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写真・カメラファンが集う仮想空間に潜入! 富士フイルムが仕掛けるメタバースを徹底解説
まずはログインして「何ができるか」を紹介 創設者へのインタビューも
- 提供:
- 富士フイルムイメージングシステムズ株式会社
2025年9月30日 12:00
富士フイルムが2024年2月から運営しているメタバース「House of Photography in Metaverse」(以下、HoP)をご存じだろうか。これはアバターを操作することで写真展の鑑賞、イベントへの参加、機材選びや修理の相談、写真プリントなどのサービスの申し込み、他の参加者との交流などをメタバースで行うことができる、インターネット上の「FUJIFILM SQUARE」的な空間だ。
このような取り組みは他メーカーでは限定的な仮想写真展程度しか行われておらず、常設での提供は富士フイルムが先駆けて取り組んでいる。この注目の取り組みを3回に渡ってレポート。第1回では、HoPのエリア、コンテンツ、登録手順などをひと通り体験してみた。
富士フイルムがメタバースを運営する意味と意義
デジタルカメラ事業だけではなく、プリントや写真展に代表される写真カルチャーの醸成にも力を入れている富士フイルムが、なぜHoPに力を入れているのだろうか。館長を務める富士フイルム・上野隆氏に話を聞いた。
「リアルのショールームや写真展は営業時間内にその場所まで移動しなければなりません。アクセス可能な方は限られてしまいますから、時間と距離を超えてリアルに近い体験が出来るメタバースには大きなメリットがあります。
HoPではアバターコンシェルジュに機材の購入や修理について音声で相談できるほか、LiveCallというシステムを使えばマンツーマンの対面相談も可能となっています。ギャラリーは来場記録(芳名帳)を残すことや、作家がアバターで在廊していれば作品について感想を伝えたり質問したりすることもできます。プリント鑑賞ではない、機材に物としての質感を感じられないということを除けば、現実世界とほぼ同等の体験が得られるわけです」
ギャラリーや写真教室を運営してきた経験を持つ上野氏。HoPに見出している可能性、そして館長としてのやり甲斐をどこに感じているのだろう。
「どんなに魅力的な写真教室や写真展を企画しても、参加できる方は大都市部に限られてしまいます。また、主催者側も参加者側もコストがかかり、経費対効果の面で企画することが難しいときもあります。一方、オンライン会議ツールなどでの写真教室は参加者の繋がりが生まれづらく、作品も単なる写真の羅列になることが多いです。オンラインでありながらそのような課題を解決できるのがメタバースというシステム。HoPはそこに可能性を感じて開発しました」
まだHoPの認知度は低いのが実情。そんな中、他社が取り組まないメタバースに富士フイルムが取り組む意義はどこにあるのだろう。
「写真の楽しさを広く深く伝えることが写真メーカーとしての使命です。生成AIでカメラを使用しなくても作品が作れてしまう時代となり、これまで以上に『写真を撮る』という体験価値を出来るだけ多くの人に感じてもらいたいと思っています。それがメタバース空間を運営する意義・目的。
魅力的なコンテンツ制作はリアルと同様にとても難しさがありますが、HoPイベント参加者からのリクエストをもとに、できだけ期待に応えていこうと考えています。そして、ぜひHoPに参加していただいた際には積極的に会話をしていただきたいです。顔が見えるわけでも、本名がわかるわけでもありません。オンライン空間の特性を生かして、自由に写真を楽しんでいただければうれしいです」
この言葉を踏まえた上で、HoPのエリア、コンテンツ、操作感などを紹介していきたいと思う。
HoPの主要エリア
エントランスホール
アクセスして最初にアバターが降り立つのは「エントランスホール」だ。HoPの入り口であり中心地で、各エリアへの入り口が見渡せるようになっている。
各エリアには必ずエントランスへと戻るという表示が用意されており、困ったらエントランスへ戻ればいい。HoP初心者の場合、まずエントランスホールで基本操作を試してみるのもオススメ。
instax
instax"チェキ"のこれまでの歩み、カメラやプリンターの人気機種紹介などを行っているカラフルな空間だ。instaxのショールームという雰囲気でHoPに彩りを添えてくれている。
FUJIFILM Prints & Gifts
富士フイルムのプリントサービス、写真を使ったギフト商品を紹介している。
商品がどのようなものかをビジュアルで確認しながら、注文サイトへとアクセスできるのが強み。プレミアムプリント、ウォールデコ、アートブック、マグカップ、トートバッグ、Tシャツなど、富士フイルムの写真サービスが揃っている。
ここまで写真に関するサービスが充実しているのは富士フイルムならでは。写真グッズを作りたい、という欲がむくむくと出てくる。
X&GFXショールーム
カメラ・レンズの購入検討・修理などについて、アバターになったコンシェルジュスタッフに相談することができるエリア。
コンシェルジュは10時00分~19時00分に常駐。また、FUJIFILMメンバーズ会員になることで完全予約制サービスの「LiveCall」を利用した1対1のオンライン相談も可能。次回以降、実際に相談をしてみてのレポートを掲載予定だ。
ギャラリー
通常のギャラリーのような雰囲気の写真展「クラシックギャラリー」、メタバースならではの開放的な空間で開催されている「パノラマギャラリー」の2種がある。
「クラシックギャラリー」は、実在のギャラリーと同じような展示空間になっている。一方の「パノラマギャラリー」は、屋外の広々とした空間で壁自体を自由に組める展示ができ、それぞれ趣向が異なる。
コミュニティ
写真・カメラの情報交換を行うことができるコミュニケーション空間。ラウンジスペース、BAR、ブースなどがあり、音声やテキストのチャット機能を使って交流することができる。
また、「コミュニティ」で開催することを前提としたトークイベントも多数企画されており、イベントにふらっと出かける、といような感覚で訪れることができる。
HoPで開催される期間限定写真展や申し込み制イベント
HoPでの写真展はオープンに楽しめるが、期間限定で頻繁に開催内容が更新される。また、イベントは申し込み制のものがほとんどで、多くはリアルタイム進行のため開催日時が決まっているものが多い。今後のコンテンツは「https://houseofphotography-jp.fujifilm.com/contents/」から見ることができる。
コミュニティ
アバターのコミュニケーション空間「コミュニティ」で開催されるトークイベント。他のコンテンツと比べてざっくばらんな雰囲気がポイント。
参加無料が基本で、HoP館長である富士フイルム・上野隆氏と写真家・内田ユキオ氏がホストを務める「月刊極楽カメラ」、若手写真家のSallu氏と高橋直哉氏による「レイトナイト・トーキーズ」など、定例化しているイベントも多い。
セミナー/撮影会
有料のセミナー/撮影会はオンラインとオフラインの両方が用意されているのが特徴的。すべて申し込み必須かつ有料で、VIP会員は割引価格もしくは無料で参加できる。
オンラインは、ZoomのWebinerにて実施。リアル撮影会はお花の撮影会などをはじめ、テーブルフォト講座、お城撮影の講座など、ジャンルに特化した内容のものもラインアップされている。
まずはとにかく登録。そしてアバター操作に慣れよう
HoPはゲストとして空間を覗くことはできるが、コンテンツを楽しんだりサービスを受けるためには、「FUJIFILMメンバーズ」への無料会員登録、または月額550円のVIP会員になる必要がある。メタバースはさほど難しい操作は必要ないものの、デバイスやネット環境によっては快適に操作できない可能性もあるし、アバターとなり写真を見るという行為への向き不向きもあるはず。まずはゲストか無料会員としてHoPの世界を体験してみるのもよいかもしれない。
筆者はゲームを最後にやったのは何年前? というような生活を送っていたため、アバターを操作する、ということに対して少しドキドキするものがあった。しかし初アクセス時には操作を練習するためのチュートリアルが11項目も表示され、ひと通り体験することで操作を覚えることができた。また、ゲームと違ってゲームオーバーなどもないので、いくら迷ったり壁にぶつかっても大丈夫。ぜひトライしてみていただきたい。
VIP会員になってできること
HoPはゲスト、無料会員、VIP会員の3種で楽しむことができる。ゲストはフリーコンテンツを楽しむことができるのみ。写真展を見るだけ、というような楽しみ方だけでいいという方ならゲストでも大丈夫だ。
無料会員になるとオリジナルアバターが選べるほか、イベント・キャンペーンの申し込み、カメラの購入・修理相談が受けられる。かなり手厚い。
さて、月額550円のVIP会員になるとどうなるか。多くの有料コンテンツが割引価格で楽しめるようになる。撮影会は10%OFF、オンラインセミナーは無料。それだけでVIP月額の元が取れるくらいの割引だ。そのほか、VIP限定イベントへの参加、6カ月のVIP会員継続特典としてカメラの無料メンテナンスなどが受けられる。
さまざまなイベントに参加したい、写真の知識を深めたいという方であれば現状でもVIP会員になる価値はある。
期間限定「"PHOTO IS" 想いをつなぐ あなたが主役の写真展2025 特別企画展」
「"PHOTO IS" 想いをつなぐ あなたが主役の写真展2025 特別企画展」が、9月17日(水)~10月16日(木)の期間限定でHoPに特設会場を構えている。
「PHOTO IS」は富士フイルムが2006年から開催している大規模な写真展で、日本各地から応募された写真を地域ごとに展示。HoP内でも北海道・東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州の6地域の会場が作られ、それぞれかなりの数の作品を見ることができる。
PHOTO ISのリアル写真展は東京・大阪・福岡の3カ所。作品応募は全国から募っているものの、会場は都市圏のみとなるため、なかなかリアルの会場に足を運ぶのは難しい方も多いだろう。
居住地に関係なくコンテンツを楽しめるのはメタバース最大の利点で、PHOTO ISの趣旨ととてもマッチしていると感じた。じっくりと自分のペースで鑑賞できるのも快適だ。正直、他のエリアではさほどアバターと遭遇することはないが、PHOTO ISは全国区の写真展だけあり活況。ただし、ノートPCの画面では作品の拡大表示に限界があり、VRヘッドセットなどが普及すればさらに鑑賞環境は良くなるはずだ。
定期イベント「内田ユキオ×上野隆『月刊 極楽カメラ』」
HoPの初期から続いている月イチの人気企画。HoP館長であり、Xシリーズのブランディングなどに貢献してきた名物社員・上野隆氏と、Xシリーズを愛用している写真家として有名な内田ユキオ氏が、カメラと写真に関するトークを自由に展開する。
猛烈な写真・カメラの知識を持つ両者がホストのため、かなり知識は深まるし新たな気づきがあるコンテンツ。9月号は日没の時間帯の写真の魅力、ホワイトバランスシフトの魔力、超広角レンズについて、などが展開された。さすが定番企画だけあり、参加者は45人ほどとかなりの人数。拍手やハートでリアクションをする方も多く、アットホームかつのんびりとした雰囲気がとても印象的だった。
イベント開始の時間にコミュニティエリアへと入るだけでイベントには参加できる。このふらっと立ち寄る、という感覚がメタバースならでは。ちょっと抜けるのも自由、開催中に他のエリアを見てきて戻ってくることもできる。通常のオンラインイベントとの違いを肌で感じることができた。
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以上、富士フイルムのメタバース空間「House of Photography in Metaverse」の基本操作と使用感を紹介した。次回以降、さらに深掘ったレビューをしていきたいと思う。