交換レンズレビュー

SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Art

見た瞬間に伝わる高い解像感

今回はEOS 5D Mark IIIで試用した。発売は3月19日(キヤノン/シグマ用)、3月27日(ニコン用)。実勢価格は税込10万9,610円前後

SIGMA 24mm F1.4 DG HSM | Artは35mm判フルサイズセンサーに対応した広角単焦点レンズである。開放F値は1.4と明るく、同社が展開する高品位レンズシリーズ「Artライン」に属している。

レンズ構成は特殊低分散ガラスであるFLDガラス3枚、SLDガラス4枚を含む11群15枚。これにより諸収差、特にサジタルコマフレアの発生を抑えたという。最少絞りはF16で9枚の絞り羽根による円形絞りを採用。なお手ブレ補正機構は搭載されていない。

デザインと操作性

デザインはシグマのArtラインレンズに共通するもので、艶消し塗装と艶有り塗装を組み合わせた鏡筒は高級感のある仕上がりが印象的だ。最大径85mm、全長90.2mmと単焦点広角レンズとしては少し大振りに感じるものの、フルサイズ機であるキヤノンEOS 5D Mark IIIとの組み合わせにおいてはバランスは良い。質量は665gと単焦点レンズとしては重い部類だ。

レンズ正面。開放F1.4の明るいレンズだけに大きな前玉が目立つ。専用の花形フードが付属する

超音波モーターHSMを搭載しておりAFはスピードも速く静かだ。フォーカスリングは幅広く高めの山のゴムパターン。MF時におけるリングの回転はすこし重めだが、浅い被写界深度でのピント合わせには軽くて回りすぎるよりもこの程度の重さが良い。

デザインはArtラインレンズ共通のもので高級感のある仕上がりだ

フィルターサイズは77mmと実際の前玉のレンズ直径よりも大きめに設計されているが、同じくシグマのArtラインレンズの1つ、50mm F1.4 DG HSM | Art等と同じ径のフィルターを共用できるといったユーザーメリットは大きい。

金属マウント採用。シグマ用、キヤノン用、ニコン用が発売予定。有料のマウント交換サービスにも対応
スイッチはAF/MFの切り替えスイッチのみ。AF時にフォーカスリングを回転させることでMFに切り替わるフルタイムマニュアル機構に対応

なお、オプションのSIGMA USB DOCKとSIGMA Optimization Proを使用することで、C-AF時でもフォーカスリングを回転させることで一時的にMFへ切り替えることができる「新フルタイムマニュアル機構」へのカスタマイズが可能。

SIGMA Optimization Pro

これは従来のフルタイムマニュアル機構ではC-AF時にフォーカスリングを回してもすぐにAFが作動してしまってピント位置が固定できなかったものを、C-AF時でもMFで随時ピント位置を変更できる挙動へと変更できるという物だ。

動いている人物などをC-AFで追いかけながら撮影しているときのピントの微調整などに効果的。なお、シャッターボタンを再び半押しするなどしてふたたびAFをスタートさせるとC-AFに戻る。そのほかSIGMA Optimization ProではAFを行う距離の範囲設定やAF合焦位置の微調整なども可能だ。

遠景の描写は?

撮影した画像をパソコンで開き、全画面表示でパッと見ただけでもその解像感の高さが伝わってくる。全体に均一でクリアな描写で開放絞りから周辺光量落ちが非常に少ない。24mmという広角レンズの広々とした画角と、いびつな歪みの一切ないパースペクティブが自然な遠近感を表現する。

画像を等倍表示させ、画面中央部を見ると開放F1.4から驚く程シャープに解像していることがわかる。そこから絞って行くとF4〜5.6にかけていちばん解像力が高まり、F11〜16でほんの僅かだが回折による画質低下が見られるようになる。しかしそれでも実用上十分すぎる程の解像力を保っている。

同じく等倍表示させた画像で周辺の描写を見る。F1.4〜2にかけてはほんの僅かだが滲みが認められる。ただしF2.8まで絞るとその滲みはほぼ解消され、F5.6〜11においては周辺画像としては群を抜く解像力を見せる。

また、最も絞り込んだF16においても解像力はほとんど低下することがない。必要であれば躊躇なくF16まで絞り込み撮影できる画質だ。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

※共通設定:EOS 5D Mark III / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 24mm

中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

広角レンズは一般的にピントを合わせた前後はそれほど大きくぼけることはない。しかし開放絞りF1.4であるこのレンズは、その浅くなる被写界深度を活かすことで広角レンズでありながらぼけを活かした撮影が行える。広い画角と大きなぼけを両立できる点もこのレンズの魅力だ。

絞り開放・最短撮影距離(約25cm)で撮影。EOS 5D Mark III / 1/200秒 / F1.4 / +2EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
絞り開放・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/200秒 / F1.4 / +1.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
絞りF2.8・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/20秒 / F2.8 / +1.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm
絞りF4・距離数mで撮影。EOS 5D Mark III / 1/250秒 / F4 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm

逆光耐性は?

