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ポートレートで実践!「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」の実力を体感した2日間
GANREF「注目製品レビュー」撮影セミナー同行レポート
2025年12月3日 12:00
9月発売の標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」は、高画質を謳う「S-Line」に属するレンズだ。明るく使いやすい焦点距離域はそのままに、「シルキースウィフトVCM(SSVCM)」によるAFの高精度化/高速化を実現。さらにインターナルズーム機構の採用や軽量化を施し、性能だけでなく撮影現場での扱いやすさにも磨きをかけている。
インプレス運営の写真SNS「GANREF」は11月23日(日・祝)と11月24日(月・振替休日)にかけて、撮影イベント「注目製品レビュー ニコンZ8&NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」を実施した。GANREFユーザーから公募した8人のレビュワーが参加し、2日間の作品制作を通して機材の使い心地や写りをレビューする試み。参加者によるレポート記事はすでに各人が公開を始めている。
今回のテーマは「ポートレート」。講師は広告やエディトリアルなど様々な媒体で活躍している河野英喜さん。
本イベントでは、海岸でのスナップ風ポートレートと、スタジオでのモデル撮影という2つのシチュエーションで撮影を行なった。初日はセミナーと海岸での撮影、2日目はスタジオでの撮影とプリント、作品講評という流れだ。
使用する機材は固定で、フルサイズミラーレスカメラ「Z8」と「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」の組み合わせになる。
ポートレートでF2.8ズームレンズを使う意義とは?
初日のセミナーでは、河野さんが「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」の特徴や前モデルからの進化点を解説。さらに参加者のほとんどがポートレート撮影の未経験者ということで、ポートレート撮影の基本的なテクニックや、モデルとのコミュニケーションなどについての説明があった。
河野さんは「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」に関して、旧モデルも常用している立場から、新たに底上げされた基礎性能について言及している。とりわけインターナルズームに関しては、撮影の現場で水や砂の侵入に気を遣わずに済むようになった点がありがたいと話した。
またAF速度については旧モデルよりも明確に上がっており、「撮影に没頭できる感覚があった」と高く評価している。ポートレート撮影においてはピントの追い込みにMFを多用することから、幅広くなったピントリングも歓迎したいポイントだという。
河野さんによれば、普段ポートレートで使うレンズは単焦点を基本にしており、ズームレンズについては「撮影を止めたくない場合に1本で仕事する"お守り"的なレンズ」という位置付けなのだという。
説明の中ではズームレンズを使う理由として「単焦点レンズにない画角の補完」「レンズ交換を避けたいロケーション」「モデルの動きに合わせた画面微調整」「ワンオペ時のレンズ交換時間短縮」「移動ができない環境下での作画」の5点を挙げた。
ズームレンズが活躍する具体的な場面としては、少ない持ち時間の中で複数のカットを撮らなければならない著名人の撮影時などレンズ交換をする時間さえ惜しいケースや、移動に制限がかかるロケ地で寄りや引きの画角が足りないときなどを例示している。
ところでニコンには、同じく24mmスタートのズームレンズ「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」がある。画質・使い勝手の両面で高い評価を得ている製品だ。
その「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」と、今回のテーマである「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」のどちらを選ぶべきか? との疑問に対して、河野さんは自身のレンズワークを顧みて答えを示してくれた。
結論からいえば、ズーム全域でF2.8の大口径を持つ点で、「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」の方がポートレートの現場でのメリットが大きいとのこと。室内など現場によっては「光を足す」ことができないため、単純に光の入る量が多い大口径レンズであることが重要だと話した。「たかがひと絞り、されどひと絞り」とのことだ。
