- ボディ:ソニー NEX-5(ブラック)
- マウントアダプター:焦点工房 KIPON EOS-NEX A
- レンズ:ケンコー レンズベビーコンポーザー
マウントアダプターはオールドレンズ向けのアイテムという印象が強い。しかしミラーレス機の登場以降、状況が変わってきた。現行AFレンズ向けのマウントアダプターが増えているのだ。現行AFレンズは絞りリングを省略したものが多い。マウントアダプター経由で使うとき、そのままでは常時絞り開放になってしまう。そこでアダプター側に絞り制御機構を組み込んだ製品が登場しはじめた。ソニーα、ニコンG、ペンタックスDAが主なターゲットだ。
絞り機能付きアダプターは着々と種類が増えているが、唯一鬼門になっていたマウントがある。それはキヤノンEFマウントだ。EFマウントは絞りを電子制御している。レンズ側に絞りレバーがないため、物理的な絞り制御は行なえない。そのためマウントアダプター経由では常時開放絞りを余儀なくされていた。ここにあえて切り込んだのが、今回取り上げるKIPON製の絞り羽根付きEOSマウントアダプター「EOS-NEX A」だ。
NEX用絞り羽根付きEOSマウントアダプターは、焦点工房で1万2,800円だった。絞りリングはグリスが塗ってあり、滑らかに回転する | 1から6まで目盛りが振ってあるが、さらに絞り込むことが可能だ。ただし、1〜6の範囲での使用をメーカーは推奨している。 |
この製品はマウントアダプター内に絞り羽根を組み込み、キヤノンEFレンズで絞りを使った撮影を実現している。絞りリングをまわすと、円形絞りの羽根があらわれる仕組みだ。付加機能付きマウントアダプターの最先端といって差し支えないだろう。ただし、この製品はいくつか制約がある。まず対応レンズはキヤノンEFマウントのみで、EF-Sマウントは装着できない。レンズによってはケラレが発生する点も要注意だ。メーカーによると、刻印してある1〜6の範囲を推奨設定としている。このような注意点を踏まえつつ、数本のEFマウントレンズを試してみた。
・絞り羽根の様子
絞り目盛り1 | 絞り目盛り3 | 絞り目盛り6 |
絞り目盛り6と最小絞りの中間 | 最小絞り |
■キヤノン EF 50mm F1.4 USM
全域でケラレが発生しない上に、サイズ感もバランスのよいセットアップだ。実用的な組み合わせといえるだろう |
NEX-5とEF 50mm F1.4 USMの組み合わせは、絞りリング全域にわたってケラレなしで撮影できた。EOS-NEX Aのアドバンテージを存分に楽しめるセットアップだ。描写が安定した組み合わせなので、このセットアップで絞り値のテストを行なってみた。EF 50mm F1.4 USMをNEX-5とEOS 60Dに装着し、同条件で絞り込みながら撮影する。こうすることでEOS-NEX Aの絞り目盛りが、具体的にどの絞り値に対応するかが確認できるはずだ。
順に撮りくらべてみたところ、絞り目盛り6がF2.8前後、絞り目盛り6と最大絞りの中間あたりでF4前後という印象を受けた。つまり、メーカー推奨の絞り目盛り1〜6の範囲は、どの目盛りでも開放近辺での撮影となる。ケラレのないレンズと組み合わせた際は、細かく刻まず、大胆に絞りリングをまわした方がボケ量の変化を得やすいはずだ。
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・NEX-5 + EF 50mm F1.4 USM(EOS-NEX Aアダプター使用)
絞り目盛り1 | 絞り目盛り2 | 絞り目盛り3 |
絞り目盛り4 | 絞り目盛り5 | 絞り目盛り6 |
絞り目盛り6と最小絞りの中間 |
・EOS 60D + EF 50mm F1.4 USM(比較サンプル)
F1.4 | F2.8 | F4 |
F8 |
■キヤノン EF 24-70mm F2.8 L USM
レンズとボディのバランスは極端だが、ケラレを活かした表現に価値が見出せそうだ |
ケラレが発生する例として、EF 24-70mm F2.8 L USMを取り上げてみよう。このレンズを組み合わせると、絞り目盛り3を過ぎたあたりから四隅が暗くなる。そして絞り目盛り6を超えると、完全にケラレが発生した。下のテストショットはワイド端24mmで撮っているが、テレ端70mmでも同様の傾向だ。また、EF 70-200mm F2.8 L USMでも同傾向のケラレが発生したことを付記しておこう。
一見すると実用が難しそうなテスト結果だが、ものは考えようだ。一般に絞りを絞り込むと周辺光量落ちは改善していく。ところがこのセットアップは、絞るにつれてトンネル効果風の影が濃くなる。通常のレンズ特性と真逆の描写を得られるわけだ。アイディア次第で新鮮な表現が狙えるかもしれない。
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・NEX-5 + EF 24-70mm F2.8 L USM(EOS-NEX Aアダプター使用)
絞り目盛り1 | 絞り目盛り2 | 絞り目盛り3 |
絞り目盛り4 | 絞り目盛り5 | 絞り目盛り6 |
絞り目盛り6と最小絞りの中間 |
■ケンコー レンズベビーコンポーザー
ダブルグラスは50mm F2相当のレンズだ。思いのほか明るいレンズなので、屋外の晴天撮影では絞りの出番が多い | 本来レンズベビーは、付属の絞りディスクで絞りを調節する。レンズ自体に絞り羽根は組み込まれていない |
1月末、ミラーレス機用のレンズベビーが発表されたばかりだが、あえてマウントアダプター経由でレンズベビーコンポーザーを装着してみた。レンズベビーはマグネット式の絞りディスクを採用しており、撮影シーンに合わせてこの絞りディスクを交換する。ホビーレンズとしてはよく練られた操作スタイルだが、実際のところ撮影現場で絞りディスクを交換するのは煩わしい。そこで絞りディスクの代わりに、EOS-NEX Aの絞り機能を使おうというわけだ。
ダブルグラスを装着したレンズベビーコンポーザーを試したところ、EOS-NEX Aの絞り全域でケラレなしで撮影できた。試写中もっとも多様したのは絞り目盛り6で、おそらく絞りディスクのF4かF5.6あたりに相当するだろう。周辺の流れを絞りリングで微調整でき、レンズベビーの使い勝手が格段に向上した。
このセットアップはEOS-NEX Aの本質を突いている。EOS-NEX Aのアドバンテージとは、絞りのないレンズに絞りを追加できる点だ。この利点に着目すると、Canon SLR Adaptor & Diana Lenses Bundle(トイカメラ「Diana+」のコンバージョンレンズを、EOSに装着するキット)との併用もおもしろそうだ。これらのレンズは絞りがないものの、EOS-NEX Aと組み合わせれば絞り込んだ撮影が可能になる。EOS-NEX Aはブリコラージュのパーツとしても利用価値が見出せそうだ。
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2011/2/3 00:00