ENJOY! PHOTO with M.ZUIKO PRO & PREMIUM

オリンパス交換レンズ特別レビュー(その6)
M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8

人物ポートレートに最適!開放から恐るべき高画質の大口径望遠レンズ

他のレンズの記事もあります。こちらからどうぞ!
ENJOY! PHOTO with M.ZUIKO PRO & PREMIUMバックナンバー

「M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8」は、最高のポートレートを撮るべく生み出された高級感溢れる大口径中望遠レンズである。

レンズ構成は9群10枚。望遠系レンズで発生しやすい軸上色収差を補正するEDレンズを3枚と、大口径レンズで発生しやすい球面収差を補正するHRレンズを2枚採用するという、贅沢な光学系を全長69mmの大口径中望遠レンズとしては小柄なボディに収めている。

鏡筒の造りも非常によろしく、オール金属製の外装は細部まで高精度に造りこまれており精密感が高い。

OLYMPUS OM-D E-M1に装着。大口径レンズながらコンパクトに抑えられ、重量バランスもよい。シルバーの他にブラックもラインナップされている。

幅広のフォーカスリングは、カメラボディに装着した際に指が自然に届く位置にあり、スムースで感触のよい回転フィーリングと相まって操作性にも優れるのは本レンズの特筆すべき点のひとつ。大口径レンズでたびたび必要となる、MF時の微妙なピント合わせも安定してこなすことができる。

35mm判換算で150mm相当の画角は、単焦点レンズの焦点距離としては珍しいため、はじめのうちはどう使いこなすべきか迷ってしまうこともあるかも知れない。しかし、この画角こそが、マイクロフォーサーズシステム規格のカメラでポートレートを撮る上で、最適なポジションとなるように設定された結果なのである。

ポートレート向きである理由

4/3型センサーを搭載するマイクロフォーサーズ規格のカメラで、35mm判換算150mm相当の画角がポートレート向きである理由。それはズバリ、ピントを合わせた被写体の前後のボケを大きくできるところにある。

被写界深度は浅く目にピントを合わせると前後はすぐにボケはじめる。大きなボケが要求されることの多いポートレート撮影で十分以上の働きをしてくれる焦点距離であり、マイクロフォーサーズシステム規格の特性をよく考えた設定だといえる。E-M1・絞り優先・ISO400・F1.8・1/2,000秒・-0.7EV・WB:オート

マイクロフォーサーズシステム規格は、35mm判フルサイズに比べると同じ画角でも装着するレンズの焦点距離は約半分となる。そのため被写界深度は深くなる。

だが、本レンズの場合、元より実際の焦点距離が中望遠域である75mmなので、開放F1.8の大口径を活かせばポートレートを撮影する上で必要となる大きなボケ効果を、十分以上に享受することが可能という訳だ。

画角は35mm判換算150mm相当となるため、より効果的な圧縮効果を期待することができる。ポートレート撮影ではパースを抑えて、人物像を歪むことなく正確に写し撮ることが可能である。E-M1・絞り優先・ISO400・F1.8・1/1,600秒・0EV・WB:オート

しかも画角は150mm相当であるため、望遠レンズならではの圧縮効果をより強く期待でき、被写体の形(ポートレートの場合は人物像)を歪みなく正確に表現できるという点でも有利である。

また、ポートレート撮影では被写体となる人物とのコミュニケーションの取りやすさが重要になるが、換算150mmであれば、モデルと会話をしたり表情を読みとったりするための撮影距離を保つ上でも問題はない。こうしたことからも、マイクロフォーサーズでポートレートを撮るために、よく考えられて設定された焦点距離であることが分かる。

ポートレートで重要な、被写体とのコミュニケーショをする撮影距離を保ちやすく、会話をしたり表情を読みとるのも容易である。作例ではガラス面にモデルがよく映りこむように姿勢を変えてもらいながら撮影した。E-M1・絞り優先・ISO400・F1.8・1/5,000秒・+0.7EV・WB:オート

より大きなボケを必要とする場合は、なるべく開放付近で撮影することが望ましい。通常、写真用レンズは絞り込むほどに描写性能が向上するものであるが、本レンズは開放から抜群に高いシャープネスを発揮し、逆光によるフレアなども見られず非常に抜けのよいクリアな描写を実現している。世に多く存在するポートレート向けレンズの中でも卓越した描写性能であることは間違いないだろう。

世に数あるポートレートレンズの中においても非常に優れた描写性能を誇る本レンズ。白い背景の中に溶け込みやすい白い服を着た難しい条件でも、ピント面の高い解像力でモデルを浮き上がらせることができた。E-M1・絞り優先・ISO400・F1.8・1/3,200秒・+2.0EV・WB:オート

絞った場合でも、解像感が必要以上に高くなることで画がガサツになるようなこともなく上品さを保ちつづけてくれる。絞りを開いて人物を浮かび上がらせてもよく、絞って平面性を強調した表現をしてもよく、自由度の高い使いやすいレンズである。

絞っても解像力が高まりすぎてギスギスしくなることがない上品さを合わせもつ。壁とモデルの両方を被写界深度にいれて画面の安定感をとってみた。周辺まで非常に高い画質である。E-M1・絞り優先・ISO400・F5.6・1/400秒・+0.7EV・WB:オート

