ミニレポート

ファームアップで6.5コマ/秒→9コマ/秒に!その実力を試してみた

(OLYMPUS OM-D E-M1)

オリンパスのミラーレスカメラ「OM-D E-M1」のファームウェアがVer.3.0にアップデートされた。昨年9月にVer1.4からVer.2.0へとアップデートされた際には、8項目もの大幅な機能拡張がなされたが、今回のVer.3.0へのアップデートでは2項目と数は少ない。

しかしそのうちの一項目「連写HモードでコンティニュアスAF(C-AF)連写中のAF追従に対応」は、これまでミラーレスカメラがあまり得意ではないとされてきた、動きの速い被写体を捉える際にも効果的なアップデートであると想像できる。

そこで今回はファームウェアをアップデートする前のOM-D E-M1 Ver.2.0と新ファームウェアにアップデートしたOM-D E-M1 Ver.3.0を使用して、実際にC-AFでの連続撮影を比較してみる。

Ver.3.0とそれ以前の具体的な違いをおさらいしよう。連写LモードだけだったC-AF時のAF追尾撮影が、Ver.3.0からは連写Hモードでも追尾できるようになった。連写Lモードの最大6.5コマ/秒、連写Hモードは最大9コマ/秒だ。

今回の使用レンズは、「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」。開放F値はF2.8、画角は35mm判換算で80-300mm相当となる。リニアモーターで制御するDUAL VCMフォーカスシステムを搭載した高速なAFが可能なレンズだ。解像力も非常に優れており、筆者自身スポーツ撮影はもちろん、風景やポートレート撮影においても幅広く活用している。

なお、OM-D E-M1には81点のコントラストAFに加えて37点の像面位相差AFが搭載されている。E-M1 Ver.3.0では連写Hモードでシャッターを切り続けている間、AFエリアの表示が像面位相差AFのものとなる。これにより連写Hモード時のAF測距は像面位相差によって行われているものと推察される。

撮影対象は私自身撮影する機会が多い自転車ロードレース。これまでにもE-M1 Ver.2.0とM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROの組み合わせでロードレースを撮影したこともあり、その経験を基にした体感上の違いも検証の一端とする。

今回撮影したロードレースは東京の中心部に位置する明治神宮外苑外周道路をコースとして開催された「第九回明治神宮外苑大学クリテリウム」である。2014年度の全日本学生ロードレース・カップ・最終戦であり、大学生の都市型チーム・ロードレースの頂点を決する大会だ。都心の一般道を一時的に封鎖して開催されることで注目されている大会でもある。

クリテリウムとよばれる周回レースなので、1回だけ目の前を走り抜けるツール方式のレースと比べ、周回する数だけシャッターチャンスが訪れる。一般観戦者でも規制ラインの外側からならば、だれでも撮影が可能なレースだ。なお今回の撮影では主催者より取材許可を得たうえで取材者規制ラインの内側で撮影を行っている。

実地で検証

まずは、今大会のコース中でいちばん長い直線コースにて、カメラに向かってくる選手をC-AFで追従撮影した。

E-M1 Ver.2.2は連写L(最大6.5コマ/秒)、E-M1 Ver.3.0は連写H(最大9コマ/秒)に設定。その他のカメラ設定は同じにしてある。

共通カメラ設定

  • シャッタースピード:1/1,000秒
  • 絞り:F2.8
  • 感度:ISO400
  • 測距エリア:AFグループターゲット(中央9点)
  • 手ぶれ補正:S-IS AUTO
  • ホワイトバランス:オート
  • 仕上がり:Natural
  • 焦点距離:150mm

選手がカメラから見てほぼ同距離を走る、始点から終点間のコマ数を数えた。念のため、「比較1」と「比較2」の2パターン試している。

結果は、Ver.2.2がいずれも15コマ。E-M1 Ver.3.0は比較1が22コマ、比較2が20コマとなった。

比較1(北から南向きに走行)

E-M1 Ver.2.2→15コマ
E-M1 Ver.3.0→22コマ

比較2(南から北向き走行)

