トピック

15一会|キヤノン EOS R1 & EOS R5 Mark II——2つの個性が被写体と出合う場所【第2回】

熱田護さんが語るF1サーキットで選ぶ2つのカメラの理由

エミリア・ロマーニャGPのマックス・フェルスタッペン選手。縁石に乗り、フロントタイヤが浮き上がった瞬間を捉えた。EOS R1は、マシンの挙動が変わっても瞬時に対応する頼もしい相棒だ
キヤノン EOS R1/RF400mm F2.8 L IS USM+EXTENDER RF1.4x/560mm/マニュアル露出(F10、1/1,250秒)/ISO 1000/WB:オート
エミリア・ロマーニャGPのルイス・ハミルトン選手を俯瞰で捉えた。有効約4,500万画素の威力は絶大で、マシンの細部まで鮮明に写し取る
キヤノン EOS R5 Mark II/RF70-200mm F2.8 L IS USM Z+EXTENDER RF1.4x/280mm/マニュアル露出(F18、1/160秒)/ISO 100/WB:太陽光

EOSを代表するナンバリングである「1」と「5」の最新機が、一期一会の瞬間を確実に捉える必要があるプロの現場でどう活躍するのか。モータースポーツ写真家の熱田護さんに、その使い分けを語ってもらった。

熱田護

1963年、三重県鈴鹿市生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。85年ヴェガインターナショナルに入社。坪内隆直氏に師事し、2輪世界GPを転戦。92年よりフリーランスとしてF1をはじめとするモータースポーツや市販車の撮影を行う。

※本企画は『デジタルカメラマガジン2025年10月号』より転載・加筆したものです。

熱田護のEOS R1とEOS R5 Mark IIの使用率

EOS R1は僕のメインカメラ。防塵・防滴性能を備え、剛性感の高いボディを持つ。どんなときでも撮影できるという安心感がある。大きく引き伸ばしたいときはEOS R5 Mark IIの出番だ。約4,500万画素の緻密さは、大判ポスターなどで真価を発揮する。ディテールの表現力は目を見張るほどだ。

EOS R1
発売日:2024年11月29日
キヤノンオンラインショップ参考価格(税込):108万9,000円(ボディー)

●SPECIFICATION
映像エンジン:DIGIC X & DIGIC Accelerator
有効画素数:約2,420万画素
常用感度:ISO 100~102400
最高連写速度:約40コマ/秒(電子)、約12コマ/秒(メカ)
最高シャッター速度:1/64,000秒(電子)、1/8,000秒(メカ)
手ブレ補正:周辺協調制御&5軸対応、中央8.5段、周辺7.5段
動画記録:6K/60p ほか
ファインダー:0.64型約944万ドット約0.9倍
外形寸法(W×H×D):約157.6×149.5×87.3mm
質量:約1,115g(バッテリー・カード含む)

EOS R1はカメラグランプリ2025において、選考委員の投票によって選ばれる大賞を受賞している。

キヤノン「カメラグランプリ2025 三冠受賞 御礼」Webページ

EOS R5 Mark II
発売日:2024年8月30日
キヤノンオンラインショップ参考価格(税込):65万4,500円(ボディー)、80万8,500円(RF24-105L IS USM レンズキット)

●SPECIFICATION
映像エンジン:DIGIC X & DIGIC Accelerator
有効画素数:約4,500万画素
常用感度:ISO 100~51200
最高連写速度:約30コマ/秒(電子)、約12コマ/秒(メカ)
最高シャッター速度:1/32,000秒(電子)、1/8,000秒(メカ)
手ブレ補正:周辺協調制御&5軸対応、中央8.5段、周辺7.5段
動画記録:8K/60p ほか
ファインダー:0.5型約576万ドット約0.76倍
外形寸法(W×H×D):約138.5×101.2×93.5mm
質量:約746g(バッテリー・カード含む)

EOS R5 Mark IIはカメラグランプリ2025において、一般ユーザーの投票によって選ばれるあなたが選ぶベストカメラ賞を受賞している。

視認が難しいようなシーンでも確実にマシンを捉えるAF性能

EOS R1

モータースポーツ写真を撮る際にミラーレスカメラを使う利点は、測距点を自由に設定できることと、トラッキングでフレーミングの自由度が増すことである。EOS R3を使い始めてその利点を実感し、EOS R1ではその精度が大幅に向上したことを実感。