一方で、特に撮影者の移動に制限がかかる場面においては、「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」が活躍する場面ももちろんあるという。
ポートレートのテクニックについては、この日撮影地として向かう大磯の照ヶ崎海岸でロケハン時に撮影した作例を例に、光の扱い方や構図の取り方、露出設定を中心に解説した。
ここでは手持ちで撮影することを前提として、シャッタースピードはどんなに遅くても1/160秒を確保すること、撮り始めに使う焦点距離を意識すること、モデルと背景の陽当たり差を利用して輝度差を活かすこと、キャッチライトを意識すること、モデルの心地よさに配慮することなどを作例とともに紹介している。
作例の中には露出がオーバー気味の写真もあったが「自分が良いと思った肌のトーンを残しておく」ことが大事であって、露出をアンダーにしておくことはあくまでも保険なのだという。特にカラー写真の場合、肌色は後から調整しようとしても思ったような色にはならないとのことで、露出がオーバーになることを恐れずに撮ってみてほしいと話した。
また被写体が生身の人間であるポートレートならではの技術として「相手に興味を持つこと」を挙げている。モデルの良いところを探し、どんなポーズが好きなのか、モデルの魅力を引き出す表情は何か、最も美しく見える角度はどこか、といったことを常に考えてコミュニケーションを取ることで信頼関係を構築していく。河野さんはこれを「瞬間恋愛」と表現していた。
「ポートレートで重要なのは"表情"です。どんなにアングルやポーズがよくても、構図や光が素晴らしくても、表情が良くなければ台無しです。ポートレートの難しいところですね」(河野さん)
このほか機材設定については今回、「Z8」の人肌自動補正機能「美肌効果」を一律で有効にすることをすすめていた。「美肌効果」は人物の肌をなめらかに補正する機能。シミやくすみなどが目立たなくなる。撮影時に3人まで同時適用可能で、RAWで撮影したとしても、後から適用することはできない。
夕日バックから日没後まで…明るいレンズの使い勝手を体感
セミナー後は、神奈川県・大磯の照ヶ崎海岸に場所を移して撮影を実施。参加者は夕暮れから日没後しばらくの間、河野さんのアドバイスを受けつつ2人のモデルを撮影することができた。
運よく空模様も安定して、沈みゆく陽から薄明光線が差し込むタイミングもあり、夕日の海辺というシチュエーションを存分に活かした撮影が楽しめた。フレアやゴーストもほとんど目立たないことに、参加者から驚きの声も聞かれた。
陽が完全に沈んだ後は、PhottixのLED照明を使って撮影を続行。 構造物を背景としたロケ撮影に移行した。夜の海岸は真っ暗なので海辺の要素はほぼなくなり、要所要所でレフ板を活用して明るさをコントロールしつつ、道路側の遠景に並ぶ街灯を画面のアクセントに写し込むなどのテクニックが紹介された。
日没後はLEDライト以外にモデルを照らす光源がなくなる。開放F2.8+ズームレンズの自由度が役立つ場面だっただろう。
現場で上がっていた主な質問は、顔に差す光の角度や背景の処理、キャッチライトの入れ方など。河野さんから伝授された内容のうち、意識的に実践していることを参加者に尋ねたところ「背景に撮らされないこと」を挙げていた。主役はあくまでもモデルなので、どんなに見晴らしがよくてもモデルを引き立てる要素として扱うようにしているという。
自然光を生かしてのスタジオ撮影
2日目は午前中の早い時間帯からスタジオに移動して撮影を開始した。撮影時間帯は朝から昼過ぎまで。屋内撮影だが主な光源は大窓から差し込む自然光。前日に引き続きよく晴れて、強い光が大窓からスタジオ内に回っていた。
河野さんのアドバイスによれば、スタジオ内は屋外と違って大きく動けないので、同じシチュエーションでたくさんのポーズをとってもらうことが重要だという。最初のポーズからお願いして徐々に別のポーズへと崩していくことで、より多くのパターンを撮影することができると話した。
構図やアングルの説明では、カメラの位置をウエストレベルにすることでモデルのスタイルをよりよく見せるテクニックを紹介。またポートレートは違和感さえなければ水平/垂直にそれほど気を遣う必要のないジャンルであることも説明していた。
正午を過ぎて日が傾き始めると窓からの光が弱まってきたため、大きめのレフ板を使ってわずかな光を取り入れたり、備え付けの姿見を移動させて光のアクセントを作るなどの工夫も見られた。
お気に入りの2点を選び講評へ
スタジオでの撮影後、セミナー会場に戻ってからは写真のセレクトとプリントの時間。1人2点まで作品を選び、エプソン「SC-PX1V」でA3ノビでプリントする。それらを提出したのち、河野さんによる講評を行なうという流れだった。
