【新製品レビュー】アップルiPhoto '11
アップルのエントリーユーザー向け写真ソフトで、動画の「iMovie」、音楽の「GarageBand」や「iWeb」、「iDVD」がセットになった「iLife '11」に含まれるかたちで販売されている。価格はシングルユーザーパックが4,800円、1世帯の5台までにインストールできるファミリーパックは7,800円となっている。
Intelプロセッサーを搭載したMacで、1GBのメモリーと5GBのハードディスク空き容量、1,280×768ピクセル以上のディスプレイ、Mac OS X 10.6.3以降の環境が必要だ。
■顔認識と位置情報を活用
基本的な部分は先代の「iPhoto '09」とそんなに変わってなくて、大きな違いと言えそうなのは、フルスクリーンモードが強化されているところくらい。「それだけなの?」と言われそうな気もしないではないが、画面をめいっぱい使って写真を見られるのは気持ちがいいし、ほかのソフトのウィンドウが隠れる分集中できるというメリットもある。
たいていの作業はフルスクリーンモードのまま行なえるようになっていて、メニューにアクセスする必要がある場合も、マウスカーソルを画面の上に持っていけばいいだけ。隠れていたメニューバーが表示されるようになっている。
「iPhoto」はアルバムタイプのソフトなので、まずは写真を取り込む必要がある。が、その前に、「環境設定」の「詳細」で「項目をiPhotoライブラリにコピー」のチェックを外しておくと、ライブラリと別の場所のマスターファイルを参照して表示するようになる。これを忘れると写真を取り込んだライブラリーファイルがばんばんふくれあがるので、大量の写真をすでに持っている人は大変なことになる。
さて、取り込んだ写真は「イベント」として表示される。もちろん、「イベント」の名前は自由に変えられるので、どういう内容の写真が入っているのかわかるように変えておくといいだろう。複数の「イベント」をひとつにまとめたり、分割することもできる。
「イベント」での表示画面。ちなみに、上半分くらいのは以前に紹介した「Aperture」のサンプル画像から流用した | こちらが「フルスクリーン」状態。画面いっぱいを使って見たり探したりができる |
マウスカーソルを画面の上端に持っていくとメニューバーがあらわれる。これは写真を取り込むところ | 各「イベント」には1コマ目の画像がサムネールとして表示されるが、意味不明なカットであることも多いので別の写真に変えられる |
「キー写真」を切り替えることで、そのイベントの内容がわかりやすくなる | もちろん、「イベント」の名前は自由に変えられるし、複数の「イベント」に分割したりひとつにまとめたりもできる |
写真の管理をらくちんにしてくれるのが「人々」。名前どおりの機能だが、これがけっこう便利ですごい。個人認識機能を備えていて、新装備の「人物を検索」機能を使うとライブラリーの中の、まだ名前を付けていない人物の顔が表示される。で、名前を知っている人を見つけたら、「未設定」になっているところをカチッとやって名前を付ければいい。
「人々」の便利なところはここからで、同じ人物と思われる写真をライブラリーの中から探し出してきて並べて見せてくれる。同一人物ならクリック、別人ならOption+クリックすればOK。マウス操作だけで簡単に分類できてしまうのだ。人物を撮る機会が多い人にはとっても便利な機能なはずだ。
こちらは「人々」の画面。名前が付いている人はこんなふうに表示される(Apertureのサンプル画像) | 「Elizabeth」をダブルクリックすると、写ってる写真が全部表示される |
写っている人に名前が付いているとこんなふうに表示してくれる | 名前が付いていない人は「未設定」になっている。クリックすれば名前を入力できる |
「人物を検索」しているところ。名前を知っている人を見つけたら、名前を付ける。知らなくても「Aさん」とかで整理してしまう手もある | 名前を付けると、同一人物の可能性が高い写真を「iPhoto」が探してくる。クリックすれば確定。らくちんなので人数が多くても負担は少ない |
