気になるデジカメ長期リアルタイムレポート

ニコンD7100【第8回】

純正の望遠端300mmズームレンズを比較

 ボクは、従来モデル「D7000」の頃から、DX専用の標準ズーム「AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6 G ED VR」を常用レンズとして使用している。この16-85mmは「D7100」のレンズキットにも指定されているレンズであり、35mm判換算で24-127.5mm相当の画角をカバーする広角側も望遠側も満足度の高いレンズである。

左から、AF-S NIKKOR 28-300mm F3.5-5.6 G ED VR、AF-S DX NIKKOR 55-300mm F4.5-5.6 G ED VR、AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G (IF)。そして、AF-S DX NIKKOR 18-300mm F3.5-5.6 G ED VRを装着したD7100。

 だが、望遠画角を重視する人なら「AF-S DX NIKKOR 18-105mm F3.5-5.6 G ED VR」、もしくは「AF-S DX NIKKOR 18-200mm F3.5-5.6 G ED VR II」と組み合わせた別のレンズキットを選ぶだろう……。とはいえ、本格的な望遠効果を望むなら、157.5mm相当(105mm)の画角は物足りないし、300mm相当(200mm)の画角も「もう少し望遠を!」という印象を持ってしまう(個人的には)。

 そこで、望遠端の実焦点距離が「300mm」のズームレンズに着目したい。300mmならばDXフォーマット機だと「450mm相当」の超望遠画角になる。また、現在のところD7100だけが搭載している「対DX1.3×クロップ」機能を使用すれば「約600mm相当」という超望遠撮影を楽しむこともできるのだ。

 では、具体的にはどの製品を選べば良いだろうか? 描写性能(画質)や操作性など総合的に考えれば、大口径望遠ズームに2倍テレコンを組み合わせる「AF-S NIKKOR 70-200mm F2.8 G ED VR II+AF-S TELECONVERTER TC-20E III」や、400mmまでカバーする新設計の望遠ズーム「AF-S NIKKOR 80-400mm F4.5-5.6 G ED VR」などを選択するのが得策だと思う(ニコン純正レンズでは)。

 だが、前者の組み合わせの価格は約38万円になり、後者の望遠ズームも約32万円以上と、かなり高額な買い物になってしまう。もちろん、その価格に見合うパフォーマンスは得られるだろうが、多くの人は「もっと手軽に買えるレンズで望遠撮影を楽しみたい!」と思うのではないだろうか?

 また、AF-S NIKKOR 70-200mm F2.8 G ED VR II+AF-S TELECONVERTER TC-20E IIIやAF-S NIKKOR 80-400mm F4.5-5.6 G ED VRだと、えらくかさ張るわ重いわで、携行するのもキツくなってくる。前者の組み合わせで約1,870g、後者の望遠ズームも約1,570g(三脚座を含む)とかなりヘビー級だ。

 そこで今回は、もう少し手軽に買えて楽に扱える“300mmカバーのズームレンズ”をチョイスして、その描写性能や使い勝手をチェックしてみたいと思う。

 望遠ズームでは、DX専用の「AF-S DX NIKKOR 55-300mm F4.5-5.6 G ED VR」と、FX対応の「AF-S VR Zoom-Nikkor 70-300mm F4.5-5.6 G IF-ED」を。高倍率ズームでは、DX専用の「AF-S DX NIKKOR 18-300mm F3.5-5.6 G ED VR」と、FX対応の「AF-S NIKKOR 28-300mm F3.5-5.6 G ED VR」。この4本をチョイスしてみた。

 なお、今回の実写結果に関しては(特に画質に関連する内容では)、製品個々の状態(個体差)やテスト内容や条件による結果のバラツキも考えられるので、あくまでも“参考の一例”として見て頂きたい。

 ◇           ◇

・AF-S DX NIKKOR 55-300mm F4.5-5.6 G ED VR

 D5200などのダブルズームキットにも含まれる、DXフォーマット専用のポピュラーな望遠ズームレンズ。手ブレ補正効果3段分のVR機構を搭載する。他の3本よりも軽量で扱いやすく、ホールド時の負担も少ない。

 ただし、A-M切り換えスイッチや手ブレ補正スイッチの作りが貧弱で、操作感もイマイチである。また、AF速度も遅めなので(今回のチェックでの自分の印象)、被写体によっては気になることも……。なお、この製品が発売される前には、望遠側の焦点距離がやや短い「AF-S DX VR Zoom-Nikkor 55-200mm F4-5.6 G IF-ED」がダブルズームキットに含まれることが多かった。

・AF-S VR Zoom-Nikkor 70-300mm F4.5-5.6 G IF-ED

 FXフォーマット対応の望遠ズームレンズ。製品名の表記からわかるように(知っている人なら)、4本の中では最も古い製品になる(2006年発売)。VR機構の手ブレ補正効果も2.5段と低めの仕様である。だが、その安定した描写性能には定評がある。全長は少し長めだが、そのぶんズームリングの幅も広くてホールド感も良好。また、AF速度が他の3本よりも速かったのも魅力的なポイントである。

・AF-S DX NIKKOR 18-300mm F3.5-5.6 G ED VR

 広角域から超望遠に迫る画角までカバーする、DXフォーマット専用の高倍率ズームレンズ。約16.7倍というレンズメーカー製品も凌ぐ高倍率な製品でありながら“300mmで開放F5.6”の数値をキープしているのは立派。手ブレ補正効果3.5段分のVR機構を搭載する。後述の28-300mmに似た外観だが、ズームリングのラバー部の幅がやや広い。また、ズームロックのスイッチは、ロック時にオレンジ色の表示が出るなど、後発製品らしい進化ポイントが見られる。AF速度も「55-300mmよりは速い」という印象を受けた。

・AF-S NIKKOR 28-300mm F3.5-5.6 G ED VR

 FXフォーマット対応の広角域から望遠域までカバーする、約10.7倍の高倍率ズームレンズ。FXフォーマット機のD800やD610のレンズキット用としても選ばれている製品。手ブレ補正効果3.5段分のVR機構を搭載している。上の18-300mmによく似た外観だが、この28-300mmの方がわずかに小さくて軽い。AF速度も18-300mmと同じくらいだが、28-300mmの方がわずかに速いな? といったところ。

AF-S DX NIKKOR 55-300mm F4.5-5.6 G ED VR AF-S VR Zoom-Nikkor 70-300mm F4.5-5.6 G IF-ED AF-S DX NIKKOR 18-300mm F3.5-5.6 G ED VR AF-S NIKKOR 28-300mm F3.5-5.6 G ED VR
実勢価格 4万2,800円前後 5万7,600円前後 11万2,800円前後 10万4,600円前後
レンズ構成 11群17枚
(EDレンズ2枚、高屈折レンズ1枚)
12群17枚
(EDレンズ2枚)
14群19枚
(EDレンズ3枚、非球面レンズ3枚)
14群19枚
(EDレンズ2枚、非球面レンズ3枚)
35mm判換算画角 82.5-450mm相当 105-450mm相当 27-450mm相当 42-450mm相当
最短撮影距離 1.4m 1.5m 0.45m(300mm時) 0.5m
最大撮影倍率 1/3.6倍 1/4倍 1/3.2倍 1/3.1倍
絞り羽根枚 9枚(円形) 9枚(円形) 9枚(円形) 9枚(円形)
フィルター径 58mm 67mm 77mm 77mm
最大径 約76.6mm 約80mm 約83mm 約83mm
長さ 約123mm 約143.5mm 約120mm 約114.5mm
重量 約530g 約745g 約830g 約800g

 なお、D7100ボディの設定は以下の通りである。

 撮影モード:絞り優先オート、撮像範囲:DX、JPEG圧縮:画質優先、ピント合わせ:ライブビューによるシングルAFサーボ(最短撮影距離の撮影ではMF)、ホワイトバランス:晴天、ピクチャーコントロール:スタンダード、アクティブD-ライティング:しない、自動ゆがみ補正:しない(高倍率ズームの広角端のチェックでは「する」に設定)、長秒時ノイズ低減:しない、高感度ノイズ低減:しない、感度設定:ISO100、セルフタイマー:2秒、露出ディレーモード:3秒、三脚:使用(最短撮影距離時の高倍率ズームは未使用)、レンズのVR機構:OFF(最短撮影距離の撮影の高倍率ズームではON)。

 ◇           ◇

・300mmの画質

 最初に実写チェックしたのは、望遠端「300mm」時の画質である。今回のレポートにおける“最重要ポイント”と言える項目になるだろう。その時の開放F値はどのレンズもF5.6だが、その数値(明るさ)から考えると、開放でも“そこそこの画質”はキープして欲しいし、1段絞ったF8では良好な画質であって欲しい。

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。サムネイルをクリックするとオリジナル画像を表示します。

F5.6

DX 55-300mm
70-300mm
DX 18-300mm
28-300mm

F8

DX 55-300mm
70-300mm
DX 18-300mm
28-300mm

F11

DX 55-300mm
70-300mm
DX 18-300mm
28-300mm

 まず、開放F5.6の描写をチェックすると、DX 55-300mmのアマさが目立つ。解像感はあるのだが、全体的にソフトで締まりのない描写である。それと比べると、70-300mmはシャープかつメリハリのある描写で、文句なしで4本中トップの描写だ。DX 18-300mmは少しシャープ感のない描写で、またDX 55-300mmほどではないが締まりのなさも気になる。28-300mmは最も優秀な70-300mmの描写には敵わないが、18-300mmよりもシャープでメリハリのある描写だ。