「今回はポートレートで作品を作るのが初めて、という方が多かったとお聞きしました。この2日間でお伝えしきれたかどうかはわかりませんが、ポートレートって意外と敷居の高いものではなくて、プロのモデルだけでなく、ご家族やお友達もモデルになれる素敵なジャンルだと私は信じています。今回はNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S IIだけを使っていただく内容でしたが、この機会に単焦点にも興味を持っていただけたらうれしいです」(河野さん)
初のポートレート撮影で、新F2.8ズームレンズの実力を堪能
イベントにご参加いただいたGANREFメンバーのうち3名から、この2日間の感想をお聞きした。
ariaさん
元々風景写真を撮影していたこともあって、場の風景や構図に人物をあてはめて撮影してしまうようなところがあったのですが、河野さんのご指導で、ポートレートを撮るときは人物に当たる光を最優先に考えるということを学びました。構図の水平をことさら意識しなくてもいいという考え方も、被写体に寄るという動作の中で自然に身につきましたし、ひとつ壁を壊せたような感じがあります。
もう1つ印象的だったのは、モデルさんと同じ目線でコミュニケーションをとる姿勢でした。「こういう作品を撮らなければいけないんだ」ではなく「こういう表現にしたいんだけど、どうしたらいいんだろうね」と相談しながら撮るふるまい方。こうしてほしいと要求を突きつけるのではなく、自然と誘導するようなコミュニケーションの在り方がとても勉強になりました。
作品の完成度という点では、現場でできることは可能な限り現場でやりきっておくというお話もありました。後処理でできることには限界がありますし、特にポートレートは相手が人間ですから、次の機会にはしっかり気を利かせてぜひ実践してみたいと思いますね。
「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」は表現の幅を広げてくれるレンズだと思います。自分自身の操作によって、思い描いた画へ能動的に近づいていくことができる。ものすごく寄れるかと思えば、引いたときに壮大な画も撮れるし、一体どこまで撮れるんだろう?というワクワク感、楽しさがありました。
nikoさん
本格的なポートレートは今回が初めてだったのですが、私が今までメインで撮っていた風景と違って、人間が相手であることは強く意識しました。河野さんが繰り返しおっしゃっていた「写真には人の気持ちが写るんだ」という言葉が印象に残っています。今後人物を撮る機会もあると思いますが、ポーズをお願いするときや声のかけ方など、モデルさんへの気遣いを忘れないようにしたいですね。
教えていただいた技術で、ポートレートに限らず撮影全般で使えるなと思ったのは「寄って、引いて、さらに寄る」というテクニックでしょうか。わずかな距離であっても、自分の足を使って動くことで、こんなにも写りに違いが出るのかという驚きがありました。今後の撮影でも積極的に使っていきたいと思います。
ポートレート初心者の立場から言えば、「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」は広角から中望遠まで色んな画角が試せる楽しいレンズでした。プリントした写真も、試しに広角端で撮ったら思いがけず撮れたうちの1枚でしたし、寄って撮ることの楽しさに目覚めさせてくれたレンズといえます。
私は高校の写真部で指導もしているので、近々ポートレート撮影の機会を作って、さっそく今回学んだ撮影のイロハを生徒たちに伝えたいと思いますね。
ゆういちのっぽさん
指導いただいた中で特に気をつけて実践したいと思ったのは、瞳にキャッチライトをしっかり入れることでした。モデルさんの向いている方向や、入ってくる地明かりの状態から、どのようにキャッチライトが入ってくるのかを考えながら撮影していました。それと「振り返りのポーズは"盛れる"」ということだったので、モデルさんにこちらを振り返ってもらうポーズをお願いしていましたね。
私もポートレートは初挑戦だったのですが、今回のイベントではコミュニケーションをとりながら間合いを変えたり色々試してみて、その結果こんなにも撮れる画が違うのかという驚きがありました。河野さんに技術をご教示いただいて、実践する機会をいただけたことはとても有意義でしたし、純粋に楽しかったです。
「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」は大口径の明るいズームということで、寄ることも引くこともできますし、レンズ交換無しで撮影に集中できる利便性も魅力ですよね。攻めると言ったらヘンかもしれませんが、積極的に撮りにいく気にしてくれるレンズだと思います。



































