ミニレポート

ファストハイブリッドAFの速さを体感してみた

(ソニーα6000)

今回はAFまわりのことを書こうと思うので、E 55-210mm F4.5-6.3 OSSをお借りした。ワタシのα6000にとっては初の純正レンズである。ボディと色違いなのはちょっと残念だが。

α6000には、コントラスト検出と位相差検出の2つの方式のAFを組み合わせたファストハイブリッドAFが搭載されている。それはいいのだけれど、持っているレンズが純正じゃないのばかりなので、実はそのすごさを知らないままだったりする。

手持ちのレンズでも、画面中央の測距点では位相差検出AFがはたらいているっぽいのだが、それがα6000の能力のめいっぱいなのかどうかは分からないし、ぶっちゃけTouit 12mm F2.8のAFの遅さは折り紙付きだ。

まあ、動かない被写体ならこれで十分だし、基本的に動かない被写体しか撮らないから少しも困ってはいない。とはいえ、3月に買って、すでに7か月も経っているというのに、そのあたりが把握できていないというのはまずいよなぁ、という気もしたので、1度試してみようと思い立った。ようは、純正の望遠レンズを使って、動きものを撮ってみようというわけだ。

で、ソニーからE 55-210mm F4.5-6.3 OSSをお借りした。ダブルズームキットに同梱されている望遠ズームなので、すでにお持ちの方も多いだろう。お値段は税別で4万2,000円。大手量販店の店頭価格は、税込みで3万円を切るぐらい。お手ごろ価格である。お借りできたのがシルバーで、ワタシのα6000に付けると、見た目が少々ちぐはぐになってしまったが、ちゃんとブラックも用意されているので心配はいらない。なんの心配かは不明だが。

ピント合わせはインナーフォーカス方式で、AF駆動はそこそこ速い。音も静か。夜の室内ぐらいの明るさだと、ふわふわとピントが迷うような動作も見られるが、明るい野外では、すすすっと合ってくれる。気持ちのいい動きである。

望遠端の開放F値がF6.3と暗いのは物足りないところだが、その分、ぐぐっと軽い(345gである)。マイクロフォーサーズ用の軽量級望遠ズームは190gとか200gとかだったりするので、そのあたりと比べると重いものの、体力の心配をしなくてすむのはありがたい。なかなかよいなぁ、と思う。

さて、α6000の連写スピードは11コマ/秒。速度優先連続撮影モードと違って、機能の縛りのない11コマ/秒。かなりのハイスペックである。この速さにAFがついてきてくれるかどうかが心配の種である。

ちなみに、JPEGのLサイズ、FINE画質なら連続で49枚、RAWやRAW+JPEGでも21枚撮れる。サンディスクのExtreme Pro SDHCカード(95MB/秒のタイプである)で試してみたところ、おおむねスペックどおりの枚数が撮れた。

で、実写である。

テスト撮影なので、えらい人みたいに、要所要所で数カットずつ、みたいなやり方はしない。ひたすら連写である。適当なタイミングでシャッターボタンを全押しして、あとはバッファがいっぱいになって止まるまで連写である。かっこうのいい撮り方でないのは間違いない。

撮影時の印象は、「速い」そして「食い付きがいい」だった。スピード的には文句なしレベル。近づいてくる電車の先頭車両の前面が画面からはみ出すぐらい楽に追従してくれる。それでいて、11コマ/秒連写である。一眼レフ、いらないねぇ、と思えてしまうすごさであった。

ただ、遠ざかっていく被写体に対する追従性はもうひとつ弱いように思えた。近づいてくるときの粘りはなかなかのもので、連写中にピントが外れても、数コマ後にはしっかり合わせなおしてくれる。ところが、電車が離れていくシーンでは、測距点がちゃんと重なっているのにピントが外れてしまったり、フォーカスエリアモードが測距点自動選択となる「ワイド」のときには測距点自体がアサッテの位置に移動してしまったりするケースが少なからずあった。