E-M1 Ver.2.2→15コマ
E-M1 Ver.3.0→20コマ

撮影時間は画像のExifデータのタイムスタンプからいずれも2.3秒前後と思われるので、E-M1 Ver.2.2、E-M1 Ver.3.0ともにほぼメーカー公称値に近い結果といえる。つまりE-M1 Ver.3.0はE-M1 Ver.2.2よりも同じ距離を走る選手を5〜7コマ細かく撮影することが出来たわけだ。

先ほどの画像で、次はAFの追従具合を見てみる。

E-M1 Ver.2.2は比較1と比較2どちらも全コマでAFが追従している。

E-M1 Ver.3.0では比較1の始点から2,3,4コマ目が少し前ピンに、19,20コマ目が若干後ピンになっている。比較2では19コマ目が若干後ピンになっている。これらは画像を等倍表示して判る程度のものだ。

E-M1 Ver.3.0における終点間際の後ピンは、選手のジャージ胸元に書かれたロゴにピントが合わされていることから、これは路面を見てる選手の顔が影となりコントラストが低くなっていることで、コントラストの高いジャージのロゴをピント検出のターゲットとしてカメラが選択した結果だろう。AFグループターゲットを使用しているが故の結果だと推察される。

以上、Ver.3.0となったE-M1はVer.2.2のそれよりも明らかにパフォーマンスが高くなった。秒間の撮影コマ数が増えるということは、より記録できる瞬間が増え撮影後の画像セレクトの際に選択肢が広がることになる。わずかなAFのズレこそあったが、これは撮影者が最適な設定とAFスタートの最適なタイミングを見いだすことで吸収できる差だと感じる。

まとめ

より高いパフォーマンスのカメラを手にするには、これまではさらに高性能なカメラを選ぶか新型に買い替えるのが常識だった。ところがこのOM-D E-M1ではファームウェアのバージョンアップだけで、しかも無料でこれだけの機能アップが為される。ユーザーにとってとても嬉しいことだ。

しかもミラーレスカメラでありながらデジタル一眼レフカメラのプロ機にも迫る程のパフォーマンスを実現している。

ミラーレスカメラであるOM-D E-M1には、当然ながら撮影時のミラーショックが無い。もちろんシャッターの開閉に伴うショックは発生するが、最大9コマ/秒という高速連写(AF追従でなければ最大10コマ/秒連写)でありながら、連続撮影時にミラーを上下させる一眼レフカメラのショックとは比べ物にならないほど小さい。

しかも一眼レフカメラのプロ機に300mm F2.8クラスの望遠レンズを装着した際の大きさおよび重さと比較すると圧倒的に小型で軽い。

今回、E-M1+M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROの組み合わせを2セット持ち歩いたが、軽量で取り回しもよいため疲労度も少なかった。機動性という点では間違いなく一眼レフカメラでのシステムよりも優れている。

また時折激しい雨も降り出したのだが、ボディ、レンズとも防塵防滴なので、雨除けも必要とせず撮影に集中できたことも特筆にあたる。

もちろん色々な側面から見た場合、一眼レフカメラのプロ機との差がない訳ではないが、価格差のことを考えれば十分に検討に値するシステムに成長していると言えるだろう。

次期ファームウェアアップデートではどのような成長を見せてくれるか。期待せずにはいられない。

E-M1/M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO/ISO400/F2.8/1/640秒/0EV/WB:オート/150mm
E-M1/M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO/ISO400/F2.8/1/1,000秒/0EV/WB:オート/150mm
E-M1/M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO/ISO800/F2.8/1/1,000秒/0EV/WB:オート/150mm
E-M1/M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO/ISO640/F3.5/1/1,000秒/0EV/WB:オート/82mm
E-M1/M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO/ISO400/F2.8/1/1,250秒/0EV/WB:オート/150mm
E-M1/M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO/ISO400/F2.8/1/1,000秒/0EV/WB:オート/150mm

取材協力:日本学生自転車競技連盟

礒村浩一

(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現ビジュアルアーツ)卒。広告プロダクションを経たのちに独立。人物ポートレートから商品、建築、舞台、風景など幅広く撮影。撮影に関するセミナーやワークショップの講師としても全国に赴く。近著「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド(玄光社)」「今すぐ使えるかんたんmini オリンパスOM-D E-M10基本&応用撮影ガイド(技術評論社)」Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy