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【 2016/05/23 】

【新製品レビュー】ライカX1

高品位なボディにAPS-Cセンサーを搭載
Reported by 中村文夫

 ライカX1は、APS-Cサイズの大型撮像素子を採用したコンパクトデジタルカメラだ。レンズは高品位単焦点レンズのエルマリート24mm F2.8。バルナック型ライカを思い起こさせるクラシカルなボディデザインを採用したほか、約20万円という実売価格など、さまざまな意味で、通常のコンパクトデジタルカメラとは一線を画す製品である。

 ライカのコンパクトデジタルカメラは、これまで富士フィルムやパナソニックからのOEMを基本としていた。そもそも日本のメーカーは、多機能を重視する傾向が強く、ライカの製品にもその影響が現れていた。だが、今回のX1の機能はとてもシンプル。これはX1がライカの自社開発によるものだからだ。そのため、いま流行りの動画機能もなければ、デジタルフィルターなど付加価値を高めるための機能も一切ない。まさに写真を撮ることに徹したライカらしい製品と言えるだろう。


被写界深度表現で有利なAPS-Cセンサー

 X1に搭載された撮像素子は有効画素数1,220万のCMOSセンサーで、デジタル一眼レフカメラのスタンダードであるAPS-Cサイズを採用している。大型撮像素子のメリットはいろいろあるが、やはり最も注目すべきは、被写界深度の浅い表現ができることだろう。撮像素子が大きいとレンズの焦点距離が長くなるので、同じF値で撮影しても被写界深度が浅くなる。さらに単焦点レンズの採用によりF2.8という明るい開放F値を実現。大型撮像素子と大口径レンズのコンビネーションが、より浅い被写界深度表現を可能にしたのだ。

 ただしX1のレンズの焦点距離は24mm。35mm判の36mmに相当する広角レンズなので、被写体までの距離が離れていると被写界深度が浅くなりにくい。これはX1に限らず広角レンズ全体の性質で、単にF値を変えただけでは被写界深度が思うようにコントロールできない。つまりX1で被写界深度を自在に操るには、カメラマンが自らの足で動いて撮影距離を変えることが重要である。これをマスターすれば、被写界深度の浅い撮影だけでなくパンフォーカス撮影も自由自在。35mm広角レンズを付けたフィルムカメラのような感覚で撮影が楽しめる。

 撮像素子の小さなカメラはレンズの焦点距離が短いので、同じF値でも焦点距離の短いレンズに比べると絞りの口径が小さくなる。さらに絞り径が小さいと回折現象により画質が低下するので、実際には絞りをそれほど絞れない製品がほとんどだ。だがX1の最小絞りはF16。またシャッターの最高速も1/2,000秒と速く、シャッタースピードと絞りの組み合わせに制約が少ないことも大きな特徴だ。

ライカIIIfとX1
ライカM2とX1。ともにボディ側面を円筒型にカットした伝統的なライカデザインを採用している ライカM2と上面の比較。X1はボディ上面にシャッターダイヤルと絞りダイヤルを配置。2つのダイヤルのポジションの組み合わせで、撮影モードを切り替える
電源OFF 電源ON

 一般的なコンパクトデジタルカメラのレンズは絞り羽根がシャッターを兼ねたタイプが多く、絞ったときの形がいびつで、美しいぼけ味はあまり期待できない。これに対しX1は絞り羽根が独立した虹彩絞りを採用。羽根の枚数は7枚と多く絞りの形が円形に近いので、ボケ味も自然で美しい。

 X1のレンズは、使わないときはボディに収納されていて、スイッチをオンにすると鏡筒が延びる沈胴式。実際に手にしてスイッチをオンにすると、想像していたより速いスピードで鏡筒が伸びる。コンパクトデジカメでは、起動時間の短さが強調されることが多いが、X1の場合は鏡筒が伸びきったときの動作そのものが撮影準備完了の合図になるので、使っていて気持ちがよい。このほかシャッター音にM型ライカの音を採用するなど、ライカファンの心をくすぐる演出も完璧。さらに使わないときは発光部が完全に隠れるシリンダー型のポップアップ式ストロボのデザインも秀逸だ。