こういう傾向は一眼レフの位相差検出AFでもあることだし、ある程度距離が近い条件ではちゃんとピントを合わせてくれていたので、普通に撮る分にはあまり心配しなくていいように思う。

設定を何パターンか変えて撮ったのが全部でアバウト2,500枚。そのうちの、このパターンはいらなさそう、だとか、テスト向きじゃないカット、引いて撮っていたり、ブレていたりするのを省いた残りが1,800枚ほど。これを1枚ずつピントが合っているかどうかをチェックして、だいたいのAF性能を見てみましょう、というのが今回のお題である。

もちろん、手間はかかるし、くたびれる作業なのだが、被写体である電車のスピードがまちまちなうえに、ピントが合いやすい車両とそうじゃない車両があったりするし、こちらの腕の問題もある。ムラやバラツキが多いので、そういうのを均して全体の傾向を見るには数で頑張るしかない。結果、目をしばしばさせながら1,800枚の画像をチェックするわけである。

といっても、作業自体は難しくない。最初は50%縮小でピントの合否をチェックして、「これはやっぱりピンボケっていうよね」と判定した「×」画像をはねる。次に、ピクセル等倍にして、「これぐらいならピントが合ってることにしちゃおう」と思える「○」画像と、「ちょっとアマい気もするけど小さいサイズのプリントならいけるよね」的「△」画像に分ける。

ワタシ的には「○」画像の率がいちばん重要だと思うが、普通に使う分にはもう少しゆるめに見てもいいかもしれないので、「○」画像と「△」画像を足した数字もチェックする。

ちなみに、フォーカスエリアモードは、179点の位相差検出測距点をフルに使う「ワイド」と、任意の1か所だけを選択する「フレキシブル(フレームサイズはLにした)」の2パターン。狭めの範囲で自動選択となる「ゾーン」と、中央1点固定の「中央」は省略した。

フォーカスエリアモードは4種類。いちばん広いエリアをカバーする「ワイド」と、自由に位置を変えられる1点測距の「フレキシブル」を使ってみた

それから、画面内を移動する被写体を追尾して測距点が移動するロックオンAFは「切」と「入(シャッター半押し開始)」の2パターン。

被写体の色や形などの情報を利用して追尾するロックオンAF機能は、「切」と「入(シャッター半押し開始)」の2パターンを試した
被写体をロックオンしたときの表示。「これ」と決めた被写体に二重枠線が表示される
ただし、「ワイド」時は、どこにロックオンするかはカメラ次第なので、こんなふうに微妙に外してくれることもある。また、被写体が遠いときは、背景にロックオンしてしまうこともあった

コントロールホイールの中央ボタンでロックオン/解除となる「入」も試したが、動きものを撮るにはシャッターボタンの半押しでロックオン、指を離せば解除となる「入(シャッター半押し開始)」のほうが便利だったので、これも省略。

ちなみに、こちらは、ロックオンAF「入」時の画面。ロックオンするのに、コントロールホイールの中央ボタンを押す必要があるので、ちょっと面倒くさい。普通は「入(シャッター半押し開始)」のほうが便利だと思う

計4パターンの掛け合わせの結果をまとめたのがこちらの表である。

×率 △率 ○率 ○+△率
ワイド・ロックオンあり 37.2% 22.7% 40.0% 62.8%
ワイド・ロックオンなし 40.6% 24.5% 34.9% 59.4%
フレキシブル・ロックオンあり 35.0% 26.8% 38.2% 65.0%
フレキシブル・ロックオンなし 43.5% 7.3% 49.2% 56.5%
全体 39.7% 18.1% 42.2% 60.3%

大ざっぱには「○」画像と「△」画像の率を合わせた「○+△」率が目安となる。全体の平均で60.3%だから、まあまあ悪くはない。多くの場合、低価格タイプの望遠ズームはAFの追従性はけして高くはない。というのを織り込んで、なおかつ11コマ/秒という連写の速さも考えれば(連写が速いほどAFは速くないといけないので大変なのだ)、上々の結果といっていいと思う。