広角レンズでの撮影でよく見られる空を大きく写し込んだシーンにおいて、画面内に太陽を直接入れたものと入れていないものを比較した。

画面に太陽が入っていない画像では明るい空を背景としていても画像の滲みもみられずに非常にクリアだ。一方画面内に太陽を入れ直接レンズに太陽光が射す撮影においては、太陽周辺は当然露出オーバーとなりその近くの手摺も光に溶け込んでいる。また僅かながらゴーストも発生している。

しかし画像全体を見る限りではコントラストの低下も非常に少く滲みもほとんど見られない。強力な逆光耐性を持ったレンズだということがわかる。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。EOS 5D Mark III / 1/4000秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 24mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。EOS 5D Mark III / 1/3200秒 / F1.4 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 24mm

作品

地面に腰掛け低い位置から空を仰ぎ撮影した樹木。24mmの広い画角で空に広がる枝の生命力を表現する。開放絞りF1.4にして月明かりのみで露光。薄いベールのような雲の向こう側から星々の明かりが届く。

EOS 5D Mark III / 30秒 / F1.4 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / 24mm

住まう人の数も減りいまや取り壊しが進む巨大団地。かつての賑わいを憶いだしつつシャッターを切る。F2の絶妙なぼけ具合と解像感に夕陽の逆光の輝きが組み合わさり止まりかける時間が写し出される。

EOS 5D Mark III / 1/2500秒 / F2 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm

流れる川を橋の上から眺めるもそこに川面は見えず。常に変わりゆく都会の風景のなかに変わらざる風景が混在する。24mmの広い画角と歪みのないすっきりとした描写が街を形成するパーツのひとつひとつを客観的でありながら情緒的にも見せてくれる。

EOS 5D Mark III / 1/100秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm

駅に併設されたきれいで広々としたルーフエリアから、二十数年前と変わらぬビル街を眺める。24mmレンズは縦構図にすることで伸びやかな空間の広がりを表現出来る。さらに歪曲の少なさによって得られるまっすぐな直線もこのレンズが持つ魅力だ。

EOS 5D Mark III / 1/500秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm

春のおだやかな陽射しのもと、海岸に打ち寄せる波の音を聞きながらシャッターを切る。F8とすこし絞り気味にして手前から遠景までを被写界深度に収める。足下の岩にあたる波しぶきの飛沫から岬の突端に建つ展望台の幾何学的な形まで、こと細やかに解像する。

EOS 5D Mark III / 1/250秒 / F8 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / 24mm

まとめ

このレンズはシグマArtラインのフルサイズ機用単焦点レンズとして3本目の登場となる。これまでに発売された35mm F1.4 DG HSM | Artおよび50mm F1.4 DG HSM | Artと並び驚く程に高品位な性能を発揮する。

レンズの魅力は解像力だけではないが、今年、35mm判デジタル一眼レフはついに5,000万画素超の領域にまで踏み入ることを考えると、ますます高い解像力がレンズに求められるのは必然であろう。このレンズは今後もその要求に応えていくというシグマの強い意思の表しであるとさえ感じる。

さらに広角レンズでありながらも、ぼけによる表現が可能なF1.4という明るいレンズは「Art」を標榜する魅力を十分に持ち合わせる存在だ。先に発売された2本共々、いま再びの単焦点レンズ復権を担うレンズだ。

礒村浩一

(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現 東京ビジュアルアーツ)卒。女性ポートレートから風景、建築、舞台、商品など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーおよび撮影ツアーの講師を担当。デジタルカメラに関する書籍やWeb誌にも数多く寄稿している。近著「オリンパスOM-Dの撮り方教室 OM-Dで写真表現と仲良くなる」(朝日新聞出版社)、「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド」(玄光社)など。 2015年9月よりデジタルハリウッド「カメラの学校」講師。Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy