写真展レポート
LUMIX15周年記念写真展「東寺の四季2015-2016」レポート
京都・東寺を舞台にした四季の美 4K HDRの可能性も追求
2016年11月22日 14:00
京都市南区の東寺で、LUMIX15周年記念写真展「東寺の四季2015-2016」が開催中だ。真言宗総本山であり、五重塔でも名高い東寺で開かれる写真展。初日に取材したので、その模様をお伝えしよう。
主な作品は、写真家・山田久美夫さんが約1年半をかけて撮影した、東寺境内の自然風景。パナソニックのミラーレスカメラ「LUMIX」シリーズで撮影されたもので構成されている。その一部は、フォトキナ2016のパナソニックブースでも展示された。
お寺の堂内という特殊な環境での展示に加え、本展にはさらに2つのユニークな点を特徴としている。
通常、寺社をテーマにした写真作品は、非公開の場所や、一般拝観者が入れない時間帯などのものがよく知られている。一方今回の作品は、横浜住まいの山田さんが京都を訪れた際、一般の拝観者が入れる箇所を、一般の拝観者と同じ時間に撮影したという。撮影には約1年半を要した。
その理由は、山田さんが高校生の頃にさかのぼる。鎌倉を撮影していた当時、先輩に言われたのが「寺社や宗派の歴史を知り、それを写真で表現する」という指導。もっともだと思いながらも、もっと素直に寺社の清廉な世界や、豊かな自然を表現できないかと考えたそうだ。今回の作品群はその帰結ともいえるもので、街区から隔絶された約250平方m四方で繰り広げられる美しい四季の折々が収められている。
本展のもうひとつの特徴は、すべての作品が計14台の55V型ビエラDX850で表示されていること。いずれも4K HDRに対応しており、表示画像はすべてRAWデータからHDR用にグレーディングが行われている。動画については4K HDRの規格はあるものの、静止画はまだ規格化されていないこともあり、自前で行ったそうだ。
その仕上がりはインパクトあるもので、山田さん曰く「光がそのまま向かってくる印象」とのこと。ハイライトからシャドウまで、階調豊かでかつコントラストのある作品になっている。
山田さんは「光を捉えて作った写真を光に戻して観るのは楽しい。プリントにはプリントの良さがあるが、ディスプレイで鑑賞する写真は、ライトテーブルに置いたリバーサルフィルムをルーペで見るような感動がある」と語っている。
許可をとって金堂の薬師三尊や十二神将といった、東寺に祀られている仏像を撮影した写真もある。それらについても他の作品と同様、地明かりのみで撮影されたという。ライティングは一切行っていないそうだ。
空きスケジュールがあるたびに夜行バスに飛び乗り、コツコツと撮り続けて作品展にこぎつけた山田さん。アマチュア写真家にとっても、参考になる展示ではないだろうか。