リコーGXR【第1回】

GX200と実写で比較

Reported by 本誌:折本幸治


 GXR発売の情報を聞いて、まず頭をよぎったのは、「ああ“GX300”は出ないんだ、GXはGXRになるんだ」という軽い衝撃だった。GX200を愛用していた私は、CX1やGR DIGITAL IIIの機能および高画質性能を取り込んだ、“GX300”が登場するものと考えていたからだ。同様に感じていたGXファンは多かったと思う。が、リコーの答えは前述の通り。ユニット交換式のインパクトはもちろん大きかったが、GX300に寄せる期待もあっただけに、それなりにショックも受けたのだ。

 私が漠然と考えていた“GX300”は、多くのリコーファンと同じものだと思う。今までと同じ24〜72mm相当F2.5〜4.4の光学3倍ズームレンズはそのままに、撮像素子とエンジンをGR DIGITAL IIIと同じものに強化。液晶モニターもCX1以来の約92万ドットの3型になる、と踏んでいた。

 GX200はレンズ性能、操作性、カスタマイズ性に秀でているものの、同クラスの他機種に対してノイズが多く、高感度はもとより、低感度でもアラが目立つ。特にRAW(DNG)だとストレートにノイズが見えて、場合によっては全体のカラーバランスが崩れるほど。それはそれでこのカメラらしい味だと考え、主にモノクロ用として楽しんでいた。ただし、取材の予備機としては諦めざるを得ない。その点、GR DIGITALは「III」になって文字通り「一皮むけた」画質になった。GX300がGR DIGITAL III相当になるなら……と、期待を寄せていたゆえんだ。

 以上のように多少屈折した想いでGXRを手にしたわけだが、その瞬間「ああ、これは素晴らしい」と見事にハマる自分に気づいた。コンパクトデジカメで、ここまで高級感のあるモデルは珍しい。GR DIGITALシリーズ、あるいはライカX1ぐらいか。いままでリコーの中で、GXシリーズはGR DIGITALシリーズに比べて、外装の高級感の面で差が付けられていた。そのラインナップ戦略は理解できるし、シンプルなGR DIGITALに対する多機能なGXということで、おそらくコスト面で何らかの妥協が必要だっただろう。しかしここにきてGXRは、GR DIGITALが持つ高級感に肩を並べるに至った。適度な持ち重りやグリップ感も個人的にとてもフィットする。確かに、GX200やGR DIGITALシリーズと並べてみると、ぎょっとしてしまう大きさと重さだが……。

左からGXR(S10ユニット装着)、GX200。以下同
GXRの液晶モニターはとても見やすい。晴天下でも実用になった
ユニット交換式のGXRは、三脚穴がレンズ下からずれている。仕方がないけど……

 さて今回は、GXRのS10ユニット(24〜72mm相当レンズ、1/1.7型CCD)が、GX200からどれだけ高画質化しているのか、脳内にあった“GX300”に近いものなのかを簡単にチェックしてみた。

 GXRとGX200の両機種をなるべく同一構図で撮り比べており、今回はJPEGでの撮影結果を掲載する。歪曲収差はともにオフにした。

  • 作例のサムネイル(元画像を等倍に切り出しています)をクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

・遠景(広角端)

 GX200の方が一見するとシャープでコントラストが高い。ただしGX200の輪郭は太くてガタガタしていたりブツブツがあったりして、精細感の面で画素数を活かし切っているとはいえない。おそらく、画像処理エンジンによるノイズリダクション→輪郭強調の弊害なのだろう。階調もGXRの方が豊かで品がある。

 どちらも絞り開放から中心部はシャープ。少し絞ると周辺がぼやっとならない。

元画像の一例(GXR)
GXR(F4.1)GX200(F4.1)
GXR(F5.7)GX200(F5.7)
GXR(F8.1)GX200(F8.1)

・遠景(望遠端)

 広角端と同様、GXRの方が高画質に感じる。といっても、広角端・望遠端とも、ある程度縮小すると変わらないが。

元画像の一例(GXR)
GXR(F4.4)GX200(F4.4)
GXR(F6.3)GX200(F6.3)
GXR(F8.9)GX200(F8.9)

・感度

 どうひいき目に見ても、GX200の分が悪い結果になった。低感度ではGX200の方がシャープに見えるが、いかんせんISO400で自分の許容範囲を超えるノイズ量。JPEGなので今回はこの程度ですんでいるが、RAWをそのまま現像すると、経験上、GX200の高感度ノイズはもっとすごいことになる。

 なお、S10には3段階のノイズリダクションがあり、GX200のノイズリダクションにはオンとオフがある。今回はノイズリダクションなしの状態での比較を掲載した。

元画像の一例(GXR)
 GX200(ISO64)
GXR(ISO100)GX200(ISO100)
GXR(ISO200)GX200(ISO200)
GXR(ISO400)GX200(ISO400)
GXR(ISO800)GX200(ISO800)
GXR(ISO1600)GX200(ISO1600)
GXR(ISO3200) 

 


 さすが新しい撮像素子とエンジンだけあり、GXR(S10)はGX200からの進歩がはっきりとみてとれる。ぎちぎちにシャープネスがかかっているわけではなく、全体的に品位が高い。さらにノイズが少なくすっきりしている。GR DIGITAL III相当なのかは不明だが、期待通りの高画質で安心した。

 なお、画質をチェックする目的だった今回のテストだが、GXRの操作性の良さにも感心した。というのも、GXRはGX200よりもボタンが大きく、配置にもゆとりがある。今回同時に使ってみて、明らかにGXRの方が使いやすいことを実感。電源投入がボタンの長押しではなく、スライドスイッチなのにも好感を持った。もちろんGX200には本体が軽くて薄いという、GXRでは得られないメリットがあるものの、個人的にはもうGX200には戻れない。ただし今までなかったマクロボタンを押してしまうミスには、なかなか慣れないが……。

 とりあえずS10ユニットの実力がわかり、さらに惚れこんだGXR。実は本来の目玉、50mm相当F2.5のA12ユニットはほとんど触っておらず、肝心のユニット交換を行なっていない状態だ。いずれ本格的に試してみようと思う。



本誌:折本幸治

2010/1/21 16:29