DSC-HX5Vの第2回のテーマは動物園だ。筆者が名古屋在住ということもあり、撮影場所は東山動植物園である。ここ数年デジカメのレビューで訪れることが多く、年間パスポートを購入して撮影している。通常の入園料が500円、年間パスは2,000円なので5回で元が取れるお得なパスだ。
動物園の撮影の前に、DSC-HX5Vの操作性について述べてみたい。購入したのが3月後半なので、1カ月ほど使用したことになる。慣れたとは思うが、決して操作性が良いとは感じていない。過去に使用したサイバーショットに共通するのだが、設計者が想定するユーザーと筆者に温度差があるような感じだ。
例えば筆者が頻繁に変更するのは、ISO感度と露出補正。そこそこ変更するのはマクロ、ストロボ、セルフタイマー(2秒)、画像サイズといったところ。機種によってはオートブラケットあたりも操作する。あくまでも筆者の使い方を前提にした話になるが、これらの設定変更が背面のボタンなどで簡単にできると、気持ちよく操作できる機種と感じる。
DSC-HX5Vの背面にあるコントロールボタン(4方向ボタン)は、ストロボ、セルフタイマー、画面表示設定、スマイルシャッターが割り当てられている。設計者はスマイルシャッターをよく使う機能としているが、筆者は使わないので、まずここで温度差を感じるわけだ。
また、画面表示設定は明るさと表示内容を組み合わせて選択する方式だ。標準、明るい、明るい+画像データ、明るい+情報表示なし、の4つから選ぶのだが、標準の明るさで画像データありや表示なしという組合せはない。明るさと表示内容は別だと思うので、納得がいかない仕様だ。ブラケットや連写を使用するとISO感度が800までに制限されることなども少々気になるが、これも仕様だと諦めている。
実際にISO感度や露出補正を変更する場合は、MENUボタンから行なうことになる。例えば、ISO感度の設定を連続して変えながら撮る場合、再びMENUボタンを押すと、ISO感度の項目が表示される。普通と言えば普通だが、この辺りは好感が持てる。
DSC-HX5Vは多機能なデジカメである反面、シャープネス、コントラストといった画質調整や色調補正などはカメラ任せでしか撮ることができない。もう少し青空を強調したいと思っても、設定する機能はない。基本的には初心者向けのお任せカメラというポリシーで作られている感じがする。
■10倍ズームは楽しい
さて、話を動物園に戻そう。年に何回も撮影に来るのだが、撮影していて楽しいのは高倍率ズームレンズを搭載したデジカメだ。3〜4倍のズームでは、どうしても歯がゆいことが多い。その点では10倍ズームのDSC-HX5Vは期待できる。とはいえ相手が動物なので、いい絵が撮れるか否かは運によるところが多い。
撮り始めると、やはり10倍ズームは動物園では威力を発揮する。望遠端ばかりを使用するわけではないが、取り敢えず250mm(35mm換算)くらいあれば気持ちよくフレーミングをすることができる。フラミンゴを金網越しに撮る場合も、レンズの最大径が一眼レフカメラより小さいので、すっぽり金網の穴に入れることができるのも、コンパクトデジカメの強みだ。AF速度やシャッターのタイムラグもそれほど遅くはない感じ。アシカが投げられた餌をくわえた瞬間も普通に撮ることができた。
この日撮ることができなかったのはライオンだ。ライオンは、以前は堀を挟んで遠くから見ていたのが、数年前にワオチューブという施設ができ、堀の中に作られたガラス部屋から間近に見ることができる。空いている日はガラス張りの部屋は独占状態で、ライオンの移動に合わせて撮影ポジションを変えながら撮ることができるが、この日は混雑していて長時間の撮影は無理と判断、小さな子どもたちに遠慮して諦めることにした。
動画でも撮ろうかと、動きを期待して入ったカンガルー舎だったが、思いっきり休息モードでここも期待外れとなった。ふと見ると、カンガルーの姿勢が、砂浜に寝そべるグラビアアイドルのポーズに似ていたので、脚が長く見える構図で撮ってみた。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
金網の隙間にレンズを入れ望遠端で撮影 DSC-HX5V / 約4.1MB / 2,736×3,648 / 1/250秒 / F5.5 / -0.3EV / ISO125 / WB:オート / 42.5mm |
