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【 2016/05/23 】

【新製品レビュー】ペンタックス「K-7」

〜質感高い小型ボディに高性能を凝縮
Reported by 中村文夫

 *ist Dから始まったペンタックスのデジタル一眼レフカメラも、ついに新たなステージに突入した。K-7以前、シャッターや絞りの駆動メカ、AFや測光機能など、カメラの基本機能は、フィルムカメラ時代の流用が多かったが、K-7は、これらのメカを一新。従来のシリーズとは、まったく違うカメラに生まれ変わった。またフィルム時代の名機、ペンタックスLXを意識したデザインを採用しながら、ボディのコンパクト化を達成。それでいて、スペックは歴代のデジタル一眼レフの中で最高レベルと、コンパクトと高性能を両立させた、非常にペンタックスらしいカメラと言えるだろう。
 
 K-7を前にして、何から説明してよいのか迷っている。とにかくK-7は、機能満載。まさに「できないことはありません。」といった優等生だ。さすがに全部を説明すると、いくら誌面があっても足りないので、実際に私が使ってみて、便利だと感じた機能をピックアップしてレポートすることにしたい。

K-7レンズキット。本体に加えて、DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WRが付属する。実勢価格はK-7ボディが13万円前後、K-7レンズキットが15万円前後

ボケ味の変化を確認できるファインダー

 最初にとり上げるのはファインダーだ。K-7のファインダー視野率は100%。フィルム時代を含めてペンタックス初のスペックだ。これまでのK20Dの視野率は95%。数値にすれば5%上がっただけだが、実際に使ってみると、これまでこんなに余計なものが写っていたのかと思うほどの違いがある。また視野率を高めるには、フォーカシングスクリーンだけでなく、ペンタプリズムを始めとするファインダー光学系の大型化が避けられないが、K-7のペンタ部のサイズは、これで100%? と思えるほど、コンパクトにまとまっている。

視野率約100%、倍率約0.92倍のペンタプリズムファインダーを装備

 K-7のファインダーを覗くと、これまでに比べ少し暗くなったように感じる。これは光の透過率を下げて、MF時のピントの合わせやすさと、忠実なボケをを追求したためだ。一般的にカメラのフォーカシングスクリーンは、透過率を上げると拡散性が低くなり、ピントの山がつかみにくくなる。つまりファインダーの明るさとピントの合わせやすさは、反比例するのだ。普及機は、開放F値の暗いズームレンズと組み合わせて販売することが多いうえ、MF時のピントの合わせやすさもそれほど重要視されないので、明るさを追求する傾向が強い。この意味ではK-7のスクリーンは玄人向けと言えるだろう。特に大口径の単焦点レンズを使用する際に光学プレビューを選べば、F値の違いによる微妙なボケ味の変化をファインダーで確認しながら撮影できる。

 これまでのペンタックスのデジタル一眼レフの測光は、フィルム時代の方式をベースにしていた。K20Dの分割数は16でシビアな露出が要求されるデジタルカメラとしては決して多い方ではない。K-7は77分割。分割数が増えただけでなく、露出演算アルゴリズムも一新され露出精度がいちだんと向上した。ペンタックスのデジタル一眼レフは、第1号機の*ist Dの時代から「測距点と露出制御の関連づけ」をオン/オフする機能を備えているが、K-7以前の機種でこれをオンにすると、あまりよい結果が得られないことが多かった。だがK-7は、この点を見事に解決。AFロックと同時にAEロックが作動するような感覚で撮影できるようになった。

 このほかCPUを内蔵していない旧いレンズを従来のボディに組み合わせた場合、レンズによっては、適正が大幅にずれることがあったが、この点も改善されているようだ。

K-7のペンタ部のデザインは、LX(手前左)を意識したもの。またコンパクトさは、小型軽量を売り物にしたMEシリーズを思い起こさせる。いわばK-7は、ME並みのコンパクトなボディにLXに匹敵する高機能を詰め込んだカメラと言えるだろう K-7のストロボ発光部は、K20Dに比べ高い位置にある。そのため鏡筒の太いレンズでもケラレが少なく、赤目も起きにくい
モードダイヤルにロック解除ボタンが追加され、不用意に撮影モードが変わらないようになった。映写機のマークは動画ポジション。またダイヤルの下にあるゴムキャップで隠れた端子は、外部マイク接続用。ステレオミニプラグのマイクが使用できる アクセサリーシューの手前にある小さな穴が内蔵マイク。この場合は音声はモノラルで記録される
ボディサイドには、通常のUSB端子と並んで、HDMI端子を装備 記録メディアは、SDまたはSDHC。K20Dにあったカバーのロック機構は省略された
電源は新タイプの高容量リチウムイオン電池に変更された

SRならではの「自動水平補正」と「構図微調整機能」

 K-7は、電子水準器と自動水平補正という、画面の傾きを防ぐ2種類の機能を搭載している。どちらもボディ内のセンサーがカメラの傾きを検知。電子水準器はパーグラフで傾きを表示、自動水平補正は画面の傾きを自動的に補正する機能だ。後者の自動水平補正は、傾きを打ち消す方向に撮像素子を傾けるペンタックス独自の機能で、撮像素子移動式の手ブレ防止機構の応用である。補正できる角度は、手ブレ防止機能オン時で1度、オフ時で2度。数値にするとわずかだが、実際の画面では想像以上に大きな効果がある。なお補正後の画面は、光学ファインダーで見える像とは、わずかにずれることがあるので、視野率100%を生かした厳密なフレーミングのときには電子水準器。機動性を生かした撮影には自動水平補正がベター。実際には三脚使用時は電子水準器、手持ち撮影時は自動水平補正と使い分けるとよいだろう。

 ただし、カメラが基準にしているのは、地球の重力に対する「絶対水平」なので、絵柄によっては傾いているほうが自然に見えるときがある。したがって常時オンにするのは避けるべきだ。

ライブビュー画面に写し出された電子水準器。水平になった状態 右に傾いた状態。コントラストAFを選ぶとフォーカスエリアを自由に移動できる

「撮像素子が動く」ことを利用した機能に、「構図微調整機能」がある。これはライブビューでの使用が前提で、十字キーで画面の水平と垂直方向の移動。後ダイヤルで傾きが調整できる。これの機能の最大の長所は、カメラを固定したまま構図の微調整ができることだ。特に超望遠レンズを三脚に載せて使用した場合など、ほんの少しカメラの向きを変えただけで画面が大きく動いてしまう。さらに高倍率の接写時は、カメラの向きを変えると被写体の前後の関係が崩れ、最初のイメージとは違った写真になることがある。また雲台の中には固定ネジを締めると角度が微妙にずれる製品もあり、さまざまなメリットが予想される。このほか超広角レンズを組み合わせれば、シフト、ライズ、フォールといった大判カメラで使われるアオリの効果も期待できる。

 レンズ補正は、ディストーション補正と倍率色収差補正の2種類を搭載。いずれも、レンズの収差データを基に補正を行なうので、これらの機能が利用できるのは、デジタルカメラ用のDA、DFAレンズに限られる。またレンズ補正の処理には5秒ほど時間がかかるが、撮影中の5秒は、とても長く感じられる。レンズ補正はRAWデータからもJPEGへの現像時に行なうこともできるので、補正が必要になりそうなカットは、とりあえずRAWで撮影しておき、撮影の空き時間や移動時間を利用して補正を行なうと効率的だ。またディストーションを補正すると画面周辺部がわずかにカットされるので、厳密なフレーミングが要求されるときは、画面に少し余裕を残しておくとよい。 

構図微調整機能。上下左右方向への調整が可能 カメラ内でのHDR撮影も行なえる

 HDRは、適正露光の後に±3EVのカットを連続して撮影。適正、アンダー、オーバーの3カットを合成し、ダイナミックレンジの広い画像を得る機能だ。通常の輝度の再現域は7EVだから、この機能を使えば、7+6=13EVの輝度が再現できることになる。これまではレタッチソフトを必要とした機能だが、K-7は、この機能をカメラ本体に内蔵している。またK-7のシャッターとミラーの駆動メカは独立しているので、ミラーを動かすことなくシャッターだけを連続作動させることが可能。HDR撮影時にカット間の時間的なずれを最小限に抑えられる。ただし、いくら連写スピードが速いとは言え、三脚撮影が前提。試しに手持ちで撮影してみたが、像の輪郭がずれてしまい使い物にならなかった。また被写体自体が動くものだと、動いた部分だけ多重露光のようになり面白い効果が出る。HDRの効果は標準と誇張の2種類から選ぶことができるが、誇張は夜景が昼間のように写ったりと画が不自然になりがち。とりあえずは、標準を選んでおけば間違いない。

