トピック
コンテストに参加する意義とは。そして創作活動への影響は?
ソニーグループ開催「第1回 THE NEW CREATORS」受賞者による座談会
- 提供:
- ソニーマーケティング株式会社
2025年12月10日 07:00
ソニーグループが新たに設立した写真&映像のアワード「第1回 THE NEW CREATORS」が終了し、各賞の受賞者が選ばれた。
新設のアワードということで注目を集めた「第1回 THE NEW CREATORS」。好評を受け、第2回の応募も11月18日に開始された。
受賞者のうち3名を招き、受賞の喜びやアワードに対する感想、作品制作に携わる喜びなどを聞いた。
参加いただいたのは、suzuki takuyaさん(写真作品自由部門・優秀賞)、上田雄太さん(映像作品ドキュメンタリー部門・優秀賞)、本多伽衣さん(写真作品U25部門・佳作)の3名。
応募のきっかけ
——「THE NEW CREATORS」の受賞、おめでとうございます。まずは読者に向けて、自己紹介をお願いします。
上田雄太(以下、上田): ドローンを本業とした映像制作・スクール事業の会社員で、休みの日に個人の映像作品を制作しています。独学で映像をはじめて12年くらいがたちました。
本多伽衣(以下、本多): 薬学部の大学4年生です。写真は独学で、きっかけは友だちとの旅行のためカメラを購入したこと。その後、夜景の撮影に興味を持ち、いまに至ります。
suzuki takuya(以下、鈴木): 美術大学に籍を置いていた頃から写真・映像の制作に親しみ、いまは広告・料理・カタログなどの撮影が本業です。自分の作品は、土日など空いている時間に撮影しています。
——「THE NEW CREATORS」を知ったきっかけや、応募した理由などをお聞かせいただけますか。
上田: 存在を知ったのは、ソニー・イメージング・プロ・サポート会員向けのメールでした。「世界を感動で満たす共創者を待っている」という文言を読み、「これに参加したら自分はどうなるのだろう」という湧き上がるものを感じました。数か月前に中村さん(受賞作品の出演者)と知り合ったところで、しかもこのアワードにはドキュメンタリー部門もある……ということで、中村さんを主人公にした作品での参加を決めました。
本多: Instagram上の広告でアワードの存在を知りました。ソニーのコンテストというと「Sony World Photography Awards」のイメージが強いのですが、初の国内規模のコンテストということで興味を覚えました。ちょうどそのとき、SNSでの評価を気にしない方向での制作を意識し始めたこともあり、その広告で訴えていた独創性や、審査員の方の「あなたらしい写真を待っています」とのメッセージにも共感しました。無料で応募できたのも大きいですね。
——それまでコンテストの応募経験はなかったのですか?
本多: Instagramにハッシュタグと共に投稿するような、市町村規模のコンテストぐらいで、本格的なものは初めてです。
鈴木: 私はほぼ日常的に、大量のコンテストに応募しています。それもあり、ソニーグループによる、第1回目の開催。「これは出して当たり前」という感覚でした。たくさんのコンテストに応募してはいるのですが、不思議なことに選出され始めたのは、いまのテーマ(自身の離婚経験を経てから取り組んだ、シングルマザーの親子を被写体とした撮影)になってからですね。
鈴木: 主催側が強調する「共創」というフレーズにも惹かれました。いま、個人プレーの時代から共創の時代に変わってきている気がしていて、そこにも興味を覚えました。
上田: そうですね。「共創」には写真と映像で一緒に時代を作っていく、というメッセージも感じました。
受賞作品を紹介
——では皆様の受賞作品を見ていきましょう。鈴木さんから解説をお願いできますか?
鈴木: モデルになってもらったお母さんがまだ離婚調停中とのことだったので、「旧姓へ」というタイトルにしました。自分も離婚した経験があり、男でしたが旧姓に戻るパターンだったのです。そのときの感情が強く残っていて……女性の離婚は基本的に旧姓に戻るわけですよね。そこに共感とある種の尊敬を感じての命名でした。
本来このシリーズは、モデルの地元の公園で撮ることにしています。ベンチに座ってもらうことが多いですね。このとき、お子さんが周りの目を気にして恥ずかしがっていたため、周囲を探して歩いていたらこの階段に出くわして、ここで撮ろうかということになりました。「階段の途中」に「旧姓へ」をなぞらえたのもあります。
上田: もし公園のベンチだったら、この形にはなっていなかったのですね。
鈴木: そうですね。よくあるのですが撮影時、とにかくこの年頃の男の子がふざけがちで(笑)。一瞬、この1枚だけ真面目でかっこよい表情になってくれました。表情を見せたかったので、応募の直前にモノクロにしました。
本多: このテーマになる前は、どういう作品だったのですか?
鈴木: 街撮りのいわゆるストリートスナップです。それまでポートレートは撮ったことがなかったのですが、離婚をしてから無性に人を撮りたくなりました。その衝動に身を任せて撮り始めたら、撮れるようになってきた感じです。
——写真作品つながりということで、次は本多さんの作品を見ましょう。
本多: テーマにしている「雨スナップ」を撮りに行った食事のとき、店の内側から撮った光景です。雨には暗いイメージがあると思いますが、夜の雨は街明かりや看板の色などを引き立ててくれ、明るくしてくれます。そういう雨の夜のストリートスナップにはまっていまして、カメラを持っていると友だちから「今日雨降るの?」と尋ねられるくらいになりました(笑)。大阪が大雨になると聞いて、新幹線で1晩だけ道頓堀へ撮りに行ったこともあります。
上田: すごい執念と行動力(笑)。作品はこのコンテストのために撮ったのですか?
本多: いえ、最初にSNSに公開していました。そのときは色がまだ残っていましたが、応募の段階でモノクロに近づけています。応募は3点までということで、雨スナップ以外にも2点応募しています。普段は気に入った作品を次々とSNSに投稿しているので、3点だけ選ぶというのが、新鮮でした。
鈴木: 自分もこういうストリートスナップが撮りたかった……(笑)。広角でまっすぐきっちり撮られていますね。そこは理系の学部で培われた計算をもとに撮影されているのでしょうか。
本多: 結構直感で撮っていますね(笑)窓についた水滴を生かし、自転車の動きも構図にとり入れようと少し粘って撮っていました。
——「FE 20mm F1.8 G」で撮られているのですよね。私も持っているレンズですが、こういう使い方ができるレンズだと気づかせてもらえました。ボディは「α7 IV」ですね。
本多: このレンズは明るくて夜のスナップで使いやすく、よく使っています。カメラは母にお金を借りて買ったもので、受賞したことで良い報告ができました(笑)
——さて、次は上田さんの作品です。素朴な主役の人柄に引き込まれる作品ですが、解説をお願いできますか?
上田: 徳島県の上勝町で1人暮らしをされている方を取材しました。電気は通っているが冷蔵庫やガスはない生活で、物はないけど暮らしは幸せ。何がこの方を生き生きとさせているのか、いまを生きる現代人のヒントになるのではという思いで撮影しました。庭にテントを立てて泊まらせてもらい、5日間密着して撮影しています。
——ドキュメンタリーということで、台本を作り込んで用意したわけではないのですか?
上田: はい、質問リストは持参しましたけど、役に立ちませんでしたね(笑)。それらを捨て、会話に意識を集中し、カメラは単にそこにあるだけ、という撮り方にしました。近所のご家族が訪れて出演してくれて、偶然にも助けられました。自分が想定していた構成とは違った方向になりましたが、そういう意味では恵まれていたと思います。
本多: どれくらいの時間、撮影されたのですか? 編集はどうしたのでしょうか。
上田: 約35時間の収録分を15分にまとめています。1.5TBですね。15分は応募の規定によるものです。ドキュメンタリーなので、まずはラフにタイムラインを組んでみて、並び替えを繰り返した感じですね。手探りですが、ある程度かたちが見えてくると、写真のレタッチのように面白くなってくるのではと思います。いわゆるBロール(メインの雰囲気などを補足する映像素材)も撮る時間を決めて、たくさん残すようにしました。
鈴木: ひとことでドキュメンタリーといってもさまざまなのですね。何かが起こるわけではない、淡々とした日常を撮るだけといった構成に新しさを感じました。日常といっても10年前、20年前なら当たり前の日常といえるわけで、そこが我々にとって興味深いのでしょう。
本多: 中学生の頃にもうスマートフォンがあったくらいの世代なので、いま日本にこういう暮らしがあることに驚きました。
上田: そうですね。物やサービスは豊富ですが、本当にそれで心が豊かなのだろうか……といったことを認識してもらえればうれしいです。
受賞後の影響
——作品の解説、ありがとうございました。受賞後、皆様の活動に何か影響はありましたでしょうか。また受賞により、周りや自己の評価は変わりましたか?
上田: ありましたね。さすがソニーの知名度、自分の想定よりも祝福の言葉をいただきました。中でも作品を通じて上映会を3回開催でき、それを通じて広く感想・評価をいただけたのが大きいです。自分の方向性を確認できたのが1番の影響でしょうか。
会社員以外での活動としては、いままで某芸能人のオンラインサロンの制作担当という肩書きで知られていたと思います。その肩書きで5年がたち、受賞したことで、ようやく「自分の作品の色で評価されたい」という思いがかないました。あと、妻に自分の活動を胸を張って説明できるようになりました(笑)
本多: SNSの「いいね」に左右される作品づくりに疑問を持ち、自分らしさを求めて撮った作品が評価されたことで、自信がすごくついた気がします。
鈴木: 授賞式やソニーイメージングギャラリー銀座で行われた受賞作品展で、他の受賞者とつながりが持てたことが収穫になりました。これまで賞をいただいても、そういう場がなかったからか、それを機に誰かとつながることはありませんでした。フォトグラファーは個人プレーなので、同じ立場で他のクリエイターと交流を持てたこと、それにより写真家と名乗って良いと感じたこと、それが私にとって1番の影響だったと思います。
——受賞を機に、今後はどのような活動をしていきたいですか?
