富士フイルムFinePix X100【第3回】

純正レンズフードを愛でる

Reported by澤村徹


 FinePix X100は、大胆なまでにオールドスクールスタイルを取り入れたデジタルカメラだ。往年のレンジファインダーカメラを彷彿とさせ、個人的にはライカM3の姿が脳裏をよぎる。ハイブリッドビューファインダーという新機軸を引き立てる、戦略的なデザインだ。富士フイルムはこのクラシカルなスタイルに合わせ、高品位な純正レンズフードを用意している。このフードは見た目といい機能性といい、実によく考え抜かれたアイテムだ。今回はこの純正レンズフードをレポートしていこう。

富士フイルムは、三穴スリットフードを純正オプションとして用意している

 ハイエンドコンパクトカメラにせよ一眼レフカメラの交換レンズにせよ、昨今のレンズフードは実用性を優先したものが多い。しかしクラシックカメラ分野では、その美しい造形ゆえにレンズフード収集家がいるほどの深い世界だ。ライカ用フードなどは、中古良品が1~2万円もする。その価格がうなずけるほど、昔のレンズフードは造りがていねいだった。

 さて、FinePix X100のレンズフードは、こうしたクラシックカメラ用フードの方向性を踏襲している。往年のレンジファインダーカメラ風ボディに合わせ、定番中の定番、三穴スリットスタイルを採用した。この三穴スリットフードは、ライカレンズ用フードとしておなじみのスタイルだ。フード部分がわずかに先細り、3本のスリットが入る。このスリットは単なるデザインではなく、ファインダーのケラレを防止するためのものだ。レンジファインダーカメラはその構造上、どうしてもファインダー内右下にフードが写り込んでしまう。そこでフードにスリットを設け、ケラレを最小限に抑えようというわけだ。スリットの入れ方はいろいろなタイプがあるが、三穴スリットはライカタイプなどと呼ばれ、特に人気の高いスタイルである。

純正レンズフードはボディカラーと同じシルバーに塗装され、統一感のあるスタイルだ35mm用フードなので、それほど厚みはない。X100のコンパクトさを損なわないフードだ
ライカ用三穴スリットフード(右)と並べてみた。三穴スリットはライカ用フードの定番スタイルだOVF使用時はファインダーの右下がフードでケラレる。EVF使用時はケラレの心配はない

 純正フード「LH-X100」は、フード部とリングアダプターの2ピース構成になっている。レンズ先端のリングを外し、代わりにリングアダプターを装着する仕組みだ。フード部はバヨネット式になっており、スピーディに着脱できる。また、リングアダプター先端には49mm径のねじ切りがあり、市販の49mm用フィルターが装着可能だ。フィルターとフードは併用できるので、保護フィルターを付けた上でフード装着すれば、レンズを汚したり傷つける心配が少なくなる。なお、リングアダプターの単体売りも行っている。フィルターは付けたいけどフードは不要、という人は、リングアダプター単体の「AR-X100」を購入するとよいだろう。

レンズ先端のリングは、スクリュー式で外れるようになっている。ここにアダプターを装着するリングアダプターは外周にフード用のバヨネットがある。内側には49mm径のねじ切りが施してある
リングアダプターに49mm径保護フィルターを付けてみた。この状態でフード装着も可能リングアダプターとフードの内側は、内面反射防止のためにマットブラックで塗装してある

 FinePix X100にはメタル製のレンズキャップが付属している。内側にフェルトを貼ったていねいな作りのレンズキャップだ。レンズフード装着時は、残念ながらこのレンズキャップは取り付けられない。ただし、フード部を外してリングアダプターのみの状態なら、レンズキャップをかぶせることが可能だ。また、フィルター付きの状態でもレンズキャップを装着できる。こうしたことを踏まえて携行時のスタイルを考えると、バッグに仕舞うときはリングアダプターを付けた上にレンズキャップをかぶせ、撮影地に着いたらキャップを外してフードを付けるという具合だろうか。

 本機はハイエンドコンパクトの中でも高価な部類に属するが、レンズフードひとつとってもわかるように、外観のディテールまでしっかりと作り込まれている。オールドスクールスタイルについては好みが分かれるところだが、所有欲を満たすカメラであることは確かだろう。

ボディカラーと同じ質感のメタル製レンズキャップが付属する。前面に「FUJIFILM」のロゴが入るレンズキャップの内側にはフェルトが貼ってあり、レンズを傷つけないように配慮している
リングアダプターの上からキャップを装着してみた。フィルター装着した状態でもかぶせられる


(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp

2011/3/23 00:00