【新製品レビュー】オリンパスμ-7020
薄型ボディに光学7倍ズームを搭載したμ-7000(2009年2月発売)の後継モデル。先代のレンズが37〜260mm相当(35mm判換算)だったのが、本機では28〜196mm相当に広角化。望遠側の迫力はやや落ちたものの、室内や風景には強くなったと言える。
撮像素子は1/2.33型の有効1,200万画素CCD。大手量販店の店頭価格は3万7,800円。カラーバリエーションは今回試用したシルバーのほか、ダークグレーとレッドの計3色がある。
■28〜196mm相当の7倍ズームレンズを搭載
μ-7000に比べて搭載レンズの画角が広角寄りにシフトした関係で、レンズユニットが若干大型化。ボディの奥行きが0.9mm増えて26.2mmになった。が、レンズ基部の突起を大きめにデザインすることで最薄部を19.9mmに抑え、スリムなイメージに仕上げている。
搭載レンズは5〜35mm F3〜5.9。35mm判換算で28〜196mm相当の光学7倍ズームだ。一般に、レンズの広角化は光学系全体の大型化につながりやすいが、本機ではDSA(デュアル・スーパー・アスフェリカル=大偏肉両面非球面)レンズやEDA(特殊低分散非球面)レンズといった最新の技術を投入。光学系のサイズをあまり大きくせずにレンズの広角端を37mm相当から28mm相当に広げている。
実写での画質は、高倍率機としてはまずまずのレベルと言える。全体的にシャープ感はあまり高くはないが、画面の周辺部でもアマさは見られるもののそれなりに解像しており、プリントでの鑑賞であれば不満を感じることはないだろう。センサーシフト式の手ブレ補正機構の効き目は、シャッター速度で3段分くらいありそうに感じられた。
液晶モニターは3型のハイパークリスタルII。輝度、コントラストともに高く、明るい野外でも十分な見やすさを確保している。解像度は23万ドットと一般的なレベルだ。右手側側面の端子カバー内にHDMI端子を新しく装備したのが特徴のひとつだが、動画スペックは640×480ピクセル、30fpsと平凡なレベルにとどまっている。
記録メディアは15MBの内蔵メモリーとxDピクチャーカード。microSD/microSDHCカードが使えるアダプターが同梱されている。電源は容量740mAhのリチウムイオン充電池で、CIPA準拠の撮影可能コマ数は150コマ。実写ではストロボを使用しなかったこともあって、170コマほど撮ったあたりから電池残量警告が点滅をはじめたものの、230コマ撮ってもまだ残量があった。
トップメニューには「撮影メニュー」、「設定メニュー」などがあるが、それほど多機能なカメラでもないので項目数は多くない。使用頻度の高い項目は、十字キー中央の「OK/FUNC」ボタンで呼び出せる「ファンクションメニュー」から設定変更できる。ちなみに、背面のボタン類は照明機能を内蔵しており、夜景などの手もとが暗いシーンで役立ってくれる。
搭載レンズは28〜196mm相当の光学7倍ズーム。開放F値はF3-5.9で、高倍率ズーム機としては悪くないスペックと言える | バッテリーは薄型のリチウムイオン充電池。撮影可能コマ数はCIPA準拠で150コマと少なめ |
「MENU」ボタンを押すと表示されるトップメニュー。左上に「マジックフィルター」がある | モードダイヤルには5つのシーンを自動的に認識する「iAUTO」やすでにおなじみの「BEAUTY」などのモードが搭載されている |
十字キー中央の「OK/FUNC」ボタンで呼び出せる「ファンクションメニュー。使用頻度の高い項目に素早くアクセスできる | 背面のボタン類は照明機能を内蔵。暗い場所でボタンの文字が読めない……なんて困らなくてすむのがうれしい |
設定メニューの「メニュー色設定」。メニュー画面の背景、選択した項目の反転色が好みに合わせて変えられる | 「カラー2」に変えるとこんな感じ。反転色はブルーになる |
■効果を見ながら撮れる「マジックフィルター」
本機の大きな特徴がトップメニューまたは背面右手側下の「OR(=オリンパスリコメンド)」ボタンから呼び出せる「マジックフィルター」。μTOUGH-6010などにも搭載されている機能だ。彩度を上げたカラフルな映像になる「ポップ」、トイカメラ風に仕上がる「ピンホール」は、E-30やE-620、E-P1の「アートフィルター」の「ポップアート」、「トイフォト」に近い。
