気になるデジカメ長期リアルタイムレポート

ニコンD600【第6回】

安い・軽い・明るいの3拍子がそろったF1.8単焦点レンズを試す

 実のところ、予算が潤沢で、かつ体力的に問題がないのであれば、レンズ選びはそんなに難しくない。お高くて性能のいいレンズ(たいてい重いです)をそろえればいいだけだからね。でも、筆者なんかはどっちも余裕がないから、あれこれと作戦を練らなくてはいけなくなる。なにしろ、性能的には有効2,426万画素のピクセル等倍での観賞で不満を感じないレベルが欲しいわけだし、なおかつ、できるだけ軽く、そして可能なかぎり低予算で、となると、選択の幅はどんどん狭く、ハードルはどんどん高くなる。

 まあ、お手ごろタイプのズームを選ぶ手もあるが、実用性は高くてもおもしろみには欠ける。というわけで、今回はほどほどの明るさの単焦点レンズ3本でシステムを組むというのを考えてみた。

 明るい単焦点なら、鏡胴先端部に金色のリングが燦然と輝くF1.4のが3本あるが、重さもお値段もD600向きではない。もちろん、D600と組み合わせるのが悪いとは言わないが、少なくとも筆者向きでないのは間違いない。スペックはどれも魅力的だけれど、お値段は見事すぎるし重さも立派。お近づきにはなれそうにない。

 現実的な目標としては、やはりF1.8。「AF-S NIKKOR 28mm F1.8 G」、「AF-S NIKKOR 50mm F1.8 G」、「AF-S NIKKOR 85mm F1.8 G」の3本だ。カバーする画角域だけで考えると、3本がかりでも「AF-S NIKKOR 24-85mm F3.5-4.5 G ED VR」に負けてしまうわけだが、広角端で2段、望遠端で2.7段も明るいというのは大きい。その分、ファインダーは明るいし、大きなボケも楽しめる。

 ちなみに、金リング入りの“F1.4トリオ”は、3本合計で75万2,850円。大手量販店の店頭価格は54万100円にもなってしまう。重さも各600g前後あるので、それなりにヘビーである。一方、“F1.8トリオ”ならお値段は18万6,900円。同じお店の店頭価格で13万1,400円。かなりのお手ごろさである。重さも3本合わせて865gと軽い。D600のボディ(バッテリーとSDカード×1枚入りで850gである)とたいして変わらない。

 都合のいいことに、ニコンのF1.8単焦点は、どれも設計が新しい。古株のAF-S NIKKOR 50mm F1.8 Gが2011年6月発売で、AF-S NIKKOR 28mm F1.8 GやAF-S NIKKOR 85mm F1.8 Gは2012年に登場したばかり。まだほやほやと言っていい新しさである。設計が新しいほど、画質面での心配が少ないわけで、その点ではばっちりなのだ。

 3本とも超音波モーター(SWM)搭載なのもうれしい点。AF駆動は静かだしピントの精度もいいはずだ。もちろん、AFのままMFが可能なM/Aモード(世間一般に言うところのフルタイムMFなのだが、コンティニュアスAF時にもMFができるのはほかにない特徴だ)も備えている。このへんも新しいレンズのお得なところである。ただし、50mm F1.8にしても85mm F1.8にしても、ボディ内モーター仕様のDタイプレンズのまま、ずうぅっと放置されてきた結果だったりするので素直にはよろこべないのだが……。

 まあ、それはさておくとして、この3本はどれも秀作ばかりで、買って損をすることはない。3本ともそろえればそれなりに幸せになれるだろうし、よく使う画角の1本をズームと組み合わせて、というのも楽しいはずだ。というわけで、ここからは3本のレンズを順番に紹介していくことにする。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

AF-S NIKKOR 28mm F1.8 G

 非球面レンズ2枚に加えてナノクリスタルコートも採用した広角レンズで、F1.8レンズで唯一の金リング付きである。鏡胴の長さに比べてフォーカスリングの幅がAFレンズとしては不自然なぐらいに広く、ちょっとMFレンズっぽい外観に仕上がっている。

 28mmといえば、昔は広角レンズの代表格だったが、今どきは標準ズームの広角端が24mmとかだったりするので、ファインダーをのぞいても画角が広い感じはまったくない。が、被写界深度の浅さはとても印象的で、ピントが合っている部分が少し浮き上がって見えるような奥行き感がある。こういうピントの見え方にはまってしまうと、広角端F3.5あたりのズームには戻れなくなるかもしれない。

 歪曲収差は撮影距離によって変わるタイプで、遠距離ではタル型、至近距離ではわずかなイトマキ型になる。自動ゆがみ補正機能を使えば問題ないし、素直な曲がり方なので撮影後のソフトウェアでの補正は容易だ。最新の設計だけあって、画面中心部は絞り開放でもけっこうキレがいい。絞っていくと少しずつよくなっていって、F4あたりがいちばんいいように見える。四隅もニコンのウェブサイトにある絞り開放でのMTFデータから予想していたより画質低下は少なく、F4でまずまず、F5.6まで絞るとぐっとよくなってくれる。

 周辺光量は、ヴィネットコントロールが「オフ」だとF4まで絞ったほうがよさそうな感じ。「標準」にすればF2.8でもあまり気にならなくなる。広角系の解像力の高いレンズの場合、わずかにピントが外れたあたりで二線ボケになりやすいが、このレンズのボケは神経質なところがなくて扱いやすい印象だ。

解像力・周辺光量

※共通設定:絞り優先AE / 6,016×4,016 / 0EV / L 1(ISO50相当) / WB:オート1

・ヴィネットコントロール:しない

F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8

・ヴィネットコントロール:標準

F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8

ボケ

※共通データ:絞り優先AE / 6,016×4,016 / +0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / ヴィネットコントロール:しない

F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8

AF-S NIKKOR 50mm F1.8 G

 FXフォーマット対応の現行AFニッコールでは2番目に安く、2番目に軽い(安さ、軽さともにトップはAi AF NIKKOR 50mm F1.8 Dである)。外装の素材もプラスティックだが、そんなに安っぽい雰囲気はない。D600と組み合わせると、バッテリーとSDカード×1枚入りで1kgをちょっぴり超える程度。肩こりレスである。

 D600のダブルレンズキットにも同梱されているが、筆者は標準ズームは後回しにしたので、ボディを買ったポイントで手に入れた。最近はF1.8クラスは存在自体が貴重だし、非球面レンズの採用に加えて超音波モーター搭載というハイスペックだけにかなりのお値打ち品と言える。

 画面中心部は、絞り開放は少しアマさが感じられるものの、F2.8まで絞るとかなりよくなって、F4からF5.6あたりがピークになる。四隅はF5.6でも若干アマさが残る。風景などで、隅々まで解像が欲しければF8まで絞ったほうがいいだろう。が、夜間の街中スナップだったらF2.8やF4でも十分許容範囲に入るのではないかと思う。

 周辺光量は、ヴィネットコントロールを「オフ」に設定しているときはF4までは絞りたいところ。「標準」にしているならF2.8でもあまり気にならないレベルになってくれる。前ボケは少し硬めに感じられるものの、後ボケは優しい印象だ。絞り開放とF2では、わずかにピントが外れた部分のボケに、少しばかり不自然さが感じられるのがちょっと気になるところ。F2.8に絞ったほうがクセのない落ち着いたボケになってくれるように思う。

解像力・周辺光量

※共通設定:絞り優先AE / 6,016×4,016 / 0EV / L 1(ISO50相当) / WB:オート1

・ヴィネットコントロール:しない

F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8

・ヴィネットコントロール:標準

F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8

ボケ

※共通データ:絞り優先AE / 6,016×4,016 / +0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / ヴィネットコントロール:しない

F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8

AF-S NIKKOR 85mm F1.8 G

 前玉径に対して鏡胴が太いのは、たぶんだけれど、搭載している超音波モーターが28mmや50mmよりもワンサイズ大きいからだろう。見た目は少しずんぐりしていて、個人的には、あまり美しいプロポーションとは言えないと思う。金リングに「N」マークがまぶしいF1.4 Gと違って、地味感が強いものの、価格も重さもぐぐっと手ごろで、筆者にはとっても魅力的な存在だ。

 絞り開放のMTFデータを見るかぎり、F1.4 Gよりも中心部の解像力、コントラストともにしっかりめの様子で、四隅の落ち込みも少ない(同じ絞り値で撮り比べたらどうなるかはわからないけどね)。ポートレートにはF1.4 Gのほうが柔らかくていいだろうが、ジャンル問わずでのあつかいやすさで考えれば、F1.8 Gのほうが上なんじゃないかという気がする。

 実写での解像力は、中心部は絞り開放からなかなかの切れ味。絞ってもそれほど変わらないが、F2.8ぐらいに絞るのがいちばんおいしそうに思う。四隅も絞り開放から悪くない描写だが、隅々までばっちりな画質にしたければF4ぐらいがベターな気がする。細かいことを言わなければF2.8でも文句はないレベルだ。