パターン別で見てみると、「ワイド」「フレキシブル」ともにロックオンAFを使ったほうが歩留まりとしてはよさそうだ。「ワイド」の場合は、ロックオンしなくてもカメラが自動で被写体を見つけてピントを合わせてくれることもあって、ロックオンAFのオンオフの差はあまりない。「フレキシブル」はロックオンAFを使ったほうが、あからさまなピンボケは減らせるようだ。

ただし、「ワイド」は、画面に対して被写体が小さいときに(おおざっぱには、距離が遠いとき)、狙ってない場所(電柱だったり地面だったり)にピントが合ってしまうことがあって、これがちょっと困る点である。電車がまだ遠めのときに、狙いどおりの測距点を選んでくれないこともあったし、最初から最後までピントが合わなかったことも数回あった。そういうときにはさすがにシャッターを切っていないので、機械的にばりばりやっていたら、もっと低いスコアになっていたはずだ。

「ワイド」の撮影時の画面。測距点のカバーエリアをカギカッコで示している

一方、「フレキシブル」のロックオンAFなしの「○+△」率が低いのは、ここだけ遠ざかる電車を撮っている回数が多かったからで、それで成績が悪くなっている。が、にもかかわらず、「○」率が飛び抜けて高い。そうなった理由はなんともいえないが、可能性としては、カメラが処理する情報量の差が関係しているかもしれない。

こちらは1点AFの「フレキシブル」で測距点の位置を選択するときの画面(フレームサイズはL)
「フレキシブル」でロックオンしたときの画面。「ワイド」と違って、確実に狙った被写体にロックオンできる。また、顔だけサイズの枠が表示されるケースが多い
AF-C(コンティニュアスAF)モードだと、こんなふうに、ピントが合った位相差検出AFの測距点のフレームが表示される。少々うざい気もするが、見ていて楽しい
ピントが合ったときの表示。位相差検出の測距点のフレームは表示されない
  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

以下の作例はフォーカスエリアモード「フレキシブル」の中央1点。ロックオンAF「切」で撮ったもの。49コマ中「×画像」が18枚、「△画像」が7枚、「○画像」は24枚。「○+△率」は約63%。10コマ/秒で連写できて、これだけの合焦率ならかなり楽しめる。(共通設定:F6.3 / ISO100 / 絞り優先AE / 210mm)

次のカットは、「ワイド」のロックオンAFありで連写したシーケンスから抜き出したもの。撮りはじめはちゃんと電車にロックオンしてくれていたのが、途中から地面にロックオンしてしまった。こういうのはちょっと困るのである。(共通設定:F6.3 / ISO100 / 絞り優先AE / 210mm)

被写体にロックオンした状態では、画面内のどこからどこまでが被写体なのかをチェックしつづけなくてはならないし、その範囲内の測距点からの情報を全部使ってピント合わせを行なうことになる。「ワイド」も同様だ。が、「フレキシブル」のロックオンAFなしなら、使う測距点はひとつだけ。フレームサイズがLの場合、その範囲内にある位相差検出の測距点は5つだけなのだ。処理すべき情報の量にものすごく差があるわけだ。

これは一眼レフでも同じ傾向があって、自動選択AFよりも任意の1点だけのAFのほうが、反応がよかったりピントの精度が高かったりする。処理しないといけない情報量が少ない分が、成績に影響している可能性があるわけで、それが理由であれば、納得できる結果だと思う。

とはいえ、被写体の中のピントを検出しやすい部分に測距点をきちんと重ねてやる必要があるので(電車の場合、ぬめっとしたデザインの特急とかがドアップになると、ピントが拾えなくなってしまうケースが出てくる)、動きものを撮り慣れていない人には多少リスキーかもしれない。

被写体の動きがある程度把握できていて、こんなフレーミングで撮るんだ、というのが固まっているなら、このセッティングがベスト。そうでない場合は、ロックオンAFを使って失敗を減らす方向で考えるのがよさそうだ。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら