デジカメドレスアップ主義:マウント改造というカルチャー

FUJIFILM X-Pro1 + Cooke Speed Panchro 25mm F1.8 SER II
Reported by澤村徹

  • ボディ:FUJIFILM X-Pro1
  • レンズ:テーラー&ホブソン Cooke Speed Panchro 25mm F1.8 SER II
  • マウント改造:三光映機 アイモ-ライカMマウント改造
  • マウントアダプター:Rayqual LM-FX
  • ハンドストラップ:アクリュ レザーカメラグリップベルト[for PEN](ブラック)
  • ショルダーストラップ:アクリュ ショルダーストラップカシェTYPE2(ブラック)
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 マウント改造は、熱心なオールドレンズファンであってもつい身構えてしまう。マウントを別ものに作り替えるため、レンズをオリジナルの姿に戻せない。着脱自在のマウントアダプターと異なり、行ったきり帰ってこれない世界だ。ただし、映画用カメラの世界では、このマウント改造がそれなりに浸透している。今回は映画用機材の修理メンテナンスに精通した三光映機の協力をあおぎ、アイモマウントレンズのマウント改造を敢行してみた。

 ムービー業界でマウント改造が浸透しているのは、業務用シネレンズが非常に高価であるという理由が挙げられるだろう。35mmフィルム用ムービーカメラは、映画撮影で用いられることが多かった。映画は巨大なスクリーンで上映するため、撮影レンズはすぐれた解像力が求められる。業務用シネレンズは光学性能的に飛び抜けた存在なのだ。それゆえに35mmフィルム用シネレンズはどれも高価で、ボディをリプレイスしたからといってレンズを総取っ替えするわけにはいかない。マウント改造して流用を考えるのは、ごく自然なことだろう。三光映機によると、近年はBNCマウントレンズのPLマウント改造がポピュラーだという。PLマウントは現行ムービーカメラのユニバーサルマウント的な存在で、要は旧タイプのレンズを新ボディに対応させるためのマウント改造だ。

 今回俎上に載せるのは、アイモ(Eyemo)マウントのスピードパンクロ25mm F1.8だ。アイモはベル&ハウエル社の35mmフィルム用ムービーカメラで、1920〜1950年代にかけて活躍した。アイモマウントは知名度のあるマウントだが、現在のところスチル用マウントアダプターは市販化されていない。そこで今回は、このアイモマウントのレンズをライカMマウント改造することにした。ライカMマウントに改造しておけば、ライカMマウントアダプターを介して様々なノンレフレックス機に装着できるというわけだ。

 実際の製作は、ワンオフのマウントアダプターを作ることになった。ライカM側のバヨネットは既存のマウントアダプターからパーツ流用し、アイモマウント側のワンオフパーツを作って組み合わせる。このワンオフパーツでフランジバックの調節も行なうため、何度か試作を行なって最適なものを取り付けた。なお、レンズの後玉がライカMパーツと干渉するため、後玉外周に加工を施している。今回の改造費用は約5万円だったが、これは改造内容やレンズのコンディションによって異なってくるだろう。

25mm F1.8というスペックだけあって、大きな前玉が印象的なレンズだ絞りリングごとヘリコイドが回転するため、レンズ指標が移動してしまう。少々使いづらいレンズだ
ワンオフのアダプターを取り付けるため、レンズの後玉外周を削っているライカMマウントのバヨネットは既存パーツを流用している
レンズはマウントアダプター側面の3カ所のネジで固定。これをゆるめれば指標位置も調整できるRayqualのLM-FXを介してX-Pro1に装着。この状態でややオーバーインフになるように調整した

 アイモマウントのスピードパンクロ25mm F1.8は、シネレンズとしては大柄で、なおかつウエイトもそこそこある。そこでホールドしやすいようにグリップスタイルのストラップを組み合わせてみた。アクリュのレザーカメラグリップベルトは、シックなスタイルのハンドグリップだ。この手の製品は一眼レフ向けが一般的だが、アクリュの製品はノンレフレックス機と好相性なサイズで作られている。グリップ部分には低反発クッションを仕込み、使い心地も快適だ。このグリップベルトはロングストラップと併用可能で、実用性にも配慮したデザインになっている。

アクリュのレザーカメラグリップベルト[for PEN]は5,828円。カラバリを豊富にそろえている取り付け具は樹脂製とメタル製の2種類がある。X-Pro1の場合はメタルプレートがフィットする
付属の樹脂パーツを使うと、グリップベルトにショルダーストラップを装着できる
アクリュのショルダーストラップカシェTYPE2は6,405円。金具をすべてレザーで覆っている従来品を改良し、取り付け部の裏面にナイロンテープが貼ってある。これにより耐重性が向上した

 ムービー用の35mmフィルムはAPS-Cのイメージセンサーとほぼ同サイズだ。そこでAPS-C搭載機のX-Pro1に本レンズを装着し、試写してみた。純正フードを付けるとわずかに四隅がケラレるが、フードなしならケラレなしで撮影可能だ。今回のレンズはカビと曇りが発生していたため、試写結果はフレアが目立つ。画像コンディションがあまりよくないものの、35mmフィルム用シネレンズならではの解像感の高さ、そしてすぐれた階調性が伝わってくる。ただし、周辺部はいくぶん描写が甘いようだ。レンズの操作面については、ピントを合わせると絞りリングごと鏡胴が回転するため、使い勝手はあまりよくない。これは本レンズの仕様なのでやむを得ない部分だ。取り付けに関してはガタつきなくしっかりと固定されており、ワンオフの強みを実感できた。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなしの撮影画像(JPEG)を別ウィンドウで表示します。
X-Pro1 / Cooke Speed Panchro 25mm F1.8 SER II / 4,896×3,264 / 1/60秒 / F2 / -1.33EV / ISO200 / WB:オート / 25mmX-Pro1 / Cooke Speed Panchro 25mm F1.8 SER II / 4,896×3,264 / 1/220秒 / F4 / -0.67EV / ISO200 / WB:オート / 25mm
X-Pro1 / Cooke Speed Panchro 25mm F1.8 SER II / 4,896×3,264 / 1/1,500秒 / F1.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 25mmX-Pro1 / Cooke Speed Panchro 25mm F1.8 SER II / 4,896×3,264 / 1/55秒 / F1.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 25mm
X-Pro1 / Cooke Speed Panchro 25mm F1.8 SER II / 4,896×3,264 / 1/1,200秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 25mmX-Pro1 / Cooke Speed Panchro 25mm F1.8 SER II / 4,896×3,264 / 1/105秒 / F2.8 / -0.67EV / ISO200 / WB:オート / 25mm


(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp

2012/10/19 00:00