こちらは近くにいたフラミンゴ DSC-HX5V / 約4.1MB / 2,736×3,648 / 1/200秒 / F11 / -0.7EV / ISO125 / WB:オート / 17.9mm | 近くにいるフラミンゴの顔を望遠端でアップ DSC-HX5V / 約3.7MB / 2,736×3,648 / 1/500秒 / F5.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 42.5mm |
これも望遠端で撮影 DSC-HX5V / 約4.1MB / 3,648×2,736 / 1/400秒 / F5.5 / -0.7EV / ISO125 / WB:オート / 42.5mm | 飼育員が投げた餌をパクリ DSC-HX5V / 約3.9MB / 3,648×2,736 / 1/640秒 / F5.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 42.5mm |
グラビアアイドルのポーズ? DSC-HX5V / 約4.0MB / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F11 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 35.3mm |
DSC-HX5V / 約4.2MB / 2,736×3,648 / 1/250秒 / F11 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 26.5mm | DSC-HX5V / 約4.2MB / 3,648×2,736 / 1/125秒 / F11 / -0.3EV / ISO125 / WB:オート / 35.3mm |
DSC-HX5V / 約4.2MB / 3,648×2,736 / 1/1,000秒 / F5 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 22.3mm | DSC-HX5V / 約4.1MB / 3,648×2,736 / 1/200秒 / F11 / -0.7EV / ISO125 / WB:オート / 28.4mm |
■ペンギンを高速連写
DSC-HX5Vはメカニカルシャッターによる10コマ/秒の高速連写が可能だ。10コマ/秒の連写は、筆者が使用しているEOS 7Dより高速だ。ただし連写できるのは10枚なので、1秒で完結する動きしか撮ることができない。DSC-HX5Vの魅力的な機能の一つだが、実際に使用できるシーンは制限される。
1秒に撮りたいシーンを収める難しさに加え、連写を行なうと次の撮影まで長時間待たされる辛さもある。実際にいくつかの条件で連写終了から次に撮影可能になるまでの待ち時間を測定してみた。
Class 6のSDHCメモリーカードの場合、画像サイズを10M(3,648×2,736ピクセル)に設定すると17秒、VGA(640×480ピクセル)にすると15秒となった。記録メディアを古いSDメモリーカード(512MB、推定2MB/秒)にすると、画像サイズ10Mで19秒、VGAで15秒となった。これらの数字を見ると、画素数(=ファイルサイズ)やメディアの記録速度による差はそれほど大きくないので、メディアに書き込む時間よりも、デジカメ本体の内部処理に時間を要している感じだ。
1秒撮って10数秒待たされ、それからフレーミングをして撮ると20秒ほど空白の時間があるので、運動会などでの使用は難しいだろう。一眼レフカメラの場合は10コマでも20コマでも連写できるので、動く被写体を撮る場合は、やはり一眼レフカメラに分がある。
使いこなしの難しい高速連写だが、この機能を使って動物園で撮ってみたい被写体がある。それはペンギンが水に飛び込む瞬間だ。筆者にとってペンギンが飛び込む瞬間は、過去に一度も撮れたことがないシーン。動体ならではの難しさに加え、それ以前に10分20分待っても、お目にかかれない日がある。
