オリンパスE-620【第5回】

アートフィルター使用時の操作に悩む

Reported by 北村智史


 E-620にはアートフィルターが搭載されているのだけれど、これがちょっと悩みの種になっている。というのは、測距点の数が増えたからだ。

 なにせ、待望の7点測距である。上位モデルのE-3やE-30の11点測距にはおよばないが、こまでの3桁シリーズに搭載されていた3点測距に比べれば雲泥の差。積年の夢がようやく実現しました級の進化だといっていい。うれしくないはずがない。

 もちろん、上位モデルと同様、カスタムメニューの「十字ボタン機能」で、十字ボタンの単独操作による測距点選択が可能になっている。初期設定では、背面右手側上隅のAFターゲット(測距点)ボタンを押して十字ボタンまたはコントロール(電子)ダイヤルを回して任意の測距点を選択するようになっているが、「十字ボタン機能」を「AFターゲット」にすると、十字ボタンを押すだけで測距点を切り替えられるのだ。まあ、ボタンを押すひと手間が減るだけの話だが、頻繁に測距点を切り替える人にとってはとても便利である。

 必然的に十字ボタンに割り付けられている4つの機能(ホワイトバランス、AF、感度、測光)は使えなくなるが、これらはスーパーコンパネからでもアクセスできる。だから、それほど困ることはない。

 ただし、アートフィルター時は話が違う。スーパーコンパネが使えなくなるからだ。アートフィルター以外であれば「OK」ボタンを押すことでスーパーコンパネ上でさまざまな操作ができるのだが、アートフィルター時に「OK」ボタンを押すと、アートフィルター選択画面が表示されるのだ。一気に不便である。

アートフィルターといえば、“超”売りの機能なのだが、これがちょっと悩みの種になっているE-620は測距点が7点(うち5点がクロスセンサー)に増えて、使い勝手がずいぶんよくなった。ピントの精度もまずまずな感じだ
初期設定では右端のAFターゲットボタンを押してから十字ボタンで測距点を切り替えるようになっているでも、カスタム機能の「十字ボタン機能」を「AFターゲット」にすると、十字キーだけで測距点が切り替えられる。便利である
十字ボタンには4つの機能が割り付けられていて、これが使えなくなるのはちょっと残念その不便さをカバーしてくれるのがスーパーコンパネ。さまざまな機能を切り替えられる

 念のために書いておくと、ホワイトバランス、AF、感度、測光の4つとも、メニュー内で設定の変更が可能である。ただ、少しばかり深い階層までたどっていく必要がある。例えば、感度をISO200からISO800に変えるには、「MENU」ボタン押しからはじめて、上キーを2回、右を1回押して、下を3回、右、下、右と押して、下を2回(1/3EVステップのままの場合はあと4回)、という操作が必要になる。

 面倒くさそう? そのとおり。正直言って面倒くさい。E-620のメニュー構造はスーパーコンパネがあることを前提にしているのだろう。感度やホワイトバランスといった使用頻度の高い項目までカスタムメニューに押し込まれているにもかかわらず、スーパーコンパネがあるから少しも不便に感じない。そのスーパーコンパネが使えなくなってしまうのだから痛くないはずがない。

問題はアートフィルターのとき。「OK」ボタンを押すと、アートフィルター選択画面になるだけで、スーパーコンパネが呼び出せないシーンモードとセットになっている関係からか、メニューも大幅に簡略化。設定を戻そうにも「十字ボタン機能」がない

 いちばんいいのはスーパーコンパネ上でアートフィルターを選択できるようにすること。PENシリーズは、アートフィルター時でも「OK」ボタン押しで「ライブコントロール」やスーパーコンパネが呼び出せ、そこからアートフィルターを切り替えることができるようになっている。E-620でも同じ仕様にしてもらえるのがベストである。ハードウェアに依存しているのでなければファームウェアのアップデートによる仕様変更は比較的容易だと思うので、気長に待っていればそのうちに改良されるかもしれない。

 が、それまであいだの不便さをどうするかが問題だ。

 回避方法としては、「十字ボタン機能」を初期設定の「ON(4つのダイレクトボタンとして利用するモード)」に戻す手がある。十字ボタンだけで測距点選択ができる快適さに慣れた指には、いちいちAFターゲットボタンを押す手間さえわずらわしいが、背に腹は代えられない。感度やホワイトバランスを変えるのに、メニューの発掘調査は願い下げである。

 と思ってメニューを開いたら、なんと「十字ボタン機能」がない。E-620のカスタムメニューはA(AF/MF)からI(その他)までの9つのタブにわかれていて、「十字ボタン機能」はBのタブに入っているのだが、通常は10項目あるBのタブの中身が、アートフィルター時にはたったの2項目になってしまう。念のためにカスタムメニューをぐるりとひとまわりして確認したけれど、やはり「十字ボタン機能」は消えている。

 アートフィルターはシーンモードとセットになっているからなのか、メニューの内容がとてもシンプルになる。上級者向けのマニアックな機能は使わないでしょうから隠しておきますよ的親心なのかもしれない。それはそれでけっこうなことだと思う。

 が、メニューから消えてしまうくせに、設定内容だけ残るのはよろしくない。これだと、いったんモードダイヤルを回してアートフィルターから出て、メニューを開き直して設定を変更し、それからまたアートフィルターに戻ってくるという手間が必要になってしまう。こういう場合、非表示にしたメニュー項目の設定内容は、一時的に無効にするのがいいと思う。

