コンパクトデジカメ向けの小型多段三脚といえば、その多くがダボ式(脚を引き出すとパイプ内のピンがバネ圧により飛び出て、脚に設けられた穴に固定される方式)を採用する8〜10段のもので、旅行での記念撮影がメインの用途となる。基本的な機構は昔から変わらず、派手な新製品もない。どちらかといえば、枯れたジャンルの製品といえるだろう。
今回紹介するベルボンの「CUBE」も、そうした旅行用小型三脚のひとつだ。ただし、従来の旅行用小型三脚とは一線を画するアイデアが多数盛り込まれている。
脚を伸ばしたところ。雲台は固定式でエレベーターはない。全高は94cm |
まず特徴的なのは、収納時のスタイルだろう。脚の断面は正方形で、収納時にそれら3本の脚が横一直線に並ぶことで、フラットな形状になる仕掛けだ。雲台もそれに合わせて前後に薄い設計。そのおかげで、バッグの隙間などに突っ込めるわけだ。
また、セッティングの容易さ・素早さも特筆すべき点。ほぼワンアクションで脚を伸ばせる。具体的には、片手で脚先の石突きをぎゅっと3本まとめてつかみ、もう一方の手は脚1段目にある収納ボタンを押しながら、こちらも3本まとめて握る。この状態で石突きを引っ張ると、小気味良い音を立てながら脚が伸びる。その後、脚の根元を前後に開き、石突きを接地させれば終了だ。
脚を収納した状態。雲台も含めてフラットになるので収納性は抜群だ |
ちょっとしたバッグの隙間に入れておける | 脚を伸ばしているところ。このまま足先をぐいっと伸ばす |
雲台も使いやすい。雲台横のストップ解除レバーをつまみむとテンションフリーになり、向きを調整できる。操作性はなかなかのもので、安物の小型三脚についている雲台にはない、滑らかな動作に感心した。雲台上部を起こすことで、縦位置撮影も可能だ。
三脚本体はマグネシウム製となっており、旅行用小型三脚にしては高級感がある。縮めたときの長さは24cm。脚を伸ばすと94cmまで高くなる。段数は8段。脚を伸ばさず、卓上三脚として使う場面も旅先で多そうだ。
前後に薄い特徴的な形。手前がストップ解除レバー | 上部を起こすことで縦位置撮影に対応する |
縦位置の使用例 |
ベルボンによる推奨積載質量は400g。つまり、コンパクトデジタルカメラとの組み合わせが基本となり、デジタル一眼レフカメラやレンズ交換式のミラーレス機での使用は避けた方が無難だ。あくまでのコンパクトデジタルカメラと組み合わせて使うべき製品である。
またダボ式なので、脚の長さを調整するのは事実上難しい。常に伸ばしきって使うのが基本となるので、作品撮り用というよりは、やはり記念撮影用と考えた方が良いだろう。
とはいえ、8段ダボ式の旅行用小型三脚としては比較的しっかりした造りだし、雲台の使い勝手も悪くない。収納性・可搬性・操作性のそれぞれが高く、このジャンルに一石を投じる製品なのは間違いない。
2011/3/30 11:51