上田: 今回は短編での応募でしたが、今後は90分くらいの長編ドキュメンタリーに挑戦したいです。その先、ドキュメンタリーを超えたジャンルにもトライしていきたいですね。
本多: いまは夜しか撮っていませんが、もっと昼間のスナップも撮っていきたいです(笑)。それに、海外での撮影も増やしたいですね。「Sony World Photography Awards」のような大きな賞、プリント応募の賞にも挑戦してみたいです。あと、映像作品の受賞者と知り合えたことで、動画の撮影にも興味が湧きました。
ソニーならではのユニークな副賞
——「THE NEW CREATORS」は副賞がユニークで豪華なのが特徴でしたが、感想はいかがですか?
上田: 映像制作者としては、ソニーPCL「清澄白河BASE」の見学はたまらなかったですね。ラージセンサーのシネマカメラ「VENICE」などを体験できました。(取材時点で行われていない)他の映像の撮影現場も楽しみにしています。
鈴木: 2年間、機材を借りられるのが本当に良いですね。もう大量に借りて作品撮りに使っています。「清澄白河BASE」での経験もアイデアの選択肢のひとつになり、今後必ず何かしらの影響を生かせると思います。
本多: 私は1万円分のソニーポイントで、ソニーのワイヤレスイヤホンを買いました。ちょうど欲しかったのでうれしかったです(笑)
第2回応募者へのメッセージ
——第2回の「THE NEW CREATORS」の募集が告知されました。これから応募を考えている方に向けて、ひと言いただけますか?
上田: 今回、評価されることがクリエイターの自信につながることを実感しました。評価されるのは怖いことかもしれませんが、落ちるのも経験ですし、まず出してみてはいかがでしょうか。無料で参加できますし(笑)、使用機材もオープンなので、主催側にはクリエイターの門戸を広げる意図を感じますね。それに映像作品のコンテストは数が少なく、国際映画祭など敷居が高い印象です。作品にチャレンジする良い機会になると思います。
本多: 個人的にこのアワードで、独創性に焦点を当てて評価する世界があることを知り、それに参加して視野が広がりました。応募作品を選ぶことで、自分の作品を見る目も鍛えられると思います。応募する過程だけでも、クリエイターとしての能力が変わると感じました。クリエイティブとはつまるところ自己満足ですが、そんな自己満足が集まり活発になることで、言語を超えた文化が発展するのではないでしょうか。
鈴木: (これまでたくさん落選したので)私は落ちるのが怖くありません(笑)。自分の作品を客観的に見るのは難しいものですが、落ちるという反応を得ることで、自分の現在地が分かる気がします。自分が今どこにいるのか分からないと地図があっても進めません。新しく組写真部門も加わりましたが、写真作品のネイチャー部門と自由部門は単写真での応募なので、楽しむ感覚で参加してみてはいかがでしょうか。
第2回「THE NEW CREATORS」開催概要
募集期間
2025年11月18日(火)〜2026年3月16日(月)
募集部門(全6部門)
- 写真部門:ネイチャー/自由/組写真(新設)
- 映像部門:イマジネーション/ドキュメンタリー/ショート
※複数部門応募可
※写真1部門5作品まで、映像1部門1作品まで
応募資格
年齢・経験・使用機材不問(スマートフォン作品も応募可)
審査員(五十音順・敬称略)
- 写真作品:川島小鳥/志賀理江子
- 映像作品:大喜多正毅/大友啓史
賞・副賞
写真作品・映像作品ともに、グランプリ1名/優秀賞2名/入賞3名/U25賞1名/佳作 最大30名/ソニー・ミュージックレーベルズ特別賞1名を選出。
※ソニー・ミュージックレーベルズ特別賞は、グランプリ、優秀賞、入賞のうち写真作品1名/映像作品 1名を選定
受賞者には賞金を進呈(グランプリは賞金100万円)。
副賞として、ソニー製品の機材サポートやソニーイメージングギャラリー銀座での作品展示、撮影現場見学や特別試写会など、ソニーグループならではの体験型副賞も提供。
スケジュール
- 一次審査(ショートリスト)結果発表:2026年5月下旬
- 二次審査 結果発表:2026年7月中旬
- 表彰式・交流会:2026年9月下旬(都内で実施予定)
主催
ソニーマーケティング
協力
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/ソニー・ミュージックレーベルズ/ソニーPCL













