移動中の車窓から撮影。旅のシャッターチャンスは突然にやってくる。軽快な起動と正確で高速なAFのおかげでタイならではのバイクタクシーを撮影できた
ライカSL3-S/ライカ バリオ・エルマリートSL f2.8-4/24-90mm ASPH./51mm/マニュアル露出(F8、1/500秒)/ISO 3200/WB:オート 「ライカSL3-S」は、階調豊かな高画質と高速連写などの機動力を備えた高級機であり、スペシャルなシーンを残すのにふさわしいカメラ。この「ライカSL3-S」を携えて、写真家にとって人生のキーポイントになった場所へ、遠い記憶をたどる旅が今はじまる。
クロカワリュート
東京都出身のフォト&ビデオグラファー。ディレクターやプロデューサーを経て独立。広告写真家として活動する傍ら、旅やドキュメンタリーの動画をSNSやYouTubeで発信している
※本企画は『デジタルカメラマガジン2025年4月号』より転載・加筆したものです。
Leica Brassが記憶の中にある色彩感覚を呼び覚ましてくれた
専門学校の学生のころに、一度だけ訪れたことがあった。タイの街を走るタクシーや寺院、人々の衣服が色鮮やかで日本との違いがとても刺激的だった。それが今の私の特徴でもある鮮やかな色使いのターニングポイントになっているのではないかと思うことがある。
今回の旅は言わば原点回帰。今の自分ならば、あの鮮やかな街に何を感じて写真を写すだろうか。ライカSL3-Sは自身の感性にどう応えてくれるのか。そんな期待に胸を膨らませてタイへ飛んだ。
発売日:2025年1月25日
ライカストア価格:91万3,000円(税込)
●SPECIFICATION
イメージセンサー:2,460万画素CMOSセンサー
画像処理エンジン:Maestro IV
記録メディア:CFexpress Type B、SD UHS-II
ISO感度:ISO 50~200000
手ブレ補正:約5段
シャッター速度:30分~1/8,000秒(メカシャッター)、60~1/16,000秒(電子シャッター)
連続撮影速度:30コマ/秒
EVF:120fps、576万ドット
背面モニター:3.2型233万2,800ドット
外形寸法(W×H×D):約141×108×84.6mm
質量:約768g 乾季とはいえ、真冬の日本と比べるとじっとりとした暑さに懐かしさを感じながら街にライカSL3-Sを向ける。無駄のないシンプルで扱いやすいボディは眼前の風景に集中させてくれる。品が良くて控えめなシャッター音は威圧感を与えず、ありのままを記録できた。
Leica Lookの「Leica Brass」の色彩設定が、自分の中のタイを表現するのにぴったりだった。現像時に細かい調整をしなくても、理想的な色合いに仕上げてくれる。スマートフォンアプリのLeica FOTOSを経由してさまざまなモードをダウンロードして追加する方法も直観的で楽しかった。
バイクとポロシャツの赤が目を引く男性にカメラを向けたらキリッとポーズを決めてくれた。撮影後には「ライカ、良いカメラだね」と笑顔。異国の地でコミュニケーションツールになってくれるのもライカの魅力だ
ライカSL3-S/ライカ バリオ・エルマリートSL f2.8-4/24-90mm ASPH./90mm/マニュアル露出(F4、1/800秒)/ISO 1250/WB:オート 路地裏にある店先で仕込み中の様子を撮影させてもらった。Leica Brassの暖色系の色合いは、フィルムの懐かしさを演出してくれてとても好み。タイは「微笑みの国」と言うとおり、カメラを向けると誰もが優しい表情をしてくれる
ライカSL3-S/ライカ バリオ・エルマリートSL f2.8-4/24-90mm ASPH./27mm/マニュアル露出(F8、1/125秒)/ISO 25000/WB:オート 暗所や明暗差の大きいシチュエーションでも広いダイナミックレンジが、明暗をしっかりと再現してくれる。ボディ内手ブレ補正もとても優秀で、暗所での撮影でもその機動力が失われることはなかった
ライカSL3-S/ライカ バリオ・エルマリートSL f2.8-4/24-90mm ASPH./90mm/マニュアル露出(F5.6、1/100秒)/ISO 1600/WB:オート 原点回帰の色彩にまみれた5日間
・レンズ1本で動画とスチルに対応
バリエーションと撮影スピードを重視した結果、標準ズームの1本勝負と決めた。動画用には一脚とジンバルなどを用意。航空機内に持ち込める最大サイズのバックパックにすべて収まった。
レンズはライカ バリオ・エルマリートSL f2.8-4/24-90mm ASPH.。さまざまなシーンで有利な明るいF値と、ライカSL2と愛用してきたその高い描写性能に絶大な信頼がある ・世界遺産でもある遺跡群
アユタヤはタイの古都で1350年から1767年にかけて栄えたアユタヤ王朝の都。世界遺産にもなったワット・マハタートなどの遺跡が有名。観光客に人気のスポットである。
観光客に人気のワット・プラシーサンペット。アユタヤ王の遺骨が納められている ・地元の鮮度抜群なランチ
アユタヤにあるバーンマイリムナーム・ペートリウではタイならではのスパイシーなランチをいただいた。この店は川沿いに建ち、眺望が良い。外の景色を眺めながらの食事もまた格別だった。
クンメナームと呼ばれる大きな川エビは2,200円ほど。ぷりぷりの身がとてもおいしかった 前を走るトラックの荷台に乗る人たちを見つけた。とっさのシャッターチャンスを30コマ/秒で高速連写。撮影後にモニターで確認すると、ピントも問題なく、皆リラックスした表情をしている。こんなことからもタイ人の温厚な人柄を感じられた
ライカSL3-S/ライカ バリオ・エルマリートSL f2.8-4/24-90mm ASPH./49mm/マニュアル露出(F5.6、1/125秒)/ISO 1250/WB:オート タイに訪れたのはちょうど春節で、タイ語では「トゥルッ・チーン」と呼ばれる中国の旧暦の正月の時期。色とりどりの提灯や飾りが施された華やかな街をシャープに切り取ってくれた。ズームレンズとは思えない描写には驚いた
ライカSL3-S/ライカ バリオ・エルマリートSL f2.8-4/24-90mm ASPH./53mm/マニュアル露出(F4、1/800秒)/ISO 250/WB:オート アユタヤのワット・マハタート。切り落とされ埋められた仏頭が木の根に包まれて地表に出てきたという奇跡の仏頭だ。上から見下ろさずに、チルト式のモニターを活用してローアングルから撮影。どんな撮影スタイルにも対応してくれるカメラは旅の相棒にふさわしい
ライカSL3-S/ライカ バリオ・エルマリートSL f2.8-4/24-90mm ASPH./47mm/マニュアル露出(F5.6、1/160秒)/ISO 250/WB:オート チャオプラヤ川の向こうに沈む夕日と暁の寺、ワット・アルン。川面にきらめくリフレクションの上をちょうど船が通りかかったタイミングで撮影。ハイブリッドオートフォーカスは厳しい逆光の中でも迷うことはなかった
ライカSL3-S/ライカ バリオ・エルマリートSL f2.8-4/24-90mm ASPH./50mm/マニュアル露出(F5.6、1/250秒)/ISO 320/WB:オート スピーディーでスムーズな撮影を多方面からサポートしてくれる
旅先での一期一会のシーンをベストな設定で撮ろうと思うと、これがなかなかに難しい。逆光、順光などの光の向き、明所、暗所といった場所の変化に即座に対応しなくてはいけないからだ。その点、前機種のライカSL2-Sではなかった設定ダイヤル(左)に助けられることが多かったし、高感度でもノイズレスな画質が写欲を刺激してくれた。
静止画と動画を平行して撮影する場合、ファインダーよりもモニターを使用して撮影することが多くなる。3.2型233万2,800ドットディスプレイを採用しているチルト式のモニターは、タイの強い日差しでも見やすかった 旅スナップでは2つの設定ダイヤルが活躍してくれた。右にはシャッター速度とF値。左にはISO感度を割り振った。設定の変更に手間取ることなくストレスフリーに撮影できるのが何よりもありがたかった デジカメ Watch ChannelにてクロカワリュートさんがライカSL3-Sで撮影した動画を公開中
【PRECIOUS MEMORIES ep.2】ライカSL3-S×クロカワリュート