富士フイルムFinePix X100【第4回】

フジノンレンズの実力やいかに

Reported by澤村徹


 FinePix X100は新開発のフジノンレンズを搭載している。このフジノン23mm F2(35mm判換算35mm相当)は、スーパーEBCコーティングを施し、9枚羽根の円形絞りを採用している点が特徴だ。ハイブリッドビューファインダーとレトロな外観が話題の本機だが、描写面にも期待できるカメラといえるだろう。FinePix X100はAPS-C機なので、開放撮影で大きなボケ味を堪能したいところだ。ただし、レンズシャッターを採用しているため、開放近辺ではちょっとした制約が生じる。こうした点を含めつつ、今回はレンズまわりをレポートしていこう。

FinePix X100は9枚羽根の円形絞りを採用し、ボケ味の美しさにこだわったモデルだ

 フジノンレンズは、35mmフィルムカメラ、中判カメラ、デジタルカメラなど、富士フイルム製カメラが長く採用してきたレンズブランドだ。TVカメラ用レンズとしても定評があり、スチル、ムービーを問わず、人気のレンズといえるだろう。FinePix X100は新たに開発したフジノン23mm F2を搭載し、35mm判換算35mm相当で撮影可能だ。F2というスペックはコンパクト機としては大口径に属し、APS-Cサイズのイメージセンサーと相まって、大きなボケが堪能できる。また、9枚羽根の円形絞りを採用しているので、ボケ味の美しさも本機の特徴といえるだろう。

絞り羽根の様子。写真はF2(開放)
F2.8F4
F5.6F8
F11F16

 このようなカメラであれば、やはり開放寄りでボケ味を活かした撮影を満喫したい。ただし、ここでひとつ問題がある。本機のシャッタースピードは最速1/4,000秒だが、レンズシャッターを採用しているため、全域でこのスピードが出るわけではない。F2〜F2.8は最速1/1,000秒、F4〜F5.6は最速1/2,000秒、F8以上は1/4,000秒という仕様になっている。クラシックカメラファンであれば「1/1,000秒で切れれば十分」という意見もあるだろうが、現実的な問題として、屋外晴天の開放撮影は厳しいと言わざるを得ない。

 無論、この点はメーカー側も認識しており、本機は約3段分のNDフィルターを搭載している。メインメニューからオン/オフが切り換えられる上、FnボタンにNDフィルターをアサインすることも可能だ。開放寄りで撮ることが多い人は、Fnボタンに登録しておくことをお薦めしたい。シャッタースピードが遅くて露出オーバーになってしまう場合、ファインダー内のシャッタースピードを赤字で表示してくれる。このときNDフィルターを適用すれば、適正露出で撮影できるというわけだ。

FnボタンにNDフィルターを割り当てておくと、ワンタッチでNDフィルターのメニューを呼び出せるセットアップメニューの「Fnボタン設定」を開き、「NDフィルター」を選んでおこう

 なお、FinePix X100はもうひとつシャッタースピードを落とすテクニックがある。それは拡張感度でISO100を選ぶというものだ。本機はデフォルトのISO感度がISO200なので、ISO100を選べば2倍のシャッタースピードに相当する。開放寄りの撮影では即戦力になるだろう。ただし、拡張感度はJPEG撮影向けの機能だ。RAWおよびRAW+JPEGでは選択できないので注意しよう。

JPEG撮影では、ISO感度の選択画面で拡張感度「L(100)」および「H(12800)」が選択できる

 では、フジノン23mm F2の描写傾向を見ていこう。絞りを変えながらサンプル撮影してみたところ、開放F2では若干滲みが感じられ、周辺はほのかに陰る。しかし、F2.8以降は実に安定した描写だ。一方、コントラストと発色は全域を通じて落ち着きがあり、開放絞りも積極的に使っていけるだろう。ボケ量はAPS-C機だけあって、開放寄りでは中近距離でもしっかりとボケる。ボケ味も開放からなだらかで、コンパクト機という枠組みを超えた描写力だ。コンパクト機はボケ量を稼ぐためにマクロや望遠寄りで工夫して撮ることが多いが、本機に関してはデジタル一眼レフカメラに近い感覚でボケ味を味わえるだろう。なお、作例はすべてスタンダードモード(PROVIA)のJPEG撮って出しを掲載している。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

・マクロ撮影サンプル

F2F2.8
F4F5.6

・中近距離撮影サンプル

F2F2.8
F4F5.6
F8

・そのほか

FinePix X100 / 4,288×2,848 / 1/550秒 / F2 / -0.67EV / ISO200 / WB:オート / 23mmFinePix X100 / 4,288×2,848 / 1/340秒 / F2 / -0.67EV / ISO200 / WB:オート / 23mm
FinePix X100 / 4,288×2,848 / 1/160秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 23mmFinePix X100 / 4,288×2,848 / 1/280秒 / F4 / 0.67EV / ISO200 / WB:オート / 23mm
FinePix X100 / 4,288×2,848 / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 23mmFinePix X100 / 4,288×2,848 / 1/480秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 23mm
FinePix X100 / 4,288×2,848 / 1/300秒 / F2 / -1EV / ISO200 / WB:オート / 23mmFinePix X100 / 4,288×2,848 / 1/400秒 / F4 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 23mm

【2011年3月30日】「本機はデフォルトのISO感度がISO200なので、ISO100を選べばシャッタースピードは1/2になる」との記述を「本機はデフォルトのISO感度がISO200なので、ISO100を選べば2倍のシャッタースピードに相当する」に修正しました。



(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp

2011/3/30 00:00