今後の方向性を感じさせる製品

 K-7は多彩なデジタルフィルターを内蔵しているが、実際に使ってみて便利に感じたのは、ソフトフォーカスのシャドーぼかしだ。従来のソフトフォーカスフィルターは、画面全体に紗がかかったようなイメージになるが、新しく採用されたシャドーぼかしを使うと、シャドー部に影響を与えることなくソフト効果が出せる。記事末に掲載した作例を見れば分かる通り、黒の締まりが良く、本物のソフトフォーカスレンズで撮影したような描写になる。

 デジタルフィルターの種類は全部で16種類。さらに最高20回まで、フィルターを重ねることができる。フィルターを重ねてゆくと思わぬ効果が現れることがあるが、重ねた枚数が増えるとどんなフィルターを使ったのか自分でも分からなくなる。だが、K-7はフィルターの履歴も記録されるので安心。ほかの画面にも同じ効果を再現することができる。

デジタルフィルターを掛けたい画像を決め、フィルターマークを選びOKボタンを押すとフィルターメニューが表示される。この画面でフィルターの種類を選ぶ ソフトフィルターでシャドーぼかしオンを選んだ状態
「フィルターを再現する」を選ぶと、フィルターの履歴が表示される フィルター履歴を表示させた状態。最大で20まで履歴が記録され、ほかの画面に同じ効果を加えることができる

 このほかカスタムイメージに、「ほのか」という新しいイメージが追加された。ペンタックスのホームページには「色の芯を残しつつ彩度を控えめに再現するもので、シックな雰囲気、軽やかな空気感が、シーンの印象を深めます。」とある。とりあえず、庭のアジサイを写してみたところ、鮮やかなピンクが淡い色合いになり、不思議な雰囲気になった。またポートレートを撮影した写真では、色あせたカラープリントのようになってしまった。以前の「雅」は、意外と抵抗なく受け入れられたが、「ほのか」は、正直言って使い方が難しい。今回は機材の借用期間が短く天候にも恵まれなかったため、これだ!!という使い道が見つからなかったが、被写体によって向き不向きがあることだけは確かなようだ。

カスタムイメージに、新たに「ほのか」が追加された カスタムイメージの調整項目にキーを追加
コントラストはシャドーとハイライトを分けて調整できる

 K-7を使ってみて、「PCレスの思想」を強く感じた。これまでパソコンを使わないと不可能だった処理のほとんどがカメラボディ内でできてしまう。高価な画像処理ソフトを買わずに済むという経済的メリットに加え、「これまで家に帰ってから行っていた面倒な作業を、できるだけ外で済ませてしまう。」という意味でも画期的なカメラと言えるだろう。決してパソコンを否定するわけではないが、「フィルムを現像に出したら、あとは上がりを待つのみ。」というフィルムカメラ時代に少し近づいたような印象を持った。

 2003年に*ist Dでデジタル一眼レフ市場に参入して、ペンタックスは今年で6年目。ペンタックスのお家芸である小型軽量ボディに加え、撮影後の画像処理に対する考え方も含め、今後のペンタックスの方向性を示す製品と言えるだろう。

バッテリーグリップ「D-BG4」(オープン価格)を装着した状態。実勢価格は2万円前後 D-BG4の前方操作部
D-BG4の上部を後ろからみたところ グリップは、専用リチウムイオン電池のほか単3型電池6本が使用可能。リチウムイオン電池ホルダーには、予備のSDカードが収納できる
グリップにはボディ側の端子カバーだけでなく、グリップを取り外した際に使用する端子カバーの収納部が設けられている

作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
  • 一部にβ機での作例があります(作例データ中に注記あり)

 モデル:木村優里(ルフ・プロモーション )

 

・自動水平補正

※共通データ:K-7 / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WR / 4,672×3,104 / 1/80秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42.5mm

自動水平補正オフ。画面が右に傾いている 自動水平補正オン。画面が水平になった。

・構図微調整機能

※共通データ:K-7 / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WR / 4,672×3,104 / 1/80秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 42.5mm

調整なし
画面を右上へ限界まで移動 画面を右下へ限界まで移動
画面を左下へ限界まで移動 画面を左上へ限界まで移動
画面を限界まで右回転 画面を限界まで左回転


・レンズ補正

※共通データ:K-7 / 約9.5MB / 4,672×3,104 / 1/13秒 / F3.5 / 0EV / ISO640 / WB:オート / 18mm

補正なし ディストーション補正オン。窓枠のタル型の歪みが補正された

※共通データ:K-7 / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WR / 4,672×3,104 / 1/30秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 47.5mm

補正なし 倍率色収差補正オン。このレンズはもともと倍率色収差が少ないようで、それほど顕著な差は出なかった

・HDR

 HDRなしの画像は、照明の部分が白とびし、シャドー部がつぶれているが、オンにした画像では、白とびと黒つぶれが改善されている。なおHDR誇張の画像は補正されすぎて、どこか不自然に見える。

※共通データ:K-7 / DA Fish-Eye 10-17mm F3.5-4.5 ED [IF] / 4,672×3,104 / 1/3秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 13mm(K-7β機で撮影)

HDRなし HDR標準
HDR誇張

・デジタルフィルター

※共通データ:K-7 / DA★ 55mm F1.4 SDM / 4,672×3,104 / 1/400秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 55mm

元画像 ソフトフォーカス、シャドーぼかしオフ
ソフトフォーカス、シャドーぼかしオン レトロ、水彩画、ベースメークの3種類のフィルムを重ねて使用

・カスタムイメージ

※共通データ:K-7 / A Macro 50mm F2.8 / 4,672×3,104 / 1/100秒 / F8 / 0EV / ISO400 / WB:電球色蛍光灯 / 50mm

カスタムイメージ:ほのか カスタムイメージ:ナチュラル
カスタムイメージ:ほのか
K-7 / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WR / 約8.8MB / 3,104×4,672 / 1/320秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 28.1mm

そのほかの新機能

 動画から切り出した静止画。このときの画素数は1,280×720ピクセルになる。元データが動画のため、シャッタースピードとISO感度は、Exifに記録されない。

K-7 / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WR / 約433K / 1,280×720 / F5.6 / 0EV / WB:オート(K-7β機で撮影)

 ホワイトバランスに追加されたCTE(Color temperature enhance)。オートホワイトバランスとは逆の方向に補正し、色を強調する機能。鮮やかな緑や淡いピンクなどをより鮮明に再現できる。

K-7 / FA★ 80-200mm F2.8 ED IF / 約7.2MB / 4,672×3,104 / 1/100秒 / F2.8 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 200mm(β機で撮影)

・ISO感度

 ISO1600からノイズが目立ち始め、最高の6400では、かなりざらついた感じになる(いずれも高感度NRは「中」に設定)。

ISO400
K-7 / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WR / 約8.8MB / 4,672×3,104 / 1/3秒 / F5.6 / 0EV / WB:オート / 55mm
ISO800
K-7 / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WR / 約9.9MB / 4,672×3,104 / 1/6秒 / F5.6 / 0EV / WB:オート / 55mm
ISO1600
K-7 / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WR / 約7.9MB / 4,672×3,104 / 1/13秒 / F5.6 / 0EV / WB:オート / 55mm
ISO3200
K-7 / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WR / 約9.2MB / 4,672×3,104 / 1/30秒 / F5.6 / 0EV / WB:オート / 55mm
ISO6400
K-7 / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WR / 約10.4MB / 4,672×3,104 / 1/50秒 / F5.6 / 0EV / WB:オート / 55mm

キットレンズ「DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WR」による作例

K-7 / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WR / 約8.8MB / 4,672×3,104 / 1/40秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 50mm K-7 / DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WR / 約9.1MB / 4,672×3,104 / 1/4秒 / F4.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 37.5mm
ペンタックスK-7関連記事リンク集
http://dc.watch.impress.co.jp/backno/dslr/569.html 


中村文夫
(なかむら ふみお)1959年生まれ。学習院大学法学部卒業。カメラメーカー勤務を経て1996年にフォトグラファーとして独立。カメラ専門誌のハウツーやメカニズム記事の執筆を中心に、写真教室など、幅広い分野で活躍中。クラシックカメラに関する造詣も深く、所有するカメラは300台を超える。1998年よりカメラグランプリ選考委員。

2009/7/14 00:00


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