「フィッシュアイ」と「スケッチ」は「アートフィルター」にはないもので、前者は魚眼レンズで撮ったかのような効果(画角は逆に狭くなる)が得られる。後者はエッジ部分だけを残して塗り絵の下絵のような輪郭線だけの画像が作成できる。「アートフィルター」の「トイフォト」は処理がかなり重いせいで、どうしてもストレスを感じるが、「ピンホール」はほとんど待ち時間なしで処理されるので、ずっと快適だ。
「OR」ボタンを押したときの画面。左から「パノラマ撮影」、「マジックフィルター」、「顔検出パーフェクトショット」、「比較ウィンドウ」 | しばらく待っていると簡単な説明文が表示される |
「マジックフィルター」の画面。十字キーで使いたいウィンドウを選んで「OK」ボタンを押すと実行 | こちらは通常の撮影モードの画面 |
「ポップ」選択時の画面。やっぱりやめた、というときには「MENU」ボタンを押す | 「ピンホール」選択時の画面。この状態では露出補正などは不可。できるのは、シャッターボタンを押すか、キャンセルするかだけ |
「フィッシュアイ」選択時の画面。撮影済みの画像を処理するのと違って手間もかからないし、効果を見ながら撮れるので安心だ | 「スケッチ」選択時の画面。記録画素数が2,048×1,536ピクセル以下に制限される |
なお、「OR」ボタンで呼び出せるのは「マジックフィルター」のほか、「パノラマ撮影」、「顔検出パーフェクトショット」、「比較ウィンドウ」で、このあたりは従来どおりだ。露出補正は「比較ウィンドウ」内にもあるが、十字キーの上キーからも呼び出せる。
これも従来どおりだが(一眼レフのも同じだったりする)、表示の切り替わりがページ単位なので、例えば、「-0.3」と「0.0」を見比べることはできない。こういうのは、露出違いの比較がひと目でできる「比較ウィンドウ」の趣旨からは外れているわけだから、早急に改善してもらいたいと思う。
個人的に、面白いなと感じたのは再生時の表示。ヒストグラムと詳細な情報表示付きの画面ではわざと画像にパースペクティブを付けて表示するほか、インデックス表示やカレンダー表示、連続的に画像送りをする際などのエフェクトも凝っていたりして目を楽しませてくれる。まあ、好き嫌いは分かれそうだが、従来の画一的な表示方法に比べれば新鮮に感じられる。
「比較ウィンドウ」は「ズーム」、「露出補正」、「ホワイトバランス」、「測光」の4項目から選択する | 「露出補正」時の画面。「-0.3」と「0.0」、「+1.0」と「+1.3」を並べて比較できないのは要改善ポイント |
こちらは「ホワイトバランス」の画面。オートホワイトバランス、太陽光、曇天の比較ができるのは便利だ | 再生時の画面。情報表示なしももちろん選べる |
ヒストグラムと詳細情報付きの画面。サムネイルが変形しているのが新しい。面白いとは思うが実用的にはちょっとなぁ、という感じ | インデックス表示はこんな感じ。アイディアとしては楽しい |
カレンダー表示はしばらく放っておくと、画像が1コマずつ入れ替わるようになっている | 連続的に画像送りをしているときの画面。画面の下のほうに映り込みまで表示されていて凝ってるなぁって感じ |
■まとめ
一番の魅力は、シャツの胸ポケットにもすんなり収まる薄さ、133g(電池・メディア別)の軽さのボディに、28mm相当からの光学7倍ズームを搭載していること。μ-7000に比べて、レンズの画角が広角寄りにシフトしたことで、室内や風景に強くなったのはうれしい。旅行用にも使いやすいし、いつも持ち歩く普段用のカメラとしてもおすすめできる。
また、楽しく遊べる新機能の「マジックフィルター」も買いのポイント。筆者個人としては「アートフィルター」の「ファンタジックフォーカス」や「ラフモノクローム」に相当するものがないのが残念に思えるが、その代わりに「アートフィルター」にはない「フィッシュアイ」、「スケッチ」があって、これはこれで楽しめそうだ。
■作例
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
・画角
