【 2016/05/27 】
【 2016/05/26 】
【 2016/05/25 】
【 2016/05/24 】
【 2016/05/23 】

【新製品レビュー】ニコンD600

〜バランスのよい小型軽量ボディのフルサイズ機
Reported by 大浦タケシ

 今年のフォトキナで話題のひとつといえば、フルサイズセンサーを搭載するデジタルカメラの充実だろう。主要カメラメーカーのいずれもが新しいフルサイズモデルの発表を行ない、デジカメWatchの誌面を賑わせている。

 今回紹介するニコン「D600」もそのうちのひとつで、有効2,430万画素のフルサイズセンサーをコンパクトなボディに搭載する同社の意欲作だ。



 本テキスト執筆時の量販店におけるD600の店頭価格は、ボディ単体21万8,000円、AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VRとのレンズキットが27万2,000円前後となる。


ニコンFXフォーマットで最小最軽量

 今年3月に発売の開始されたD800は、圧倒的ともいえる有効3,630万画素で話題を振りまき、多くのカメラ愛好家のハートを射抜いた。かくいう筆者も、その解像度と解像感に引き込まれ、カメラが発表されるやいなや予約したほどである。

 しかし、正直にいえば3,630万という数字は、持て余してしまうことが多いのも事実。撮影ではスペックをフルに活かすとなると気を使うことも多く、A3ノビ以下のプリントを楽しむ程度なら、甚だオーバースペックといえるものだ。

 また、データも大きく、これまでとは比べものにならない早さでHDDの空き容量が減っていく。さらにボディの大きさ、質量は、いわゆる“下”のないカメラとしてド級クラスといってよく(バッテリー、メディア込みで約1Kg)、終日首から提げるようなことは遠慮したくなるほどである。このような状況から、使い回しのよい画素数とハンドリングのフルサイズが求められていたわけだが、D600はその回答といえる。



 まずボディは、FXフォーマット機としてこれまでになくコンパクトに仕上がっている。高さはD800/D800Eより10mm低く、幅も5mm狭い。DX フォーマット機と並べても、際立って大きく感じられるようなことはないだろう。ホールドしたときの印象にしても140g軽い約760g(バッテリー、メディア等除く)なので、やはりFXフォーマット機として考えると軽量級といえる。

 DXフォーマット機と比べた場合、D7000より90gほど重いものの、D300Sとなら、80gほどD600が軽いのも驚き。グリップなどはやや小振りだが、ホールドした指がどこかに干渉するようなことなどなく、これまで大きく、重いといったFXフォーマット機の常識を覆すものといえる。

 ボディシェイプについては、上位モデルと同じく曲面、曲線を多用するエルゴノミックスデザインを採用。なで肩となるのも同じだ。ただし、D800/D800Eほど丸みを持つものではなく、どちらかといえばD7000に近いシェイプといえる。


上位モデル同様、丸みを帯びたエルゴノミックデザインを採用したボディシェイプ。シャッターボタン周りの丸みは、どこか官能的

 有効画素数は2,430万画素。何度も繰り返すようだが、センサーサイズはニコンでいうところのFXフォーマット、つまりフルサイズである。実効感度はISO100からISO6400まで。拡張によりL1(ISO50)からH2(ISO 25600)までとしている。


Lサイズはフル画素の24.2Mピクセル、Mサイズはおおよそその半分の13.6Mピクセル、Sサイズは、そのまた半分近い6.0Mピクセルとなる。

 ちなみに、感度域はD800/D800Eと同じとしている。単純に考えればD600のほうがD800よりも画素ピッチが大きいはずで(D600の画素ピッチは公開されていない。D800は4.88μm)、高感度特性は有利になりそうなものだが、なぜか感度域に差がないのは不思議に思えなくもない。

 小型軽量化のためシャッター機構やガラスペンタプリズムなど新たに開発されたものとなる。シャッター速度は最高1/4,000秒。上位のデジタル一眼レフカメラと比べると1段遅いが、クラスを考えるなら一般的なスペックといってよい。

