デジタルカメラマガジン
10月号で、業界最多ページ数の「キヤノンEOS 5D Mark IV」特集
新レンズ2本による作品、DPRAW作例など。インタビューを一部抜粋
2016年9月20日 07:00
9月20日発売のデジタルカメラマガジン2016年10月号では、「キヤノンEOS 5D Mark IV」を18ページに渡って特集。同日発売のカメラ誌10月号で最大のボリューム(筆者調べ)です。
中西敏貴さん・佐藤信太郎さんによる作品ギャラリーは、EOS 5D Mark IVと同時に発表された新レンズ2本の試作機を使った作品とインプレッションのほか、「EOS 5D Mark IVで使ってみたいベストレンズ3本」も紹介しています。
インタビュー記事を一部公開
特集後半には、EOS 5D Mark IVの気になるポイントに関するメーカーインタビューを掲載。4つのテーマ・全8ページの構成で、各テーマごとに実写作例や操作解説の写真を交えています。特集ページに掲載されているインタビューの中から、ここでは「開発コンセプトとボディの進化点とは」の本文を以下に掲載します(インタビュアー:高橋良輔、人物撮影:加藤丈博)。
開発コンセプトとボディの進化点とは:あらゆる撮影ジャンルの撮影領域を広げる
――EOS 5D Mark IVのキャッチフレーズはどのようなものですか?
立花:全世界的には「ALL-ROUND PERFORMER」というキャッチフレーズを提唱しています。販売する地域によって打ち出し方はやや異なるでしょうが、風景からスポーツまでシーンを問わずにすべての分野で使えるカメラであることを意味している言葉です。
――約3,040万画素という数値はどういう理由で決まったのですか?
立花:EOS 5D Mark IIIとの解像感の違いをハッキリと感じていただく必要があると考えました。高速連写性能と高感度性能などとのバランスを考えた結果、ベストな数値が約3,040万画素であったというわけです。
やはり、EOS 5Dシリーズは画質を重要視しているお客さまにお買い求めいただきたいので、さまざまな画質を評価するファクターの中で「解像度という点でEOS 5D Mark IIIからの進化を感じていただこう」というのが開発メンバーの思いです。そういう前提において、ALL-ROUND PERFORMERとして多くの機能が進化している中でも画素数がもたらす画質面にもこだわりました。
――EOS 5D Mark IVはEOS 5Ds Rのようにローパスフィルター効果キャンセル仕様にする計画はあったのですか?
梨澤:EOS 5Ds Rはローパスフィルターによる効果をキャンセルできる仕様ですが、それと同時に通常のローパスフィルターを搭載したEOS 5Dsも併売しています。我々としては、ローパスフィルターそのものは必要不可欠であるというスタンスに変わりはなく、EOS 5Ds RはEOS 5Dsがあってこそ成立しているカメラであると考えています。
EOS 5D Mark IVの開発にあたっては、ローパスフィルターによる効果をキャンセルした場合の画質シミュレーションも行っております。その過程において偽色やモアレによる画質低下も十分に考慮した上で、ローパスフィルター搭載という仕様に決定しました。
――最高約7コマ/秒を実現できた技術的な背景はどこにあるのですか?
小島:メカ的な観点ではミラーの振動制御システムを新たに見直したことが大きいです。EOS 5Ds/5Ds Rでもミラーの振動制御システムは用いていますが、今回はさらにそれを進化させています。より具体的に申し上げるならば、機構の見直しでミラーの振動を短時間に止めることができたことで、コマ速を高められました。
――ミラー制御においてポイントとなったキーデバイスはどれですか?
小島:高トルクモーターの採用と、レバー機構を新規開発したことが効いています。ミラーのアップ・ダウンをモーターとカムギアで動作させているのはEOS 5Ds/5Ds Rと同様なのですが、高トルクモーターを使って駆動と速度制御の精度を高めた上で、そのスピードを強力に減速制御して振動を抑えているところが違います。新規開発したレバー機構でミラーバウンドを強力に抑え込み、バウンド停止までの時間を一気に短縮させています。
――歴代のEOS 5Dではミラー駆動と制御をどのような方式で行っていたのかを教えてください。
小島:初代EOS 5DとEOS 5D Mark IIでは、バネのチャージ力でオーソドックスにミラーを動かしています。EOS 5D Mark IIIでもバネの力でミラーを動かすことに変わりはありませんが、ミラーダウン時の衝撃エネルギーを逃がすバランサー機構を採用しました。その後、EOS 5Ds/5Ds Rではミラーの駆動をバネではなくモーターとカムギアによる駆動に変更することでEOS 5D Mark IIIに対してさらにバウンドの制御を行いました。
EOS 5D Mark IVでは、EOS 5Ds/5Ds Rの基本構造を踏襲しながら、ミラーの駆動用モーターを高トルク型に変更しています。強いトルクで急激な加減速をできるようにして運動性と制御性を高める一方で、新規開発のレバー機構でミラーの動きをさらに強力に抑え込む機構を盛り込んでいるわけです。
――デザイン面から見た場合のEOS 5D Mark IVの特徴はどこにありますか?
