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オリンパスに聞いた「OM-D E-M1 Mark II」高速性能のカギ

エレガントな新PEN「E-PL8」にも注目

オリンパス技術開発部門 映像開発本部 映像商品企画部 副本部長の片岡摂哉氏

オリンパスブースで、OM-D E-M1 Mark IIをはじめとするフォトキナ発表製品について開発担当者に話を聞く機会を得られた。実機写真とともにお届けする。

なお、OM-D E-M1 Mark IIは海外向けに年内発売と発表されたが、日本国内向けには「決まり次第、正式にアナウンスする」というステータス。期待して待ちたい。

フォトキナ開幕前夜の9月19日(現地時間)、次期フラッグシップ「E-M1 Mark II」が開発中と発表された

3年の技術進化で実現した「OM-D E-M1 Mark II」の高速性能

フォトキナ開幕前日に発表され、早くも話題のE-M1 Mark II。現地にいる片岡氏にも、さっそく「AF追従で18コマ/秒」という高速性能についてポジティブな反応が届いているという。

E-M1 Mark IIが目指したところは「連写できるAF」 。AFの速度や精度はもちろんのこと、EVFのファインダー表示をいかに連写コマの間にちゃんと出すかに注力した。どれほど連写速度があっても、その間にファインダー像が見えなければ撮影者は動体を追うことができないからだ。これが一番の命題であり、一番のハードルだった。

実現のカギとなったのは、E-M1から3年分のハードウェア進化により得られたスピード性能。新エンジンに用いたチップは従来比3倍の処理速度をもち、AFしながらEVFの表示を出すことが叶った。ファームウェアのチューニングでも様々な機能向上が可能なのはE-M1で前例があるが、これほどの性能飛躍は最新ハードウェアの助けなしには不可能だ。

E-M1からの向上点

今回はイメージセンサーも一新している。高速性能のために基本設計から見直し、センサーから出る信号速度はPEN-Fの2倍。PEN-Fにはない像面位相差AFのための位相差信号も出さねばならないので、センサーの仕事量は格段に増えている。有効画素数は2,037万画素。その情報量を受け止めるために、画像処理エンジンもセンサーとセットで開発してきた。

同社初のミラーレスカメラ「PEN E-P1」が登場したのは2009年。当初は小型ボディと高画質のバランスで訴求してきたミラーレスカメラだが、2013年に同社フラッグシップとして「OM-D E-M1」が登場した頃にはフォーサーズのEシリーズに並ぶアウトドア性能も身につけ、「あとは動体撮影を実現したい」という期待があった。一方レンズ側は、高速AFを実現する「MSC」機構の採用をE-M1などに先んじて進めていた。

手ブレ補正が拡大。モニターはフリーアングル式に

定評あるオリンパス機のボディ内手ブレ補正。E-M1 Mark IIではボディ単体でシャッタースピード5.5段分、レンズの手ブレ補正機構と協調すれば6.5段分の効果が得られるという。

E-M1 Mark IIにおける補正効果の拡大は、センサーの可動域拡大以上にアルゴリズムの進化による補正精度向上が影響大。今後これ以上の精度アップを目指すと、「加速度に地球の自転精度が影響してくるぐらい」のレベルだという。

また、同社の手ブレ補正機能を活用し、手持ちでもブレのない動画が撮れる点を打ち出した「OM-D MOVIE」(OM-D E-M5 Mark IIが最初)への意識も感じられる。動画用途ではフリーアングル式の液晶モニターが使いやすいとの声があるそうで、E-M1 Mark IIはOM-D MOVIEで好評というE-M5 Mark IIと同様、液晶モニターがフリーアングル式になった。

フリーアングル式はE-M1で採用されたチルト式と比較してレンズ光軸とのズレの有無で好みが分かれる部分。最近は双方の特徴を併せ持つ機構も他社で採用例が出てきているものの、オリンパスとして現時点では強度への不安が残り、採用を見送ったという。いまだベストな解は見つけられていないというが、E-M1 Mark IIでは葛藤の末にフリーアングル式が選ばれたわけだ。