 ストロボ同調速度については1/200秒を実現している。最高コマ速は5.5コマ/秒。キレのよいシャッターで、上位モデル並の上々なフィーリングが得られる。シャッター機構の耐久性能保証は、15万回としている。

 ファインダー視野率は、ガラスペンタプリズムの小型化にも関わらず約100%を確保する。倍率も約0.7倍を達成しており、D800/D800Eと同じとしている。

 また、DXレンズを装着した場合、これまでのFXフォーマットモデル同様、ファインダー上にDXフォーマットのフレームが自動的に現れる。DXフォーマットのカメラからD600へ切り換えたカメラ愛好家とって、これまで使っていたレンズが流用できるので重宝するはずだ。


アイピース周囲はD7000とよく似ており、接眼目当てはDK-21と共通としている。ファインダー視野率は100%、倍率は0.7倍。

 ちなみにDXフォーマットに設定したときの画素数は約1,000万画素ほど。この解像度が高いと見るか、低いと見るかで、この機能の実用度は変わってくると思うが、いずれにしても使わない手はない。


FXフォーマットとDXフォーマットの撮像範囲の設定は、自動切り換えと任意での切り換えが可能。DXフォーマットのカメラからステップアップしたユーザーにはありがたい機能だ。

 液晶モニターは界面レスタイプの3.2インチ92万ドットを採用する。アスペクト比は4:3としている。


ニコンのデジタル一眼レフのお約束、液晶モニターカバーもこれまでどおり付属する。液晶モニターは3.2インチ(4:3)、92万ドット。

 AFも新しい。マルチCAM4800オートフォーカスセンサーモジュールによるAFは、39点。うちクロスセンサーは9点となる。2,016分割RGBセンサーによるシーン認識システムで、ニコンのお家芸ともいえる3-DトラッキングAFも可能としている。上位モデルよりもフォーカスエリアの散る範囲の狭さが気にならないわけでもないが、筆者が今回撮影したかぎりにおいて不便を感じることはさほどなかった。

 賛否があるとは思うが、撮影モードにシーンモードが備わっているのは、このカメラの位置付けをよく表している部分だ。搭載されるモードはポートレートや風景、夕焼け、ペットなど全部で19コ。被写体に最適化した撮影が誰でも楽しめる。

 ただし、モードの変更はちょっとややっこしく、MENU画面からではなく、infoボタンを押して表示するインフォ画面からとなる。設定画面自体はメインコマンドダイヤルで行ない、表示もアイコンのほかモードの名称とイメージ画像が表示されるため分かりやすいが、インフォ画面から行なうことをしっかり憶えておかないと、いざというとき迷いそうだ。


充実したスペックと機能

 使い勝手といえば、カメラ背面にAF-ON(AF作動)ボタンが見当たらないのは、ユーザーによっては気になる部分といえる。スポーツや鉄道、あるいはポートレートなどの撮影では重宝することも多いからだ。しかし、安心していいだろう。D600ではAE-L/AF-Lボタンに、その機能を担わせることができる(カメラ前面部のプレビューボタンにAF-ONの割り当ても可能)。AE-L/AF-Lボタン本来の使い方はできなくなるが、従来通り “親指AF”による撮影が楽しめる。


カメラ背面部のAF-L/AE-Lボタンの機能設定画面。AEのロックのほか、AF-ONなども選択できる。

 カードスロットは2基搭載。使用メディアはいずれもSDXC/SDHC/SDカードで、同社の他のカメラと同様、 片方のカードがいっぱいになったらもう一方のカードに記録する順次記録、どちらのカードにも同じデータを記録するバックアップ記録、RAWとJPEGを別々のカードに振り分ける分割記録が選べる。同社はD7000もWスロットとしているが、今後ミドルレンジ以上のデジタル一眼レフでは、マストな機能となっていきそうだ。