 1段絞ったF8の描写は、DX 55-300mmは開放よりも締まりが出てきて満足度が高くなる。70-300mmは開放と同様に4本中トップの描写だが、開放時が素晴らしいだけに、F8に絞ってもその差はあまり感じられない。DX 18-300mmも開放とF8の差はあまりないが、画面中央付近を見るとF8の方がわずかに像が締まっているように見える。28-300mmは開放よりもF8の方がシャープでメリハリが出てきて、結果的に18-300mmとの画質差が大きくなった。

 2段絞ったF11だと、DX 55-300mmはさらにシャープで締りのある描写になっている。70-300mmの描写も安定しているが、こちらはF8の時よりもキレが落ちている。DX 18-300mmはF8との差はあまり感じず“まずまず”の描写。28-300mmは“F8よりシャープになった度”が4本中最も高く、画面中央付近に関しては70-300mmの描写に近いクォリティが得られている(70-300mmのF8の描写には負けるが)。

・広角端の画質

 広角端の画質チェックでは、望遠ズームと高倍率ズームの画角差の大きさを考慮して、それぞれ違う絵柄でチェックした。ちなみに、高倍率ズームの方は“画面全体を等距離の被写体で埋める”事が難しかったので、結果的に歪曲収差チェックに使用するような絵柄になってしまった(苦笑)。なお、その高倍率ズームの広角端の撮影では、自動ゆがみ補正を「する」に設定した。まあ、こういった絵柄で、18-300mmズームの広角端で“自動ゆがみ補正なし”という使い方は、あまり現実的じゃないだろうし……。

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。サムネイルをクリックするとオリジナル画像を表示します。

DX 55-300mm

F4.5
F5.6
F8
F11

70-300mm

F4.5
F5.6
F8
F11
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。サムネイルをクリックするとオリジナル画像を表示します。

DX 18-300mm

F3.5
F4
F5.6
F8

28-300mm

F3.5
F4
F5.6
F8

 望遠ズームの方は、DX 55-300mmと70-300mmを見比べると、やはり70-300mmの方が高画質で安定しているように見えるが(特に画面周辺近くの描写で)、その差は望遠端の300mmほどは顕著ではない。

 そして、高倍率ズームに関しては、画角的に余裕があるぶん(画角自体の違いと、DX専用とFX対応との違い)、周辺光量低下の面においては28-300mmの方が格段に優秀である。なお、前述のとおり、ここでは自動ゆがみ補正を「する」に設定しているが、28-300mmの方は「しない」に設定しても、さほど歪みは気にならなかった。

・最短撮影距離時のクローズアップ度

 ズームは望遠端の300mmにセットして、フォーカスモードをMFに切り換えフォーカスリングを最短位置まで回して撮影。つまり“最大撮影倍率での撮影”でクローズアップ度の違いをチェックするわけだが、その差は仕様表の「最大撮影倍率」をチェックすればわかる。

 だが、実際に花壇の花を撮り比べてみると、最大撮影倍率のわずかな違いよりも“最短撮影距離の大きな違い”の方が気になってくる。望遠ズーム2本の最短撮影距離は“1.5m付近”だが、高倍率ズーム2本の最短撮影距離はその約1/3の“0.5m付近”なのである。この両タイプの最短撮影距離の違いにより、高倍率ズームの2本は三脚撮影ではなく手持ち撮影で対応することになった。

撮影状況。被写体に選んだ花壇の手前には「入ったらダメ」の印のチェーンが張られている。最短撮影距離が1.5m付近の望遠ズームならその外に三脚を据えて撮影できる。しかし、最短撮影距離が0.5m付近の高倍率ズームだと、カメラをチェーンの内側に入れて撮影する必要がある。ということで、三脚使用はあきらめて手持ち撮影にトライした(VR機能を利用しながら)。
DX 55-300mm / 撮影距離:1.4m(最短)
70-300mm / 撮影距離:1.5m(最短)
DX 18-300mm / 撮影距離:0.45m(最短)
28-300mm / 撮影距離:0.5m(最短)

 仕様表のデータを見ると、望遠ズームよりも高倍率ズームの方が少し最大撮影倍率が高い。それは4枚の画像を見比べるてもわかる。そして、データでは28-300mmよりも18-300mmの方がわずかに倍率が高いのだが、実写結果は逆になってしまった。まあ、この2枚は手持ちによる“少しアバウトな撮影”だったので、微妙にフォーカス位置(フォーカスリングの位置ではなく、狙った被写体との距離)に誤差が生じたのかもしれない。それにしても、望遠ズームと高倍率ズームを比べると、同じ焦点距離で最短撮影距離が約3倍も違うのに、最大撮影倍率はさほど変わらないんだよなぁ……。