2月にソニーサイバーショットDSC-TX7を持って撮影に訪れた時も撮れなかった。頭を下げ、飛び込もうとするペンギンを見たので、「キターッ」と思いシャッターを押したが、実際に飛び込んだのは2秒ほど後で、撮ることはできなかった。だが、今回以前にレビューで最近2度撮影に来て気付いたことがある。ペンギンにも飛び込むが苦手な臆病者がいるということだ。何度も飛び込みそうな体制を取っても、飛び込まないペンギンはいつまで待っても飛び込まない。一発で飛び込まないペンギンには期待しないことだ。
はたして、筆者はペンギンの飛び込みを撮れるのか。ペンギンの動きに注意しながらシャッターチャンスを待った。DSC-HX5Vの高速連写は、まるでヒーローものの必殺技の様だ。ウルトラマンがスペシウム光線を1回しか使わないのと同じ一発勝負、その瞬間をジリジリしながらの撮影だ。
※共通設定:DSC-HX5V / 約3.8MB / 3,648×2,736 / 1/200秒 / F11 / -0.3EV / ISO125 / WB:オート / 14mm
飛び込むペンギンを高速連写 |
この日は運がいいことに、2度も飛び込むシーンに出会うことができた。しかも、2度目はペア飛び込みという貴重なシーンだった。だが、焦って飛び込む前にシャッターボタンを押してしまった前回の反省もあり、ギリギリまで待ってシャッターを押したが、2度ともやや遅れ気味という結果となった。10枚の後ろ半分は、すでにペンギンは水の中だった。
撮れた絵もブレ気味で、大したことのない写真となった。プログラムオートで撮ったのだが、カメラが選んだ設定はシャッター速度1/200秒、F11と1/320秒、F11。もう少し速いシャッター速度にすればよかったと反省が残る結果となった。いつの日か、バッチリ撮れたらまた報告したい。
※共通設定:DSC-HX5V / 約3.9MB / 3,648×2,736 / 1/320秒 / F11 / -0.3EV / ISO125 / WB:オート / 14mm
■動物園の動画
動物園では多くの動物を金網越しに見ることになる。一眼レフカメラなら、高価で明るい望遠レンズを使えば、手前の金網をボカして撮ることもできるが、コンパクトデジカメの場合は難しい。金網越しの撮影は、静止画より動画の方が目障り感が少なく感じられる。動き回るカラカル(食肉目ネコ科)は、動画なら帰宅後に子どもと見ても楽しめる映像だが、静止画で撮るとそれほどインパクトのない写真になってしまうだろう。
テレビにつないで見る場合は、動画ごとの再生の重さは気にならないが、パソコンで見る場合は、撮った動画によって重さに差が感じられる。金網越しの動画は、背景(この場合は前景)が常に動くのでかなり重い映像となっている。シロクマの映像の方が軽めとなっている。
1週間後のゴールデンウィークに、お子様と一緒に動物園に繰り出す方もいると思う。もしデジカメの買い替えを考えているなら、高倍率ズームを搭載したデジカメをお勧めしたい。ズーム倍率10倍で、動物園の撮影も10倍楽しい、となるだろう。
- サムネイルをクリックすると、撮影した動画ファイル(拡張子を.m2tsから.mtsに変更)のダウンロードが始まります。
- 再生についての問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
金網越しでも動画は静止画ほど目障り感がない(カラカル) 1,920×1,080 / 33.2MB / AVCHD |
1,920×1,080 / 45.6MB / AVCHD |
■東山スカイタワーでスイングパノラマ
今週のスイングパノラマは動物園に隣接する東山スカイタワーで撮影した。年間パスと別料金ということもあり、普段は登らないタワーの展望台から、西側の市内中心部方面を撮ってみた。写真の左側には遠く名古屋港周辺、中央は名古屋駅周辺の高層ビル、右側にはナゴヤドームを見ることができる。遠景のパノラマを撮ると、スイングパノラマの解像度の低さで物足りない感じがする。後継機種では、もっと高解像度なパノラマ写真が撮れることを期待したい。
東山スカイタワーから撮影したスイングパノラマ DSC-HX5V / 約2.4MB / 4,912×1,080 / 1/1,000秒 / F3.5 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 4.2mm |
撮影地:東山動植物園、東山スカイタワー
2010/4/21 19:43