 さて、「十字ボタン機能」を初期設定に戻せば4つのダイレクトボタンが使えるようになるので、アートフィルター時にスーパーコンパネが使えなくなることによる不便さは解消される。と思いきや、それはそれでまた不都合なところがあったりする。今度は、パワーバッテリーホルダーHLD-5が引っかかるのである。

 HLD-5には縦位置用のAFターゲットボタンはない。なので、縦位置では測距点の切り替えができなくなってしまう。せっかく7点測距になったのに、である。思い切ってHLD-5を外す(もしくは縦位置用のシャッターボタンを使わないようにする)手もあるが、せっかく買ったニューアイテム(とその機能)を使わないなんてもったいない。となれば、やはり十字ボタンは測距点ダイレクト切り替えにしておくしかない。めいっぱいジレンマである。

 なので、ほかの手も考えてみた。

 アートフィルターで「OK」ボタンを押すと、アートフィルター選択画面に切り替わるのだが、同時に初期状態から変更した設定もクリアされてしまう。メニューに潜り込んでオートホワイトバランスからプリセットの太陽光モードに切り替えても、アートフィルターを切り替えたらオートホワイトバランスにリセットだし、間違って「OK」ボタンを押しても(スーパーコンパネを呼び出そうとして、つい押しちゃうんである)リセット。どんどん頭が痛くなる。

 が、よくよく見ると、「OK」ボタン押しですべての設定がクリアされるわけではない。感度やAFモード、調光補正量、顔検出あたりは、絞り優先AEとかの「応用撮影モード」で設定した値がそのまま残ってくれる。ということは、一度プログラムAEなどに変えて感度を上げたり下げたりして、それからまたモードダイヤルをアートフィルターに回せばいいわけだ。もっとも、アートフィルターからプログラムAEまでが遠い(モードダイヤルがエンドレス回転だったらよかったのにね)のが難点ではあるが、メニューの深いところまでたどるよりはずっとマシなのではないかと思う。

左手側肩にある「ドライブボタン」。スーパーコンパネのおかげで、普段は存在すら忘れているくらいに触らないボタンである「ドライブボタン」にホワイトバランスを割り付けると、操作性がマシになる

 十字ボタンに割り付けられている4つの機能のうち、感度とAFモードはこの方法でなんとかいける。測光モードは基本的にデジタルESP測光しか使わないから問題はない。残るホワイトバランスは、ボディ左手側肩にあるドライブボタン(正式名称は「リモコン/セルフタイマー/連写/コピー/プリントボタン」)に割り付けてしまう。こうすると、アートフィルター時にはセルフタイマーや低振動モード(ミラーアップ付きセルフタイマー機能である)が使えなくなってしまうが、より使用頻度の高いホワイトバランスへのアクセス性がよくなるほうがずっとありがたい。

 とりあえず、この設定でしのぎつつ、ファームウェアアップデートを待ってみようと考えている次第である。その前に新型が出てしまう可能性もあったりしますけどね。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
緑色の階段ってのもあんまり見ない気がしたけど、ポップアートで撮るとちょっと心臓に悪いんじゃないかってくらいハデになる
E-620 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/60秒 / F5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 14mm / ポップアート
効果は面白いし、処理もほとんどリアルタイムなのがポップアートのうれしいところ。だからついたくさん使ってしまう
E-620 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/125秒 / F6.3 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 36mm / ポップアート
ファンタジックフォーカスは、シャッター切ってからポストビュー表示まで3秒弱くらい。ちょっと重めだが、まあ待てなくはない
E-620 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/160秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 27mm / ファンタジックフォーカス
ほどほどのソフトフォーカス具合がファンタジックフォーカスの持ち味。ポップアートの次くらいによく使っている
E-620 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/250秒 / F10 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 42mm / ファンタジックフォーカス
ちょっと古びたような感じが出せるデイドリーム。被写体は選ぶけど、処理はリアルタイムで速いので使い勝手はいい
E-620 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/200秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 14mm / デイドリーム
ガラスとか水たまりとかの反射を使うといい雰囲気が出せるけど、普通に撮っても不思議な感じに仕上がってくれる
E-620 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/160秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 14mm / デイドリーム
仕上がりを見ただけだと普通に撮ったのと変わりがない。でも、のどかな感じはライトトーンの持ち味かもしれない
E-620 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/40秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 42mm / ライトトーン
ライトトーンは、びっくりするくらいにシャドーを起こしてくれる。ちょっとノイジーになるけど、階調の出し方は絶妙だ
E-620 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/250秒 / F9 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 21mm / ライトトーン
人に教えてもらったのだが、ラフモノクロームだと高感度ノイズが気にならなくてよさげ。ISO800にしたのは絞りすぎを避けるため
E-620 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/125秒 / F6.3 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 35mm / ラフモノクローム
ライブビューの映像と明るさが違うことがあるのと、ハイコントラストな分、白トビが強烈なので、露出合わせは難しい
E-620 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/160秒 / F8 / -1EV / ISO200 / WB:オート / 14mm / ラフモノクローム
シャッターを切ってからの処理待ちが9秒ほどにもなるトイフォト。仕上がりは嫌いじゃないのだが、待ち時間が長いのが難点
E-620 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/50秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 42mm / トイフォト
トイフォトでいらいらしないコツは、ポストビューを見ないこと。露出を変えてもう1枚なんて考えずに、移動してしまうのがいい
E-620 / ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 4,032×3,024 / 1/100秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 42mm / トイフォト


北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2010/2/10 11:29