ほかにも挙げればキリがないというほど、細やかな改良が詰まっている。小指が余ると言われたグリップは、グリップ部分全体を上に数mm持ち上げて伸ばすような手法で改良。一目見てわかる違いではないが、確かにE-M1では小指が余っていた筆者も、E-M1 Mark IIを手にすると小指までスッと収まった。

デュアルSDスロットについて開発者側では「いまどきSDカードも大容量なので、1枚でよいのでは」と考えていたそうだが、バックアップや振り分け記録への要望がプロから多く、採用した。こうして真面目にユーザーの声を反映してきたのも、開発者としてE-M1 Mark IIのウリだと片岡氏は自信を見せる。

バッテリーが大容量の新型になったのもトピックだ。E-M1と共用できないのは徐々に新機種導入するユーザーには不便だが、それでも「もっと撮影可能枚数を増やせないか」、「バッテリー残量のパーセント表示ができないか」といった声を受け、このタイミングで切り替えた。具体的な撮影可能枚数は開発最終段階まで固まらないものの、E-M1の約350枚に対し1.5倍持つように向けて頑張っているそうだ。

E-M1 Mark IIの新バッテリー(左)と、E-M1などに使える従来バッテリー(右)

海外発表の「PEN E-PL8」について

PEN E-PL8

オリンパスのマイクロフォーサーズ機でエントリーラインとなる、PENシリーズの最新モデル。両端が丸くクラシカルなカメラらしいスタイリングを基本に、外観ディテールの繊細さが目を引く。ドイツでの価格は、写真の14-42mm EZレンズキットで599ユーロ。

同社では2009年の初代PEN E-P1から常に女性ユーザーをターゲットにしており、女性に対して常にアンケートやインタビューを行ってきた。その中で、カメラを生活の一部にするにあたり、エレガントなスタイリングや、持つ喜びをもっと感じられるものがよいというフィードバックが得られたという。

PENのように女性をターゲットにした製品は、欧州市場のマーケティング担当者に当初は受け入れられにくかったのだそうだ。ミラーレスはアジアでこそ早くから人気が高まったが、特に欧米市場はコストパフォーマンスにシビアだったり、小型軽量へのニーズが多くなかったり、ミラーレス各社とも普及に時間がかかった。オリンパスではフィンランドでブロガーイベントを実施して以来、PENが女性に受け入れられるとわかり、満を持してヨーロッパでも女性向けのアプローチが取られるようになった。

E-PL8のデザイン的工夫の根底にあるのは、「女性にとって、カメラにこれだけのお金を払うのは大きな出費」という声。上位機と比べて単価が安いから外観はコストダウンする、というのは売り手都合で、女性がバッグを選ぶようにそれなりの金額を払ってくれるなら相応の"いいもの感"がなければ、と真面目に考えた。

そうして誕生したE-PL8は、「とにかくデザインに全てをかけた」と振り返る片岡氏の言葉を代弁するように、前面のOLYMPUS PENの刻印、三角環カバーの色(ボディカラーに合わせている)、凝ったローレット形状のモードダイヤルなど、各所に気品が漂う。

また、セルフィー人気やInstagramに代表される写真トレンドも反映している。セルフィー動画用に、液晶モニターを自撮りポジションに向けると録画ボタンがタッチパネル上に表示されるように工夫。アートフィルターは、選択中のフィルター効果が反映されたライブビュー画面を見ながら左右ボタンでフィルターを選べるようにした。

内面はインターフェースの使い勝手向上がメインで、撮像素子はE-PL7と同様の有効1,610万画素。3軸のボディ内手ブレ補正機構を搭載し、フラッシュ非内蔵で小型の外付けフラッシュを同梱している。Wi-Fi機能を搭載。

E-PL8はまだ日本国内で発売されるかわからないステータスの製品だが、発売の暁には世間の反応が楽しみだ。