35mmフィルムカメラ換算の焦点距離は28〜196mm。画角差はかなり大きい。一眼レフユーザーが見ても驚くような高画質ではないが、プリントで鑑賞したり、リサイズしてWebサイトに掲載するレベルであれば、不満を感じることはないだろう。
広角端 3,968×2,976 / 1/160秒 / F8.5 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当) | 望遠端 3,968×2,976 / 1/500秒 / F5.9 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 35mm(196mm相当) |
・感度
ベース感度はISO64と低めで、最高感度はISO1600。感度オートに設定した場合は最高ISO400まで、高感度オートでは最高ISO1600まで自動的にアップする。
「ファンクションメニュー」から「感度」を選択した状態の画面。感度設定範囲はISO64〜1600まで |
ピクセル等倍で見ると、ISO100でもノイズが出はじめているのがわかる。画質的に無理がないのはISO200までで、ISO400でも大きなサイズにプリントしないのであれば実用上は十分と言える。ISO800になるとノイズが目立ってくるが、ディテールはわりと残っているほう。ISO1600は色ムラも出て非常用と考えたほうがいい。
ISO64 3,968×2,976 / 1/60秒 / F9.6 / 0EV / WB:オート / 7.9mm(44mm相当) | ISO100 3,968×2,976 / 1/100秒 / F9.6 / 0EV / WB:オート / 7.9mm(44mm相当) |
ISO200 3,968×2,976 / 1/200秒 / F9.6 / 0EV / WB:オート / 7.9mm(44mm相当) | ISO400 3,968×2,976 / 1/400秒 / F9.6 / 0EV / WB:オート / 7.9mm(44mm相当) |
ISO800 3,968×2,976 / 1/1000秒 / F9.6 / 0EV / WB:オート / 7.9mm(44mm相当) | ISO1600 3,968×2,976 / 1/2000秒 / F9.6 / 0EV / WB:オート / 7.9mm(44mm相当) |
・マジックフィルター
目玉機能の「マジックフィルター」は、背面右手側下の「OR」ボタンから呼び出せる。露出補正やホワイトバランスなどを見比べられる「比較ウィンドウ」と同じ系統の機能と言える。
「ポップ」は彩度、コントラストが高く、被写体によってはちょっと毒々しいイメージになる。「ピンホール」はトイカメラ風に仕上がるもので、画面の四隅の落ち具合は「アートフィルター」の「トイフォト」よりも弱め。「フィッシュアイ」は、魚眼レンズで撮ったかのような効果が得られるが、画角は通常よりも狭くなる。「スケッチ」は被写体の輪郭線だけの線画が撮れるもので、これだけ画像サイズが2,048×1,536ピクセルになる。
マジックフィルター:オフ 3,968×2,976 / 1/15秒 / F3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当) | マジックフィルター:ポップ 3,968×2,976 / 1/15秒 / F3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当) |
マジックフィルター:ピンホール 3,968×2,976 / 1/15秒 / F3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当) | マジックフィルター:フィッシュアイ 3,968×2,976 / 1/15秒 / F3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mm(28mm相当) |
マジックフィルター:スケッチ 2,048×1,536 / 1/160秒 / F3 / 0EV / ISO500 / WB:オート / 5mm(28mm相当) |
・自由作例
【2009年8月26日】パノラマ機能についてxDピクチャーカードに依存する旨の記述がありましたが、実際には本体内での処理が可能です。該当記述を削除しました。
2009/8/26 00:00