 周辺光量は、ヴィネットコントロールが「オフ」のときはF4までは絞りたい。「標準」のときならF2.8でもあまり気にならないレベルになってくれる。ボケは前後とも素直で、神経質な感じはまったくない。が、円形絞りが丸い形をキープしてくれるのはF2.5あたりまで。木漏れ日などを背景にするときは、口径食によるボケの変形と絞りの丸さのどちらを優先するか考えなくてはいけない。

解像力・周辺光量

※共通設定:絞り優先AE / 6,016×4,016 / 0EV / L 1(ISO50相当) / WB:オート1

・ヴィネットコントロール:しない

F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8

・ヴィネットコントロール:標準

F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8

ボケ

※共通データ:絞り優先AE / 6,016×4,016 / +0.7EV / ISO100 / WB:晴天 / ヴィネットコントロール:しない

F1.8
F2
F2.8
F4
F5.6
F8

その他の作例(記載なき作例はヴィネットコントロール:標準)

・AF-S NIKKOR 28mm F1.8 G

ヴィネットコントロール「標準」だと、空はやっぱり光量落ちが目立つ。絞りを開けて撮るなら「強め」がいいかも。ちなみに、空の右側の白っぽいのは月。絞り優先AE / 6,016×4,016 / 1/4,000秒 / F2.2 / −1EV / ISO100 / WB:オート1
画面右上隅は少しだけ流れたようになっているが、2,426万画素のピクセル等倍だというのを考えれば不満はまったくない。絞り優先AE / 6,016×4,016 / 1/800秒 / F6.3 / −1EV / ISO100 / WB:オート1
手ブレ補正がないので、室内などでは早め早めに感度を上げるようにしないといけない。というか、感度自動制御を使えばいいのだ。絞り優先AE / 6,016×4,016 / 1/80秒 / F2.5 / −0.7EV / ISO400 / WB:晴天
28mmが標準ズームでカバーする画角になってずいぶん経つ。見慣れてしまった分、広角レンズとしては物足りない感もあったりする。絞り優先AE / 6,016×4,016 / 1/400秒 / F9 / −1.3EV / ISO100 / WB:晴天

・AF-S NIKKOR 50mm F1.8 G

すっきりと晴れた空を見ると、ついローパスフィルターのゴミが気になってしまう。よくない傾向だなぁって思う。絞り優先AE / 6,016×4,016 / 1/800秒 / F5.6 / −1EV / ISO100 / WB:晴天
ショーウィンドーのガラス越しだけれど、解像感はなかなかのもの。キヤノンの「EF 50mm F1.8 II」には負けるけど、それでも実売2万円ちょっとは安い。絞り優先AE / 6,016×4,016 / 1/1,250秒 / F4 / 0EV / ISO100 / WB:晴天
建物の壁に「分水せん」のプレートが等間隔に4枚。寄って開けるだけで大きなボケがつくれるのが明るめ単焦点のいいところ。絞り優先AE / 6,016×4,016 / 1/400秒 / F2 / 0.3EV / ISO100 / WB:晴天
アーケードの商店街で。感度自動制御をオン、低速限界設定をやや速めにしているのでISO感度が微妙な数字になっている。絞り優先AE / 6,016×4,016 / 1/100秒 / F2.2 / 0.3EV / ISO110 / WB:晴天

・AF-S NIKKOR 85mm F1.8 G

最短撮影距離は0.8m。F1.4 GやF1.8 Dは0.85mだから少しだけスペックアップ。たいして違わないけど。絞り優先AE / 6,016×4,016 / 1/640秒 / F2.5 / −1.3EV / ISO100 / WB:晴天 / ヴィネットコントロール:しない
カトリックの教会。外壁は最近塗り直したものらしく、ちょっとぴかぴかしているけれど、大正5年築という歴史的な建物。絞り優先AE / 6,016×4,016 / 1/800秒 / F6.3 / −0.7EV / ISO100 / WB:晴天
ほかの2本もそうだけど、絞り開放でも画面中心部はそれなりにちゃんと解像してくれる。シャープさ重視ならF2.8ぐらいがおすすめだけど。絞り優先AE / 6,016×4,016 / 1/250秒 / F1.8 / −1EV / ISO100 / WB:晴天
このバイクは前にOLYMPUS PEN E-P3でも撮ってたはず、と思いながら撮って、家に帰って調べてみたら、去年の3月だった。ずっといるんだね。絞り優先AE / 6,016×4,016 / 1/160秒 / F2.8 / −1EV / ISO400 / WB:晴天

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら