
遠景
使用したレンズはレンズキットとして用意されるAF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR。ワイド端の24mmとテレ端の120mmで遠景を撮影してみた。
結果としてはワイド端、テレ端ともに中央部の解像力は非常に高い。2,432万画素のセンサーはローパスフィルターが装着されたものだが、遠景などの風景を撮るのにも十分の実力といえる。
ただし、中央部に比べると周辺部の描写は甘さが感じられる。これはワイド端もテレ端も同じ傾向。これはD750の実力というよりはキットレンズの性能と考えたほうがよいだろう。
・ワイド端
・テレ端
高感度
ISO感度はISO100~ISO12800まで。拡張感度としてISO100に対し約0.3、0.5、0.7、1段(ISO50相当)の減感、ISO12800に対し約0.3、0.5、0.7、1、2段(ISO51200相当)の増感が可能となっている。
今回は通常の感度に加え、参考までに低感度と高感度それぞれ1段の画像も撮影してみた。
まずスタジオでチャートを撮影した画像だが、こちらを見る限り感度を上げていくと順当にノイズも増えていくが、ISO3200まではほとんどノイズが気になるほどではない。ISO6400あたりからノイズ量も増え出し、ノイズリダクションの効きも強くなる。
次に屋外夜景の画像だが、やはりこちらでもISO6400からノイズリダクションの効きが強くなり、細部の再現性が悪くなってくる。
感度に関してはノイズ量と解像力のどちらを重視するかによっても評価は変わってくるが、D750に関しては、ISO3200までが比較的安心して使える感度という印象である。
ピクチャーコントロール(フラットを含む各種)
ピクチャーコントロールは、画像の仕上がりをコントロールする機能。輪郭強調、明瞭度、コントラスト、明るさ、色の濃さ(彩度)、色合い(色相)の項目からなる。
種類はスタンダード、ニュートラル、ビビッド、モノクローム、ポートレート、風景、フラットの7種類。フラットが搭載されるのは現在のところ、D810とD750の2モデルとなる。
今回は各モードの違いをみるために、微調整はせずすべてデフォルトの設定のまま撮影をおこなっている。
新しく用意された「フラット」だが、それまでは一番おとなしめの設定であった「ニュートラル」に比べてもさらにコントラスト、彩度が控えめとなる。さらに輪郭強調(シャープネス)も弱めとなる。一見すると眠たい画像のようにも見えるが、被写体のコントラストや彩度が高すぎる場合に保険的に使うというのがよいかもしれない。
ピクチャーコントロール(明瞭度)
ピクチャーコントロールの調整項目として追加された「明瞭度」。画像のクッキリ感を調整する項目で、コントラストと輪郭強調をミックスしたような結果となるようだ。
ハイライトとシャドーの明るさを大きく変えずにクッキリとさせたいときや、輪郭部をふんわりと霞がかかったようにさせたいときなどに使うとよいだろう。
画像はピクチャーコントロールを「ポートレート」に設定し、明瞭度の値だけを-5~+5まで変化させた。マイナス方向に振っていくと輪郭強調が弱くなるとともにソフトフィルターを掛けたような柔らかな描写となっていく。逆にプラス方向に振っていくとコントラストも若干上がるが、服の質感などがクッキリと向上するのがわかる。
ハイアングル、ローアングル
3.2型122.9万ドットの液晶モニターはチルト式。可動範囲は上方約90度、下方約75度。もちろん、ライブビュー撮影に限るが、ハイアングルやローアングル撮影の自由度は固定式液晶に比べて格段に向上する。ただし、上下方向にしか動かないため、縦位置撮影では意味をなさないので注意が必要だ。
エフェクトモード
上位モデルのD810にはない機能としてスペシャルエフェクトモードが挙げられる。モードダイヤルをEFFECTSにセットし、背面のコマンドダイヤルを回すと各モードが選べる。
スペシャルエフェクトモードはナイトビジョン、カラースケッチ、ミニチュア効果、セレクトカラー、シルエット、ハイキー、ローキーの全7種類。このモードではRAW+JPEGに設定していても、自動的にJPEGのみの記録となる。実際にスペシャルエフェクトモードにセットし、いくつかのモードで撮影してみた。
ハイライト重点測光
こちらもD810から新たに搭載された機能。画面内の最も明るい部分を測光し、ハイライトが白飛びしないような露出値にしてくれるモード。輝度差の激しいシーンでハイライトを白飛びさせたくないときに使うと便利だ。
ライトと、その灯りに照らされた壁を撮影。マルチパターン測光では壁の部分もほどよく再現されているが、ライトの中心部分はほとんど白飛びしてしまった。これに対し、ハイライト重点測光では、色と階調が残っている。
動画
1,920×1,080/60PのフルHD動画が撮影できる。FXフォーマットベースの動画とDXフォーマットベースの動画の2種類を撮影することが可能。また、従来モデルまでは静止画と動画が同じ撮影メニューに並べられていたが、D750では静止画撮影メニューと動画撮影メニューにタブが分けられた。
波打ち際での動画撮影。チルト液晶のおかげでアングルの自由度が広がった。