【新製品レビュー】富士フイルムFinePix HS20EXR

~撮像素子を一新した高倍率30倍ズーム機
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 富士フイルムが3月に発売した「FinePix HS20EXR」は、2010年4月発売の「FinePix HS10」の流れを汲む高倍率ズーム機だ。35mm判換算で広角端24mmからの30倍ズームレンズを搭載。望遠端720mm相当の超望遠撮影を可能としつつも、フルHD動画記録や360度パノラマなどの機能を有する。実勢価格は4万9,800円前後。

FinePix HS20EXR

撮像素子を一新

 FinePix HS10からの主な変更点は、撮像素子と画像処理エンジン。撮像素子はFinePix HS10に搭載していた裏面照射型CMOSセンサーから、独自開発の画素構造とカラーフィルターを採用した「EXR CMOS」に変更した。有効画素数は1,600万画素、センサーサイズは1/2型。

 画像処理エンジンの「EXRプロセッサー」は、デュアルコア化することで画像処理速度を向上し、シーン認識機能「プレミアムEXRオート」などが新たに使用可能となったほか、FinePix HS10では不可能だった「瞬速フォーカス」を利用できるようになった。最速の合焦速度は0.16秒としている。

 なお、撮像素子と画像処理エンジンは「FinePix F550EXR」と「FinePix Z900EXR」に搭載しているものと同等。

 合焦速度について、実際に使ってみた所感としては、昼間の屋外などの明るい場所であれば、謳い文句通りの速度で合焦するように感じた。日陰になっている被写体でも、コントラストのはっきりしたものであればかなり歩留まりは良かったので、好条件であれば、いわゆる「動き物」にも十分対応できるだろう。

 逆に、夜間や屋内では、やはりAFが迷うケースは散見された。ただ、暗所での撮影は元々AFが苦手としている条件でもあるので、そのような場合でもMFが活用できる点はありがたかった。

鏡筒に焦点距離を表示しているレンズ基部にはMF用のフォーカスリングを備える
液晶モニターは上下方向に可動式。ローアングルやハイアングルで撮影する際に重宝する

レンズは旧機種から継承、手ブレ補正は連写合成式に

 レンズはFinePix HS10と同じく、焦点距離24-720mm相当、F2.8-5.6の光学30倍ズームレンズ。レンズ部分の外観はFinePix HS10とほぼ同様で、MF用のフォーカスリングがレンズの基部に位置している点も同じだ。

 FinePix HS10に搭載していた「5軸手ブレ補正」は非搭載となった。代わりに、連写した4枚の画像を合成することで、ノイズと手ブレを低減する「インテリジェントブレ防止」を備えた。望遠端の焦点距離720mm相当では、一般的に手ブレしやすくなるとされる「焦点距離分の1秒」を下回る1/400秒程度でシャッターを切っても、手ブレしているように見える画像の割合は10枚に1枚程度だった。

インテリジェントブレ防止は、プレミアムEXRオートモード時に利用できるMFも設定可能

 背面モニターは約46万ドットの3型(FinePix HS10の背面モニターは約23万ドット)。上下方向に可動する。EVFは20万画素の0.2型。EVFは表示のもたつきがやや気になるかもしれない。個人的には、EVFよりも背面モニターのライブビューの方がピント合わせをしやすかったので、EVFはあまり使わなかった。

 記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード。UHS-Iにも対応する。内蔵メモリーは約20MB。RAF形式のRAW記録に対応する。

 電源は単3電池4本。アルカリ乾電池、ニッケル水素充電池、リチウム電池が使用できる。本体サイズは130×90.7×126mm。電池と記録メディアを含む重量は約730g。アルカリ乾電池使用時の撮影可能枚数は約350枚(CIPA準拠)。FinePix HS10と比べて、約50枚増加している。

EVF接眼部。右側の窓はアイセンサー背面操作部。キーの操作レスポンスは良く、キビキビと動いてくれるのでストレスはない
ホットシューメモリーカードスロット
バッテリー室

色と明るさを認識する「プレミアムEXRオート」

 機能面では、先述のとおり、シーン認識機能「プレミアムEXRオート」を新搭載した。オート、風景、夜景、マクロ、ビーチ、夕焼け、スノー、青空、緑などの各シーンに加えて人物の有無、人物逆光などを認識し、EXRオートの各モード「HR」(高解像度優先)、「DR」(ダイナミックレンジ優先)、「SN」(高感度低ノイズ優先)と組み合わせ、それぞれのシーンに合致したモードへ自動的に切り替える。

 プレミアムEXRオート使用中の画面表示は、「『風景』『HR』(高解像度優先)」といった具合にアイコンが横に並ぶ。青空、夕焼け、緑といったように、特徴的な色のある被写体は、かなりしっかりと認識してくれることから、実際に被写体の色や面積を認識したうえで、適切なシーンと、EXRオートの各モードに切り替えていると見られる。旧機種のEXRオートでは、被写体の明るさからHR、DR、SNへ自動的に切り替えることはできたが、シーンを認識することはできなかった。

