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「OLYMPUS OM-D E-M1」発表会レポート
「統合した新システムで他社一眼レフ市場を取りに行く」
Reported by 本誌:武石修(2013/9/10 17:56)
オリンパスは10日、レンズ交換式デジタルカメラの新製品「OLYMPUS OM-D E-M1」の発表会を都内で開催した。
既報の通り、E-M1はオリンパスにおけるマイクロフォーサーズの新フラッグシップ機。カメラの詳細は「こちらの記事」を参照されたい。ここでは発表会の模様を中心にお伝えする。
「E-M1で攻めに転じる」と笹社長
登壇したオリンパス代表取締役社長執行役員の笹宏行氏は、「新しい世界の第一歩になる、オリンパスの粋を集めた製品。最高の画質を提供できる」とアピールした。また、「東日本大震災では多くの写真が失われたが、一方でカメラが被災地の実情を伝えたことで世界中から多くの支援を受けることができた。カメラは世界中で大切なものを守るための道具であり開発を進めてきた。オリンパスは内視鏡を中心として人々を健康にする事業を柱にしているが、映像も世界中の人を幸せにするものとして育てていきたい」と話した。
発表会では、フォーサーズ機の今後に対する質問も相次いだ。笹氏は、「(今回の新製品で)新しい世界を出すというメッセージが伝わったと思うが、これがレンズ交換式カメラ市場への強い意志と思って欲しい。現時点では新しい一眼レフ機を出す意思はない」とし、マイクロフォーサーズ機に注力する方針を明らかにした。
現行で販売しているフォーサーズ機は、中下位機種の流通在庫を除けば上位機の「E-5」のみとなっている。E-5については販売は当面継続するとしている。また、ZUIKO DIGITALレンズも同様に販売を続けるとしている。ただし、ZUIKO DIGITALの新レンズについては「現時点で計画はない」(笹氏)とする。
オリンパスは今回、E-M1を「フォーサーズとマイクロフォーサーズのシステムを統合したカメラ」と説明している。これについて、一眼レフから撤退するのか? との質問には、「一眼レフ市場をどう捉えるかということはあるが、ここからの撤退は全く考えていない。従来の2つのシステムを統合して新しい価値を提案するものだ。製品(フォーサーズ機)の継続性についても、統合するので一切問題ないと考えている」(笹氏)とした。
オリンパスが、フォーサーズとマイクロフォーサーズの統合に至った大きな理由の1つはAFにある。今回、従来のフォーサーズレンズ装着時は新開発の像面位相差AFを使用することで、E-5並のAF速度を実現した。オリンパスイメージング開発本部長の杉田幸彦氏は、「いままでのZUIKO DIGITALレンズユーザーは、レンズの本当の実力を発揮することが可能になった。世界最高速度のAFになった」と話す。
加えてEVFの進化もある。従来よりも倍率の大きな約236万ドットパネルの採用で、「フルHDよりも多くの画素があり、覗いてもらえれば驚くほど綺麗だと感じてもらえる。また相当大きなファインダー像を得られる」(杉田氏)とアピールした。
笹氏によれば、E-M1のターゲットはプロやハイアマチュアで、他社の中高級デジタル一眼レフカメラをライバルにしているという。「性能も機能も十分対抗できる」(笹氏)とする。また従来オリンパスでは、ミラーレスカメラでデジタル一眼レフカメラとは別の新需要を開拓するとしていたが、E-M1に関しては一眼レフカメラ市場を取りに行くという。
また笹氏は、「ミラーレスの市場が甘いものではないことは理解している。それをもとに昨年の中期経営計画を見直して5月に新しく策定した。読みは当たっているし、事業は徹底してやっていく。限られたリソースをどう活かすか、製造、販売も含めて包括的に考えていく。特設注意市場銘柄の指定も解除され、増資も行ない再建の目処も立った。非常に良いタイミングでこうした戦略的な製品を出すことができて社員も喜んでいると思う。この状態から攻めに転じたい」と意気込みを述べた。
海外市場についてオリンパスイメージング営業本部長五味俊明氏は、「日本とは少し違う。ミラーレスは日本が一番先行していて、次が東南アジア。欧米ではPENシリーズは若干苦戦しているが、OM-D E-M5は欧州では発売以来品薄が付いており、1年以上経つが安定して売れている。今回のE-M1でOM-Dの世界はさらに広がると確信している」と期待を込める。また笹氏は、「コンパクトデジタルカメラと異なり、対面販売をする商品。きちんと説明して販売していく」とした。