スロットはダブル。両スロットを使って、順次記録、バックアップ記録、分割記録が可能だ。ちょっとした撮影でも、両スロットにカードを入れておけば、万一のときに心強い。 Wスロットにより、片方のカードがいっぱいになったらもう一方に記録する順次記録、両方のカードに同じデータを記録するバックアップ記録、RAWとJPEGを別々のカードに振り分ける分割記録が選べる。

 小型化のためにシャッター機構やペンタプリズムにも手の入ったD600だが、内蔵ストロボについてはD800/D800E同様しっかりと搭載される。小型化に関わらず省略してもいいのではという意見もよく聞くことがあるが、記念写真の際やキャッチライトを効果的に使いたいときなど、またコマンダー機能を使って多灯ライティングを行ないたいときなど重宝することが多い。ライバルのフルサイズデジタル一眼レフカメラは、ストロボを内蔵しない方向であるが、搭載されているほうがカメラとしての使いやすさでは凌いでいる。


ストロボを内蔵。ガイドナンバーは12(ISO100・m)。コマンダー機能を内蔵しているので、純正のクリップオンストロボを使ったワイヤレスライティングが手軽に楽しめる。

 動画機能は上位モデルと同じとしている。1,920×1,080ピクセルのフルHD(30P/H.264/MPEG-4)に対応。内蔵するマイクはモノラルだが、外部マイクの使用でステレオ音声録音が可能とするほか、ヘッドフォン用のステレオミニジャックも搭載する。

 さらにFXベースとDXベースからの動画フォーマットも選択を可能としており、ボケを効果的につかいたいときは前者、少しでも深い被写界深度を稼ぎたいときは後者といった使い分けができる。しかも、多彩なバリエーションを誇るニッコールレンズが装着できるので、映像関係者からも注目されることだろう。


ボディサイズとスペックを両立

 コンパクトなのにフルサイズ。画素数を除けば、上位モデルとスペック的にほとんど変わらない。一部、省略された機能などもわずかに見受けられところもないわけでもないが、実際の使用では気になることは少ないだろう。むしろ、小型化されたボディでよりアクティブで積極的に被写体と対峙することができ、しかも上位モデルと比べても、そのスペックや仕上がりから肩身の狭い思いをすることもない。

 さらに、デジタル一眼レフカメラとして比較的手に入れやすいプライスタグとしており、これまでフルサイズに憧れながらも、縁の無かったデジタルユーザーに強くアピールできるカメラとしている。

 奇しくもライバルのキヤノンからも、同じく軽量ボディを特徴とするフルサイズモデルEOS 6Dが発表された。コンセプトの若干違う両機種に、どういった違いが生じているのか興味深いところだ。


D7000同様、撮影モードダイヤルを備える。こちらのほうがモードの選択が直感的で行いやすい。中央のボタンはダイヤルのロック解除用で、不用意な回転を防止する。 インターフェースは上段が外部マイクとヘッドフォン。中段から下にUSB、HDMI ミニと並ぶ。下段の左側はアクセサリーターミナルとなる。カバーは3つに分割されている。

残念ながらD600にはシンクロ接点が備わっていない。モノブロックのストロボなどを使用する場合は、写真のホットシューアダプターAS-15が必要となる。 WU-1bを装着すると、スマートフォンやタブレット端末などとのデバイスに撮影した画像の転送が可能となる。端子カバーが開き放しとなるのは、ちょっと頂けない。

マルチパワーバッテリーパックMB-D14を装着したところ。2種類の電池(EN-EL15×1個、単3形電池×6本)、およびACアダプター EH-5b(パワーコネクター EP-5B併用)に対応する。縦位置撮影用のマルチセレクターを備える。

カメラ前面部のファンクションボタンは、マウントエプロン上に備わる。プレビューボタンと間違うようなことはないだろう。 カメラ前面のエプロン下部にあるFnボタンの機能設定画面。個人的には「ファインダー内水準器」を選んでみたが、撮影の際は重宝した。