稲積:EOS 5D はキヤノンのブランドアイコン的な存在であり、EOSシリーズの中においても重要な位置を占めるカメラです。そのため、これまでリリースされてきた歴代のEOS 5Dシリーズの特徴である「堂々とした佇まい」というデザイン的な要素は、EOS 5D Mark Ⅳもそのまま踏襲しています。
それを受け継いだ上で今回はさらに「凝縮された力強さ」をデザイン面に反映させています。まず、カメラ全体から浮かび上がるシルエットに大きな違いがあります。具体的にはトップカバーの4連ボタン前のエッジ部分を、大きく下へと下げました。こうすることで、上から見ると「おおらかな余裕」が感じられ、正面から見ると「前へと迫る迫力」を感じることができます。カメラの内なる強さを感じられる張りのある面と、緊張感を持った細いエッジのメリハリにより力強さを表現しました。さらに、グリップ上部のデザインにも変更を加えて、シャッターボタンの周囲を太くすることで全体の塊としての凝縮感を高め、力強さを表現しました。
――単純にグリップそのものを太くしたわけではないのですね。
稲積:グリップ全体を太くしたわけではありません。これまでの持ちやすさを損なわず、より最適化した上で、外観イメージの刷新と剛性感を高めています。EOS 5D Mark IIIとの大きな違いはペンタ部の形状と素材です。EOS 5D Mark IVではペンタ部の内側にGPSとWi-Fiモジュールが組み込まれていますので、電波を遮断しないように受信部に当たる部分の素材を樹脂製に変更し、マグネシウム製のトップカバーと分割構造にしています。そこで苦労した部分が、一体感を阻害しないような分割方法とそのデザイン処理です。具体的には分割部のラインの流し方やパーツ同士の合わせ具合に関して、設計部門と協力して細かく仕上げています。
小島:この部分の分割を上手にやらないと、まるで内蔵ストロボが入っているように見えてしまうことに苦労をしました。
稲積:通信部は樹脂製ですので、金属と同じ塗料を使うことはできません。違う塗料を使いながらマグネシウム製のトップカバーと質感を合わせて一体感を出すことには結構苦労しました。内蔵ストロボのように見えるという声はなく、この部分は成功したなと感じています。
――GPSやWi-Fiモジュールなどが搭載されているのにもかかわらず、60gもの軽量化ができたポイントはどこにありますか?
小島:これはメカの設計チームの軽量化担当の執念でしょう(笑)。メカの設計チームとしてもすべての仕様を向上させていく作業の中で、仕様を向上させたから重くなったというのではユーザーの皆さまにEOS 5D Mark IVの魅力を訴求できません。仕様を向上させつつ、カメラとしては軽量化という課題も非常に重要なミッションであるととらえていました。GPSやWi-Fiなどの電気部品が増えていく中で、放熱効果も考えながらステンレス製の部品をアルミ合金製に変えているほか、樹脂で作られていた部分を金属にするなど必要不可欠な剛性を維持しつつ、細かい工夫と作業の積み重ねで60gの軽量化を実現しました。
――防塵・防滴対策において力を入れた部分を教えてください。
小島:EOS 5D Mark IIIとの比較で申し上げると、外装の合わせ部における防滴性能がより高められています。これまでクリアランスを開けずに外装部材を精密に合わせていた「高精度合わせ」と呼んでいた部分にも、EOS 5D Mark IVでは防滴部材を挟み込んでいます。とても地味な部分なのですが、電池蓋の気密性をさらに高めました。
一般的に電池蓋の気密性を高める場合にはスポンジなどのシーリング部材を使いますが、これまでは蓋を閉じる場合にシーリング部材を押しつぶすようにして気密性を高めていました。しかし、この方法では蓋の開き方向への荷重が高くなって電池蓋のロックが確実にかからない場合もあり、扱い方によっては撮影中に電池が飛び出してしまうことも考えられます。設計担当者はロック部品の微妙な角度やシーリング部材の反発力のチューニングなどにまでこだわり、これらの問題を解決しました。端子カバーを個別の4分割式にしたことも、防塵・防滴対策の一環です。
10月号に掲載されている「EOS 5D Mark IV」インタビュー内容一覧
- 開発コンセプトとボディの進化点とは(←本ページに掲載)
- 約3,040万画素とDIGIC 6+:解像感作例、高感度サンプルあり
- DPRAWの仕組みと使い方:解像感補正/ボケシフト/ゴースト低減の比較作例あり
- デュアルピクセルCMOSとAFの関係:デジタルレンズオプティマイザJPEG作例あり