プレミアムEXRオート認識したシーンをアイコンで表示する

 動画記録は最大1,920×1,080ピクセル、30fpsのH.264。背面に録画専用ボタンを装備しているので、とっさに動画を撮りたいときに便利だ。ただ、FinePix HS10と同じく、露出モードはプログラムAE固定となっている。録画中の光学ズームにも対応するが、手で鏡筒を伸ばすことになるので、雑音やブレには注意したい。音声はステレオ。

フルHD動画記録に対応。320fpsのハイスピード動画を撮影することもできる動画記録スタンバイ時の画面

「動体キャッチ」など連写合成機能は一部カット

 撮影をするうえで気になったのは、処理待ち時間がやや長い点。キーの操作を受け付けなくなるので、慣れないうちは少し心配になった。JPEGを単写で撮るだけならば気にならないのだが、連写をしたり、RAWで撮影した場合は、ちょっと設定を変えようと思った時でも待たなければならないため、ストレスを感じる場合もあるかもしれない。

 FinePix HS10で指摘されていた起動時間の遅さに関しては、電源消灯後に20分程度のスリープ時間を設けることで、再起動にかかる時間を短縮する設定が用意された。この設定をオフにすると、電源を入れるたびに毎回5~10秒程度は待たされてしまうので、予備の電池に余裕があるならば、常時有効にしておきたい。

 このほか、旧機種より手持ちパノラマ機能「ぐるっとパノラマ360」を引き継ぐ。カメラを振ることで、360度のパノラマ写真が撮影できる機能。一方、FinePix HS10に搭載していた「動体キャンセル」と「動体キャッチ」は非搭載となった。いずれも5連写した画像をカメラが自動的に合成する機能。動体キャンセルは、画面のうち動く被写体だけを消去するもの。動体キャッチはその逆で、動体を多重露光のように幾重にも重なった表現で撮影できる機能。

電源を消灯した後にスタンバイ状態にしておく時間を設定する「クイック起動」ぐるっとパノラマ360で、カメラを振る方向を決めているところ

まとめ

 FinePix HS20EXRの特徴は、なんといっても35mm判換算で24-720mm相当の高倍率ズームレンズだろう。レンズ自体のスペックは旧機種と同じものだが、やはり広角端では豆粒のような被写体が、望遠端にズームすることで眼前に迫ってくるさまはインパクトがあるし、高倍率ズーム機ならではの体験だと思う。

 また、MFやマニュアル露出も可能になっていることから、初心者がシーン認識や自動設定を卒業して、自ら表現を考えながら撮影をし始めるところまで、長く使えるカメラだと思う。

実写サンプル

※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。縦位置の画像は非破壊で回転させています。

※動画作例のサムネイルをクリックすると撮影動画をダウンロードします。再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。

画角

広角端(24mm相当)FinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/60秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 4.2mm望遠端(720mm相当)FinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/750秒 / F4 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 126mm

・歪曲収差

広角端(24mm相当)FinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/34秒 / F3.2 / +0.3EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 4.2mm望遠端(126mm相当)FinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/9秒 / F6.4 / +0.3EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 126mm

・感度

FinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/27秒 / F3.6 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 8.9mmFinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/50秒 / F3.6 / 0EV / ISO200 / プログラム / WB:オート / 8.9mm
FinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/100秒 / F3.6 / 0EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 8.9mmFinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/180秒 / F3.6 / 0EV / ISO800 / プログラム / WB:オート / 8.9mm
FinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/300秒 / F4 / 0EV / ISO1600 / プログラム / WB:オート / 8.9mmFinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/480秒 / F4.5 / 0EV / ISO3200 / プログラム / WB:オート / 8.9mm
FinePix HS20EXR / 3,264×2,448 / 1/800秒 / F5 / 0EV / ISO6400 / プログラム / WB:オート / 8.9mmFinePix HS20EXR / 2,304×1,728 / 1/800秒 / F7.1 / 0EV / ISO12800 / プログラム / WB:オート / 8.9mm

・EXRモード

高解像度優先 / FinePix HS20EXR / 3,456×4,608 / 1/100秒 / F4 / +0.3EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 16.8mm高感度低ノイズ優先 / FinePix HS20EXR / 2,448×3,264 / 1/400秒 / F5 / +0.3EV / ISO800 / プログラム / WB:オート / 16.8mmダイナミックレンジ優先 / FinePix HS20EXR / 2,448×3,264 / 1/250秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO400 / プログラム / WB:オート / 16.8mm

●フィルムシミュレーション

プロビア / FinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/400秒 / F6.4 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 56.7mmベルビア / FinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/400秒 / F6.4 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 56.7mmアスティア / FinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/400秒 / F6.4 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 56.7mm
モノクロ / FinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/400秒 / F6.4 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 56.7mmセピア / FinePix HS20EXR / 4,608×3,456 / 1/400秒 / F6.4 / 0EV / ISO100 / プログラム / WB:オート / 56.7mm

●ぐるっとパノラマ360

FinePix HS20EXR / 9,600×1,080

●フルHD動画

42.0MB / 1,920×1,080 / 30fps / H.264
【2011年4月15日】外観写真の色合いを修正しました。




2011/4/12 00:00