M型ライカと同じデザインのストラップ用吊り金具 ストロボをボップアップさせた状態。不使用時は完全にボディに収納される。アクセサリーシューには外付けストロボも装着できる
レンズキャップは外付け式。付けたままスイッチをオンにすると警告表示が出る
ボディ外周部のリングは取り外し式。カタログには記載されていないが、コンバージョンレンズなどのアクセサリーが取り付け可能だ スイッチをオフにするとLCDモニターにLEICAのロゴが表示される
絞り羽根はシャッターと独立したタイプ。絞り羽根の枚数は7枚で、絞ったときも円に近い形になる(写真はF5.6に絞った状態) バッテリーチャージャーのプラグは形状の違うタイプに対応するため交換式になっている。プラグが折り畳めないので携帯に不便。かといって外して持ち運ぶと紛失の恐れがある

見え隠れするライカらしい強いこだわり

 X1は撮影モードの設定方法もユニークだ。一般的なコンパクトデジタルカメラは、撮影モード切り替え用専用ダイヤルや液晶モニターの設定画面でモードをセットする製品が多いが、X1はボディ上面のシャッターダイヤルと絞りダイヤルの組み合わせでモードを選ぶ方式。ダイヤル式操作のフィルムカメラで古くから用いられていた方式だ。

 さらにプログラムAE時はプログラムシフトができる。またシーンモードなど初心者向け機能を省略するなど、シンプルを通り越して「潔い」ほどの割り切り方だ。

各ダイヤルの組み合わせで、3通りの露出モードが選べる。シャッターダイヤルA/絞りダイヤルA=「プログラムAE」、シャッターダイヤルA/絞りダイヤルA以外=「絞り優先AE」、シャッターダイヤルA以外/絞りダイヤルA=「シャッタースピード優先AE」、シャッターダイヤルA以外/絞りダイヤルA以外=「マニュアル露出」

 それからフィルムカメラファンにとって何より嬉しいのは、3:2のアスペクト比を採用したこと。4:3の製品が主流のコンパクトデジタルカメラの中では少数派だが、35mmフィルムと同じアスペクト比を採用したところにライカらしさが強く現れている。要するに、デジカメになってもライカはライカなのだ。


実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

・フィルム選択機能

※共通設定:X1 / 約4.6MB〜5.0 / 4,272×2,856 / 1/640秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート
標準 Vivid Natural
白黒Natural 白黒HighContrast

・感度

 ノイズは、かなり抑えられているが、ISO3200では、ハイライト部が紫色になった。

ISO100
X1 / 約5.0MB / 4,272×2,856 / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / WB:オート
ISO200
X1 / 約5.0MB / 4,272×2,856 / 1/50秒 / F3.2 / 0EV / WB:オート
ISO400
X1 / 約5.0MB / 4,272×2,856 / 1/60秒 / F4 / 0EV / WB:オート
ISO800
X1 / 約4.9MB / 4,272×2,856 / 1/100秒 / F4.5 / 0EV / WB:オート
ISO1600
X1 / 約4.9MB / 4,272×2,856 / 1/200秒 / F4.5 / 0EV / WB:オート
ISO3200
X1 / 約5.1MB / 4,272×2,856 / 1/250秒 / F5 / 0EV / WB:オート

・絞り開放

 ズームレンズにありがちな汚いボケはなく、自然なボケが得られる。

X1 / 約3.9MB / 2856x4272 / 1/13秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート X1 / 約4.9MB / 4,272×2,856 / 1/15秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO400 / WB:曇り

・マクロモード

 マクロモードを選ぶと最短30センチの接写ができる。ただし焦点距離が短いので、倍率はそれほど高くならない。

X1 / 約3.9MB / 4,272×2,856 / 1/320秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート

・手ブレ補正オン

 X1の手ブレ補正機能は、高速と低速で2回シャッターを切り、これらのデータを画像処理して手ぶれを目立たなくする方式。そのため2回目の露光が終わるまで、カメラを動かてはならない。慣れるまで、ちょっとコツが要る。

X1 / 約3.8MB / 4,272×2,856 / 1/4秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:晴天

・そのほか

X1 / 約5.3MB / 2856x4272 / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート X1 / 約5.4MB / 4,272×2,856 / 1/30秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート
X1 / 約5.1MB / 2856x4272 / 1/250秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:曇り X1 / 約5.2MB / 4,272×2,856 / 1/60秒 / F3.5 / 0EV / ISO400 / WB:日陰
X1 / 約5.0MB / 4,272×2,856 / 1/30秒 / F8 / 0EV / ISO125 / WB:日陰 X1 / 約5.1MB / 4,272×2,856 / 1/30秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO800 / WB:オート




中村文夫
(なかむら ふみお)1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2010/5/31 00:00