写真展リアルタイムレポート

写真展「Misha Erwitt」

街角の瞬間を切り取る 人への興味がスナップショットの源泉

5th Avenue Manhattan 1985(1985年 マンハッタン5番街)

街では常に何かが起きている。それに気づいてしまったら、カメラは手放せない。そんなスナップショットホリック(!?)の一人がミシャ・アーウィットさんだ。

東京・リコーイメージングスクエア銀座で開催中の写真展「Misha Erwitt」では、1970年代から現在まで、彼が撮影した約30点を展示している。会期は2015年4月26日まで。入場料は510円(税込)で、年間パスポート(3,600円・税込)もある。

カメラはいつも手放さない

ミシャさんは近所のスーパーマーケットにちょっと買い物に出る時もカメラを持つ。

「いつ、何が起きるかわからないだろう?それにニューヨークにはいろいろな人がいるからね」と言って笑う。

来日したミシャ・アーウィットさん。ギャラリートークショーを行った

住まいはワールド・トレードセンターのそばにあり、マンハッタンの繁華街であるタイムズスクエアは目と鼻の先だ。

「もし東京・六本木で仕事があったら、その後はぶらぶら歩くんだ。例えば坂を下って増上寺、浜松町に向かう。そうすると何かに出くわすし、それを逃さずに撮っていく」

東京の裏道を歩いていると、外国人が突然、ダンスをし始めた。(4月12日開催のギャラリートークショーより)。

ミシャさんは気に入った場所を見つけ、そこで起こる事を丹念に観察して、反応していく。それが住まいの近くであり、もう一つは電車の車窓から見える光景だ。

通り過ぎる対向車両に乗り合わせた人たちの姿、表情を、繰り返し狙っている。

「ニューヨークの地下鉄でもよく撮っているよ。時折、ハッピーな瞬間を捉えることができるからね」

来日中に撮影したヒトコマ。ギャラリートークショーより。

そうした車内での撮影はもちろん、街中でも被写体を至近距離から撮影することが多い。が、ほとんど相手には気づかれていないそうだ。

「変な動きをしないことが大事。ファインダーを覗いてしまうと、どんな小さなカメラでも相手は身構えてしまうから、そのままの体勢で、しかるべき瞬間になったらレリーズボタンを押せばいい」

まず撮ることが大事で、ピントは二の次だ。もし合っていなければ「この表現にはアウトフォーカスが良いと考えればいい(笑)」

ミシャさんはこれまでライカを始め、多くのカメラを使ってきたが、今回、GRのハイコントラスト白黒のエフェクトが面白く、その写りにハマってしまった。

2014 Down by the river Nakatsu Osaka(2014年 大阪・中津川)

最初はムービーの道へ

ミシャさんの父は写真家のエリオット・アーウィット。幼い頃から写真に囲まれ、自宅には写真家がたくさん出入りしていた。11歳の時、初めて自分のカメラを持ったそうだが、関心はそれほどなかったそうだ。

「高校生の時、写真の授業を選び、暗室作業はとても魅力的だった。けれどそれは、学科の授業から少しでも離れたかったからだけだったんだよね」

最初はムービー制作の道に進んだが、共同作業が馴染めなかった。映画のロケハンで写真を撮るなどして、徐々に一人で完結できる写真に興味が向かい始めた。

写真家としてのキャリアはニューヨークのコミュニティ誌から始まり、デイリーニュース紙のスタッフカメラマンになった。そこでは4種類の新聞を発行し、その日々は多忙を極めたそうだ。

「週6日、毎日見開きを写真で構成する紙面があり、街で起こる出来事を撮り歩いていた。事件が起きなかった日は、一面で扱われることもあったし、とにかく毎日がコンペみたいだったよ」

Hermosa Beach, California 2013(2013年 カリフォルニア・ハモサビーチ)

基本は人への興味

街を歩く時は、さまざまなものに意識を向けるが、やはりミシャさんの関心は人にある。今回の来日は、ちょうど桜が見ごろで、さまざまな花見に出かけたが、彼にシャッターを押させるのは人の存在だ。

満開の桜をバックに、ケータイカメラで自分撮りをする女性がいたら、ミシャさんの格好の被写体になる。

「セルフィー(selfie=自分撮り)フェイス! 世界中、どこでも自分撮りの時、女性は同じ表情を作るんだよ」と笑う。

街が瞬間に作る背景と人との対比も、ミシャさんが注視するポイントの一つだ。ビルの壁面や街のポスター、公道を走るアド・トレーラーなども、瞬時に取り込んでいく。その写真からは一見、不思議な現実を見せられた錯覚に陥るはずで、そこが彼の写真の大きな魅力になっている、

数多くの人が撮っているであろう浅草の有名なビルも、彼の視点からはこう描かれる。ギャラリートークショーより。

人々の共通性や、場所によって異なる営みがミシャさんにとって興味深く目に映り、その驚きが写真によって一層あらわになる。

「同じ日本でも大阪と東京では、人が歩くスピードも違えば、街の景色も違う。どこに行っても歩いて見る。よく迷子になるけど、何の問題もない。写真を撮っていればいいからね」

被写体があふれている街、銀座でスナップショットの醍醐味を満喫しよう。

市井康延

(いちいやすのぶ)1963年、東京生まれ。ここ数年で、新しいギャラリーが随分と増えてきた。若手写真家の自主ギャラリー、アート志向の画廊系ギャラリーなど、そのカラーもさまざまだ。必見の写真展を見落とさないように、東京フォト散歩でギャラリー情報の確認を。写真展の開催情報もお気軽にお寄せください。