同じくカメラ前面にあるプレビューボタンの機能設定画面。絞り込みのほか、AEロックなども選択できる。 インターバルタイマーを内蔵する。花の開く様子や時間経過で変化する街の雰囲気などの撮影が手軽に楽しめる。

背面モニターに表示される水準器は、これまでと変化はない。画面いっぱいに表示されるので、雲台を調整する時など視認性がよく便利。

充実した画像編集機能を搭載。RAW現像や画像合成などのほかミニチュア効果や魚眼効果など遊べるメニューも搭載している。

info画面。撮影に関するカメラの設定状態が一目で分かり、さらにこの画面から設定変更も可能としている シーンモードの切り換えは、info画面を呼び出し、メインコマンドダイヤルを回転させると表示される。シーンモードは全部で19コ搭載される。


実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・感度

※使用レンズ:AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR


NR:強め / ISO50 NR:強め / ISO100 NR:強め / ISO200
NR:強め / ISO400 NR:強め / ISO800 NR:強め / ISO1600
NR:強め / ISO3200 NR:強め / ISO6400 NR:強め / ISO12800
NR:強め / ISO25600

NR:標準 / ISO50 NR:標準 / ISO100 NR:標準 / ISO200
NR:標準 / ISO400 NR:標準 / ISO800 NR:標準 / ISO1600
NR:標準 / ISO3200 NR:標準 / ISO6400 NR:標準 / ISO12800
NR:標準 / ISO25600

NR:弱め / ISO50 NR:弱め / ISO100 NR:弱め / ISO200
NR:弱め / ISO400 NR:弱め / ISO800 NR:弱め / ISO1600
NR:弱め / ISO3200 NR:弱め / ISO6400 NR:弱め / ISO12800
NR:弱め / ISO25600

NR:しない / ISO50 NR:しない / ISO100 NR:しない / ISO200
NR:しない / ISO400 NR:しない / ISO800 NR:しない / ISO1600
NR:しない / ISO3200 NR:しない / ISO6400 NR:しない / ISO12800
NR:しない / ISO25600

・ピクチャーコントロール

※使用レンズ:AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR

ピクチャーコントロール:スタンダード ピクチャーコントロール:ナチュラル ピクチャーコントロール:ビビッド
ピクチャーコントロール:モノクローム ピクチャーコントロール:ポートレート ピクチャーコントロール:風景

・作例


D600 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 約8.9MB / 4,016×6,016 / 1/100秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:晴天 / 40mm D600 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 約8.0MB / 4,016×6,016 / 1/320秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO400 / WB:晴天 / 85mm∂
D600 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 約10.3MB / 4,016×6,016 / 1/30秒 / F4.5 / -0.7EV / ISO800 / WB:オート1 / 85mm D600 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 約9.4MB / 4,016×6,016 / 1/100秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO400 / WB:オート1 / 55mm
D600 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 約8.5MB / 4,016×6,016 / 1/100秒 / F4.5 / -0.3EV / ISO400 / WB:オート1 / 80mm D600 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 約9.3MB / 4,016×6,016 / 1/30秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート1 / 24mm
D600 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 約9.1MB / 6,016×4,016 / 1/160秒 / F5.6 / +1.0EV / ISO100 / WB:オート1 / 24mm D600 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 約9.5MB / 4,016×6,016 / 1/160秒 / F5 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート1 / 85mm
D600 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 約8.0MB / 6,016×4,016 / 1/50秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート1 / 85mm D600 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 約11.7MB / 4,016×6,016 / 1/100秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート1 / 42mm
D600 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 約12.8MB / 6,016×4,016 / 1/100秒 / F8 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート1 / 80mm D600 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 約14.3MB / 4,016×6,016 / 1/80秒 / F11 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート1 / 24mm
D600 / AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR / 約19.5MB / 6,016×4,016 / 1/100秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート1 / 26mm





大浦タケシ
(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。

2012/9/28 00:00