もちろん、人物ポートレート以外にも

もちろん人物ポートレート以外での撮影でも重宝する。身近な被写体である猫を主題にして本レンズを使ってみよう。

人物撮影だけでなくいろいろなシーンで使いでのあるレンズだ。猫の場合、被写体が小さくなることもあって、さらにボケ効果を得やすい。猫と後ろの植物との距離は2mもないが、完全に色として溶け込ますことができた。E-M1・絞り優先・ISO200・F1.8・1/1,000秒・0EV・WB:オート

猫は人物よりもずっとサイズが小さいので、画面全体に配置すると撮影距離が短くなる分、背景のボケを人物の場合よりさらに大きく表現できる。

描写性能はこの場合でも効果的に発揮され、毛の1本1本を繊細に写し取りながら柔らかくも美しいボケの中に猫を印象的に描き出すことができた。

猫の顔を大きく捉えて撮影。一般的な一眼レフ用の中望遠レンズではなかなか難しい撮影倍率である。露出をオーバー目にしても全く破綻していない描写性能にも注目してもらいたい。E-M1・絞り優先・ISO200・F1.8・1/640秒・+1.0EV・WB:オート

最短撮影距離は0.84m。性能重視の中望遠レンズとしては一般的な最短撮影距離であるものの、画角は換算150mm相当であるから撮影倍率はずっと高くなって猫の顔を画面いっぱいに写すことが可能だ。クローズアップ的な使い方も得意で、こうしたところにも自由度の高さを感じることができるというもの。

猫を撮るというと、筆者の場合はなるべく明るく可愛く撮りたいと思うことが多く、露出をオーバー目にすることがよくある。もともとのレンズ設計の素性のよさに加え、レンズ表面に施された「ZEROコーティング」の効果もあり、絞り開放付近でのオーバー露出という悪条件にも負けず、解像感を破綻させずにコントラストを保っているのはさすがだ。

周りの風景込みで猫の仕草を撮影。こうした場合は撮影者がベストな撮影位置を探すために動き回る必要があるが、大口径中望遠ながらコンパクトなサイズは取りまわしがよく行動しやすい。E-M1・絞り優先・ISO200・F2.0・1/2,000秒・+0.7EV・WB:オート

換算150mm相当なので大口径望遠レンズと考えて活用すれば、近寄ることが難しい警戒心の強い猫でも離れた場所から撮影できる。撮影者が動き回ってベストな撮影ポジションを探す場合、一眼レフ用の150mmレンズと比べて、格段に小さく軽い本レンズの取り回しのよさが大変にありがたいのである。

AF方式をコンティニュアスAFにして、こちらに向かってくる猫の目にピントを合わせつづけた。開放付近の浅い被写界深度であっても、速く正確にAFが作動してくれるので心強い。E-M1・絞り優先・ISO200・F2.2・1/5,000秒・-0.3EV・WB:オート

被写界深度が浅くピント合わせが難しいところであるが、MSC機構を用いたインナーフォーカス方式の採用により、AFは極めて高速で正確、なおかつ静粛である。コンティニュアスAFで動く猫を追っても、バッチリと“猫の目”にピントを捉えてくれるので安心して撮影することができた。

大口径なので暗い室内でも比較的シャッター速度を速くすることができる。オリンパス製カメラの優れた高感度性能と手ブレ補正機能を合わせて活用すれば恐いものはない。狭い室内で高画質なアップ撮影を楽しんでみよう。E-M1・絞り優先・ISO200・F1.8・1/125秒・0EV・WB:オート

このレンズでしか味わえないこのクオリティ!

オリンパスは交換レンズのスペックを設定するのが上手なメーカーであると思う。同社が提唱するマイクロフォーサーズシステム規格は、35mm判フルサイズやAPS-Cサイズに比べると、画角や被写界深度の関係でやや独自性の強い規格なのであるが、ラインナップするレンズのスペックは全て、そうした特性を的確に判断し、性能と効果のバランスを最適にとって設計している。

「M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8」は、そうしたオリンパス製レンズの長所を端的に表現した、マイクロフォーサーズシステム規格のための「ハイグレードポートレートレンズ」だと言えるだろう。

焦点距離を75mmとして換算150mm相当の画角としたことで、ポートレートの画作りに最適なボケ効果の能力を確保し、なおかつ他よりも圧縮効果や撮影倍率の面で自由度を高くすることに成功した。

描写性能は極めて高く、どんな条件下であっても常に解像感にすぐれたクリアで気もちのよい画を提供してくれる。使っていて喜びを感じることのできる金属鏡筒の質感や、フォーカスリングをはじめとした操作感触もトップクラス。およそ欠点らしい欠点を見つけることのできない高性能・高品質レンズである。

本稿執筆時点での大手量販店での価格は9万1,180円前後(税込)。高性能と高い質感が凝縮された本レンズであれば、必ずや価格を超えたレンズ本来の真価に満足できるはずだ。

デジタルカメラマガジンでも連載中!

デジタルカメラマガジン 2014年12月号」でも、M.ZUIKO PRO & PREMIUMをテーマにした連載が掲載されています。あわせてどうぞ!

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に過ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)など。