今回は、ベルボンがこの7月1日に発売したばかりの新型三脚「VS-443Q」を採りあげたい。VS-443Qは、マクロ撮影などで“もっと被写体に寄りたい”といった場合に威力を発揮する機構を備えた製品だ。
VS-443Q |
製品写真を見ていただければ一目瞭然だが、この三脚はエレベーター機構そのものの角度を自在に変えることができるのが大きな特徴だ。
【動画】エレベーター動作の様子
普通の三脚では、エレベーター(センターポールと呼ぶブランドも)は上にしか延びない。そのため、高さが足りないときに使うのが一般的だ。
エレベーター無しの状態では全高1,410mm。アイレベルまでは行かないがこのクラスの三脚では標準的な高さだ | エレベーターを伸ばすと+20cmの1,610mmになる(モデルの身長は約178cm) |
ところが、VS-443Qは横や下にエレベーターの先端を向けることが可能なため花などをマクロ撮影する際に大変重宝する。エレベーターは20cm伸ばすことができるため、花壇など三脚の脚を入れられない場所でカメラだけを被写体に近づけることができる。不整地などでも活躍するだろう。ライブビューで使用するとこの機能がより活きる。
自在にエレベーターが動くため、アングルの自由度が高い |
エレベーターは20cm伸びるため、花壇などでの撮影に重宝する | 脚は3段階に開脚できる。これは最も開いたところ |
こうした極端なローポジションにも対応できる | カメラを上下逆にすると、さらに地面すれすれでの撮影も可能だ(このままだとシャッターが押せないので、実際はリモートレリーズを使用する必要がある) |
こうしたギミックを持つ三脚は稀な存在だが、ほかのメーカーでラインナップしているところもある。そうした中でVS-443Qがユニークなのは、エレベーター動作のロック方法にある。
このようなタイプでは、多くがエレベーターの角度をロックするのに本体部分のネジなどで操作していた。その点VS-443Qは、エレベーター端のグリップをひねることでロックとリリースができるようになっている。このため「ロックのリリース」→「位置変更」→「ロック」の動作をグリップを握った片手で行なえ、迅速に撮影ボジションをセットできる。
エレベーター伸縮の様子。左は縮めたところで、右が最も伸ばしたところ |
一方、エレベーターの伸縮はクランクで行なう。最近の三脚はエレベーターのクランクが省略されているものが多く、使いづらいと感じている向きもあったと思う。今回クランク式エレベーターを使って、改めて素早い伸縮ができることを確認できた。
またマクロ撮影では、カメラ本体を前後させてのピント合わせを良く行なうが、その際クランク式だと細かい調整もまたやりやすい。今回もライブビューを見ながら前後位置を微調整し、楽にピントを合わせることができた。なお、当たり前だがセンターポールを向けた方向に三脚は倒れやすくなる。カメラがある方向に脚のうちの1本が向くようにセッティングするなど転倒防止には気を使いたい。
真上から撮る“真俯瞰撮影”も容易にできる。商品撮影などの用途にもよいだろう |
■動画撮影に使ってもおもしろい
と、ここまでは静止画での話しだったが、この三脚は動画撮影でも色々と活躍できそうなことに気がついた。
録画しながらセンターポールを動かしてみる、あるいはエレベーターを伸縮させてみるとどうなるか? 試したところ、なかなかおもしろい動画を撮ることができた。グリップのロックを少し弱めた状態だと水平方向のみの回転ができるため(それも、やや重めのトルク感を持った状態で)、ビデオ用雲台ほどではないにしろそれなりにスムーズなパンができた。
また、エレベーターの伸縮を行なうと、ズーミングとは違った印象で被写体に近づく様子を収められる。最近のミラーレスカメラなどは、動画時のAFが実用的になっているので色々と試し甲斐がありそうだ。
グリップには回転とロックの方向が示してある | グリップに至るパイプを“パン棒”と考えることができる。動画撮影ではこのパン棒が長いために、比較的ゆっくりとした操作が可能になっている |
グリップは溝のあるラバーが巻いてあるため、滑らずに操作できる | エレベーター機構本体部も金属製でしっかりした造りの印象 |
側面には30度ごとの目盛があるので、大まかな角度がわかる |
VS-443Qの三脚としてのスペックをざっと上げると、脚はアルミパイプの4段レバーロック式。全高1,610mm、エレベーター無しでは1,410mmの全高となる。縮長は580mm。最大パイプ径は23mm。最低高は240mmとなっているが、セッティング次第でレンズの中心を地面から数cmまで降ろすことができる。重量は1,850gだ。
クランクも金属製 | センターボールの伸縮ロックは、クランクと反対側のツマミで行なう |
クランクは倒して収納可能 |
今回はパナソニックの「LUMIX DMC-GF2」と組み合わせて使ってみたが、なかなか軽快に操作できた。耐荷重は3kgとなっているが、エレベーターを伸ばして使うという本機の特性を考えると、実際にはミラーレス機かエントリー~ミドルクラスのデジタル一眼レフカメラで使うのが適しているように感じた。というのも、キヤノン「EOS 5D Mark II」+「EF 24-70mm F2.8 L USM」の組み合わせ(約1.8kg強)でも使ってみたところ、やはりエレベーターを伸ばして横に出すとブレが収まるまでに時間を要してしまい、ちょっと厳しい印象だったからだ。
三脚の本体部分には、3段の開脚機構を備える | 脚はレバーロック式の4段。石突はゴム式 |
クイックシュー式の自由雲台「QHD-53Q」が付属する。3軸の水準器を備える |
■まとめ
特殊な機構を備えているとあって価格は3万5,490円とこのクラスでは高めだが、量販店ではすでに2万円台前半で購入できるようだ。こうしたマクロ撮影に強い三脚を探していた人はもちろんだが、例えば最近ミラーレスカメラを手に入れて次は三脚を探しているといった向きには、プラスαの機能付きということで検討してみると良いだろう。
縮めたところ | バッグが付属する |
2011/7/6 12:04