さらに、モータースポーツにおいてカメラに求められる性能は、非常に速いスピード域での急激な加減速への対応と、被写体と撮影者との距離が近い状況においてAFがどれだけ追従できるのかという点だろう。その点においても、EOS R1のAFの合焦率は文句の付けようがない。

ナイトレースの低照度時や水煙でブレーキランプしか見えない状況、金網越しなど、どんなシーンでも確実にピントを合わせてくれる。カメラの性能不足で撮れないと思わせるシーンがなくなり、写真家の無限の想像力をいつでもかなえてくれる。EOS R1はそんなカメラだ。

POINT 01|約40コマ/秒で迫力ある火花の瞬間を捉える

F1マシンはブレーキング時などで火花が飛び散る。最大の火花が散る瞬間にシャッターボタンを押しても間に合わない。そこで高速連続撮影+の約40コマ/秒を使い、少し前からシャッターを切り、後から気に入ったカットを選ぶ。自分の理想を突き詰めるときに40コマが生きてくる。

キヤノン EOS R1/RF400mm F2.8 L IS USM+EXTENDER RF2x/800mm/マニュアル露出(F5.6、1/1,000秒)/ISO 2500/WB:太陽光

POINT 02|1/32,000秒の超高速シャッターでマシンを写し止める

時速300kmで走っているマシンとの距離が3mという状況で、マシンの動きに合わせて流し撮りを行う能力は僕にはない。このようなときはEOS R1の超高速シャッターで写し止める。EOS-1D X Mark IIIの最高速1/8,000秒ではブレてしまっていたが、EOS R1の1/32,000秒では見事に止まった。

キヤノン EOS R1/RF35mm F1.4 L VCM/35mm/マニュアル露出(F1.8、1/32,000秒)/ISO 10000/WB:太陽光

POINT 03|ファインダー表示優先モードで即座に撮影体勢に入る

ファームウェアがVersion 1.1.2に更新され、カメラの背面センサーにより人が検知されるとファインダーを点灯する「ファインダー表示優先モード」が追加された。即座に撮影できるので便利だ。

写真家の想像力を刺激する最高性能のフラッグシップ

F1を撮り始めたフィルム時代から、レンズは単焦点と高性能なズームレンズを使用している。どれほど大きく重くても、その意思は変えなかった。EOS Rシステムに移行し、レンズの画質が上がったにもかかわらず、サイズが小さくなったのは、取材時の荷物サイズに制限がある僕にとってうれしいことだ。

RF400mm F2.8 L IS USM
僕の標準レンズ。大きくて重い単焦点レンズだが、圧倒的な解像感と400mmでF2.8という焦点距離が生み出す滑らかで美しいボケが素晴らしい
RF35mm F1.4 L VCM
35mmという画角は、レースから人物とシーンを選ばずに幅広く撮れる。広角だがゆがみが少なく、F1.4で大きなボケも得られる。使用頻度の高いレンズだ

EOS R1は右手のホールド感がとても良く、手にフィットする。これは安心感につながり、より撮るという意欲がわき、ファインダーの画作りに集中できる。各ボタンの役割を振り分けて、瞬時に自分の撮影したいシチュエーションに対応できることも気に入っている。キヤノンのフラッグシップカメラとして「1」という称号が示すように、EOS R1は現在考えられる総合的な最高性能を持っていると実感している。

メキシコGPのセルジオ・ペレス選手。観客席の上から超スローシャッターを使い、満員の観客を流し撮りした。EOS R1はファインダーが大きく明るいため、マシンが小さくても逃さず捉えられる
キヤノン EOS R1/RF35mm F1.4 L VCM/35mm/マニュアル露出(F16、1/2秒)/ISO 50/WB:太陽光

マシンの細部まで写し撮る約4,500万画素の高画質

EOS R5 Mark II

僕のメインカメラはEOS R1だが、全面に写真を使ったA2サイズのカレンダーを作成することになり、高画素機が必要になった。そこで、ヨーロッパの3連戦にEOS R5 Mark IIを持参した。2020年にEOS R5で国内レースを撮影した際、初めてミラーレス機を使うということもあって、当時の僕はEOS R5で被写体をうまく捉えることができなかった。

それから5年がたち、バージョンアップしたEOS R5 Mark IIを使ったが、EOS R1と比較しても、違和感なく撮影できるほど進化していた。流し撮りでも問題なくマシンを追え、AFやトラッキング性能も反応が良く、マシンを逃さずに捉えられた。

何より素晴らしいのは解像感だ。F1マシンにはデカールが各所に貼られているが、その1つ1つを鮮明に描き出していた。僕は風景的に広く画作りをすることが多いが、臨場感がかなり違う。持って行って良かったと感じた。

POINT 01|追従性の感度を上げて時速300kmのマシンを確実に捉える

スペインGPのフェルナンド・アロンソ選手を、太陽の下に来るタイミングで写した1枚。カメラを振りながら連写でシャッターを切っても、違和感なく被写体を捉えられる。ピントの感触をEOS R1に合わせるために、AF設定は2つとも追従性を最大まで高めている。

キヤノン EOS R5 Mark II/RF10-20mm F4 L IS STM/10mm/マニュアル露出(F14、1/1,600秒)/ISO 800/WB:太陽光

POINT 02|カメラ内アップスケーリングで風景のディテールを高める

モナコGPでの写真。この写真の縦位置をカレンダーに使っているが、コースを走るマシン、海に停泊するクルーザーまで見事に捉えていた。どこまで引き伸ばせるかを試すために、アップスケーリングを施した。さらに精細感が向上し、A0サイズまで対応できる実力に驚いた。

キヤノン EOS R5 Mark II/RF70-200mm F2.8 L IS USM Z/200mm/マニュアル露出(F8、1/2,000秒)/ISO 500/WB:太陽光
EOS R5 Mark II+アップスケーリング
EOS R5 Mark II
EOS R1
各部の精細感がより高まった


POINT 03|バッテリーグリップ「BG-R20」を装着して操作性を高める

EOS R5 Mark IIは1日中撮影していると途中でバッテリー交換が必要になる。撮影中にその余裕がないため、電池が2個入るバッテリーグリップが必須だ。望遠レンズを装着した際のホールド感を高めるためにも、使うことをおすすめする。

BG-R20
キヤノンオンラインショップ参考価格(税込):5万5,000円前後
EOS R5 Mark II
EOS R1
EOS R1と併用する際には、操作を共通化するためにもバッテリーグリップはあった方が望ましい。ボタン配置や操作性に多少の違いはあるが、不器用な僕でも何とか併用できた。メインとサブダイヤルの位置が同じなのはさすがといったところだ

EOS R1に匹敵する実力と圧倒的な解像感に感服

ズームレンズはRF10-20mm F4 L IS STMとRF70-200mm F2.8 L IS USM Zの2本を選ぶ。どちらのレンズも画質が素晴らしく、単焦点レンズと比べても遜色がない。EOS R5 Mark IIはRF10-20mm F4 L IS STMの周辺協調制御に対応しており、周辺までしっかり捉えられる点が気に入っている。

RF10-20mm F4 L IS STM
10mmという画角で、しかも小さくて軽いというのは超広角好きの僕のニーズにピッタリ! 前玉が小さいため、大きめの金網に差し込んで使えることも大きな利点だ
RF70-200mm F2.8 L IS USM Z
70-200mmで1.4倍、2倍のエクステンダーが使えるレンズ。使い勝手も素晴らしいが、その元々のレンズが持つ傑出した解像感に感動すら覚える

実際にレースでEOS R5 Mark IIを使用したところ、EOS R1と遜色なく撮れる実力に驚かされた。極限の一瞬を捉える能力はEOS R1に軍配が上がるが、それ以外の場面ではEOS R5 Mark IIでも十分に対応できる。有効約4,500万画素の高画素は実に魅力的で、マシンが緻密で浮かび上がってくるように感じる。実勢価格でEOS R1と比べて40万円の差があるので、その差額でレンズを買うという選択もあると考える。

スペインGPのガレージでマシンに乗り込む角田裕毅選手。バイザーと奥にあるドライバーの目が重なっているが、問題なくピントを合わせてくれた。「瞳検出」は本当に便利な機能だ
キヤノン EOS R5 Mark II/RF70-200mm F2.8 L IS USM Z+EXTENDER RF1.4x/280mm/絞り優先AE(F4、1/640秒、±0EV)/ISO 1250/WB:太陽光

INFORMATION

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熱田護