Canon EF LENS 写真家7人のSEVEN SENSES

「サーキットでオールマイティに使える実力」
モータースポーツ撮影のプロ・熱田護さんの場合

キヤノン EOS 7D Mark II + EF70-300mm F4-5.6L IS USMの魅力を探る

大好きな雨のシーン。なぜなら、水しぶきという素敵な効果をプレゼントしてもらえるから!
キヤノン EOS 7D Mark II / EF70-300mm F4-5.6L IS USM / 200mm(320mm相当) / マニュアル露出(F40、1/13秒、0EV)/ ISO 100

キヤノン EOS 7D Mark IIとEFレンズについて、「動きモノ」撮影のプロにその印象を聞く本連載。その道のプロが語る使いこなし術は、大いに参考になるのではないだろうか。

今回は望遠ズームレンズ「EF70-300mm F4-5.6L IS USM」との組み合わせを中心に、モータースポーツ作品でファンの多い、熱田護さんに話を聞いてみた。

聞き手:笠井里香

スローシャッターを使った流し撮り。背景にピットビルを入れてマシンのスピード感を表現してみた。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF70-300mm F4-5.6L IS USM / 70mm(112mm相当) / マニュアル露出(F29、1/15秒)/ ISO 100
S字を進んでいくマシンの後ろ姿をAIサーボAFで追いかけた。低コントラストの天候で、被写体が奥へと逃げていく難しい条件でもフォーカスはきちんと追尾をしてくれた。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF70-300mm F4-5.6L IS USM / 300mm(480mm相当) / マニュアル露出(F8、1/500秒)/ ISO 400
雨のレース。背景にS字カーブを入れつつ、マシンの後ろから吐き出される水しぶきでレースの雰囲気を出してみた。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF70-300mm F4-5.6L IS USM / 200mm(320mm相当) / マニュアル露出(F9、1/250秒)/ ISO 100
ワンフレームに複数のマシンを入れて撮るというレースシーンのひとつの表現。GTレースでは、多くの追い抜きシーンがみられる。ぜひチャレンジしてみてほしい。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF70-300mm F4-5.6L IS USM / 188mm(301mm相当) / マニュアル露出(F13、1/500秒)/ ISO 400
シャッター速度を1/13秒にして背景を流す。この場合は、手前の赤白の縁石を入れてマシンの動いていく方向をイメージさせている。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF70-300mm F4-5.6L IS USM / 300mm(480mm相当) / 絞り優先AE(F36、1/13秒) / ISO 100

日曜日の決勝レースは、夕方6時半にチェッカーとなってライトオン。そして、グランドスタンドにも照明が点く。ダンロップコーナーを駆け上がってくる鈴鹿1,000kmならではのシーン。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF70-300mm F4-5.6L IS USM / 260mm(416mm相当) / マニュアル露出(F6.3、1/320秒)/ ISO 2000
測距点は目のあたりを選択する。そのままではヘルメットのバイザーにピントが合ってしまうことが あるので、マニュアルでピントを追い込む。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF70-300mm F4-5.6L IS USM / 200mm(320mm相当) / 絞り優先AE(F5.0、1/100秒、±0EV)/ ISO 100

EOS 7D Mark II
EF70-300mm F4-5.6L IS USM

EOS-1D X譲りの正確で高速なAF

−−写真を始めたきっかけ、またモータースポーツの撮影を始めたきっかけを教えて下さい。

僕は三重県鈴鹿市、鈴鹿サーキットのすぐ近くの出身で、学校で勉強していてもサーキットからはいつもエンジン音が聞こえてきました。そういう環境にいましたので、モータースポーツはとても身近なものだったんです。

実は、僕は“鉄ちゃん”で鉄道写真から写真に入りました。オートバイを好きになってからレースを撮るようになって、写真で食べていけたらいいなと思うようになったんです。それで工芸大学の短期大学部に入学しました。

当時、レースを撮っている先生がいらしてその先生にお世話になり、プレスパスなどを取って頂いてサーキットに通いました。サーキットに通っていると、ますます写真を撮りたいと思うようになっていきましたね。そこであるライダーの方に雑誌を紹介してもらって、アルバイトするようになり、そのまま仕事として撮影をするようになっていきました。

熱田護さん。1963年三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期短期大学部写真技術科卒業。85年ヴェガインターナショナル入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。92年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行なう。日本レース写真家協会(JRPA)会員、日本スポーツプレス協会(AJPS)会員。

−−当初、二輪のレースの撮影をしていたそうですが、四輪(F1)の撮影に転向されています。二輪と四輪で撮影に違いはありますか?

