交換レンズレビュー
EF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STM
小形軽量で使いやすい超広角ズーム
Reported by 礒村浩一(2014/7/28 09:00)
キヤノンから発売されている交換レンズには、フィルム一眼レフ、フルサイズデジタル一眼レフも含めすべてのEOSに対応するEFレンズと、APS-CサイズのEOSデジタルに対応するEF-Sレンズ、ミラーレスEOS専用のEF-Mレンズの3種類がある。
今回取り上げる「EF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STM」はAPS-Cサイズの撮像素子を持つEOSデジタル専用の超広角ズームレンズである(EOS Mにはマウントアダプター併用で使用可能)。
焦点距離は35mm判換算でおよそ16-29mm相当となりEF-Sレンズのなかでは、同じく広角端が10mmの「EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM」と並び最も広角域の撮影が可能なレンズとなる。レンズ構成は非球面レンズ、UD(Ultra Low Dispersion)レンズを含む11群14枚。EF-Sの広角ズームレンズとしては初めて、シャッター速度に換算して約4段分のレンズ内手ブレ補正機構(IS)が搭載された。
デザインと操作性
レンズのサイズは最大径74.6mm、長さは72mm、質量は240gとなる。一方「EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM」が最大径83.5mm、長さ89.8mm、質量385gであるのと較べると、焦点距離の違いや開放絞り値の違いはあるものの、全体的により小さく軽くなった印象を受ける。
また「EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM」ではレンズの前玉枠が大きく、カメラに装着して手にした際にレンズの存在感を強く感じることがあったが、この「EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM」はそういったこともない。どちらかというとデザインも含め標準ズームレンズ「EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS STM」に近い印象だ。
遠景の描写は?
まず広角端だが画面中央部、周辺部ともに開放絞りF4.5からよく解像している。解像力のピークはF5.6~8辺り。F11より絞り込むと回折現象によって解像力が若干低下する。色収差も見当たるが大きな補正は必要ないだろう。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
望遠端は画面中央部、周辺部ともには開放絞りF5.6から優れているが、F11より絞ると解像力の低下が著しい。また開放絞りから周辺部の色収差は少し多めだ。
ボケ味は?
超広角レンズという性格上あまりボケを期待するレンズではないが、最短撮影距離がズーム全域で0.22mととても短いので、被写体に近づいて撮影することで背景をぼかした撮影を行うこともできる。
最短撮影距離かつ開放絞りでの撮影では、たとえ10mmの超広角といえどもピントを合わせた箇所以外は、ボカして写すこともできるが、やはり大きなボケとはならない。それよりも超広角ならではの独特な臨場感となるのが面白い。また被写体と距離を取り開放絞りより1~2段も絞り込めば、被写界深度も深くなりほぼ全域にピントが合うようになる。
22cmという短い最短撮影距離での撮影では、被写界深度も浅くなり背景をボカした撮影が可能だ。なによりここまで近づいて撮影できるというのは、画作りにもとても面白い効果を与えることができる。
一方、被写体との距離を数mとすれば大きく絞らずとも背景をボカすことなく撮影することもできる。35mm判換算で約29mmとなる画角と併せてスナップ撮影に扱いやすい。
逆光耐性は?
10mmおよび18mmいずれも逆光での撮影でもコントラストも高くフレアも少ない。ただ広角レンズであるだけに画面内に太陽を入れるとゴーストの発生は免れない。また色収差も目立つ。光源を画面に入れての撮影ではある程度の割り切りが必要だ。
まとめ
キヤノンのEF-SレンズはAPS-CセンサーのEOSデジタル専用レンズとして設計されている。そのためフルサイズ機では使用ができず、フルサイズ機との併用や将来的にフルサイズ機へのステップアップを想定しているユーザーは購入を躊躇することもあるだろう。
ただ、今回紹介した「EF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STM」は専用設計だからこそ画質を下げること無く、軽量かつコンパクトなレンズとすることができた良い例だと言える。それに、なにしろ10mm(16mm相当)という超広角は撮影していてとても面白く実用的な画角でもある。実勢価格も4万円前後とコストパフォーマンスは非常に高い。
AFも高速で静粛性の高いSTM(ステッピングモーター)を採用しているので、写真のみならずムービーでの使用でもストレスが無く使える。APS-CセンサーサイズのEOSをメイン機としているユーザーにとっては積極的に選択する価値のあるレンズといえるだろう。