写真展レポート

東京都写真美術館「TOPコレクション 東京・TOKYO」「東京・TOKYO 日本の新進作家vol.13」

所蔵作品と新進作家、それぞれの東京

11月22日より東京都写真美術館で「TOPコレクション 東京・TOKYO」「東京・TOKYO 日本の新進作家vol.13」が開催されている。いずれも同美術館の総合開館20周年を記念した写真展で、会期は2017年1月29日までだ。

  • ・会場:東京都写真美術館
  • ・住所:東京都目黒区三田1-13-3恵比寿ガーデンプレイス内
  • ・会期:2016年11月22日(火)〜2017年1月29日(日)

※作家名は敬称略

TOPコレクション 東京・TOKYO

東京都写真美術館は、より多くの作品をより多様なテーマで来館者に鑑賞してもらうために毎年違ったテーマを立てて収蔵品で構成するコレクション展を開催している。

13回目に当たる今回は「東京」をテーマにしたもので、休館中(2014年9月〜2016年9月)に購入した初展示の作品も含め20年間のコレクションからピックアップして展示する。

展示作品は、41名の作家が写した150点。街のネオン、高層ビル、東京タワー、高度成長期、バブル期、リーマンショック、人、日常……。時代も切り口もバラバラな「東京」が、7つのセクションに構成されて展示される。

各セクションのテーマは「1 街角で」「2 路地裏で」「3 東京エアポケット」「4 見えないものを覗き見る」「5 境界線の拡大、郊外・サバービア」「6 どこでもない風景」「7 多層的都市・東京と戯れる」となっている。

「東京」と聞いて人がイメージするものはじつにさまざまである。新宿ばかりを集めるなど地域ごとに構成したらどうかという声もあったというが、7つのセクション分けはよく考えられていて、人それぞれに異なったイメージを想起させる「東京」の多層的な様相と、各作家の「東京」に対する個人的な思いが観覧者に伝わってくる。1点1点をじっくり見るのもいいが、全作品を俯瞰するように眺めてもおもしろい。セクションごとの解説も「なるほど」と思うことが多く、ぜひ目を通してほしい。

プリントや額装は作品ごとにいろいろ。カラー、モノクロはもちろん、アクリル加工など趣向を凝らしたものも見られるので、展示方法による表現の幅も実感できるだろう。

写真はホンマタカシ作品より。ホンマ本人が写し込まれた作品が2点展示されているので、探してみよう。

会期中12月4日(日)と1月15日(日)には、小学生を対象とした「対話による観賞プログラム」が開催される。展示作品を前に、学芸員の進行の下、皆で自由に話しながらじっくり写真を観賞するプログラムだ(要事前申込)。

本展の内覧会では、担当学芸員の武内厚子氏により参加記者たちを対象に「対話による観賞」が行われ、本城直季作品について言葉が交わされた。

また、会期中の第1、第3金曜日と、1月3日(火)には担当学芸員によるギャラリートークが開催される。

展示室出口付近のコーナー(佐藤時啓、林ナツミ、本城直季作品)は、撮影可能となっている。ただし、フラッシュ、三脚、自撮り棒の使用はできないので、注意しよう。

東京・TOKYO 日本の新進作家vol.13

東京都写真美術館では、将来性のある作家を発掘し支援するために、毎年異なるテーマを決めて「日本の新進作家」展を開催している。シリーズ第13回目となる本展は「東京」をテーマとして、東京というメガ・シティに対してアプローチしている現代作家たちをとりあげたものだ。

出展作家は小島康敬、佐藤信太郎、田代一倫、中藤毅彦、野村恵子、元田敬三の6名。

担当学芸員の藤村里美氏が「東京」という展示テーマを提案したのは、5年前。東京をテーマとする作家はいくらでもいるだろうと思ったが、いざ作家の選定を始めると「これ」という人がそんなにいないということがわかった。100人以上の作家の写真集や展覧会を見て、最終的にこの6名に絞られたという。

「キャリアのある作家たちなのに新進作家? という批判があるかもしれませんが、美術館で展示をするということは作品収集、保存の対象になるということなので駆け出しの作家は対象とならないのです。2年間の休館の間にフィーチャーすべき作家さんもたまってきています」。

人々が生活し、変化し続ける多様な場でもある東京。同時開催の「TOPコレクション 東京・TOKYO」では過去から現在までの幅広い作品が展示されるのに対して、本展で展示されるのは6人の目を通した「現在の東京」だ。今年に入ってから写された写真も多く、同時代の「東京」がこうも違った視角で切り取られるのかと思うと興味深い。

内覧会では出展作家6名によるギャラリートークが行われた。撮影エピソードや作家たちが考える東京について語られた。

小島康敬
佐藤信太郎
田代一倫
中藤毅彦
野村恵子
元田敬三

会期中の第2、第4金曜日には担当学芸員によるギャラリートークが開催される。

また、11月26日から12月23日の各週末には、作家とゲストによる対談が開催される。それぞれの作家の作品世界への理解を深めたい方はぜひ参加してみてはいかがだろう。

丸橋ユキ

カメラ誌出版社を経てフリー。雑誌や書籍での撮影を中心に、執筆や撮影指導、その他依頼撮影に従事。被写体は、郊外、自然、こども、暮らしなど。http://michikusa-camera.com