・近接撮影時の画角変化

 ひとつ前の“最短撮影距離時のクローズアップ度”チェックでも指摘したが、2本の望遠ズームの最短撮影距離は、2本の高倍率ズームの約3倍も長い(遠い)。それなのに、クローズアップ度の差はあまり大きくない。

 これには、ピント合わせ方式に「IF方式」(IF:Internal Focusing)を採用している点が関係してくる。IF方式は、レンズ系を前群、中間、後群に分割して、中間のレンズ群だけを移動させてピントを合わせる方式。そのメリットは、AFの高速化が図れたり、フォーカス移動時の重量バランスの変化を少なくできる、といった点が挙げられる。

 だが、その一方で“撮影距離が近くなると実際の焦点距離は短くなる”という光学特性も持っている。この“近接時の焦点距離の目減り”の度合いにより、遠距離撮影では気にならない画角の違い(同じ焦点距離設定で)が生じてしまうのだ。ちなみに、今回チョイスした4本のズームレンズでは、「AF-S DX NIKKOR 55-300mm F4.5-5.6 G ED VR」を除く3本のレンズでIF方式が採用されている。

 ということで、4本のズームレンズの「300mm」で、近接撮影時の画角をチェックしてみよう。なお、被写体に選んだピンクのバラまでの距離は2m弱である。

DX 55-300mm / 撮影距離:2m
70-300mm / 撮影距離:2m
DX 18-300mm / 撮影距離:2m
28-300mm / 撮影距離:2m

 テスト結果は真っ二つに分かれた。それも、注目した“IF方式の有無”ではなく、“望遠ズームか、高倍率ズームか”によって分かれたのである。

 望遠ズームの方は、非IFの55-300mmもIF方式の70-300mmも、花が画面いっぱいの大きさに写った。その差はほとんどない。――だが、IF方式の18-300mmと28-300mmの方は、周囲が広く写り込み花が小さく写っている。ひとくちに「IF方式は近接撮影で焦点距離が短くなる」と言っても、その度合いはカバーする焦点域やズーム倍率によって変わってくるのだろう。ということで、安易に「300mmでも0.5m近くまで寄れて、こりゃ最強!」と、喜んではいけないのだ(笑)。

 ◇           ◇

 中望遠域からの望遠ズームと、広角域から望遠域までカバーする高倍率ズームでは、当然その用途や操作感に差は出てくる。また、他のレンズと「どういう組み合わせで撮影に臨むか」も変わってくるだろう。だが、今回チョイスした望遠ズームと高倍率ズームの計4本は、いずれも“望遠端300mmで開放F5.6”という条件を備えている。それだけに、他のレンズとの組み合わせ問題や画角のダブりがあったとしても、望遠レンズとして魅力的な存在と言える。

 そして、今回の実写チェックで実感したのは、2本の望遠ズームに関しては“価格と描写性能は比例していた”ということ。また、残り2本の高倍率ズームに関しては“ズーム比と描写性能は反比例していた”ということである。もちろん、これは今回チョイスした製品に関しての話であり、またボク個人の印象や感想にしか過ぎない。

 まあ、そういう注釈を踏まえた上で結論付けると、純粋に“望遠撮影用”として選ぶなら「AF-S VR Zoom-Nikkor 70-300mm F4.5-5.6 G IF-ED」をお薦めしたい。その安定した描写性能は、安価な「AF-S DX NIKKOR 55-300mm F4.5-5.6 G ED VR」とはひと味もふた味も違う。

 ただし、1本で広角域から300mmまでカバーできる「AF-S DX NIKKOR 18-300mm F3.5-5.6 G ED VR」の利便性の高さや、FXフォーマット機の標準ズームとして重宝する「AF-S NIKKOR 28-300mm F3.5-5.6 G ED VR」の魅力も捨てがたい(ボク自身、D800で使用しているが、広角域の周辺画質以外は満足度は高い)。DXフォーマットのD7100だと標準域からのカバーになってしまうが、28-300mmの安定した描写性能は印象に残った。

吉森信哉

(よしもりしんや)1962年広島県庄原市出身。東京写真専門学校を卒業後、フリー。1990年からカメラ誌を中心に撮影&執筆を開始。得意ジャンルは花や旅。1970年代はカラーネガ、1980年代はモノクロ、1990年代はリバーサル、そして2000年代はデジタル。…と、ほぼ10年周期で記録媒体が変化。でも、これから先はデジタル一直線!? 自他とも認める“無類のコンデジ好き”