GPSロガーなどを使って写真に位置情報を付加している人は「撮影地」も楽しめる。これも名前どおりで、地図はおなじみ「Google」である。写真を撮った場所にピンが立っていて、それをクリックすると、そこで撮った写真が見られるようになっている。
面白いのは、写真に記録されている位置情報から、その場所の地名やランドマークの名前を探してきてくれるところ。北緯○度○分、東経×度×分とか言われてもちんぷんかんぷんだが、「中央区」とか「墨田区」とかに変換してくれるので、とてもわかりやすい。なので、撮影地の名前から写真を探し出したりするのも簡単にできる。
「撮影地」の画面はおなじみの「Google」の地図からスタート。ピンが立っているのが写真を撮った場所。左上から撮影地を絞り込める | 先日レビューしたカシオ「EXILIM EX-H20G」のデータ。ピンをクリックするとその場所の地名やランドマーク名が表示される |
矢印をクリックすると、その場所で撮った写真が一覧できる | 表示される地名などは「iPhoto」が位置情報から検索してきたもの(複数の画像を合成してます)。気に入らなければ自作も可能だ |
左下の検索窓に地名を入力すれば、そこで撮った写真がまとめて表示できる。「中央区」で撮ったのは104枚あった | 画面下部に表示される「フィルムストリップ」はマウスカーソルを重ねると大きくなる。トラックパッドだとスワイプで横スクロールも可能。便利です |
写真の編集機能もいろいろ。これはちょっとした修正用の「クイック修正」の画面 | 「エフェクト」はさまざまな効果を適用できる。クリックの回数に応じて効果は強くなっていく |
「調整」画面ではかなり細かい作業もできる。さすがにトーンカーブとかはないけど、RAWだっていじれる |
■撮ったその後の楽しみを手助け
「iPhoto」は写真を「見る」、「管理する」だけでなく、楽しむための機能もたくさん備えている。そのひとつがスライドショー。凝った画面効果の「テーマ」が12種類選べて、BGMもいろいろある。「iPhoto」上で見るだけではなくて、ムービーとして出力することもできるので、友達に送ったり(サイズ的に迷惑にならなければですけど)Webで公開したりも簡単だ。
「スライドショー」の準備の画面。ここで「テーマ」、「ミュージック」、「設定」を行なう | 「撮影地」の「テーマ」での「スライドショー」中の画面 |
背景の地図はアップルのオリジナルで、その場所の地図を自動的にダウンロードしてきて表示するようになっている | 「スライドショー」には動画も入れ込める。動画再生中はBGMもストップするようになっている |
「スライドショー」はムービーとして書き出すことも可能 | 用途や見る装置に合わせてサイズが選べるのだが、このあたりのわかりやすさはアップルらしいところ |
電子メールで写真を送るのも、単純に添付ファイルにしてくっつけるのではなくて、見栄えよく並べて、しかもメッセージまで添えられるようなテンプレートが用意されているし、写真自体を添付する場合は自動的にほどほどの大きさにリサイズしてくれる。ファイルサイズが大きすぎて送信エラーになっちゃったなんて辛気くさいことはいっさいなし。
そのうえ、いつ、誰に送ったのかもおぼえていてくれるので、「そう言えば、あの人に送ったっけ?」なんてことを不安に思う必要もなくなる。もちろん、「Flickr」や「Facebook」、「MobileMe」で公開した写真にも、その情報が付加される。「ついうっかり」による送り忘れなどのミスを減らせるありがたい配慮だと思う。
写真をメールで送ったり、Webで公開したりも簡単にできる。 | メール用のテンプレートは8種類から選べて、写真自体を添付するかどうかも選べる |
送信済みの写真には「誰それに送ったよ」という情報が付加されるので、送り忘れミスが減らせる | 届いたメールはこんな感じ。JPEG画像として添付される |
あと、楽しいのがオリジナルのカレンダーや写真集、グリーティングカードを簡単に作れるところ。B4サイズより少し小さな33×25.4cmサイズの「カレンダー」は12か月から24か月の範囲でページ数が選べるし、開始月も自由。Mac OS Xに標準搭載されている予定表ソフトの「iCal」のデータを反映させることもできるので、家族のイベントや友達の誕生日入りのカレンダーができてしまうわけだ。
一方の「ブック」はハードカバーやソフトカバーが選べて最大100ページまで。ハードカバーなら33×25.4cmのXLサイズもある(ちなみにLサイズはA4サイズに近い28×21.5cm)。レーティング(評価)の★の数が多い写真は自動的に大きめにしてくれるし、テンプレートをベースに好きなようにレイアウトを変えたりもできる。
「カード」はハガキや二つ折りに加えて活版印刷による装飾入りのものもラインナップ。欧米風のグリーティングカードは日本ではあまりなじみがないだけに、目立つのは間違いない。特に活版印刷のカードはおしゃれだし高級感もあっておすすめだ。
いずれもいろいろなテンプレートが用意されているうえに、テンプレートを見る段階ですでに選択した写真がはめ込まれているという芸の細かさも要チェックだったりする。作成済みのアイテムは「プロジェクト」の画面で見ることができるし再編集も可能。仕上がりに満足できたなら、「iPhoto」上から簡単に発注できる。「プロジェクト」の画面は本棚のようになっているのだが、アイテムをクリックすると、そこだけライトが当たったようなエフェクトで見せてくれる。こういう遊び心も楽しい。
オリジナルの「カレンダー」や「ブック(写真集)」、「カード」を作るのも簡単 | 「カレンダー」は33×25.4cmサイズで12か月分で2,520円。テンプレートもいろいろ用意されている |
はじまり月も自由に変えられるし、月数は12から24か月の範囲で指定できる | こんなふうに「iPhoto」が自動でレイアウトしてくれる。タイトルももちろん自由だし、写真の大小を変えたり、入れ替えたりも簡単 |
オリジナルの写真集が作れる「ブック」。サイズや体裁、地色、ページ数もいろいろ選べる | 「ブック」の中身。「iPhoto」が自動で並べてくれた順番を変えたりも自由。見開きでドーンと見せることもできる |
新しく加わった「活版印刷」カード。温かみのある紙質に凹凸のある活版印刷によるイラスト入り | さすがに文字の部分は活版印刷ではないが、けっこういい雰囲気です |
「プロジェクト」の画面では、作成した「ブック」や「カレンダー」、「カード」が本棚っぽく並ぶ | アイテムをクリックすると、そこにだけライトが当たったかのような感じに。こういうちょっとした演出も見どころと言える |
■まとめ
最初、写真をライブラリーにコピーする「取り込み」オンリーだと書いたが、これは筆者のチェックミス(読者の方からご指摘いただきました。ありがとうございます)。ちゃんとライブラリーにコピーしない方法も選択できるようになっているのでご安心いただきたい。ただ、同時記録のRAWとJPEGが別々に表示されるのは残念な点だ。
もうひとつは、AVCHD動画に対応していないこと。多くのメーカーが採用しているMotion JPEGなどの動画ファイルは取り込めるし、スライドショーの中に動画を挟み込むことも可能だが、AVCHDだけはだめ。できれば、デジタルカメラで撮った動画は静止画とひとまとめにして管理したいところだが、AVCHDはパソコン上であつかうにはいろいろとややこしい部分もあって非対応となっている。
もっとも、「iLife」に入っている「iMovie」ならAVCHDもあつかえる。なので、ソニーやパナソニックのユーザーも困ることはないはずだ。「iPhoto」だけでも4,800円払う値打ちは十分にあるのに、「iMovie」や「GarageBand」なども付いているのだから、買って損なしは間違いない。
【2010年12月22日】「フルスクリーンモードが装備されているところくらい」を>「フルスクリーンモードが強化されているところくらい」に修正しました。
【2010年12月22日】ライブラリーに画像をコピーしない方法を見落として記述していました。お詫びして訂正いたします。
2010/12/22 00:00