大きさが違うということ意外では、大きな差はありませんね。僕はオートバイが好きなこともあって、当初はF1の魅力というものが分からなかったのですが、1991年以降、F1の撮影をするようになって、皆さんもよくご存知のアイルトン・セナ選手に出会い、あっという間に虜になりました。今年、F1を撮影してから24年目になりますね。

−−今回、EOS 7D Mark IIとEF70-300mm F4-5.6L IS USMの組み合わせでの撮影を初めて行って頂きました。

普段、仕事でF1に携行する機材は、35mmフルサイズセンサーのカメラが中心です。EOS-1D X、EF11-24mm F4L USM、EF70-200mm F2.8L IS II USM、EF400mm F2.8L IS II USM、それにEXTENDER EF1.4×III、EXTENDER EF2×III。35mmや50mmの単焦点レンズも持って行きます。最近では、EOS 5Dsも使用しています。

−−EOS 7D Mark IIのAF性能はいかがでしたか?

EOS-1D Xでの撮影時同様に、測距エリアモードを1点で使用しました。AIサーボAFに設定していて、AFカスタム設定ガイド機能は「Case4:被写体が急加速/急減速するとき」です。これもEOS-1D Xでの設定と同様の設定ですね。AFスピードの正確性も高く、ピント面もシャープで素晴らしいと思います。

AFカスタム設定ガイド機能は「Case4:被写体が急加速/急減速するとき」を選択。

シチュエーションのいいときにはMFでしっかりとピントを合わせることもあります。また、絞り込んだときにはシャッタースピードが遅くなりますし、AFが迷ってしまうような背景のこともあるので、MFを使いますね。動きを止めるような撮影のときにはAFを使いますし、撮影時のシチュエーションによって、AFとMFを使い分けています。APS-Cということもあり、画面の隅まで測距ポイントがあってより正確だと思いますね。

コーナーに進入するときの状態。実際には、これよりもマシンが遠くにいるときから測距点をフロントグリルに合わせてマシンを追い続けている。
クリップでのカット。測距点は向かって右のライトの左側にあるために、マシンが画面の左側にきてしまって、あまりカッコよい絵にはならない。
このコーナーで撮りたかった立ち上がりのカット。測距点もこの写真を撮るために選んである。マシンがぐっと寄ってきて至近距離になっても、見事にピントを合わせてくれた。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF70-300mm F4-5.6L IS USM / 300mm(480mm相当) / マニュアル露出(F8、1/500秒) / ISO 200

オールマイティにサポートする組み合わせ

−−撮影時にはシャッタースピードを優先するのですか?

ピットでの撮影では絞り優先に設定しています。シャッタースピード優先よりも、絞り優先の開放で撮ることが多いですね。単焦点レンズを使うときも、絞り優先に設定することが多いです。絞り開放での撮影が多いので、絞り開放から高画質が得られるレンズ選びをしています。今回、EF70-300mm F4-5.6L IS USMは初めて使いましたが、描写については絞り開放から高画質で満足しています。

鈴鹿1,000kmでのピット内。長丁場のレースならではのシーンがたくさんみられます。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF70-300mm F4-5.6L IS USM / 70mm(112mm相当) / 絞り優先AE(F4.0、1/50秒、±0EV) / ISO 1000
ディスクローターに外光が当たって、鈍く輝いていた。望遠でアップで撮るとピントも浅くなり、ぶれやすくなるので、効きのよい手ブレ補正は大きな武器となる。
キヤノン EOS 7D Mark II / EF70-300mm F4-5.6L IS USM / 300mm(480mm相当) / 絞り優先AE(F5.6、1/60秒、±0EV) / ISO 200

−−連写性能についてはいかがでしたか?

僕は機材に対して何をおいても画質がよいことを優先しますが、連写も速ければ速い方がいいと思います。特にモータースポーツを撮る人にとって連写性能は必要です。EOS 7D Mark IIの高速連続撮影は最高10コマということですが、十分だと感じました。

−−画質を最優先で機材を選択するということですが、EOS 7D Mark IIとEF70-300mm F4-5.6L IS USMの組み合わせでの描写力についてはどう感じましたか?

ピットでの撮影では、開放の撮影でもピントの合った部分がとてもカリっと来るものもありました。ピット内での撮影ではISO1000でも撮影しましたが、感度を上げても破綻のない画になっているなという印象です。ISO100での画は、すごくきれいと言っていいと思います。価格を考えても、コストパフォーマンスは高いですよね。

−−最短撮影距離が1.2mと比較的短いのですが、メリットは感じられましたか?

ドライバーの表情などを寄って撮影したいことも多く、最短撮影距離は気にします。可能な限り寄れるレンズだと嬉しいです。EF70-200mm F2.8L IS II USMよりも最短撮影距離が30cm短いので、思った以上に寄れるなと思いました。300mmで寄って撮れるというのは魅力ですね。

−−手ブレ補正(IS)はどちらのモードを使用しますか? 効果は体感としてありましたか?

僕はMODE 1に設定しています。F1のようなモータースポーツの撮影の場合、あまり上下の動きはなく、左右の動きが多いので、実は走行シーンの撮影時、流し撮りの際には手ブレ補正はOFFにしているんです。ピット内での撮影では暗い場面もありますし、シャッタースピードが遅くなることも多いので、さまざまな動きを補正するために利用しています。効果は十分にあると思いますね。

−−ボディの大きさ、またレンズとのバランス、操作感についてはいかがでしたか?

ボディ、レンズのどちらかが重いということもないですし、バランスは問題ありませんでした。縦位置グリップも付けてみましたがホールド感はいいですね。

このコンパクトなシステムで112-480mm相当をカバーできる。ボディとレンズのバランスも良い。

−−モータースポーツを撮影する際に、70-300mmという焦点距離域で撮影できる場面はどんなところでしょうか?

オールマイティに使えると思いますね。APS-C機に装着した際には112-480mm相当になりますから、ガレージからの車の出入りから、ドライバーの表情、引き気味でガレージに車が入って行くところ、もちろん走りも撮れると思います。初めての1本としてはいいと思いますし、合格点ではないでしょうか。モータースポーツの撮影をしたいと考えている人には、価格的な面でもEOS 7D Mark IIとEF70-300mm F4-5.6L IS USMの組み合わせは始めやすいと思いますね。

まずはサーキットに通ってほしい

−−これからモータースポーツの撮影を始めたいという人に、撮影に対する心持ちや、撮影のポイントなどを教えて下さい。

機材はもちろん大切な要素のひとつなんですが、まずはサーキットに行ったらイン側だけでなくアウト側、サーキットを一周できるならくまなく歩いてみて欲しいですね。もちろんポイントとなる場所はあるんですが、そこだけを撮っていても面白くなくなってしまうし、飽きてしまうと思うんです。特にデジタルカメラでは撮れたものをすぐに見ることができますしね。コースを一周見て、サーキットの雰囲気や入ってくる車の角度など、自分の持っているレンズで覗いてみて、よく観察して欲しいです。

そういった中で自分で場所を決めて、まずは必要最低限の機材を買い、残ったお金はサーキットに行くために使って欲しいと思います。なるべくたくさんサーキットに通って、そこからもう少し長いレンズが欲しいなとか、レンズ性能をもっと上げたいなとか、そういったことを考えるとより長く楽しめると思うんです。

いい写真を撮るために、そのカテゴリーを勉強し、ドライバーやメーカーを好きになるともっと楽しくなると思いますし、F1の日本開催は年に一度ですから、それ以外の時期には他のカテゴリーのレースなどを撮影して練習を重ね、それをフィードバックする。せっかく機材を買うのだから、飽きないような、長く続けられるような方法を自分の中で見つける。そういう気持ちがあってこその機材であり、いい写真を撮ろうと努力するなかでの設定であると思います。

まずは、コンパクトで手の届く価格帯でもあるEOS 7D Mark IIとEF70-300mm F4-5.6L IS USMの組み合わせでスタートしてみて、できるだけ長く写真を撮ることを楽しんでもらえたらいいなと思いますね。

熱田護さんの主なEOS 7D Mark II設定例

設定項目 設定内容
画質(圧縮率) RAW+JPEG(ラージ)
ドライブモード 高速連続撮影
AFモード AIサーボAF、MF
測距エリア選択モード 1点
AFカスタム設定ガイド機能 Case4
被写体追従特性 最大
速度変化に対する追従性 最大
測距点乗り移り特性 最大
ピクチャースタイル スタンダード
高感度時のノイズ低減 OFF
高輝度側・階調優先 標準
オートライティングオプティマイザ しない
周辺光量補正 する
色収差補正 する
歪曲収差補正 しない


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月刊誌「デジタルカメラマガジン」でも連携企画「Canon EF LENS 写真家7人のSEVEN SENSES」が連載中です。EFレンズを知り尽くした写真家によるレンズテクニックが収録されています。

笠井里香

出版社の編集者として、メカニカルカメラのムック編集、ライティング、『旅するカメラ(渡部さとる)』、『旅、ときどきライカ(稲垣徳文)』など、多数の書籍編集に携わる。2008年、出産と同時に独立。現在は、カメラ関連の雑誌、書籍、ウェブサイトを中心に編集、ライティング、撮影を務める。渡部さとる氏のworkshop2B/42期、平間至氏のフォトスタンダード/1期に参加。